クラシック徒然草-ファイラデルフィアO.のチャイコフスキー4番-
2013 JAN 14 13:13:56 pm by 東 賢太郎

朝起きると、東京は昨日のゴルフ日和がなんだったのかという雪景色です。
これで思い出してさっき家内と話したのが、フィラデルフィアの春の大雪です。あれはもう半袖を着ている4月のことでした。朝起きるとなんとなく窓のカーテンが明るく、普通でありません。開けてみると外は一面の銀世界。一夜のうちに2メートルの雪がつもっていました。ペン大のキャンパス内はスキーで教室に向かう学生がいたぐらいで、もちろん交通機関は完全にマヒしていたのです。
金曜だったのでビジネススクールは休み。午後からは毎週コンサートでした。どうやってダウンタウンまで行ったのか記憶がないのですが、とにかく雪まみれになり、寒さに凍えながらなんとかアカデミー・オブ・ミュージックまでたどり着きました。定期会員はお年寄りが多かったせいか、定刻2時にリッカルド・ムーティーが指揮台に立ったとき客席はまばら。オーケストラと同じぐらいで、100人いたかどうか。
「皆さん、こんなお天気の中、来てくださってありがとうございます」
と指揮者の心のこもったあいさつがあり、何事もなかったかのようにコンサートは始まりました。前半がなんだったか忘れてしまいましたが、後半の鬼気迫る ”壮絶な” チャイコフスキー4番は一生忘れません。「消化試合」になるどころか、来てくれたほんのわずかの人のために天下のフィラデルフィア管弦楽団が2度とないぐらいの迫真の演奏をしてくれたのです。圧倒された客席がブラボーの嵐と足ぶみと全員のスタンディングオベーションで熱狂して応えたのは言うまでもありません。僕も声がかれました。人のぬくもり、誠意、そして本物のプロフェッショナリズム。
窓の雪景色に、人生で一番感動した演奏会のことをふと思い出してしまいました。
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花崎 洋 / 花崎 朋子
1/15/2013 | 7:45 AM Permalink
感動的なお話しですね。指揮者や奏者が迫真の演奏を行なった最大の理由は、大雪という悪条件にも拘らずに、会場に駆けつけた、100余名の聴衆の音楽に対する情熱、オーケストラに対する強い愛情などを、指揮者や奏者が演奏中に感じとったことではないかと思います。「感動は、聴衆と奏者との間に生まれる」というフルトヴェングラーの名言を思い出しました。その日の演奏家が感動的な名演奏となるかどうかは、意外に聴く側の熱意や資質にもあるのかもしれませんね。花崎洋