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プログラム・ノート没の原稿

2017 APR 8 16:16:15 pm by 東 賢太郎

いま5月7日のライヴ・イマジン演奏会のプログラム・ノートを書き終わりました。僕のルーティーンとして、内容が決まるととりあえず一気に書き、しばらく置いて忘れたころ読みかえして直します。ブログもそうです。ところが今回は読みかえしで全面的に気に入らなくなって最初からやり直しました。あんまりないことです。

さっきジュピターの自筆譜ファクシミリを見ていると流れを直したのは2か所ぐらいしかない。凡人は文章すらこんなに直すのになんてこった。頭にテープレコーダー(古いかな)がありますね彼は。ここはピアノがないとむりだよねという所はありますが、試し弾きしながら書いたらこれやめたという部分が出てきてああいうきれいなスコアにならないと思うのです。やっぱりテープが流れてる。すると、えっ、あんな音が頭で鳴っちゃうの?となって、ぞっとするんです。

彼は楽譜の一番うえ3つにヴァイオリン2部とヴィオラを書いてチェロとコントラバスは一番下に書く。これは今的にはヘンですよね。それでサンドイッチの具のところにフルート、オーボエ、ファゴット、ホルン、トランペット、ティンパニと降りてくる。ここは今流だ。未完の曲を見ると、弦だけまず書いて、それもソプラノとバスから書いて、後でその他を加えてます。内声部は和音の、木管金管はカラーリングのグラデーションをつけるという感じで、クラリネットを入れる入れないもそういう作業の一環だから気軽にできたんでしょう。

ということはテープはスコアの最上段と最下段、第1ヴァイオリンとバスか。これはシンプルな2声、バッハのインヴェンションの右手左手ですね、アルベルティ・バスというより。それが2-30分まるごと収録されたテープを流しておいて、つぎにささっと書きとる。僕らもジュピターは覚えてますが見ないで書けますかとなったらお手上げです。第2楽章のb♭、d♭、a、cなんて怖い音がテープで一瞬だけ鳴って聞き取って書くソルフェージュ能力。作曲家の方々にはあたりまえでしょうが、凡人には不可知の領域ですね。

彼は歌い手や聞き手の能力をぱっと見ぬいて、喜ぶようにかいてやるんです。パリの聴衆はこんなもんさ、ここでこう書けば絶対拍手もらえるよ、最後はこう盛り上げれば一丁上がりさみたいなところがあって、前にTVで欽ちゃんことコント55号の萩本欽一さんがかけだしのころ浅草のフランス座というストリップ劇場の幕間のコントを受け持っていて、客はそんなもん見に来てないからぜんぜんうけなくてあみ出したという策がそんなのだったことを思い出しました。

それをサービス精神という人もいるけれど、営業マンもおんなじで、お客が喜ばないと何だって売れないからそれは一種の芸であって、では何をしたらいいか相手の顔から瞬時に見ぬけるかというとできる人はできるしできない人はできない、そういう性質のものです。サービス精神があれば何でも売れるわけじゃない。マーケティングセンスです。モーツァルトはそれがものすごかったわけですが、引き出しにたくさんネタがあって自由自在に出し入れできた、そういう感じがします。

こうやってモーツァルトの話をしていていきなりストリップ劇場だ欽ちゃんだとやるとほとんどの人は目が点になってしまって、なんだヘンな人だな頭おかしいのなんて顔をされます。こっちはまじめにそう思ってる。かみあわないんです。こういうのも、わかる人にはわかるんでわからない人にはわからないんですね。だから、あっ、お呼びでない、こりゃまた失礼しましたってんで終わりです。

プログラム・ノートだからストリップ劇場の話なんて書けないし、そういう不親切な態度じゃまずいだろうと、そういう気分にだんだんなってきて、とうとう書き直しになったのです。それでこっちに書いちゃいました。いいのになったかどうかあんまり自信はないですが自分では気にいってます、それは仁義でブログにはしませんからどうぞ会場にお越しください。

 
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Categories:______モーツァルト

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