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ベンチャーズ残照(その2)

2019 JUL 25 13:13:58 pm by 東 賢太郎


ベンチャーズのアルバム、The Ventures in Spaceは別稿にした(ベンチャーズ 「アウト・オブ・リミッツ」)。2曲目のOUT OF LIMITSはそこからのピックアップである。

このEP盤も1965年発売。覚えてないが当然すぐ買ったはずだ。当時、米ソは核開発の先に宇宙開発競争を展開し、1961年に大統領JFケネディは60年代中に人類を月面に到着させるとだ驚くべき宣言を世界に向けて発した。1969年7月20日にアポロ11号がそれを初めて果たし、中3の宇宙少年だった僕はテレビ画面の前で震撼した。翌年の大阪万博では持ち帰られた月の石を見ようとアメリカ館に長蛇の列ができる。我が家も4時間並んでそれに加わったが、このアルバムには当時のアメリカの宇宙への熱い息吹がこもっていると同時に、時代を熱く呼吸していた自分の息吹も感じる。

ビートルズに比べるとベンチャーズは下に見られる。音楽的には同感だが、いやそうではないと頑張る僕のような人間もいる。「女に好いた惚れた」「反戦」に徹したビートルズが The Ventures in Space みたいな硬派なアルバムを作ったろうか?ありえない。ビートルズはナンパのリベラルのアイドルなのだ。そこにはかつて七つの海を支配した栄光が残照と化し「オスの原理」を喪失しかけていた英国、かたや先端科学を武器に世界の覇者になって宇宙にまで打って出るぞという「ギラついたオス」であった米国の姿が透けて見える。いま思うとマッシュルームカットは「メス化」のシンボルだ。ビートルズは好きになったが、あれだけはやる気はかけらもなく、ナンパな奴らは骨の髄まで馬鹿にしていた。野球をやったからではなく、僕は本質的にウルトラがつくぐらいの硬派なのだ。

別にベンチャーズに思想があったわけではない。チャラくて軽いウェストコーストのノリの域を全く出てはいない、売れれば勝ちのアメリカンな単細胞ぶりは微笑ましいばかりだが、国を誇れないビートルズが麻薬、サイケデリックの世界に逃げて行ったのに対しそういう爛れた「黒っぽさ」がない。ストレートに「強い俺が勝ち」。馬鹿だが「オスの原理」とはそういうものなのだ。トランプ大統領の半端でない支持者層を見れば半世紀たった今だって米国はそれだということもわかるだろう。正確には、そうでなければともがいていると言うべきであって、半導体の次は高速処理の5Gなのだ。それがAI世界戦争のキモであり、ビッグデータを支配し、高精度迎撃ミサイルの命中確率をも左右する。だからファーウェイをぶっ潰しに行くのである。仮想敵国は完全に中国である。

MARINER NO.4

MARINER No.4(マリナー4号)はちょうどこのころ、1965年に初の火星フライバイと火星表面の画像送信に成功した探査機であり、送られてきた火星表面の接近画像はクレーターだらけの死の世界で人類に衝撃を与えた。オーソン・ウェルズのラジオドラマ『宇宙戦争』が全米で聴衆にパニックを引き起こしたが、「タコのような火星人」なんて実はいないのだと人類の夢を粉々に打ち砕いた探査機に「夢のマリナー号」というのもジョークならなかなかのセンスだったが単なる科学音痴であろう。

TELSTAR 1

上記のジャケット写真。テルスター(TELSTAR)のスペルも間違ってるのはご愛敬だ。テルスターとはNASAが1962年に打ち上げた通信放送衛星の名前で人類初の欧米をまたぐテレビ中継はこれを使って成功したのである。英語の問題以前に常識的にTEL+STARとわかりそうなもんだが、理系の会社である東芝もそういう理系的な興味のない人が東芝音楽工業ではジャケットを作ったり製品管理をしていたんだろう。まあどうでもいいが、アメリカは税金で堂々とそういう超高額の物体を飛ばしてでも常に世界のNo.1でいようという国だという話はしておきたい。トランプが言うまでもなく、アメリカ1番、アメリカ・ファーストの国なのである。時代の空気とはいえロックバンドさえもがこういう人工衛星名のメカな音楽をやって大衆が受け入れてしまう国なのだ。あずさ2号というナンパな歌はあったが、皆さんサザンオールスターズが小惑星探査成功をたたえて「はやぶさ2号」なんて曲をやって日本国でうけると思うだろうか。アメリカ国民がみんな科学好きなのではなく、みんな強いアメリカが大好きなのだ。「どうして2番じゃダメなんですか」なんて野党の変なおばさんが言ったりしないのである。アタシって女ね、なんでもハンタ~イなのよ、だからイチバンというのに反対しただけなのよ、なんて軟弱な屁理屈で許してしまえる話じゃない。

アメリカは第2次大戦でナチスドイツを叩き潰したが、ナチの優秀な科学者たちは殺さずに迎え入れて核兵器、ロケット製造の最先端技術を手に入れた。是々非々なのだ。「オスの原理」の前に「ナチはいかがなものか」なんて馬鹿はいないのである。その高度な結実であるアポロ計画など宇宙開発が軍事技術開発と表裏一体であることは論を待たない。かたや我が国はどうだ。日米半導体協定は1980年代に最強レベルに至ったわが国半導体業界をナチス並みの敵意で米国が叩き潰しに来たわけだが、そこで大戦争があったし国威をかけた業界の呻吟も知ってるわけだが、結果論としてはあっさりと韓国に座を奪われて目論見通りに弱体化されてしまう。「雌雄を決する」とは冷徹なものであって、どんなに努力や苦労があろうと負けたらおしまい。そういうものなのだ。技術者がカネにつられて流出して韓国に教えてしまったわけだが韓国も「オスの原理」で是々非々な国なのだ。それを許してしまった国も経営者も「科学技術=国防力」であるのは古今東西の世の真理であって真理の前にはアメリカも北朝鮮もナチスドイツもないことをどう思っていたんだろう。アメリカさんの核の傘=国防力は不要、とソンタクでもしたんだろうか。

そういう「国」という根幹の本質的な思想において、僕はビートルズが出てきたころの斜陽の英国以上に、はっきり書くが、いまの日本国に木の幹が腐食し始めたような嫌なものを感じる。例えばだ、科学技術力にはクラフトマンシップの要素もあるから数学力だけではないかもしれないことは留保したうえで、データをお見せしたい。国際数学オリンピックで日本は一度も優勝したことがない。2009年の 2位が最高で、今年は13位である。1位はアメリカと中国。そして3位が韓国、4位はあの北朝鮮である。1989年以降で優勝はアメリカは4回だが、中国はなんと20回でぶっちぎりである。韓国も12年、18年と2回優勝している。09年以降で北朝鮮は5位以内に4回入ったが日本は2回だ。国際物理オリンピックも今年の優勝は中国・韓国、3位ロシア、4位ベトナムで、日本はこっちも同じく13位である。

要は数学も物理も国として中国、韓国にぼろ負けなのである。政治的要素も絡むノーベル賞では先行しているが、理系の肝心かなめである数学・物理でこれでは時間の問題だろう。この戦績が来年の東京オリンピックだったら国を挙げた大騒ぎになるのに数学だとどうしてならないんだろう?大学入試に数学がないから男の半分は数学ができない。ものづくり、技術立国をうたいながら、支配層は国際的にトップクラスの理系感度が鈍い国なのだ。日本人はこの事実を直視しなくてはいけない。それなのに、奇怪なことに、なぜか日本のマスコミはこれを報じない。むしろ「全員がメダルを獲得」と持ち上げている。馬鹿が馬鹿を騙す天下有数のくだらない番組、「東大王」のノリだ。「でも頑張ったんだからいいじゃない、メダルは取ったんだしさ、だって全員ってところがなんかいいよね、和の力だよね、ほめてあげたいじゃないの、ほめないあんた、なんかおかしいよ日本人として」。おかしくても結構、おかしいのはそっちだ。要は13位なんである。この風潮が「どうして2番じゃダメなんですか?」を産むのである。この感じ、どこか「みんなで仲良くゴール」の似非リベラル風じゃないか。文科省が国民に知られたくないのか?気づかせぬまま日本に2番になってほしい忍びの者がいるのか?

さて音楽にいこう。

3曲目のテルスター。大好きで何十回もきいて頭に焼きついてるが、久しぶりにサビの部分の和声をきいているとA-F#m-D-Eの進行なのだ。このバスはハ長調だとドーラーファーソーであり、なんとブログで何度も指摘してきた「アマデウス・コード」(僕が命名したものだが)ということに気がついた。ここに分かりやすく書いたので是非お読みください。

モーツァルト「魔笛」断章(アマデウスお気に入りコード進行の解題)

高校に上がるとストラヴィンスキーに行ってずぶずぶになってしまったが、やがてちゃんとモーツァルトに行きついたのはこんな意外な伏線があった。テルスターが大好き=モーツァルトが大好きになる運命だった。やっぱり僕の音の嗜好はベンチャーズから来ていると確信する。ロックっぽい部分、たとえばチョーキングみたいなギターテクではない、音楽の「味」みたいなところ。コード進行やリズムやサウンドというところで「ささっているもの」があって、やがてそれと同じものをクラシックの森の中で探すようになって、そうするとあるわあるわ、続々と宝物が発掘されていったという感じが近い。ということはベンチャーズはビートルズに劣るもんでもない、音楽のちゃんとしたエッセンスは踏まえている立派なものだ。耳も鍛えられ、サウンドの快感につられて同じものを耳タコまで聴けば音高まで記憶してしまうから絶対音感に近いものができた。ボブ・ボーグルのベースをいつも集中してたどっていたからバスから和声進行をつかむ無意識のレッスンとなっており、ポップスなら何でも一度で耳コピでピアノで弾けるようになった。しかもベンチャーズはピッチがとても良い。「ブルー・スター」などロックにあるまじき美しさである。演奏側の耳が良い。良い音楽を若い頃に脳に刻むのはとても大事だと思う。

 

(ご参考)

理系の増員なくして日本は滅ぶ

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Categories:______サイエンス, ______ベンチャーズ, 若者に教えたいこと

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