ネヴィル・マリナーN響を振る
2014 FEB 14 23:23:24 pm by 東 賢太郎
雪が強くなっていて、もう足元がかなり危なくなりつつあるなかをNHKホールへ向かいました。ネヴィル・マリナーさんでなかったらパスしてました。残念ながら空席が目立っていましたが、7時の開演直前になって後の方から拍手が。何かと思ったら2階席中央に皇太子浩宮さまがご入場されました。生放送するので音を立てるなと注意があり開始。曲目はドヴォルザーク交響曲第7,8番でした。
マリナーさんは今年90歳。1歳上のスクロヴァチェフスキーさんとならび指揮界最長老です。思えば僕は40年前に彼のレコードでモーツァルトやバッハを覚えたのです。モーツァルトのクラリネット協奏曲がそうですし、交響曲39番を初めていいと思ったのは彼の演奏です。忘れられないバッハのブランデンブルク協奏曲第6番のなれそめについてはブログで書きました。だから人生の恩人とでもいう感じがするのです。雪などと言ってられません。
席は1階9列目のど真ん中で、前後はがら空きでした。定期会員はご高齢が多いのでこの雪では仕方がありません。昨日までヨッフムのコンセルトヘボウのブログを書いていたので無意識にあそこの音を求めていたのでしょうが、やっぱりこのホールは紅白歌合戦用であります。N響はマリナーさんの棒にこたえて熱演でしたがどうしても弦がやせてしまいます。高弦は立ってしまいます。音の情報は来るのですが低音と丸みが足りません。コントラバスを10人にしたいぐらい。オーケストラというのは弦が全体をしっとりと包みこまないと管がブラバンみたいに浮いて充実感のある音がしないのです。弦が命のドヴォルザークではちょっと気の毒でした。
7番の第1楽章、僕はこの第2主題が大好きです。春の木洩れ日みたいにふわっと暖かくて懐かしいあの和音。とても良かったです。8番の冒頭、チェロ、ホルン、クラリネット、ファゴットのト短調のメロディをトロンボーン(!)が和音で支え、最後をチューバが低音で締めてヴァイオリンがト長調の和声を囁く。それに乗って森の小鳥が歌うようなフルート・・・魔法のように美しいオーケストレーション!コントラバス・セクションが奏でる和声!ドヴォルザークのデリカシーをマリナーさんは非常にうまく表現されたと思います。やや遅めのテンポで慈しむように。前回N響を振られたシューマンの3番は僕がライブで聴いた最高の演奏でした。今日の2曲はきっと僕はもうたくさん聴きすぎているのです。
楽しい時間を過ごさせていただきました。マリナーさん、お元気で末永くご活躍されることを祈っております。
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彼のレパートリーのイメージではないチャイコフスキーもバランスよくまとめる力量が光る。人柄がにじみ出るような温かさがとても良い。
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