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ローマ人はどこへ消えたんだろう?

2021 DEC 20 23:23:42 pm by 東 賢太郎

パルテノン神殿の廃墟に立って、こう思った人は多いだろう。

アテナイ人はどこへ消えたんだろう?

これは人類普遍の謎といっていいかもしれない。ひとパーツ10トンある石材を14メートルの高さまで持ちあげなくてはいけない。石材の総重量は2万2千トンだ。「クレーンは使うな」という条件で建てられる建設会社はたぶんないだろう。でも2,400年前には存在したのだ。では、彼らは今どこにいるんだろう。

ローマではパンテオンを見て、その倍ぐらいの衝撃を受けた。

円筒形に半球が乗った不思議な建物である。こちらも、総重量4,535トンの石材を43.3メートルの高さまで組み上げている。2,000年も前に!

驚くのは建築技術だけではない。ローマの都市建設の全般に言えることだが、幾何と物理の知識、斬新かつ合理的な着想、雄大なスケール、洗練された審美眼のどれもが現代においても一級品。その粋を結集した建造物がパンテオンだ。

球体がすっぽり収まる。高さ43メートルの鉄筋のない球形コンクリート建造物として現在でも世界最大である。

壁は円筒部の厚さが6.4メートルあり、半球上部に行くに従って組成する石材を図のように軽めに変え、厚さを1.2メートルまで漸減させ総重量をおさえつつ頂上に至って重量ゼロのオクルス(目)と呼ぶ直径9メートルの穴になる。

半球部の正方形のくぼみには重量を軽くする目的があるが、上に行くほど小さくして実際より高く見せている。数列的秩序、無駄のなさ、錯視、そして美。

イタリアはその後何度も仕事で行ったが、パンテオンを見てしまうとどの都市へ行ってもあれから2,000年たったローマだという感覚が持てない。英国の元首相チャーチルが「俺達こそローマ人の末裔だ」と言ったらしいがそうも思えない。

ローマ人の消失。人類普遍の謎は、ひょんなことで解けた。つい先日、「宇宙人は地球にいる、あなたの隣りに」という記事を読んだ時のひらめきだ。

ローマ人はどこへも消えていない。全人類が2,000年かけて、ローマ人もろとも「劣化」したのである。

現代人は誰もが「自分は古代人より進化している」と信じている。そうではない。進化したのは「道具」である。

人類の知能の進化 – Wikipedia

レオナルド・ダ・ヴィンチ級の人間が2,000~6,000年前のギリシャ、ローマにはごろごろいたかもしれない。そこから人類は徐々に劣化を始め、質実剛健なオリュンピア大祭が金儲けのオリンピック祭りになってしまった。まるで「猿の惑星」のラストシーンだ。

モーツァルトのジュピターを聴いて我々は「このような作品はもう誰も書けないだろう」と感嘆する。そりゃそうだ。現代人はパンテオンを造れない、その音楽版だからである。

 

(参考図書)

コンコルド、アポロがなくなることは一元的に知能劣化では語れないが視点として面白い本だ。以下私見だ。「食うか食われるか」の狩猟採取民時代は強く賢い男がいないと部族が滅びる。だからハーレムができその遺伝子が拡散する(ソロモン王は妻700人側室300人。漢民族の男系男子継承は名残り)。四大文明が揃うBC5千年ごろから「食われずに食える」農耕定住型となりハーレムは終わる(狩猟採取型遺伝子が希薄化)。狩猟採取型が農耕定住型を支配する時代が19世紀(絶対王政)まで続いたが科学の進化で終焉し、20世紀には道具が人間支配を始める(便利の代償で知性喪失)。そして21世紀半ばにシンギュラリティに至る(道具の人類支配完成)。

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