クラシック徒然草ーワーグナー大好き(1)-
2013 JAN 10 17:17:15 pm by 東 賢太郎
僕にとって「毒」になっているものをご紹介します。
「神々の黄昏(たそがれ)第一幕への間奏曲」の一部、「夜明けとジークフリートのラインへの旅立ち」です.
夜が明けていきます。ジークフリートは「指環」をブリュンヒルデに愛の証として預け、ブリュンヒルデに贈られた愛馬グラーネにまたがり新たな勲を求めてライン川に向けて旅立っていく場面の音楽です。ピアノスコアですが下の楽譜をご覧ください。1段目のTagesgrauen とあるところからが「夜明け」です。
青い部分、ヘ長調でクラリネットが、緑の部分、変ロ長調で弦が神のように素晴らしい動機の誕生をひっそりと告げます。もう全身が金縛りになるしかないポエティック、マジカルな瞬間です。ここからこの動機が発展していく神々しいさまは僕などの下郎はひれ伏して拝むしかございません!ワーグナー様のしもべにでも何にでもしてください!!こうして毒が回ってワグネリアンになっていくのですね。
この音楽は、恐れを知らない若者の、とてつもなく大きい希望と夢に充ちた旅立ちの気分です。それ以外の何物でもありません。苦しみから立ち直って運命に勝利したり、愛や自然を賛美したりという感動をくれる音楽はクラシックのいわばメインストリートですが、こんな音楽はほかに知りません。
突然ですが、吉永小百合と橋幸雄のデュエット「いつでも夢を」という曲が僕は大好きです。小学生のころ、よく母と買い物した幸花堂という和泉多摩川のパン屋さんで流れていたこの曲。今でも聴くと明るい陽だまりとパンを焼くいい香りまで思い出します。小さかった僕に明るい夢をくれたこれは僕の「多摩川への旅立ち」でした(スケール小さいっすね・・・・)。
初めてリングを4日間かけてチクルス(全曲通して)で聴いたのはドイツ滞在中のこと、ヴィースバーデンのヘッセン州立歌劇場(右)です。まさにジークフリートが旅立って行ったライン川のほとりの街でのことでした。会社で初めて拠点長をまかされ、まさに意気揚々だった39歳のあの頃。今もときどきこれを聴いては気持ちだけ若返り、その勢いでジョギングしては筋肉痛で後悔しております。
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花崎 洋 / 花崎 朋子
1/11/2013 | 8:42 AM Permalink
この曲、先日、東さんが推薦されたクナッパーツブッシュ指揮のCD持っています。ただし楽団はウィーンフィルだったと思います。確か、高校生の頃、本格的にワーグナーを聴こうと思って購入したLPで初めて聴きました。ワーグナー霊峰登山の麓の音楽として、また毒を初めて味わうには、大正解だったのですね。
それにしても、この日本製のCD、音が良くないと感じます。当時のアナログレコード(輸入版)で感じた、上記曲の特に冒頭部分のチェロを初めとする弦楽器の「コクのある」味わいが、CDでは全く感じられません。今度、お目にかかりましたら、クナッパーツブッシュについて、色々と伺いたく思っております。 花崎 洋
東 賢太郎
1/11/2013 | 11:20 AM Permalink
花崎さん、そうなんです。気になったのでブログの推薦欄にも書きましたが、あのミュンヘンフィルのほうもCDは僕の装置でも弦の音が良くありません。仕方なくLPを自分でCDRに落として聴いています(多少ましです)。なんでフルトヴェングラーじゃないんだとお叱りの声もあるかもしれませんが、激情型の彼はワーグナー、ブルックナーのように一点集中で盛り上がらない音楽はいまひとつです。ところがクナはベートーベン、ブラームスよりこういう音楽の方が合っています。両者とも波長の合った音楽とシチュエーションではライブですごい演奏を残していますが、今はああいう指揮者がいなくなってしまいましたね。シベリウス2番のトスカニーニのところに書きましたが・・・。次回はクナを中心にこの辺のお話をぜひ!
花崎 洋 / 花崎 朋子
1/11/2013 | 11:58 AM Permalink
東さん、早速に有り難うございます。フルトヴェングラーのワーグナー、ブルックナーがあまり良くないとのご見解、私も全面的に賛成です。テンポや強弱を、いじり過ぎてますね。
松本康子
1/11/2013 | 7:52 PM Permalink
ワーグナーの毒は、壮大でいて美しい…
キャラクターの動機が執拗に繰り返され重なり、もう来るかなと予想する音楽の頂点は、なかなか到達点を見せず、身も心ももうダメ~っていうくらい我慢できなくなる頃(ちょっと大袈裟かな?(笑)ようやくクライマックスがきてくれる…そうなんです、大人の皆様だから御許し頂けると思いますが、とってもセクシーなのです。しかもスケールがデカイときてる。これこそワーグナーの毒なのです…て、言い過ぎでしたかしら、東さん?(^O^☆♪
東 賢太郎
1/12/2013 | 9:46 AM Permalink
はい康子さん、もうみごとなオトナのおことばでございまして、小心ものの僕などたじたじでならべることばもございません。仰せのとおりでございます。私どもは男の子でございますのでトリスタン第1幕前奏曲などもうまさしくたいへんでございまして85小節目で急に静かになっちゃうけどどうしたの?ってこんどこども電話相談室にきいてみようかななんておもってます。バッハさんもこどもがたくさんいたし、音符の物量も半端じゃないし、ふたりの巨人はやっぱり作曲界を代表する巨人だったんでしょう。音楽おパワーがお強いわけでございます。
松本康子
1/18/2013 | 6:34 PM Permalink
東さん、急に純情僕ちゃんコトバで、噴き出してしまいました(笑)かわゆいヾ(@⌒ー⌒@)ノ