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頑張らない人が報われる社会

2015 MAR 6 10:10:40 am by 東 賢太郎

先日TVで元経産省で経済評論家の岸 博幸氏が「いま女性が結婚すべき男の3条件」をあげていた。それによると、

①直感で動く ②先例を無視できる ③ヤンキーでオタク

だそうだ。なかなかいい線と思う。①はどの分野でも必須の能力だし②は彼が官僚経験者だから特に思いがあるのかもしれない。ヤンキーは知らないが「オタク」を入れたことは大賛成だ。悪い意味に使われるが、人間の大多数を占める凡人が異種、異能の人々を揶揄した用語と感じる。トーマス・エジソン、ヘンリー・フォード、豊田佐吉、松下幸之助、井深大、ビル・ゲイツ、スティーブ・ジョブズみんな少年時代は立派なオタクであり、同時に持ちあわせたスケールの大きさで大輪の花を咲かせた人たちだ。

普通の人が世渡りのうまさで生きられるのは万事が予定調和で満たされる平時の話である。一等国の通貨が一気に40%も暴騰・暴落したり、国が潰れたりするかもしれない時代だ。予定調和はおろか、来年世界経済がどうなっているか誰もわからない状況で、寄らば大樹の陰という選択はない。不倒不滅の大樹に見えるものこそ先に朽ちて倒れる可能性すらあるからだ。

世界貿易に参加した中国がたった10余年で5億人がスマホを持つに至る時代である。2015年には中国のインターネット利用者は6億人となり、ネット利用者数は圧倒的な世界第1位でランキング2~10位の9カ国を合計しても及ばなくなる。何度も強調するが、ゼロサムの世の中で中国が吸い取った富も職場も他国には戻ってこない。10年前の欧米や日本の「大企業」こそ失う張本人で、そこにまだ成長があるとカン違いして人が集まれば10年後は「才能の墓場」と化しているだろう。

頑張った人が報われる社会

頑張った人が報われない社会

と書いてきたが、「頑張らない人が報われる社会は、そのような世界経済の不確実性、あるいは最近はやりの表現を使うなら資本主義の変質・衰退によって、どの国家がどんな政策を試みようが、経済に内在する原理によって根こそぎ無くなっていくだろう。まして、それを促進しようという政府、政党は弱者救済を謳いながらかえって弱者の生存力をさらに弱くするだろう。

なぜなら、そこでリスクを取らない人、動かない人、決断しない人、寄らば大樹の陰の人は安全だというのはもはや神話になるからだ。自分は動かなくても地面の方が動いていって、気がついたら立っていた場所は危険地帯だったということになりかねない。動かない人は感性、感度も鈍っていて、地面の動きには気がつかない。むしろまっさきに犠牲になる人たちだ。

一方、オタクで動かない人はまずいない。自分の好きなことへ向けて、周囲がどうあろうと勝手に突ききすすむ性質の人間だからだ。これからは彼らの生存率の方が高い。結婚相手にオタクを選びなさいという岸氏は正しいと思う。①直感で動く②先例を無視できる、はオタクにとっては当然のことでもあるので自明の条件だ。

国税庁の企業生存率統計によると、50年生き残る企業は0.7%しかない。これは一理あって、オタクであった創業者がハンズオンで指揮するのは長くて30年程度だ。そこで世代交代がおこり、創業者の個性によってではなく彼が築いた「ぴかぴか光るブランド」に魅かれて入社してくる人が多数派になる。その「ブランド入社組」が管理職を占めるのがおよそ20年後だ。それが創業50年後の経営の姿なのである。

ちなみに、オタクは「ブランド」では就職を決めない。自分のしたいことができるかどうかが最大の決定要素だから、仕方なく入っても辞めてしまう。その結果としてブランド企業は「ブランド入社組」がだんだん優勢となり、「成績優秀な普通の人たち」ばかりの集団になる。オタクにはますます魅力のある職場ではなくなってしまう。

そうして創業者が退くころには普通の人の経営ガバナンスが優勢となり、経営陣のどのひとりも創業者に匹敵する人はいないという状態になる。リーダー不在ゆえに誰もリスクを負わない共同統治体制が好まれ、現場にいるオタクの提案を評定(ひょうじょう)する会議体になり、「やらない理由」「できない理由」を探すのが仕事になる。

1995年からのデフレ経済は小田原評定専門の経営陣には福音のような環境だった。失点しないことが大事というゲーム環境だ。ブレーキを踏むコストカッターとコンプライアンス・オフィサーばかり出世し、創業者の衣鉢を継いだオタクやアクセルを踏む人はむしろ体よく排除され、「Sクラスのベンツに1000ccのエンジン」という車ばかりになってしまった。

日本という国はできない理由を探すのが得意な人が圧倒的に人口比の多い国である。これはたぶん江戸時代に優勢となった遺伝子で、明治維新でやや後退したが、太平洋戦争の敗戦で完全復活した。だから国策として、できる理由を探す人、つまり経済のドライバー、牽引車となる属性の人を大事にして育てないといけない。

私見では、大学教育や大卒という肩書は根底から見直されるべきだ。先生の失業対策で作ったような大学が入試のバーを下げて学生というお客さんを集めるナンセンスな行為は、就職できない大卒を増やして若者を食い物にするだけだ。学問の府としての大学は存在すべきだが、これからの世界経済環境は「高楊枝の武士」は必要としない。

我が国が中国に食われずに食っていくために何をするか?徳育と職業教育しかない。中国人に負けない「手に職」をつけ、これから世界を席巻するだろう「日本人の徳」を備えた人を作れば怖い物はない。職業教育には、エンジンになる経営者を育てる教育も含まれる。明治時代の洋学の延長ではないものを教える学校で、「藩校」のイメージに近い。

僕は1997年のダボス会議に出たが、そこでビル・ゲイツが「これからの時代は、どこの国に生まれたかではなく、何を学んだかで生涯年収が決まる」と予言していた。その通りの21世紀になってきている。大学教育は米国ですら変質を迫られ、スティーブ・ジョブズが大学中退であることがそれを象徴している。欧米の学者をたてまつる翻訳・コピペ文化の日本の大学教育がいまのままでいいはずもない。

理想的なのは、戦争を経験した世代、つまり80才代の経営者が藩校を作り、自らの事業体験を教え、奨学金を与え、人脈を継承させ、すぐれた新規事業プランを無から生む人材を育成することだ。未来の経済成長のエンジンとなる人材が学ぶべき先生はもはや大学教授でもなければサラリーマン経営者でもない、すぐれたオーナー経営者だ。

生きるか死ぬかの時代を勝ち抜いた彼らの体験こそ今の学生が里程標にするべきものだ。なぜなら無から有を生み事業化したプロセスにこそ価値を生み出すすべての英知が凝縮しているからだ。それを真似るということではなく、そのエッセンスから不確実な時代を生きる知恵を抽出し敷衍し実行する。胆力が必要なうえに高度に知的な作業でもある。少なくとも、それができる人が失業するということはない。

日本には欧米と違ってすぐれた徳をもったオーナー経営者がたくさんおられる。欧米が強欲という気はない、それは資本主義で当然のことだ。そうではなく、日本的な徳というのはその名のとおり日本独特のものであり、松下幸之助や稲盛和夫のようにそれを伝えることを私財で行動に移された方々も多い。彼らから資産税をまきあげて、事業経験のない官僚がその金を使うより彼らが体験を次世代に継承するために使った方が事業をやりたい若者には役立つだろう。

藩校の優秀な卒業生は、オーナーの企業の幹部候補生になるか、オーナーが起業の出資者つまりエンジェル投資家になってくれる。それが卒業証書になる。強烈なインセンティブになって競争原理が働くだろう。就活など無縁な学校になる。そんな学校があったら、まず真っ先に集まりそうなのがオタクだ。オタクを教える元オタクの先生も集まる。その集団こそすでに魅力的な企業の種だ

くりかえすが、オタクこそが21世紀の経済を牽引し、国の宝物となる人材、結婚相手に選ぶべき人材なのだ。資金のない彼らが資本家に直結する場が与えられ、資本家はエンジェル投資家として長期的にリターンが得られる。卒業生がどこに就職したかではなく、何人が自社を上場させたかが藩校のステータスを決めるようになるだろう

これは35年実業をやってきた者としての直観である。

こんな藩校が増え、世の中に認知されてくれば、日本経済は21世紀にわたって競争力を維持できる。リスクを取らず「いかがなものか」ばかり言うつまらない人が支配する世の中は変えられ、頑張る人が報われる社会がやってくる。それどころか、21世紀のトーマス・エジソン、ヘンリー・フォード、豊田佐吉、松下幸之助、井深大、ビル・ゲイツ、スティーブ・ジョブズが日本から出ることだって充分に可能性があるだろう。

 

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