サティ 「官僚的なソナチネ」
2023 NOV 14 12:12:15 pm by 東 賢太郎
長いこと生きてるといろんな人に出くわす。どなたでもある程度はあろう、ウマが合ってすぐ好きになる人もいるし、業務上長くつきあったのに百年やってもこりゃ無理だという人もいる。
どうしようもないのがつまんない人だ。つまるかつまんないかはこっちの問題であって、お相手に非や責任があるわけではぜんぜんない。そこに流れる時間というものが耐え難いということである。
例えば興味のない博物館やスポーツの観戦みたいなものだ。そういうのを1,2時間もというのはいけない。ロンドン時代に、もう名前も忘れたが周囲は一生ものと大興奮の著名ロッカーの公演があって拷問の記憶に入っている。そういう方々は、要するに、つまんないのだ。
子供時分からサーカスティックに世の中を見ていたが特に皮肉屋、辛辣家、嘲笑屋だつたわけではない。sarcasticは高校の教師がhumorousと違うと言ったがその時は意味が解らず、ああ俺がそうだったと思ったのはロンドンでオックスブリッジ卒の連中と6年儲かった損したやってのことだ。
フランス人は英国人と違った角度でドイツ人を馬鹿にしている。ドイツ人はドイツ人で田舎者と割り切ったルサンチマンがある。それを恐れる英仏人は喧嘩もするしくっつくこともできるが、英国は軍事や謀略は勝っても文化的には負けてると思ってる。更なる田舎者の米国人はフランス語に羨望すらある。
フランスは革命で自由を得たが権威を失い、軍事はヒトラーにパリを占領される究極の屈辱を味わい、植民地経営も英のはるか後塵を拝した。ナポレオンの武闘派支配は欧州を席巻したが一人の天才とともに消え、200家族のエリート、ENAの卒業生である少数の「エナルク」が支配する官僚国家になる。
エリック・サティは官僚的なものを皮肉る作品をいくつも書いた。
クレメンティがきらいなのではない。こういう訓練につき合う時間がつまらない。それをサーカスティックに音符にしたこの作品は、世の中で最もつまらないのは官僚的なものと考える僕には響く。時間は残酷なものでもある。サティは指導教授から才能が無いとされパリ音楽院をやめたが、無いのは教授の方だった。権威は馬鹿の数と時間の関数である。
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