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ネーメ・ヤルヴィのシベリウス2番を聴く

2014 APR 20 0:00:43 am by 東 賢太郎

今日はN響Cプロをききました。座席は一階中央10列目右寄りで、低弦がわずかに強めに聴こえる位置ですが、このホールはそのほうがいいです。グリーグ「ペールギュント組曲1番」、スヴェンセン交響曲第2番が前半で、ここまではまあまあでした。ペールギュントはあえてこれを聴こうということはないので実演は初めてです。「朝」は意外にオーケストレーションが厚い(厚すぎる?)という感じがしました。アニトラの踊りでは弦が良い音で鳴っていましたし、好演だったと思います。

2曲目のスヴェンセンは期待しましたがどうもメリハリの薄い平板な音楽で、部分的に美しいものの和声の起承転結にあまり説得力を感じません。第1楽章のリズムやフォークダンス風の楽想の利用などシューマンのライン交響曲を意識した感じもしましたが才能の差はどうしようもありません。1番の方が初々しくて好きであります。

さて後半は今日のメインです。シベリウスの交響曲第2番に涙が出るほど感動いたしました。久々にいただいた音楽のパワーに酔い、ここ数日の疲れが吹っ飛びました。今まで、70年のジョージ・セルの東京ライブを聴いた人に嫉妬していましたが、この演奏を聴けたことでもうそれから解放されるでしょう。

ネーメ・ヤルヴィはずいぶん録音があって我が家のCD棚にも相当あります。BISレーベルのシベリウスはCDというフォーマットが出たての80年代初めに「ダイナミックレンジが広いので音量に注意しないとスピーカーを破損する可能性があります」というウォーニングが黒いジャケットに書いてあったのが懐かしい。彼の録音は450タイトルだそうで、カラヤンやオーマンディーもびっくりの新記録じゃないでしょうか。

息子のパーヴォがやはり指揮者で出てきて、僕は確か98年ぐらいに出張で行ったロンドンで聴きました。そのときの牧神の午後への前奏曲がとても良くて、あれはかつて聴いたその曲の最高の演奏として今でも記憶に残っています。だから息子のイメージが先行していて、親父のほうはライブは今日が初めてでした。

シベ2のテンポはCDとほぼ同じで第1楽章冒頭から早めです。以前に シベリウス2番のおすすめCD(その2)に書きましたがそれは作曲当時の生き証人であるカヤーヌスのテンポに近いのです。これもそれに近いテンポのポール・パレー盤と父ヤルヴィの旧盤を僕が1,2位として好んでいるのはそこにある通りです。その演奏が眼前で聴けたのは最高の喜びでした。

指揮者は大別して2タイプあります。君臨型と仲間型です。校長先生型と生徒会長型といってもいいでしょう。前者はトスカニーニ、セル、ライナー、チェリビダッケ、ムラヴィンスキーなどですが時代に合わないせいでしょうかほとんどトキなみの絶滅危惧種と化しています。去年聴いたアントン・ナヌートにかろうじてその残り香を感じましたが、父ヤルヴィにもそれがぷんぷんしていて、まずそれにうれし涙であります。

僕は仲間型、生徒会長型の指揮者は不満なのです。パワハラでオケから訴訟されそうなカミナリ親父でないと指揮なんてできないんじゃないかと思わせるほどトスカニーニやムラヴィンスキーの演奏は素晴らしい。オケに「気」がピーンと張っているのです。「いいね」を連発してオケをのせるタイプ、そんなのは映画やアダルトの監督ぐらいはできるだろうがあの怜悧なカミソリみたいな緊迫感は絶対に出ないでしょう。とにかく近年、コンサートでそういうものを感じたことがないのがその何よりの証拠だと思います。

今日はそれがありました。ヤルヴィの指揮棒は胸から肩ぐらいまで小さくしか動かず、(おそらく)アイコンタクト、それから体の動きで指示しているように見えました。どことなく映像で見たR・シュトラウスの指揮姿を思い出します。それがほんのまれに大きめの指示が出たりします。終楽章のニ長調でドレミシドレ・・・の全奏でF#の和音を作る瞬間のトロンボーン、チューバにそれが出るなど彼が音楽の流れに何を重視しているかわかって非常に面白かったです。

CDもそうですが金管のffは強めで大層メリハリがつき、ティンパニのトレモロも荒れ狂います。これがうるさくなく、こういう曲なのだという説得力があるのが不思議です。特に第2楽章はその白眉で大変すばらしかった。金管、ティンパニに対しチェロとは完全に独立して動くコントラバスが浮き出て聴こえることでスコアが立体的に鳴るというのは初めての経験であり、なるほどそうだったのかと納得です。第3楽章中間部のオーボエに独奏チェロがからむ美しい部分もそうです。

終楽章も基本的にインテンポで外連味がなく、小さい動作のままで激することなくオケだけが過熱していく様。これぞ君臨型!!将校が大軍を率いるようであり、ナポレオンの行軍かくやという光景であり、これぞ男の憧れ。ただただ「格好いい」のです。女性指揮者も活躍する時代になり、それとともに生徒会長どころかオトモダチ型まで現れた今日この頃、76歳のこわもて親父が「気」の支配で振る指揮棒には絶対に男にしかない権力の光が灯っていました。

音楽は姑息なギアチェンジやら減速して安っぽい盛り上げを狙うような手管は一切なく、堂々と王道を進んで最後のDの和音に登りつめ、ヤルヴィはその全力で鳴らされている音を両足を一歩前に進めて断ち切りました。いや、この重み、すごいものです。2番はこういう曲なんだという威厳ある意志とメッセージにオケがコントロールされているようで、当方もいつもは気になる弦の美感やらバランスの良し悪しなど意識からはじき出されていました。

久々に出会った本物中の本物。今日はシベリウスだけで大満足です。

(こちらへどうぞ)

シベリウス交響曲第2番ニ長調 作品43

 

 

 

 

Categories:______シベリウス, ______演奏会の感想, クラシック音楽

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