世界のうまい物 -出雲編-
2014 MAR 9 17:17:32 pm by 東 賢太郎
奥出雲でいただいた食べ物シリーズです。
まずは仁多米でしょう。米食味分析鑑定コンクールで4年連続5回目の金賞受賞というブランド米で西日本の横綱とされているそうです。寡聞にして知らなかったのですが、どこでいただいてもその食感はなかなかのものでした。砂鉄を取ると土を流してしまうので土地が削れていきます。その跡地を昔から棚田(段々畑)にして米作にも充てているので、ここはコメの名産地なのです。とにかく水がいいのとミネラル分が豊富なようでおいしいです。
その仁多米で炊いた香茸(こうだけ)炊き込みご飯は絶品。黒っぽいのが香茸ですが食感も香りもよろしく、ポルチーニという感じです。パスタにしてもかなりいけるでしょう。栽培ではなく自然のものを採集するので貴重品だそうで、地元で食べてしまって他県には出回らないそうです。奥出雲町長が「ゴルフをしていて林に入ってしまった時、ボールを探したら香茸を見つけました。そっちのほうがうれしかったですね。」と冗談を言われるほど。よくわかります。
そこでいただいたお酒もとてもよろしいものでした。やはりお米と水の良さがきいていて「深山の香」なる奥出雲は簸上(ひかみ)の清酒はすっきりした口あたりで飲みやすい。このボトルもなかなかセンスがいいですね。
これはボトルからはなかなか中身が想像しにくいですね。D-269が何かと思ったら「どぶろく」でした。デザインセンスはこちらも垢抜けて格好いいと思いませんか。お味はお米の自然な風味が濃厚にあって野趣にあふれ、それでいて適度な甘みと舌触りは上品でもあります。我々が口々においしいおいしいと騒いだものですから、町長がお気遣い下さっておみやげにいただきました。恐縮です。
次に稲田姫神社にある姫のそば ゆかり庵の蕎麦御前です。出雲そばはやや太めでコシが強く、かなりアルデンテであります。それが3段重ねのわんこになっていて食べ応え十分。蕎麦の風味が大変よろしく、それと薬味との相性が絶妙でした。もう一つ堪能したのは野菜です。どれも「土の香りがする」ようで東京で食べているのは何なのだろうと考えるほどおいしかったです。おにぎりがちょっと冷えてしまったのですが、かえって仁多米のもちもち感が出て美味でした。
「皆美」ではランチをいただきました。小泉八雲をはじめ、里見弴、田山花袋、芥川龍之介、大町桂月、島崎藤村、与謝野寛・晶子夫妻、高濱虚子、志賀直哉、武者小路実篤、佐藤春夫、内田百間、尾崎士郎、川端康成などが来館とあります。部屋からの宍道湖のすばらしい景観はドイツ時代によく行ったライン川沿いのレストランを思い出してしまいました。庭園のある老舗でいただいた「鯛めし」は鯛と卵の白身黄身が団子のようになっていて独特のもので、東京で食べる鯛めしとはまったくちがいます。
ヨーロッパもそうですが、主食でないデザートにその国の食文化の奥深さが見て取れます。文化はお金持ちがいないと育ちませんが、食も舌の肥えたお客が長年かけて磨き上げるものでしょう。だから京都の和菓子、パリ、ミラノ、ウィーンのデザートはどれも洗練されておいしいのです。そういう基準に照らしても、出雲のスイーツは「そばぜんざい」「おはぎ」などどれも甘みを抑えた上品なもので、ここの文化度の高さが一流であることを確信させます。
おみやげはよくわからないのでA先生の言われるままにこれを買いました。來間屋生姜糖本舗の生姜糖です。砂糖と生姜の煮汁だけのシンプルな味ですが、どこかなつかしい。これが創業300年のワザでしょうか。この見てくれも江戸時代っぽくて好きですね。今回、出雲の産品の味だけではなくデザインセンスの良さもとても印象に残りました。東京どころか世界で通用するレベルと思います。
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中島 龍之
3/11/2014 | 1:14 PM Permalink
仁多米、初めて聞きますが、今後、気にしておきます。香茸は地元だけですか。「深山の香」「D-269」もいいですね。「鯛めし」も変わった感じが面白そうですね。「生姜糖」、今度行ったら買ってみます。