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グローフェ グランド・キャニオン組曲

2014 SEP 5 2:02:13 am by 東 賢太郎

______米国放浪記 

米国放浪記をお読みいただいた方は是非これをお聴きいただきたい。

シカゴのクラシックの楽団でヴァイオリンを弾いていた男が黒人のデキシーランド・ジャズと出会い、その魅力のとりことなる。彼はそれをニューヨークに持ち込みし大ヒットさせる。このバンドが後のビッグ・バンド・ジャズの元となり、スウィング・ジャズへと発展して行く。この男は後に「ジャズ王」と呼ばれるが、本名をポール・ホワイトマンという。

ホワイトマンは低俗とされていた当時のジャズをクラシックと融合しようと図る。そこで、楽譜屋の店頭で学校も行かずにピアノばかり弾いていた24歳の不良に曲を書かせる。不良が18日で書いたピアノ楽譜はホワイトマン楽団のアレンジャーによってピアノとジャズバンド用に編曲され、1924年にニューヨークで初演された。

この初演はストラヴィンスキーやハイフェッツも聴いていてセンセーションとなる。

これがシンフォニック・ジャズの名曲 「ラプソディ・イン・ブルー」 の誕生物語である。不良はいうまでもなくジョージ・ガーシュインであり、アレンジャーがファーデ・グローフェ(Ferde Grofé, 1892年3月27日 – 1972年4月3 日)である。ガーシュインは仕立て屋の息子だったがグローフェは音楽家の息子で、ピアノを始め多くの楽器を弾けた。

グランド・キャニオン組曲(1931)はグローフェの代表作であるどころか、彼の名はほとんどの人にはこれで記憶されているだろうから「名刺代わり」だといえる。

1.日の出

2.    赤い砂漠

3.山道を行く

4.日没

5.豪雨

からなる極めてわかりやすい曲だ。第3曲のロバのポッカポッカをどこかで聞いたことのある人は非常に多いだろう。正直のところ少々軽い極彩色の絵画的音楽であり、ハリウッド的であり、ディズニー映画にも使われた。シリアスな音楽ファンには色モノ扱いされあなどられる傾向がある。ちなみに僕もついこの前までは 「風呂屋のペンキ絵」 と評していた。

ところが、アリゾナ旅行から帰ったばかりの気分になってさっきじっくりと聴きかえしてみると意外にいいではないか。ラヴェルの「ダフニス」、レスピーギの「ローマの祭り」、R・シュトラウスの「アルプス交響曲」、デュカの「魔法使いの弟子」、ホルストの「惑星」が聴こえる。豪雨がやんだフィナーレのトロンボーンはエロイカ交響曲の最後の高らかなホルン吹奏みたいだ。特に「日の出」は曲想も管弦楽法もいい。アメリカ音楽の良心がいっぱいに詰まっている。何度も聴いてしまった。これはアーサー・フィードラー盤だ。

僕が持っているCDはユージン・オーマンディ / フィラデルフィア管弦楽団、レナード・バーンスタイン/ ニューヨーク・フィルハーモニー管弦楽団、自作自演(ロチェスター・フィルハーモニー管弦楽団)だがどれもいい。オーケストレーションが抜群にうまいのでちゃんとやれば聴けてしまう。オーマンディ盤、バーンスタイン盤はどちらも高性能オケによる文句なしのシンフォニックな名演である。

 

4909346008212僕は自演盤に魅かれている。まず「日の出」が最高に素晴らしい。音楽自体が日の出の陽光と一緒に輝きを高めていく間合いがツボにはまっている。「山道をゆく」のテンポだが、すごく遅い。その後速めに演奏される慣習になってしまったようだが、僕はロバがよろよろと「よいしょ、よいしょ」と歩くこれが好きだ。管楽器のグリッサンドがなんともいえず「リッチ」でユーモラスである。この場所にいた時のあの雰囲気にひたれる。米エヴェレストの誇る35mm磁気フィルム録音(1959年)をSACDにした音は素晴らしくリアルであり文化遺産ものだ。

(補遺、16 June17)

モートン・グールド / ヒズ・オーケストラ

たいへん素晴らしい録音を知った。楽団の実態が不明だが間違いなく一流の団体である。廃盤なので仕方なく、これのためにRCA Living Stereoの 60枚組セットを買った。その価値はある名盤だ。第一曲で日の出が輝きをぐんぐん増して、ついに陽光が燦然と輝く ff をこんなに見事に描ききった演奏はない。1960年2月19日にニューヨークのマンハッタンセンターRCAビクター・ボールルームで行われた録音の優秀さは特筆もので、管弦楽法のイフェクトを様々な録音手法で3トラック・テープに落とし込むRCAエンジニアたちの技術は素晴らしい。モートン・グールドMorton Gould, 1913 – 96)はニューヨーク生まれで7才で作品が出版された神童だった。ルロイ・アンダーソンと同世代で似た畑の作曲家、編曲家、ピアニストだがもう少しポップスに近いイメージがある。悪く言えばアメリカ色丸出しだがジュリアード音楽院卒でクラシックの本流を学んでいるのだから何でもできる。スコアに封じ込められたグランド・キャニオンの威容を音盤から立ち上らせようというグールドとエンジニアの好奇心と執念には敬意を表したい。そういう作品はもはや風呂屋のペンキ絵ではないのである。現代のデジタルなど及びのつかない味わい深さとディテールのクラリティを併せ持った絶品でありクラシック入門はこういう一流の音をPCなどでなくオーディオ装置で味わっていただきたい。そんなちょっとしたことで人生が変わるかもしれない。

(おまけ)モートン・グールドの名はあまり知られていないが、僕の世代の皆さんはきっとこの曲に聞き覚えがあるにちがいない。

グールド作曲「パヴァーヌ」だ。どこで聞いたっけ? そう、シャボン玉ホリデーのBGMだ・・・

いい時代でしたね。

 

(追記)

アメリカ音楽の楽しみをさらに味わいたい方はぜひこちらもお聴きください。

コープランド バレエ音楽「アパラチアの春」

 

 

 

 

 

 

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