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小保方氏に見るリケジョとAO入試

2014 MAR 30 18:18:22 pm by 東 賢太郎

AO入試で入った小保方氏の論文が問題になっている。それがその入試制度の問題であると主張する論拠はない。それは40%は本を読まないらしい大学生一般の問題かもしれないのでという意味である。学力試験なしで入れておいてそういうことは起きないと信じることにも論拠はないだろう。

人様の大学に意見するのは控えるが東大の推薦入試も同じリスクを内包すると危惧している。平成28年度推薦入試について(予告)によると、

求める学生像(法学部) 

現代社会、とりわけグローバルな場でリーダーシップを発揮する
素質を持つ学生。すなわち、優れた基礎的学力を備えるとともに、
現代社会のかかえる諸問題に強い関心を持ち、実社会の様々な事象
から解決すべき課題を設定する能力、さらには他者との対話を通じ
て、その課題の解決に主体的に貢献する能力を有する学生。

とある。グローバルな場でリーダーシップを発揮する人が少ないのは認めるが、それは素質の問題ではないだろう。自分のクラスにもその素質がある人はいた。優秀な学生を入学させてだめにして出す大学側の問題ではないか。グローバルな場でリーダーシップを発揮したことのない高校の校長先生が推薦した学生が従来の入試制度で選んだ文Ⅰの学生よりも上だとする合理的な根拠がどこにあるのだろうか。

自分の経験からはっきり書くが、英語力もグローバルなリーダーシップも「読み書き算盤」の能力で足りる。それがある人にとってはやるかやらないかだけのことであって、やらないかやる場に就職しないで終わっているのが多くの東大法卒の現状である。国内既得権益で塗り固まった先に就職して学歴で食えると思っているのが大間違いなのであって、そういう就職先こそまっさきにグローバル競争で落伍するから自分もそうなれないのだという当たり前のことを教えてあげるのが国を代表する大学の仕事だろう。

証券業界で育った僕が銀行系証券に移籍してあ然としたことがある。詳しくは書けないが、株式というものをよく知らない、しかし天下の学校秀才であった人たちに「株をやれ」という上意が降りてくると僕の常識をこえた様々の驚くべき決定に至るのである。それをやってくれということで僕は野村證券から移籍させていただいたのだが、それはそうではないのだというご理解を得るまでに大変な時間を要したのは記憶に新しい。この東大の推薦入試は、外見的ではあるがそれと非常に似た感じがするのである。

逆に、読み書き算盤の能力がない人がそれ以外の一芸でグローバルリーダーになれる可能性は極めて低いだろう。というよりも、簡単にいえば、他国人のリーダーは読み書き算盤が非常によくできるのだから、下に見られて相手にされないだけという子供でもわかることだ。それが英語力の問題でもないことは以前のブログに書いたので繰り返さない。東大に関するかぎり選別という論点だけでいうならその能力を競う従来入試で必要十分であり、推薦入学制度は不要であるばかりかいずれ問題を孕むであろう。

私大のAO入試という制度はどういう理念なのかは知らない。一芸社員みたいなものなのだろうか。それとも、アインシュタインは読み書きが弱かったそうだが、そういう人を探そうということか。しかし、あえて読み書きが強くない人の中からアインシュタインを見つけ出そうというのはあまり効率の良い方法とも思えない。アインシュタインは物理の実験も赤点だからそこに理論物理学者の芽を見出そうというなら幾分かのロジックを見出すが、実験赤点生徒集合の中から彼が出るのは何千年に一度ぐらいではないか。やはり読み書き算盤ぐらいは全部できる生徒を選んだ方が早いんじゃないだろうか。

日本人のほとんどがベートーベンは聞こえなかったから偉大なんだと思っていることが先般の事件で発覚した。僕はこれを欠点フェチ(defect fetishism)と命名することにする。日本人は完璧な人は嫌いなのだ。聞こえないのに交響曲を書いた、赤点があったのに天才だ、いいじゃないかとなる。なにがいいか?欠点があるからだ。XなのにYだ、という図式である。X(欠点),Y(業績や属性)のミスマッチが大きい方がいい。小兵なのに強い(判官びいき)という古典パターンも内包し、人が(なのに)犬を噛むとニュースにするマスコミの習性も内包するから日本人の共感を得るには有力な手段である。

女なのに理系だ、これがリケジョであるらしい。ちなみにオックスフォードで化学専攻のサッチャー元首相やライプツィッヒ大学で物理学専攻のメルケル首相がアイアン(鉄)ではなくサイエンス・レディと呼ばれたという話は聞いたことがない。だから僕はリケジョは日本特有の語彙であり、欠点フェチの一部と解している。ということは女であることは欠点=Xに相当しているということになる。しかし、どうして女性であることが欠点ということになるのだろう。これを不思議と思われないだろうか?

まず理系とは何かを考えてみよう。文系、理系という区別は高等学校令(1894)による大学予科が第一部(法・文)、第二部(工・理・農)、第三部(医)に分かれていたように、日本の旧制高校の制度である。明治政府による富国強兵、官僚制の即戦力確保のためには合理的な区分だったと思われる。そういう必要のない欧米において文系、理系といったア・プリオリな大分類は存在しない。仮にそれらを直訳してarts course、sciense course とファジーに分けても別に誰も反対はしないだろうが、economics、 physics などと専攻をストレートにいえば済むのだから何の意味があるとも思えない。

この文・理という現代となっては学問的にも教育上もあまり意味のない大分類は現在も東大において旧制高校に相当する1、2年次の教養学部(駒場)で文Ⅰ(法)、理Ⅲ(医)などと進むべき専門学部で分類され、そのそれぞれが履修第2外国語によってクラス分けされる仕組みとして残っている。無意味なので英数国理社ぜんぶの入試を両方に課すことで選別の歪みを補完していると理解することができる。日本はこれまた特別で高校内申書を見ない。枕草子を知らない医者や万有引力の法則を知らない裁判官が出てくるリスクがあるのでブロックがかかっていると理解することもできる。

ところが、私大は文理区分に選別基準の差を設けてしまった。数学である。文系は読み書きだけで算盤がはずれた。だから文系、理系の差は、おおむね、数学をやる必要があるかないかということになってしまった。入試になく内申書も不問だから、極論だが四則計算が満足にできなくても大卒になれてしまう。しかも数学イコール計算ではない。論理だてて物事を理解したり説明したりする社会的能力の基礎の基礎であり、受験はその千本ノックみたいなものだ。その洗礼程度も受けずに大卒と言われても、それははっきり書くが、グローバルリーダーどころの騒ぎではないのである。

こういう教育環境の中にこそリケジョは生息する。女なのに数学ができる?X=女、どうして女が欠点なんだろうと書いた。違う!賢すぎて可愛いくないがいいじゃないかということだ。つまりXとYは逆なのである。数学ができるのに女だ、が正しいのだ。良く考えよう。女医、女社長、女子アナ、女流作家、女子サッカーと、美女、天女、才女、悪女は違う。理系女は語順が後者系列である。社長やサッカー選手ががたまたま女性だ珍しいねじゃない、悪い女だねと同じく「女」のほうが主役なのである。ふつうは可愛くないイメージだが可愛いのが出てきた、だから小保方効果でこの語が流行ったのである。

女同志はそんなことを誉めないだろうから言っているのは主に男と思われる。どうして数学ができることが普通は可愛くないか欠点なのか、それは自分より頭がいい女を男は一般に敬遠するからだ。しかも流行語になるということはマスコミが商売になるほどたくさん存在するということである。以上のことからロジカルに導かれる結論として、我が国は数学ができないがそれに疑問も抱いていない男性に満ちあふれているということ以外には考え難い。

文部科学省の平成16年度学校基本調査によると大学生(学部生)は2,505,923人おり、そのうち理科系(理・工・農・医・薬)生は28%である。その他は文科系であり日本の大学生の72%が相当する。大学院も含んだデータで国公立大生は全体の26.6%である。その文系理系比率はデータがないが72%を概数として用いれば約52.8%となり、日本の大学生の約半分は数学を入学要件としない私立文系生と考えられる。その男女比のデータは見つからなかったが上記私見を妨げる数字ではないと考える。

AO入試とはこの問題を加速する可能性のある制度ではないのだろうか???早稲田大学院と理研には非礼を承知で申し上げるが、小保方さんの行為は倫理観以前に「数学千本ノック」をしっかりと受けた人の思考回路が許容するものとはどうしても考えられないのである。科学に限らず今後の我が国の国際競争力や尊厳を憂慮せざるを得ない。AO入試や東大の推薦制度はやるならば慎重な制度設計を要すると申し上げたいが、それ以前に、やはりグローバルに活躍すべきリーダー予備軍である私大文系生も「疑問」を抱いてもらうべく入試に数学を課すべきと考える次第である。

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