ブリテン 青少年のための管弦楽入門 作品34
2018 JAN 14 16:16:47 pm by 東 賢太郎

今は知らないが、僕のころ子供向けとされたのがこれと「ピーターと狼」、「動物の謝肉祭」である。近い世代の皆さんはきっと音楽の授業で聴かされたはずだ。英国の作曲家ベンジャミン・ブリテンがBBCの音楽教育映画 “Instruments of the Orchestra” (オーケストラの楽器)のために1945年に作曲したもので、The Young Person’s Guide to the Orchestra – Variations and Fugue on a Theme by Purcell(青少年のための管弦楽入門 – パーセルの主題による変奏曲とフーガ)が作品名である。
クラシックを鑑賞するにはオーケストラの楽器を知ることが必須だ。この曲は子供に覚えさせるには良く書けていて、ほぼ全部の楽器の異なる音域の音色、典型的なフレージングをシステマティックに暗記できるだろう。しかし僕はこの曲のお世話にはならなかった。中学の音楽の授業。曲は出だしがえらい格好良く(ヘンリー・パーセルの主題)これはいいぞと思わせるが、そこからが高級?すぎてよく理解できなかった。曲想を覚えられず、ティンパニでド・ミ・ソが出るのはわかったが、だからどうしたのだった。
これが原曲のヘンリー・パーセルの劇付随音楽『アブデラザール』の「ロンド」の主題による変奏曲とフーガである。
「パーセル(Henry Purcell、1659 – 95)は英国を代表する作曲家だ」
「へえー」
「この主題、どうだ、いいだろう?ドイツ人じゃないぞ英国人の作品だよ、それも J.S.バッハ、ヘンデルより26才も年上の人なんだぞ」
「そうなんだ、でもそれなのにどうして英国にはモーツァルト、ベートーベンが出なかったの?」
「いい質問だね、いいかい歴史はね、最後に勝てばいいんだよ」
「どうして?」
「勝った者が歴史を書くからさ」
この音楽を言葉で書くとそういうことになる。
パーセルの主題で始まる
ブリテンのオリジナルな主題が提示される
パーセルの主題とブリテンの主題の二重フーガに移行する
パーセルの主題が回帰して堂々たる終結となる
歴史は書かれた。自国の子供たちに知識だけでなく誇りも希望も与える。これが本物の智者である。
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