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五輪と感染の関係は失敗の免罪符ではない

2021 AUG 10 19:19:03 pm by 東 賢太郎

犯罪とは「暴力をふるう」「モノを盗む」など悪いことを「する」ことだ。ところが、何かを「しない」と犯罪になることがある(不作為犯という)。例えば親がパチンコをして車に放置した我が子を死なせたような場合、必要な保護を「しなかった」という不作為犯となり、刑は3月以上5年以下の懲役だ刑法218条「保護責任者遺棄罪」)。親でなくてもいい。「老年者、幼年者、身体障害者又は病者」を保護する立場なら当てはまる

では保護者が政府ならどうだろう。するべきことをしないで厄災を招いて死者を出したら不作為犯と同じでないか。政府は人間ではないので刑法は適用されないが、法が裁こうとしている社会的不始末という意味で通じる点があるのではないか。なにより、総理は五輪開催のために国民の「安全安心」を守る責任は自分にあると公言したのだから逃げようがないだろう。

政府関係者は異口同音に「五輪と感染拡大は関係ない」と発言している。五輪を「する」ことに罪はなかったと言いたいのだろう。しかし、拙稿で何度も書いてきたように、「五輪をやってもやらなくても感染拡大はあった」のである。政府の罪は五輪をやったことではない。ひとえに、「デルタ株を駄々洩れで日本に入れてしまったこと」にある。デルタ株は危険と誰もが聞き知っている環境下だった5月時点で、水際で阻止を「しなかった」。すなわち、堂々たる不作為犯なのである五輪と感染拡大に関係があろうがなかろうが、そんなことはどうでもいい。仮に関係がゼロであっても、未曾有の感染拡大を招いた政府の免罪符にはまったくならないからだ。

その動かぬ証拠がある。下のビデオは本年5月10日の参議院予算委員会だ。蓮舫議員と田村厚労大臣のやりとり(18分18秒から)は国民全員に是非ご覧いただきたい。この日はゴールデンウィーク明けで感染者の増加が懸念され、緊急事態宣言の「宣言・延長・宣言・延長」をいつまでやるんだ、いい加減にしろという世論が高まりつつあった。そして、デルタ株(「インド変異株」と呼んでいた)がインド、パキスタン、ネパールですでに猛威を振るい、感染者数が「指数関数的」に増えてガンジス川に死体が流れ、アジア人の持つファクターXの効き目がないと日本の専門家も強い警戒を発していたころである。

ご覧のとおり、蓮舫議員の指摘は、8月現在の目と情報で見ても、極めてまっとうである。その通りやればよかった。かたやお粗末極まりない厚労大臣が数字を知らないわ足し算は間違えるわでおろおろし、インド、パキスタン、ネパールからの入国者300人は追跡もせず「連絡が取れてません」と役人からいま聞いた答えをしゃーしゃーと言ってのけ、驚くべきことに追跡は警備会社に丸投げでその対応者の人数すら頭になく蓮舫に教えてもらっている。前の加藤もひどかったが、こんな人達が命を守る感染対策の要である厚労大臣なのは日本の悲劇としか書きようがない。要は、菅政権はデルタ株の水際対策を「300人入れてしまうまでは何もやってなかった」ことが明々白々なのである。これが端緒になって今の感染爆発に至ってしまったことに一言の反論の余地もないだろう。

五輪開催が国民の危機感をゆるめて人流が増加したことは都心のスマホ位置情報の集計で日々報道されており、爆発の火に油を注いだという「体感」は多くの国民が持っているだろう。その結果か、JNN世論調査で「五輪が感染拡大につながったと思うか」というアンケートで「つながった」が20%、「ある程度つながった」が40%であり、60%がイエスの回答だった。ただこれはあくまで体感であって、五輪をやらなかった場合の感染者数のデータはないから因果関係を科学的に証明することは不可能である。しかし、そのことをもって「関係はなかった」と結論することも、まったく同じ理由で科学的に不可能なのである。従って、前述の通りどうでもいいことだが、丸川、田村、加藤各大臣がそう主張しているのは大ウソであり、こうして平気でウソをつく面々だということは記憶されていいだろう。

五輪開催が感染阻止に不利益となったという点で政府が「作為犯」であった確定的な事実を指摘するとすれば、本来国民のためである医療リソースを選手村等に分与したことだ。医師、看護師で7千人にもなるリソースは有限でゼロサムであることから、これから起こる可能性のある医療崩壊の時期を早め、確度を高めたことは科学的に事実といって差し支えない。科学的にわかる事であるから当然予測できたわけで、東京都の医療崩壊につき、総理官邸および東京都知事は「五輪開催のためならそうなっても構わない」という未必の故意があったという心象すら抱かれる(であるなら殺人罪だ)。しかも、それに輪をかけて、軽症者は家にいてくれと要請し、いたずらに家族への感染拡大を促進すらし、容態急変に対応できず死者を増やしかねない政策を強行しているのは確実に「作為犯」である。

以上のことと、日本の若者が躍動して過去最高の数のメダルを獲得したこととは、ぜんぜん別個の話である。それはアスリートの栄誉であって、それに便乗して政権の支持率浮揚を図るアテは大外れに終わったが、ジャイアンツが勝つと読売新聞が売れる時代などとうの昔に終わっているのである。この人たちはまともな知性や思考力があるのだろうかと疑うしかなく、そんな画策をすること自体、自民党はオワコンという証明であろう。「地元の選手が金メダルを取った、俺はそこの首長だ、このぐらい許されるだろう」と、お茶目のつもりが下品、下郎の赤恥をかいた名古屋の噛みつきオヤジと同じ次元の連中だという証明である。

したがって、たくさんの金メダルが免罪符になって全部の罪と膨大な大会コストが帳消しになるわけでも何でもない。あんな開会式、閉会式に仮に16億円かかったと聞いても驚くが、それが160億というのだから驚天動地である、一般人が思いつく尋常な出費をいくら重ねて頑張ってもそんな数字になるはずがない。誰がいくらネコババして持って行ったか国会で明細を開示すべきである。そうした税金たかり屋による茶番劇の全貌をこれから野党と心あるマスコミが厳正に調査するだろうが、「五輪が感染拡大につながった」と思っている60%の国民はそれを待ち望むだろう。だからといって、アスリートの栄誉を讃える我々の思いに些かのマイナスとなるものでもない。

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Categories:政治に思うこと, 新型コロナ・ウィルス, 若者に教えたいこと

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