「親ガチャ」の功罪
2022 AUG 14 20:20:29 pm by 東 賢太郎
「親ガチャ」って親は選べないってことらしいね。新語大賞だって?
そうです、それで人生決まる時代に生まれちゃったっていう感じですね
こういう会話が30代の人とあった。
そうか、俺の親はいたって普通だよ。サラリーマンの団地族だった。だから親ガチャは当たりでもはずれでもないよ
いや、当たりです、銀行員でしょ、それだけで大当たりなんですよ
そうね、子供の頃はね、でも社会人でこうなるのに親の助けは借りてないよ
高校ぐらいですか、そうなったの
ぜんぜん。俺にとって高校は暗黒時代なの。できればなかったことにしてほしい
どうしてですか?
野球だめで駿台の公開模試うけたら偏差値42だ(笑)。わかる?
へ~、頑張ったんですね
うん必死にね。でもこのことに親は出てこないよ
東さん、それ当たり組だから言えるんです、ずるいんですよ我々には
なんで?みんな1回ガチャやって平等だろ
はい、でも競馬でハズレだと悔しくて馬券破るでしょ(笑)
う~ん、馬ならねえ、でも人生レースの馬は自分だろ
そうです。だからこそ、足が遅いのは親のせいだって理屈になるんです
なるほど、たしかに俺もそう思ったよ、けど走ってみるとなんとかなった
東さんがそう思ったのは単なる当たり馬券の見落としです
なかなか手厳しいね(笑)。人生、馬券で決まるの?ならば努力はいらないの?
みんなしてます。でもそれだけで成功できない時代なんです、当たり馬券ないと
じゃあ逆に成功した人はみんな馬券のおかげかい?努力も苦労もしてないの?
いえ、して報われる人と報われない人がいるんです。それも親で決まりです。親の地盤なしで議員なれますか?それも親だし足が速い遅いも親です
そうか、でもその理屈だと美女、イケメンこそ人生の勝ち組ってならないか?寝てても勝ちだからね
それはそうです、親が当たり組ってそういうことですから
おかしいね、顔に努力はないだろ?
はい、生まれてくるのに努力はないんです、だからガチャに喩えてるんです
なるほど、とするとね、「ウチの子が泣くので運動会の順位やめて」と同じ?
それ、モンスターペアレントの話ですね
そうだよ。だったら走らせて足鍛えろよって。皆と一緒に努力してさ
いえいえ、東さん、それ体育会ですよ昭和の。いまどきパワハラ言われますよ。
だっておかしいだろ。かけっこ努力した子は評価しないでイケメンは寝てても評価するのかい?キミが怒ってるのって、まさにそれじゃなかったの?
怒ってはいないんです、それ世の矛盾ですよね、それに対する半ば自嘲です
演歌の「どうせ私は・・・」みたいだね、長い物に巻かれて居場所は確保してる
開き直りって強いんです、ガチャは親より上ってニュアンス出そうとしてますね
まあいいけどさ、そんなの強がってるくらいなら勉強した方が早くねえか?
しないんです。既存の競争から開放してくれる理屈が親ガチャなんで
そうか、いくら負けても仲間うちじゃ親のせい社会のせいだもんな、楽は楽だ
東さんの高校ドツボの時にあればよかったですね
そうだねえ。だったら俺、高校中退してたな。野球やりに学校行ってたからね
どうなってましたかね?
う~ん、板前かな、料理はね本気でやったらすごいよ。映画監督もよかったな
うわっ、そっち見たかったですね
おい、なんか悔しくなってきたよ
僕は若い人とメシ食べてざっくばらんにこういうしょうもない話するのが大好きだ。それで最後は「さすが若いですね、67なんて見えませんね」と持ち上がって気持ちよく帰る。おかげでストレスがあんまりたまらない。そう、これって、往時はクラブでお姉さんに囲まれてしてたんだ。そういえば親父も施設に入って最期まで若い看護師さんたちにかまってもらってた。それで97まで生きたのかな。だったらこれは親ガチャ当たりだ。
ソナー・メンバーズ・クラブのHPは http://sonarmc.com/wordpress/ をクリックして下さい。
Categories:______世相に思う
ST
8/16/2022 | 9:29 AM Permalink
わたしには壮大な親ガチャ意識があります、アダム【man】です(笑)。そして東さん映画つくられるなら、フェリーニの「そして船は行く」のようなのをお願いします(^^)
東 賢太郎
8/17/2022 | 12:05 PM Permalink
無理です(笑)。
フェリーニいいですね、8 1/2なんてハチャメチャで妙にリアルでね、映像ばっかり言われるけどイタリアのヴェリズモなんだね、あんたなんなの?猫かぶんじゃないよどうせホントはこんなもんでしょってのが根っこにありますね、これ好きなんです、愛ですね人間への。だからなにやってもエロくもグロくもならないの、それがドイツ人がやるとヴォツェックだね、横溝正史みたいになっちゃう。ヨーロッパ、面白いですよ。オペラはそこまでできないというのが持論です。音楽の魔力は認めるけどね。映画はまだまだ可能性がありますね。
ST
8/17/2022 | 3:04 PM Permalink
ハチャメチャですよね。「そして船は行く」あらららーと笑いながら観ていて、最後にカメラが引いていって「ブルーシートみたいな海」のところで突然に涙腺崩壊でした。巧いです。人生が愛に溢れたセットみたいだって、みんなが感じはじめるような気がして。「カルメン」でもいいんですけれど、隊列を崩してはいけない兵隊さんが無邪気に、本能のままに狂わされていく感じが、滑稽で切なくて、ある意味とてもリアルです。
東 賢太郎
8/17/2022 | 7:43 PM Permalink
人生はお祭りだっていう人です、フェリーニは。僕も全く同感です。わけわかんないんです自分のここまでも。10年ブログ書いてふり返ってみてしみじみ思いますが、人生なんて呼ぶ大袈裟なもんでもなく、何の筋書きも意思も意図も計画もないんです。この作品も船上の祭りです。まず厳粛な死があって象徴する骨があって、そこに群がってきた有象無象の生、欲望に満ちた「肉」ども、イタリア人の歌、セルビア人のダンスの享楽があり、くだらない権力、見栄、支配、盲従、もっとくだらない戦争がごった煮になってます。で、そのドタバタは実は張りぼてのセットで、それを大真面目に撮影するスタッフが放送事故みたいに映っちゃう。「あんたが人生って思ってるのって、実はこんなもんだよ」って感じですね。イタリアはこういう奇才が出ますね、友軍としては頼りなかったしちょっとだらしないですが好きな国です。