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ドルが160円になっている真相を述べる

2024 JUN 27 0:00:46 am by 東 賢太郎

為替が160円になった。2度目だ。117円で組んだポジションから37%の利益になる。また日銀介入で多少は戻るかもしれないが(前回は一時150円半ばまで戻した)僕は1ドルも売らず、全資産が今もドルのままで売る気は全くない。ここまでくると200円は射程圏と思ってるからだ。ただ、ドルを持っている人は少ないので国にとって良い話とは思ってない。それについて書く。

200円になると間違いないことは、もう十分に高い電気代がさらに上がり生活のすべてに波及することだ。しかし、もっといけないことに食料(飲食費)が上がる。日本人の食生活はエネルギーでいうと6割が輸入だから、いまと同じぐらい満足感のある食事を続けると出費はおよそ15%増える。光熱費は少々は我慢できても食べずに生きられる人はいない。人が飢えれば治安が悪化し、国が乱れる。大きくなると政権が倒れる。これは「天保の大飢饉」「フランス革命」をあげるまでもなく歴史のセオリーだ。

為替レートが何で決まるか?金利差、インフレ率、マネーの量、流通速度etcと理屈はいくらもつくが正解(常に正しい答え)は今のところない。なぜなら「国力」という定量化できないものが効くからだ。国力は人口、経済力、資金力、軍事力、外交力、それらの安定性、変化率などに因数分解され、総じて「政治力」とくくれるが、では政治力とは数字でなにかと言われると誰もわからない。数字にならないものから為替レートという数字を導くことはアインシュタインでもできない。円はドルに、多少の金利差などお呼びでないほど政治力で大敗してることは誰でも理解するだろう。2048年、シンギュラリティの到来までにAIがそれの数値化に成功する可能性はある。しかし、それとて「相場」の一要因としてとりこまれ、メタ相場というやっぱり数値化できない変数といたちごっこになる可能性も否定できない(将棋の千日手)。

こうした “原理” を学んでもいない低能なメディアが日米金利差がどうのと素人意見を垂れ流す。そんな情報を真面目に信じていれば国民は馬鹿になるだけだから見ない方がいい。両国の金融当局は当然わかっている。それゆえに実は自分たちではどうにもならないことを知っている。それを悟られては自分たちのポストが危ういからその先は狐と狸の化かし合いをやり、世俗用語の「相場」というものが形成され、そういうものは数値化など不可能なのである。理屈と相場で決まる「トヨタの株価」とおんなじと考えてそう誤りではない。明日の引け値も、1年後の株価も、トヨタの社長だってわからない。そんなものを彼よりも情報量の少ない外部の人間がわかるはずない。その合理性を理解はしても、当たらないものは当たらないから「相場です」で逃げるのだ。ではどうして僕がドル資産の一点張りにし、そもそもソナーという会社が株式を扱ってどうして14年も成り立ってきたか、ここでは書かないが、「リスク」に着目してるとだけはいえる。

円ドルで言えば、160円が25%円安になって200円になるよりも、25%円高になって120円になる可能性はずっと低いと思ってる。だからドル持ちの方が円持ちより良い。それだけだ。どっちにしろ相場だから「予想」が入る。円高円安、予想が外れる可能性は常にあるが、外れと思ったら損切りして迅速に逃げればいい。その覚悟をして、外れの振れ幅(ボラと呼ぶ)が小さいものを選ぶ、それが「リスク」に着目して投資をすることの数学的な意味だ。この判断はおおむね理屈、数値による。株式投資の場合、日々の株価(ランダムな整数値)など眺めておまじないみたいな予想をしても微塵の意味もない。だから1年後のそれを予想するより、1年後のトヨタの税引利益を予想する方がボラは小さい。こういう “哲学” を持つことを「リスクに着目してる」と表現するわけで、ということは数学も統計も企業会計もちゃんと勉強してない人はそもそも「リスク」が何かわからないということになる。そういう五里霧中の大多数の人が蜃気楼につられて市場に参加しているので、わかってる方はそれなりの確率でゲームに勝てる。

話を戻そう。為替レートには「国力」という定量化できないものが効くと書いた。為替とは円から見たドルの値段だ(逆でもいいが)。モノの値段は即物的には需要と供給だけで決まる。では「供給」を見てみると、一万円札の数は2011年(民主党政権のころ)から約6倍になってる。その間、1ドル札の数は約2倍になってる。当時の為替レートは76円。相対的にお札の量は3倍になってるから、ざっくり76×3=228円ぐらいが妥当かなとなる。「需要」はどうだろう。これが多ければ供給の増加は相殺されて228年までの円安にはならない。貿易でなく金融取引においては円とスイスフランは有事に強い、安定してる、だから需要は強いとされてきた。それが世界の定番の考え方だった。しかしその信認はもう崩れて久しい。

なぜかというと、大別して2つ理由がある。1つ目は近隣諸国の動向だ。10年前から台湾有事が騒がれだし、北が花火みたいにミサイルをぶっぱなし、米国の言いなり総理がG7に肩入れし、それはロシアへの敵対を意味する。「有事に強い円」などもはや空念仏だ。2つ目は「国力」だ。国力とは国のクレジットと考えてよい。人口、経済力、資金力、軍事力、外交力、それらの安定性などに分解され、総じて「政治力」とくくれるわけだが、人口は減る、経済は減速、資金も減る、軍事力は核なし、外交力は米国のポチの評価(G7諸国に馬鹿にされてる)、つまり、元から三流だった「政治力」がダダ下がりであり、裏金政治で首の皮一枚が残ってた自民党の安定性も岸田政権でボロボロになった。以上が意味することは、日本国の弱体化であり、もっと具体的には「徴税力の衰退」(国民から税金を巻き上げるパワーが落ちること)なのだ。企業に喩えるなら国家の収入は税収で、それの現在価値が株価である通貨の価値を担保している。それのボラが増える。ということは、僕のように考えるプロたちは僕がドル持ちしている理屈の正反対で「円売り」(日本売り)と結論するのである。

円安は国家財政だけ見ればドル持ち分の利益になる。だからもっと一万円札を刷ろうがウ国に10兆円くれてやろうが大丈夫、保険として消費税は上げておきたいがねなんて議論が聞こえてくる。そうではない。「徴税力の衰退」という数値化できないリスクがあるからだ。LGBT法案みたいにごり押しで増税法案を通せば一時しのぎで政治家と役人と評論家の首はつながるかもしれないが、円安で痛んだ国民の腹はますます痛くなり政治への突き上げはますます激化して「徴税力の衰退」に拍車がかかるだけなのだ。この円安の本質はそういうものだ。国民は肌でそれを感じていると思う。だから自民党の裏金・脱税に選挙で強烈なビンタを食らわしている。そんな中で、その自民党の支援を受けているにもかかわらず、プロジェクションマッピングなどという糞くだらないものに47億円も税金を捨て、学歴詐称で東京地検に起訴されるかもしれないという人にはビンタどころか投票して再選などさせてしまえば、東京都政には何か腐敗した黒い裏があると国中が疑念の目をそそぐことになろう。こういう懸念を長年引きずって消えない人に国家のかなめである首都の舵取りをやらせている余裕など日本国にはない。

200円の円安は間違いなく国民の悪夢をまねく。国情は暗くなり、若者はますます希望を失い、自殺者も増え、出生率はもっと下がる。それらはすべて、さらなる円安要因になる。だから日銀は防衛策を講じるだろうがドル売り介入など線香花火だ(前回のそれで実証)。政治の劣化、徴税力の衰退を止めるすべは中央銀行にはない。できるのは金融引き締め(金利の引き上げ)だけだ。しかし、ただでさえピークアウトして退潮気味の経済力回復にそれは竿をさす可能性が大である。それを予見し、V字回復を狙ってゼロ金利政策をとったのがアベノミクスだったが、企業に食欲がないのだからゼロコストの資金を提供しても成長に点火はおきなかった。ここで食欲というのは成長したいという意思のことだ。利益を伸ばし株価を上げる。経営者として当たり前の欲望が折れてしまっている。アメリカの経営者は変わらず食欲旺盛、日本は中折れ。ハゲタカ以外にそんな精力のない会社に投資は来ないし国レベルでの円買いの実需も減る。これも円安に拍車をかける。

つまり日銀は金利を上げても据え置いても円安という王手飛車取り状態に陥るだろう。それを救うには経済成長率を上向きにし、金利上昇のインパクトを相殺するしかない。成長率は数字だ。ちゃんと効く。しかも、足元ではない、為替レートの「相場部分」は先行きの数字(予想値)に連動して増減する(株価でいうならROEでなくPERに相当)。予想値は政治でもある程度は影響できる。三流が二流になっただけでも上がる。来年あたりGDPはインドに抜かれ5位に落ちてさらに暗いニュースが出るから政治はそれを打ち消す強力で実効性のありそうな政策メッセージ(岸田の「新しい資本主義」なんて役人仕事の空虚なものでなく)を用意し、その実現に国民が前向きになれる賢明な総理大臣や東京都知事を据えるしかない。税金バラマキ政治屋にウンカのように群がるタカリ屋企業ではなく、成長に命をかける若い経営者を続々と誕生させ、10年後20年後のトヨタ、ソニーを生み、担保金融しかしない質屋みたいな銀行ではなくそこに投資のお金が回る仕組みを早急に整えるべきだ。爺さんには経験はあるが体力と時間がない。それがふんだんにある若者に頼らなくてはいけない時が来ている。彼らを潰している体制を保守だなどと呼んでるアホな連中は一掃し、それをぶち壊してくれる若く有能な政治家の出現を心から望む。

 

Categories:政治に思うこと, 若者に教えたいこと

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