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国家がリスクを取らないと東京オリンピックは危ない

2020 FEB 24 23:23:43 pm by 東 賢太郎

みんな総力をあげて必死に戦っている。どこかで聞き覚えた声明だ。

 

1942年(昭和17年)6月のミッドウェー海戦。霞が関の海軍省・軍令部では祝杯の準備をして戦勝報告を待っていたが、飛び込んできたのは空母4隻を失う予想外の知らせだった。開戦以来初めてとなる大敗に直面し、これをどう発表するかをめぐる調整は難航を極めたという。報道部は「空母2隻沈没、1隻大破、1隻小破」とする発表文を起案したが、作戦部が猛反対した。3日後に発表された味方の損害は「空母1隻喪失、1隻大破、巡洋艦1隻大破」に減らされた。一方で、敵の損害は「空母1隻の大破」が「2隻撃沈」に水増しされ、「沈めた空母の数で日本の勝ち」と発表された。

 

 

新型コロナウィルスに関する大本営発表が出ないことを願うが、そもそも英国籍で米国がオペレートし、イタリア人船長の指揮下にある大勢の船員は多数国籍という制御が困難な条件下で、船員の管轄権がどこまで日本にあり、ことばと文化の差を御してどこまで乗務員の指導と船内隔離ができていたのか?報道は乗客の検査情報ばかりで、船長や乗務員は石ころであるかのごとく顔も肉声も健康状態もほとんど知らせない。それは制御できないファクターの存在を、いずれ巻き起こる議論の俎上にあげたくなかったためではないか。僕は2度クルーズ船に乗ったが、乗客同士の感染よりも「かくれ陽性」の乗務員が懸命に職務を履行するあまりに「善意で」多数の乗客と濃厚接触してしまったことを大いに疑う。

乗務員の接触を防ごうとすれば乗客への食糧や薬の配布などライフラインが脅かされる。とすればである、防ぐのは病死か餓死かの究極の選択であり、国民の誰が見ても接触はやむなしの判断になったであろう。であれば、そう国民に情報開示すればよかったのだ。国民は「清潔、不潔ルート」写真でごまかせると思われたのかどうか、橋本副大臣閣下のご真意は不明だが、たぶん彼に限らず政治家はネット民を甘く見ているだろう。違う。稚拙な書き込みであろうと不特定多数の閲覧で精度が徐々に増し、炎上すればするほど「集合知」になってどんどん真相に接近していく。

政治家や御用マスコミが何を隠そうと集合知のフリーマーケットである株式市場は欺けないのはグローバルにわたって証券市場の歴史が証明済みだが、今やネットが情報のグローバルフリーマーケットになっていることが新たに証明されつつある。その認識に最も鈍感なのが政治家だというなら日本国は危機的だ。テレビはというと、「騒ぎすぎるのもどうか」などと根拠も責任もなく発言する意味不明の脳科学者や、間違いなく新型コロナウィルスについてまだ何もわかっていない「専門家」に御用発言させている。情報が汚染されてる。ネット社会では、大本営発表こそが最も人心を不安に陥れるのだ。国民は、このウィルスを体内で殺す薬はないし今後も現れないという事実を冷静に理解し、「とにかく罹患しない」以外に身を守る手立てはない自覚のもとにここから生活すべきである。

気の毒なことに命令で乗船した職員や配下の検疫官がすでに感染してしまっている厚労省は、この事実によって船上に水も漏らさぬ隔離も防御策も存在していなかったことを我が身をもって証明してしまった。現場が限界まで頑張っていることを国民は知って同情もしているし、では幹部は何をしているんだという気持ちがこのままだとどこかで破裂しかねない。そこでギブアップしてやおら水際対策は放棄し、パンデミック防御策に移行するのだろう。しかし、今ごろ宣言せずとも水際対策は僕が1月31日のブログに下記太字のように書いた時点で、1か月も前に、明らかに論理的に、もう終わっていたのであって、コネクティング不倫疑惑の女性幹部を船に乗せて仕事させてますとお茶を濁しているが、国民は「罰を与えてます」と聞き、「そうか不倫旅行は本当だったのか」と聞き、「そうか乗船させるのは罰なのか」、「幹部はそんなに乗船するのは嫌だ、危険だと認識してるのか」と理解するだけだ。

武漢からの最初の帰国便で2名の無発症キャリア(不顕性感染者)が見つかってしまった時点で、国境での検疫防御がワークしていなかったことが発覚したわけである。封鎖前の武漢市から脱出した中国人は500万人で脱出先のうち成田は3番目に多い9000人だそうだ。不顕性感染者はその2名の発覚以前に中国人旅行者としてたくさん入国してしまっていた高い可能性がある。実はもう騒いでも遅いのだ。

百歩譲って中国人の9000人は忘れても、「無発症キャリア(不顕性感染者=かくれ陽性)がいるウィルスなのだ」という事実は発覚していた。この時点では人・人感染の有無はわかっていなかったが、これほど潜伏期間も感染経路も未だに誰もわからない異例のウイルスがばら撒かれている、すなわち医療専門家すら敵が何者かわかっていない非常時の水際対策というのは最悪の事態を前提にしないと意味ない。ということは「人を見たらウィルスと思え」という事態が来ることは確実とすべきだったのだ。武漢帰国者の14日隔離のデータから疫学的エビデンスが得られたそうだが、ホテル三日月の日本人従業員とクルーズ船の日本国管轄下にない多国籍船員の接触条件が等価でなければエビデンスは無意味だ。その意味で、等価でないことを世界に証明した「不潔ルート」写真はお見事なオウンゴールであった。

中国は全人代を延期する。これはこのウィルスの正体を察知したかの如き決然たる厳戒態勢、非常事態宣言だ。呼応するように韓国も最高度のレベル4になった。潜伏期が24日、エアロゾル感染がある、ウィルスが尿と便にも出るという説も聞こえ始め、「人を見なくてもウィルスがいると思え」となる収拾不能な事態すらあり得る。日本の対応はあの程度で大丈夫かと武漢に閉鎖されている一般住民に心配されている。この期に及んで下に責任を振っておいて「不要不急の・・・」はないだろう。「何々と報告を受けている」「法に則って適切に対応できていると認識している」ではもう逃げられない。唯一立法権限を持つ国会議員がワイドショーのコメンテーターに見えてくる。

官邸に人事権を握られている厚労省は財務省や文科省の二の舞になりたくないだろう。国家のオーナーは誰か、誰が全責任をかけて国民を守るのか、即ち、日本国の真のガバナンスの存否を有権者は心して見守るべきだ。自民党、首相官邸は地公体、個人まかせでなく国家として毅然とした、リスクを取った、国民も外国も納得するような手を打たないと、仮にピークアウトが何処に来ようと東京オリンピックはおろか自身の政治生命すら危ないと思料する。全国民への喫緊の課題は検査試薬の導入、増量だろう。陽性と知った所で薬はなく自分で治すしかないのだが、特定して隔離することで拡散は抑えられ収拾不能な事態は回避できる。ぜひお願いしたい。

 

ps

イタリアはセリアA試合中止、スカラ座公演中止

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Categories:______世相に思う, 健康, 新型コロナ・ウィルス

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