新春架空座談会 (大作曲家編)
2014 JAN 9 0:00:09 am by 東 賢太郎

東 「マエストロの皆様、今日はご多忙のなか、新春座談会にご参加いただきありがとうございます、あれ、まだヘンデル先生だけでしたか。」
ヘンデル 「おほん!少し早く来すぎたね。今日の参加者は誰なのかね、ヒガシ君?」
東 「先生、アズマです。はい、今日はバッハ先生、ハイドン先生、モーツァルト先生、ベートーベン先生が来られる予定です。」
ヘンデル 「おお、あのバッハか!久しぶりだ。あいつは同期でね。まじめで堅物でのう。そのくせ子供はたくさん作りおった、 ハッハッハ!」
東 「先生はお子様の方はたしか・・・・?」
ヘンデル 「キミ!余計なことを聞くもんじゃない。」
東 「すみません。あっ、先生いまメールが入りました。えーと・・・・あれ?ベートーベン先生が今日はご出席できないそうです。」
ヘンデル 「なに?そうかね。あいつは気むずかしい偏屈もんという噂じゃないか。先週モーツァルトと飲んだらそう心配しとったが、やっぱりそうなんかのう。」
東 「いえ、部屋があまりに汚いんで大家に追い出されて、いまクロネコを呼んで引っ越し中だそうで・・・」
ヘンデル 「ウワッハハハ、そういうことか。まあ、あいつは次回ということでよかろう、ヒガシ君。」
東 「アズマです。あっ、皆さんご到着になったみたいです!」
モーツァルト 「いやいや遅れてどうもすいませ~ん、なんちゃって!」
ハイドン 「モーツァルト君、林家三平は極東のジャポン国の芸人だし古すぎだ。 ここの誰も知らんぞ、そんなの。」
バッハ 「ハイドン君、まあ堅いことはいいじゃないか。おお、ヘンデル!なつかし いな。すっかりイギリス人になりおって。」
ヘンデル 「生きとったかバッハ。おまえはずっとドイツにおって、純ドメだのう。」
バッハ 「うるさい、ちょっとグローバル派だと思ってかっこつけやがって。俺もお まえもあのイギリスのやぶ医者のせいで目が見えなくなったアホだろう。」
ヘンデル 「まったくだ。ありゃあ災難だったな。」
モーツァルト 「そうだったんすか。でもオレ、ヘンデル先生のメサイアから頂戴したメ ロディでレクイエム書いちゃいました。どうもすいませ~ん。」
ヘンデル 「モーツァルト、いいんだよ。君のあれはなかなかいい曲じゃないか。ただ君のメサイアの編曲ね、ありゃあちょっと厚化粧だな。」
モーツァルト 「ああしないと売れなかったんですよ。あんときはちょっと家計が苦しくて・・・。」
ハイドン 「先生、モーツァルト君のカアチャンは悪妻ということになってますがウチに比べたらかわいいもんなんですよ。」
バッハ 「きいたきいた。なんでも亭主の君がなにをしとるか知らんそうじゃないかね。」
ハイドン 「はあ、サッキョクとかいう仕事をしてるぐらいしか・・・・」
モーツァルト 「先生、それはご謙遜です。奥様は立派なご婦人ですよ。」
ハイドン 「う~ん、君も最近うまくなったねえ、そのぐらいヨイショしとけばコロレド大司教ともうまくやれたんじゃないの?」
モーツァルト 「先生、お言葉ですが、あいつとは無理ですよ。」
ヘンデル 「アマデウス、君はまだ若い。ワシを見たまえ。出張したロンドンが居心いいんでドイツ本社に辞表を出して住みついちゃったじゃないか。そしたらキミ、なんとそのドイツのハノーバー公がロンド ンに転勤してきたわけよ。ワシがどんなに焦ったかわかるだろう?」
モーツァルト 「はい、もうマンガですよね。っていうか、よく御無事で。」
ヘンデル 「そうじゃろう。そこでどうしたと思う?王様がテムズ川で舟遊びをするんで急いで曲を書いて船の上できかせたんだ。そうしたら許してくれたというわけだ。ヨイショはここまでやるもんだよ。」
東 「それ『水上の音楽』のことですね。」
バッハ 「ほう、よく知っとるな。ジャポンでもあれを演奏しとるかね?」
東 「はい。中学の教科書にものってますよ。」
ヘンデル 「おう、そうそう。その教科書にワシのことを音楽の母と書いとるそうじゃないかね。ワシは見ての通り男じゃが。」
東 「そうですね。バッハ先生が音楽の父となってます。」
ヘンデル 「なに!それは聞き捨てならぬ。なんでこいつが父でワシが母なんじゃ?バッハは葬式の音楽ばっかりじゃろう。ワシの音楽のほうが豪快で明るくて男らしいと思わんのかね。」
モーツァルト 「それはバッハ先生がお子さんを20人も作られたからじゃないですか、ねえ東さん?」
東 「えっ?私にふりますか、私は3人で足元にも・・・・えっ、そういうじゃなく?あっジャポンの、そうジャポンですね、いや、その、最近のジャ ポンは少子化が 問題でして、確かにそのう、バッハ先生のようなかたが求められているかも・・・」
ハイドン 「えへん。まあその辺の話題は。」
モーツァルト 「そうっすね。ハイドン先生も奥さんと別れてから何人も・・・」
ハイドン 「モーツァルト君、失敬な!君こそ胸に手を当てなさい!」
バッハ 「まあまあ諸君。人生を謳歌した我々がモーツァルト君にそれを言っちゃあ気の毒だ。」
モーツァルト 「先生。恩にきます。」
東 「先生はサリエリに毒を盛られたという噂ですがそうなんですか?」
モーツァルト 「そんな話になってるの?そりゃあサリエリさんがかわいそうだね。」
東 「やっぱりそうですか。でも先生の映画はそういうことになっていて大ヒットしたんですよ。」
バッハ 「なんだって?モーツァルト君の映画がかね。それならワシのはオスカー賞ぐらいなんだろうね?」
東 「いえ、先生のはちょっと地味で・・・・。なにしろモーツァルト先生はお墓もわ からなくて、とてもお気の毒だと・・・」
バッハ 「キミ、そんな理屈はないだろう、ワシの墓だって本当はどこかわからんのだぞ。」
ハイドン 「そうだ。私なんか頭蓋骨だけ持ち去られたんだ!」
ヘンデル 「ワシじゃって異国の地に埋められちょる」
コンコンコンコォーン!!
東 「あっ、皆さん、このノックはひょっとしてあの運命が扉を・・・ベートーベン先生がいらしたようです。」
ベートーベン 「いや、先輩方、お待たせ申し上げて面目ない。」
モーツァルト 「よう。真打登場だ。拍手!」
ベートーベン 「なにせ尿瓶(シビン)を放っておいたらガスがたまって爆発しまして・・・大家に追い出されたんです」
モーツァルト 「ウンチとオナラの手紙で有名になったオレとは腐れ縁だわな。」
ベートーベン 「えっ、先輩、何とおっしゃいました?」
バッハ 「君、知らんのかね、彼は耳が悪いんだよ」
ベートーベン 「いえ、バッハ先生、最近ジャポン製のいい補聴器が出まして。 すいません電源が入ってませんでした。」
バッハ 「そうか、ワシとヘンデルの白内障もジャポンの眼医者に手術を頼むべきじゃった。英国はだめじゃのう。」
ハイドン 「先生、お言葉ですが、私は英国でシンフォニーがヒットしまして。あそこはいい国ですよ。」
モーツァルト 「ハイドンさんはお金持ちになってうらやましい。オレも秋波送ったんですがだめでした。」
ベートーベン 「僕だって第九をロンドンに売り込んだんですが・・・」
ヘンデル 「ワッハッハ、やはりワシだけよのう、英国で大ブレークしたんは。ゲオルグでねえぞ、ジョージと呼んでくれたまえ」
バッハ 「ワシはエゲレス語ではなんになるかの?」
モーツァルト 「ヨハンはジョンです、先輩。イタリアだとオレのオペラでカタログの歌になる性豪ジョバンニですよ。ぴったりですね。」
ハイドン 「おい、ジョンとジョージというと、あの英国の楽隊がおったね、なんといったかな、ビート、ピート・・・」
東 「ビートルズでしょうか?」
ハイドン 「それそれ、君、あれはいいね。クラシック界でも作ったらどうだろうか。ポールというのはパウルだね。誰かおるかね?」
ベートーベン 「ヒンデミットくんがパウルですよ。だいぶ若僧になりますが。」
ハイドン 「よっしゃ。それともうひとりおったね、あのティンパニをたたく・・・」
ベートーベン 「リンゴ・スターです。」
ハイドン 「リンゴ?なにかねそれは」
東 「先生、リンゴはアップルのことです。」
ヘンデル 「そうか、そうだったか!それなら新人のスティーブ・ジョブズ君を呼ぼう。彼に太鼓をたたかせるんだ。」
モーツァルト 「でも男だけじゃあいかんのじゃないっすか?オレはやだな。女性歌手が一人ほしいっすね。」
東 「あのー、ジャポンから新人が入ってますが。藤圭子と島倉千代子と申します。」
バッハ 「オー、知っとるさ。素晴らしいソプラノとアルトじゃ。」
モーツァルト 「まったくです。オレの次のオペラの題は『人生いろいろ』にすっかななんて考えてたとこです。」
東 「それで曲の方はどなたがお書きになられますか?」
全員唱和 「もちろんワシ(わたし、オレ)が!」
東 「えーっと、ベートーベン先生のお声がなかったようです。もう一度挙手をお願いします。」
全員唱和 「もちろんワシ(わたし、オレ)が!」
ベートーベン 「・・・・」
全員 「??」
東 「バッテリーがあがりました。それではお後がよろしいようで。」
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