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僕にとってロンドン?戦場ですね

2015 AUG 28 2:02:45 am by 東 賢太郎

自分の御しがたい性格であるのですが、終わったことに執着がないというのが良くも悪くもございます。昨日はもう今日に関係ないのであって、簡単に忘れてしまいます。もちろん事実としての記憶はありますが、そこでの感情を引きずらないという意味ではプラスであり、その感情の発展を期待して下さった人には期待に添えないかもしれないという意味ではマイナスであります。

サラリーマン時代は相当厳しい上司だったと思いますが、何かでめちゃくちゃ怒っても翌日はさっぱり忘れてます。逆にほめても同様です。その人の評価が固まるまで時間を要するのは誰でも一緒でしょうが、僕の場合要する時間が少々長いかもしれません。だから昔に職場を共にした仲間というのは楽なのであります。お互いに評価ができていて、誤解の余地が微塵もないほど固まってるからです。

ソナーの起業を支えてくれた人たちが野村ロンドンで苦楽を共にした「戦友」たちだったというのは偶然ではないでしょう。シティのばりばり本チャンのエリート英国人運用者たちを相手に日本株を毎日毎日売り込むという業務は生やさしいものでなく、それを野村という壮絶無比の成果主義の会社でやるのはまさしく修羅場の日々でありました。一般に思われる「海外赴任」の優雅でスマートなイメージなどかけらもない凄まじいものだったのであり、逆にそんなのと一緒にされたくない。

とにかく朝は6時半に出社、気絶しそうな額の販売ノルマをこなして帰宅は午前様なんてのが日常なのです。会社に来てりゃあいいってもんじゃない。儲け過ぎてへとへと証券と皮肉られてましたが、そんなの皮肉にも何にもなってなくて、ぼろぼろ(心身)、ぴりぴり(神経)、びしびし(詰め)であり、20代~30代だからできたことです。上司も部下もなく、みんなで一つ事をやってるので総勢20人ぐらいがまさしく同じ釜の飯でした。

例えばノルマの最後の最後が売れず全員が電話にかじりついて必死に売り込んでるのが夜10時なんてのもしょっちゅうでした(お客さんは自宅ですが、むこうもプロだから真剣に取り合ってはくれる。しかし英国人相手にそんな時間にそんなことするなんて今ではもう信じられないですね)。そこで「決まりました!」なんて声があがると、それが末席の若手だろうと誰だろうと「よくやった!」と先輩方に絶賛されるわけです。

これは野球やサッカーと同じです。チームとして毎日戦っていて毎日ヒーローがいる。年次もタイトルも関係なし、やったもんはほめられるしできないもんは肩身が狭いのです。今日はヒーローでも明日会社に出てきたら皆それは忘れて積み木崩しです。そうやりながら毎日の試合の中で自然と一人一人の力がわかってきて、それが評価や序列の暗黙の了解になってきます。えっ、彼がエース、冗談でしょ?みたいに実力は隠しようもなく全員によって正確にイメージされ、記憶される。怖い世界です。年が上だからエースや4番というわけにはいかないのです。

そうやって毎日のふるいにかけられて、全員がお互い力も弱点も性格もわかってるので、30年たった今になって立場が違っても、ああこの仕事は彼だったら無理だろうなとか軽くこなすだろうなみたいなゲスがすぐききます。まず外れることはない。だから、助けていただけたのは、それだけ僕を、それも全盛期の僕を皆さんが覚えていてくださったということに尽きると思っています。

他の店や部署でももちろん同様のことはあったのですが、同じ野村とはいえあのころのロンドン以上にキツい部署は絶対になかったと断言してもいい。自分たちがインヴェストメントという仕事の元祖であるという(事実そうだ)プライドの塊であるシティのファンドマネージャー相手に、それだけの仕事量と収益をたたきだした戦士たちの一員であったことを僕は心から誇りに思うし、あれに耐えられたらもう怖いもんなんて世の中にないというレベルの強烈な6年間でありました。野村出身だという人はたくさんいますが、僕にとって99%はそれを聞いてもあっそうで終わりです。

今このトシで無謀にも起業なんかしてなんとかなってるのは、梅田支店の原体験とロンドンでの戦場体験があったからです。それなくしてこんなことは100%想像もできないし、だからコンペティターが出てくる心配もないのです。野村に25年お世話になりましたが、その他のいかなるポストでもなく、ロンドンの東として記憶されているべきだと思うし、それが一番うれしいです。

 

頑張る人たち

 

どうして証券会社に入ったの?(その1)

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