Sonar Members Club No.1

カテゴリー: 徒然に

脳と宇宙の構造は似ている

2021 JAN 11 18:18:13 pm by 東 賢太郎

こんな記事がニューズウィークにあるよと教えてもらいました。

 

やはり、脳と宇宙の構造は似ている……最新研究(2020年11月20日(金)12時00分、Newsweek日本語版、松岡由希子)

<宇宙網と脳の自己組織化は、同様のネットワーク力学の原理によって形成されている可能性がある、との研究が発表された……>伊ボローニャ大学の天体物理学者フランコ・バッツァ准教授と伊ヴェローナ大学の脳神経外科医アルベルト・フェレッティ准教授の研究チームは、宇宙学と神経外科学の観点から定量分析を行い、銀河がつながる水素ガスの大規模構造の宇宙網とヒトの脳の神経回路網(ニューラルネットワーク)を比較した。

(同記事より引用)

 

これは僕が2017年12月10日に書いたブログです。

座右の書と宇宙の関係

 

「絵柄もそうだし、目ん玉のビデオまでついてますよ、パクリでしょ」

「科学者が真面目に研究してるようなことを素人が思いつくってのはたまにあるらしいよ」

「中身じゃないんです記事ですよ、”脳 と 宇宙” が似てるのとおんなじぐらい似てますが」

「あっそう、ならその人いいセンスしてるじゃない、うれしいね」

というやりとりでございました。まあどうでもいいね。

ソナー・メンバーズ・クラブのHPは http://sonarmc.com/wordpress/ をクリックして下さい。

2021年の正月に思ったこと

2021 JAN 3 23:23:13 pm by 東 賢太郎

昨夜も1時間半の海外とのビデオ会議でした。コロナに年末年始はありませんが、我々の熾烈な世界にもないのです。頭はそれで一杯で、箱根駅伝を見て勝負は怖いなと思ってますます身が引き締まって、正月気分とは関係なく過ごしています。それでも、自分を良い状態で保ち、家族と猫と平穏に過ごし、毎年同じお節料理をいただき、家内は関西ですが子どものころと同じ関東の雑煮を作ってくれる。我が家にとって、とても大事なことです。ソナーという会社の命運も、そうした僕の良い状態にかかっています。

お客様は4か国にわたっていますが、必要としていただいているものは我々のインテリジェンスです。それで十分な報酬、ご信頼を頂いています。去年は初めて「サムライですね」といわれました。嬉しかったのは自分のことではありません、日本人が尊敬されていることです。

お金に関わるビジネスですからいろんな情報が入ります。出所は書けませんが、youtubeには良いチャネルがたくさん現れており、良質な情報はどなたも無料で入手できる時代です。皆さん、今や新聞・テレビは無用の長物です。そんなものだけに頼って生きていれば無知になるどころか洗脳までされます。

今年は米国と中国で歴史的地殻変動があると思います。トランプが勝ちます。バイデン・ハリスは吹っ飛び八百長選挙、証拠隠滅、虚偽報道に加担した連中は牢屋行きでしょう。中国にその反作用が及びます。日本国が無縁であるはずがなく、それを国民に意図的に隠す本邦メディアは重罪です。全部潰してもいい。

菅政権も何をしてるのか。国家元首が国家観ありませんなどジョークにもならない。バイデンに祝辞など外務省のインテリジェンスの無さも甚だしい。トランプに飛び込み外交した安倍氏のセンスが必須の形勢になってきたのではないでしょうか。揚げ足取りのショーの技だけ競う野党も一掃される側の人達でしょう。

僕は何度も書きましたが共和党びいきでもトランプ・ファンでも民主主義を憂える正義漢でもなんでもありません。生まれつきウソ、ヤラセ、なりすましが毛虫より嫌いな一市民であり、今回の件は、盗っ人が居直って偉そうに大ウソの説教まで垂れる図式であって、それが虫酸が走るほど格別に気に食わないのです。

それがいかんと思うならこうして糾弾すべきです。我が国は政府もメディアも何もしないのだからやってもいいと思ってるのでしょう。それなら、目には目をで秘密諜報部員を他国に潜入させ、嘘八百ならべて賄賂、ハニトラやりまくってインテリジェンスを盗むぐらい仕事しろ。国益を守るとはそういうことだろう。

日本は米国と対等にアライアンスを組むためだけに憲法改正をすぐにでもして、米国は尖閣はおろか沖縄も守らない最悪の前提で子孫の代の存続を図るしかないでしょう。その上で、米中が「必要だ、組んでくれ」と擦り寄ってくるインテリジェンスを持って永遠にキープする。他に名案が何かあるでしょうか?

ソナー・メンバーズ・クラブのHPは http://sonarmc.com/wordpress/ をクリックして下さい。

九紫火星のみずがめ座

2020 DEC 30 17:17:41 pm by 東 賢太郎

運勢見というと四柱推命や占星術になりますが、そういうものを信じるかというと、もともと関心のない方です。それは受験で数学に熱中し、宇宙=パーフェクトという世界観に固まった影響が大きいです。それ以来、非科学的、非論理的なものは一切無視、軽視して生きてまいりました。

ところが、初歩的な量子力学の書物を読んでその世界観が崩れました。

物質は「観測」するまで何も決まっていない!

アインシュタインも解けなかったこの不思議を認めると(認めるしかない)、我々が見ている物質や宇宙は実は張りぼての舞台装置であって、数学や物理の法則は「張りぼて界」をプラモデルのように組み立てる仕組みにすぎず、それを作った「創造者」の世界は違う原理で出来ていると考えるようになったのです。素粒子より小さい世界は観測前から整合的に存在すると考える物理学者もいます。

そこでめぐり合ったのがショーペンハウエルです。『意志と表象としての世界』はさらに衝撃でした。ふと量子力学を思い出し、こういう考えに至ったのです。

宇宙は実は天界のディズニーランドである。アトラクションの「ワンダフル・ヒューマン・ライフ(素晴らしき人生)」は人気だ。テレビスクリーンに地球上の妊娠中の女性が映る。お客は自由に選択でき、ボタンを押すと下界に降りてそのお母さんの胎内に入る。そこからはその胎児の目線(五感)となって「70~80年コース」の4次元コンテンツが始まるが、上映時間は天空の1時間ぐらいである。割増料金で100年コース、上映時間は90分の長尺も選べる。(http://見えている現実はすべてウソかもしれないより)

 

2020年は7月にこういうことが起きていました。http://必然は偶然の顔をしてやってくる。人生を懸けて起業した会社の10周年に起きたこの「事件」は看過できず、「そんなのは偶然だ」とささやく僕の “常識” を消し去りました。

コロナの影響は我々の仕事には左程なく、リモートワークにも順応してきましたが、11月はじめに米中対立の余波が案件の帰趨を一変させる想定外の事態が発生しました。しばし対応で眠れぬ日々が続きます。

ところが、その逆境が12月に突然好転して今を迎えているのです。日記を見返すと、カマキリ、後光、二重の虹が出たhttp://世の中の謎「色々見てしまう旅」というもの(11月19~20日)。その2日後に新しい案件が舞い込んできて、そこを境目にマイナスからプラスの「倍返し」が始まりました。

 

こういうことを科学が真面目に取り合うことはありません。しかし、その科学はこう認めているのです。

我々に見える物質(元素)はぜんぶ足しても宇宙の4%しかない。我々は96%の部分に何があるか知らないし「4%世界の常識」に合わないものは「そんな馬鹿な」で切り捨てている。

我々の人生は天界のディズニーランドのアトラクションであり、乗客(観測者=我々の精神)と舞台装置(宇宙=張りぼての山やトンネル、そして我々の肉体)と仮定すれば、物理学の素人でも以上のことが「科学的」と信じられるように思います。

 

経営を10年もしていると「一寸先は闇」と思うことが何度かあります。今年は特にそれを痛感しました。いかなる学問もそれを救うことはできません。だから多くの経営者が最後は神仏に頼り、易学の四柱推命や占星術を信じ、仏滅を避けたがります。「そんな馬鹿な」で切り捨てられないものを知っているからで、それを見た周囲は「そんな馬鹿な」と思うのです。僕自身、起業までの55年を生きた自分とは別人格になっているはずです。

 

僕は九紫火星みずがめ座です。その特徴を調べると、どちらもまったくその通り。他の星や星座も見ましたが、見事にちがう。2月4日の午前1時生まれで、易学ではそこが1年のスタート地点、みずがめ座はど真ん中です。九紫火星の世界的代表選手はドナルド・トランプ氏でしょう。4年前からどうも彼は悪からず思えていて、同種の人間だから言うことがよくわかるのかもしれません。いま世界にウソを垂れ流して彼を低能な変人扱いしている連中は、すべからく僕とは合わない、大嫌いなタイプだということになりますね。

みずがめ座代表は何といってもウォルフガング・アマデウス・モーツァルト氏でしょう。ネットで出てくる特徴は「権威主義(縦社会)への反抗と革新」「自由な発想と個性尊重」「発明と科学・技術、友情と連帯(フラットな関係重視)」で、「人と同じが耐えられず」「周囲は完全にスルー」「直感」「独創」「マニアック」「気分屋」「予測不能」です。まさしく彼そのものですが僕そのものでもあります。よって、組織人にはまったく向いておらず自ら飛び出す運命にあり、モーツァルト先生はザルツブルグ宮廷を飛び出し、三井物産、王子製紙の役員で飛び出した我が祖父もみずがめ座でした。

九紫火星

ネットを見ると「九紫火星は2021年から人生の転換期を迎え、その兆しが11月頃から表れ始める」「12月の九紫火星は九紫火星の上に乗って特別なことが起こる」とあります。まさに冒頭のように、絵に描いたようにそれが起きている。トランプ大統領にもぴったり当てはまっているように思います。

みずがめ座

つい先日(12月22日)木星と土星が400年ぶりに大接近(グレートコンジャンクション)しましたが、それはみずがめ座で起こりました。実は12月に景色をバラ色に変えた案件はその22日に何の前ぶれもなく飛び込んで来たのです。2021年から世界は転換して「風の時代」となり「みずがめ座がシナリオを書く」とあります。

 

まあなんと信心深いと思われてしまうでしょうが、経営者になってみてこういうことを気にするようになりました。でも、知ったからどうということはありません。流れに委ねるだけです。野球の球は力めば速くなるわけでなく、むしろ脱力して、離れる瞬間の0.1秒だけ指先に力を入れると威力が出るのです。

 

ソナー・メンバーズ・クラブのHPは http://sonarmc.com/wordpress/ をクリックして下さい。

若いタクシー・ドライバーさんとの話

2020 DEC 22 1:01:27 am by 東 賢太郎

タクシードライバーと雑談しました。まだ若い、30代半ば。「なんでタクシーやってんの?」「介護の事業やってるんですけどコロナで・・・」「そう」「介護タクシーもやりたいなって」「うん、いいね、事業やってんだな」「個人ですけど」「俺も個人事業だよ」。

「何才で独立したんですか?」「55だよ」「ええっ?ちょっと遅めですよね」「すごく遅いね」「きっかけは?」「元気だったから」「?」「元気がすべてだよ」「?」「だって経験が倍あって元気だったら負けないだろ?」

「きみゴルフやる?」「はい」「やるならシングルになんなさい」「お客さんは?」「なったよ」「どうやって?」「なりたいと思って練習したね。なってやめたけどな」「・・・」「でも仕事に生きてるよ」「遊びなのに?」「人生にも生きてるよ」「・・・」

「Never up、Never in.って言ってな」「なんすかそれ?」「届かねえパットは死んでも入らねえってこと」「なるほど!」「みんな努力はする。つまり人生でもパットはみんなしてる。でもほとんどの人はショートしてて気がつかないんだ。だから目的が達成しない、おかしいな、能力ないのかなってなる」

「わかります」「いや、きみはヘタなゴルファーだからわかんないの」「はあ?」「いい話聞きましたって、いくら頭でわかってもダメなの」「・・・」「だからシングルになんなさいって。スコアは正直だよ。なればビビビッとわかるよ。そうすると仕事にも人生にも使えるよ」

「俺はね、ゴルフはニギリでめちゃくちゃ負けたの。悔しくてコノヤローと思ったの。本読んでわかった気になってね、やると全然できない。また負ける。こうやんないとシングルなんて無理よ。だからね、頭でわかりましたなんてのはね、屁の役にも立たねえって、骨の髄までしみついてるの」。

「簡単な仕事もできない奴が大きなことできるわけないだろ」「はい」「9番アイアン打てないのにドライバー打てるわけないだろ」「ですね」「なのにみんなドライバーばっかり練習するの。うまくなるわけないだろ?」「ですね」「そういう人は仕事もダメなの、わかりやすいでしょ?」

「お客さん、お酒飲みたいです(笑)。お仕事聞いてもいいですか?」「いいよ、コンサルタントだよ」「なんのですか?」「投資」「経営コンサルじゃなくって?」「ああそれね、経営で成功できない奴がやるもんなの」「そうなんですか」「成功した人は教えられるなんて思ってないからね」

「投資コンサルですか、僕もなりたいなあ」「誰でもなれるよ」「どうすれば?」「なりたいと思えばいいよ」「思うだけ?」「思わないとなれないよ。それがNever up、Never in.」「はあ」「思うってね、半端なもんじゃないの。何を捨ててもなりたいって思うことだよ」

「どうすればいいか教えようか?」「お願いします」「儲けることだ」「・・・」「だって儲けてない奴の儲け話なんて誰が聞きたいの?」「なるほど、でもどうやって」「だからシングルになんなさいって言ってんの。おんなじだよ」「うーん、わかんないです」

「人間ってね、実は思い込んじまったことしかできないの。一生アホな思い込みで生きてて、それに気がつかないまま死ぬの」「そうですか」「それを変えてくれるのは失敗しかないんだぜ」「成功じゃなく?」「成功ってほとんどがラッキーなのよ。次に起きる保証なんてない。だから役に立たないの」「意外です」

「受験がそうでしょ」「はあ」「俺は模試で点がいいとカネ損したと思ったよ」「?」「赤点だとね、ああ本番じゃなくて良かったと。穴が埋まって合格率が上がるなって」「それすごいですね」「でもそうだろ?」「ええ」「だから失敗は得なのよ。でも赤点はダメって思いこみは中々変えられないの」

「でも失敗は怖いんで」「なに言ってんの?きみは若いだろ、特権階級なんだぜ」「?」「許してもらえるよまだ」「はあ」「恐れずやりまくるしかないだろ?すると失敗もたくさんするよね、それでプライドがズタズタになってつまらん思い込みが解ける。だから成功率が上がる」「いいですね、元気が出ます」

「いい?いい話聞いたよね?問題は、そこできみが本当にそれを行動に移すかどうかなんだ。99%の人は明日になったら忘れてね、居心地のいい思い込みの世界に戻っちゃう。だから何もおきない。つまりね、何事も、信じてやった奴が勝ちなの。ああ、そこの白い壁の所で止まって。ありがとう。がんばってね」

ソナー・メンバーズ・クラブのHPは http://sonarmc.com/wordpress/ をクリックして下さい。

 

かわいい子は谷に落とせ

2020 OCT 24 18:18:18 pm by 東 賢太郎

先日のソナー10周年昼食会は赤坂のLyla(ライラ)さんのお世話になった。和の素材と伝統の創意あふれるアンサンブルのフレンチは皆が絶賛であり、コロナ対応も万全だった。いい店だ。忘れられない昼食会になり感謝したい。

家では家族が祝ってくれた。10年無事に来られたのも家庭の支えあってこそである。家事はしないし愛想もないしでおよそ良い亭主、父親とはいえないから家族の眼にどんな風に映っているかは知らない。

それがこういうことだった。この日のために10年の歩みをまとめて作ってくれたアルバムの表紙だ。

アルバム

こいつみたいに強いと持ちあげてくれたが、ほんとうは、テレビでライオンの番組ばかり見ているせいだろう。

ところで、

獅子は我が子を千尋の谷に落とす

というがほんとうだろうか。這い上がってきたのだけ育てるというが、獅子とは中国の空想上の動物らしく、アフリカのライオンは実は子煩悩のようだ。本当に谷に落ちた我が子を母ライオンが助けてる写真がネットにある。

この故事は父に教わった気がする。這いあがるかどうかテスト中の子に明かすのも変だしそういうポリシーだったかどうかは疑わしくもあるが、たしかに子どものころ父には勉強を教わったことはおろか、ほとんどほめられた記憶がない。それどころか教えを乞うてもいつも「自分の頭で考えろ」であり「おまえの頭は何のためについているんだ」と説教まで食らうありさまだった。

あれはライオン式だったんだろうと思っていたが実はそうでもなく、高校になって野球や受験がうまくいくと父はほめてくれた。つまり、中学まではほめたくてもほめようがないほど僕が情けない息子だったのだ。小学校では虚弱でずっとクラスで背が前から2番目のチビであり、喧嘩はもちろん腕相撲は女の子より弱く、普通そういう子は勉強ぐらいはできて居場所があるのだがそれもなかった。要するに何をしても偏差値30代の最下層民であったから、どう見てもほめてやるものがなかったにちがいない。体格は仕方ないので勉強しか打つ手はなく、だから「おまえの頭は・・」になったのだ。それをしても中学受験に失敗した息子は谷底から這い上がって来ない子ライオンだった。

そこで傷をなめて救いの手を出さなかった父のお陰で今の僕はある。勉強にも生活態度にも徹底してうるさく、一切の愚痴も手加減も認めてくれなかったが、おまえはやればできるという一点にだけは揺るぎのない信用を感じていた。それを裏切ったらいかんと、最後は気迫でやるっきゃないと思わせる強いものがあった。あれは教育方針という紋切り型の理念のようなものではなく、子煩悩の本能的愛情でもなく、無産階級の子はそうしてやらないと幸せにならないという実戦訓から来たに相違ない。なぜなら17才で戦争となり大学に進めず、成績優秀で銀行には入ったが学歴の厚い壁があった。だから息子にはと、ああなるのは必然の親心だった。あとになって思うことだが、当時の父を誰かに喩えるなら、この人しかいない。まさしく書簡集に見るモーツァルトの父そっくりだ。

先日のこと、焼肉屋で他愛のない話をしていると、娘たちがあることを知らないのに気がついた。帰国子女だからときにそういう事もあると大目に見てきたが、今回はそういうレベルのもんじゃない。「いいか、おまえたち、それね、”くろ” は知らなくても “のい” は微妙だよ。”しろ” なら知ってるよあいつは確実に、そのぐらいのことだぞ」。

しろ先生

散々あれでもないこれでもないとやって、ヒントを2つ3つ出してやっと正解が出た。な~んだ、それなら知ってたよとなる。知ってたじゃないんだ。出てこなきゃ知らないんだ。

「これから呼び捨てはいかん。しろ先生と呼びなさい」

こうして僕は谷に落とす。

ソナー・メンバーズ・クラブのHPは http://sonarmc.com/wordpress/ をクリックして下さい。

アート・ブレーキー「チュニジアの夜」

2020 OCT 14 1:01:07 am by 東 賢太郎

アート・ブレーキーとジャズ・メッセンジャーズはライブできいてます。ネットで調べると僕が留学中に彼がブルーノートかヴィレッジ・ヴァンガードで演奏したのは82年10月、83年2月だけでどっちもブルーノートでした。なぜ自分がニューヨークにいたのか記憶はないですが、2月は期末試験だからきいたのは82年の方だったでしょう。

血が騒ぐナンバーがいくつかありますがA Night In Tunisia(チュニジアの夜)は彼のドラムスがききものです。メル・テイラーは明らかにこれをパクってますね(ブレーキーはキャラヴァンもやってますが)。音の違うタムタムを乱れ打ちする土俗的な音は本能的に大好きで、春の祭典はいつもティンパニの音を追っかけてます。ブーレーズCBS盤を初めてきいてハマったのも、生贄の踊りの短三度のピッチが物凄く明瞭だったからです。

チュニジアは一度行きました。スイスにいた1996年の夏休みの地中海クルーズで首都チュニスに寄港しました。これがあるからこの航路を選択しました。そして憧れのカルタゴ遺跡を見ました。遺跡好きは筋金入りと自負しますが、掘ってみたいというのはなく、その地に立って歴史に思いをはせれば充分。至ってミーハーのレベルですが、そこで生活し、政治を行い、戦争をした人々と同じ目線になって時間を過ごせば「気」がチャージされます。地中海ではフォロ・ロマーノ、ポンペイ、クノッソス、リンドスなど何度でも行きたい場所です。ローマ史好きの方であればご理解いただけると思います。

カルタゴの遺跡

カルタゴはフェニキア人の植民都市ですが、彼らは元々いまのレバノンのあたりにいたカナン人で、鉄器でメソポタミアを統一支配した凶暴なアッシリアの重税を調達するため富を求めて地中海を西へ向かいます。それが結果オーライで、貝紫(染料)とレバノン杉を貿易財として海洋商人として大成功し、アフリカ大陸を周回したり表音文字のアルファベットを作ったりと知恵も行動力も破格で、ハンニバルのような武勇の男も出ました。

僕はなぜかローマ人より彼らにシンパシーがあります。カルタゴは3度のポエニ戦争でローマ軍の手で灰燼に帰し、男は皆殺し、残った5万人は奴隷に売られた。しかし兵士でない富裕な商人には逃げおおせた者も多かったでしょう。約千年後に現れた海洋都市国家ヴェニスは末裔が作った説があるし、遥か後世にその遺伝子を持った者が欧米に散ってロンドン、パリ、ニューヨークなどで活躍したのではないでしょうか(現にカルロス・ゴーンがいます)。フェニキア、ポエニは自称でなく、歴史を書いたローマが記してそういうことになってる。日本人がジャパニーズと呼ばれるのと同じです。千年後に日本がカルタゴになってないことを祈りながらここを後にしました。

そこから船に戻る道すがらのことです。真夏で半端な暑さじゃなく、遺跡から下ってくる道も舗装してなくてやたら埃っぽい。平地に降りたあたりでは、なにやら人がごったがえした猥雑な通りに店が並んでいます。僕はそういう超ローカルなものに目がなく、左側の一番手前の屋台みたいな土産屋を冷かしました。黒人のオヤジがいいカモが来たと思ったんでしょう、「ヘイ!このドラムどうだ、いい音がするよ、安くしとくぜ」と太鼓をポンポン叩きながら売り込んできたのです。それが写真です。ご覧のとおり、安物の陶器にアバウトに革を張っただけのシロモノです。しかし意外に高めのピッチで悪くなく、それに関心を見せたのがいけなかった。

チュニジアの太鼓

「どこから来た?日本?遠い国だな。10ドルでいいよ」とわけがわからない。「高い」「そんなことはない、お買い得だ」「いらん」「OK、じゃあいくらなら買うんだ?」手慣れたもんです。隣で家内が「そんなのスイスにどうやって持って帰るのよ、やめときなさい」と怒ってるし、断わるつもりで適当に「2ドル」と言ったらオヤジはがっかりの表情になり、「Jokin’!」とか何とかぐちゃぐちゃ文句を言いはじめた。そして数秒後にあっさりとまさかの2ドルになったのです。しまった、1ドルだったかと思ったが、そういう問題ではなかった。1週間のクルーズで荷物が山ほどあるうえに幼い子供が3人もいて、そこで結構デカいこいつをかかえて帰らざるを得なくなって、あきれた家内の非難ごうごうとあいなったのでした。でも、こんなもん日本で売ってないだろうし買う馬鹿もいないだろうし、今や愛着すらあって家宝に指定したいとすら思ってます。

こいつのお陰で楽しみができたという恩義もあります。脇に置いてムードを出しながら、地中海地図を見て古代オリエント世界を空想するのです。格好のエネルギーチャージであり、ストレス解消でもあります。大陸側のポルトガル、スペイン、フランス、イタリアの要所は車で、主な島とエーゲ海、アドリア海は2度のクルーズで、アフリカ側はモロッコ、そして今回のチュニジアへ行っており、空想はそこそこリアル感があります。

1年ほど前ですが、家でそういう事を話していたんでしょう、娘たちが3度目をプレゼントするよと言ってくれ喜んでいたのです。そうしたらクルーズ船は横浜のことがあって危ない存在になってしまった。困ったもんです。何故なら、数えきれないほど海外で旅行をして一部は行ったことさえ忘れてるのですが、ベスト1,2位は32才、41才で家族を連れて行った2度の地中海クルーズだった。はっきりと細かいことまで覚えてるのはあれしかないぐらい楽しかったからです。

「チュニジアの夜」をききながら決めました。もう一度行くぞ、マスクをして。

 

(おすすめ)

地中海にまつわるクラシック音楽はこちらにまとめました。音で旅行できますのでごゆっくりお楽しみください。

______地中海めぐり編

ソナー・メンバーズ・クラブのHPは http://sonarmc.com/wordpress/ をクリックして下さい。

安い女

2020 SEP 20 14:14:17 pm by 東 賢太郎

「ワタシ、そんな安い女に見える?」。どういう成り行きだったか、言われてぎょっとしたことがある。いつどこだったのかさっぱり覚えがないからひょっとして夢だったかと思うが、たぶんそうじゃない。女が酔っ払っていたのを覚えてるからだ。いくら若いころでも見知らぬ酔客を口説くなんてことは僕はない。しかし、それなら、じゃあなんだったのか、まったくわからないのである。

安い男ってのはない。男の価値はカネで測れない暗黙の了解があって、口にしたら血を見るかもしれない。もちろん女だってそうなのだが、それを自らぶち破る言葉が飛び出したものだからぎょっとしたのだ。およそ品はないが今になってなかなかハードボイルドである、アイリッシュの幻の女はきっとそんなだったろうという気がしないでもない。

なぜって、「安い」というところに有無をいわせぬインパクトがあるではないか。「兄ちゃん、わて、そんな安もんとちゃいまんねん」こう来たら笑って返すのだ。「おおこわ、高うつきそうでんな」。大阪は都構想が無くても一個の国である。商都文化の蘊蓄でできた大人の練れまくった会話が街でも漫才でも並立する。東京の人間関係は浅薄なもんだ、この会話が成り立たないのだ。

「罪と罰」で高利貸しの老婆を殺したインテリ頭のラスコーリニコフに罪を告白させ自首させるのは、他の誰でもない、売春婦のソーニャである。ロシア正教を盲目的に信じる無知な女だが、地球が太陽を回ってることを知らなくても女は男を動かせる。もしも僕が演出家でこの劇をやったら、インテリ頭は東京弁に、ソーニャは迷うことなく大阪弁にする。

東京ドームで阪神戦を観ると、あなたは7回の表と裏に2度、古関裕而の名曲を聞くことになるだろう。「六甲おろし」と「闘魂こめて」である。福島生まれの作曲家が音で描いた大阪と東京にどちらのファンも何ら違和感なく浸っているが、そんなのはかわいいもんだ、彼は国家も描ける。「東京オリンピックマーチ」である。まさにTPOを心得たモーツァルトの職人技だ、感嘆するしかない。

甲子園に鳴り響く勝利チームの校歌はあまりにつまらなくていつも早く終わらんかなと思ってる。2,3分で限られたコード進行でやれというのも無理があろうが、大方が作曲が素人くさい。安いのである。かたや、こういうのを我々は知っている。本邦音楽史上、最高傑作の一つである涅槃交響曲の作曲家、黛敏郎のNTVスポーツ行進曲だ。

たった1分。それでこのインパクトである。校歌ではないが条件は一緒だ。その昔、プロ野球は巨人、巨人は日テレだった時代、この曲を聴くと胸が高鳴った。サビの部分があって普通そこまで行かないが、このビデオのメインテーマの1分で心拍数が2,3割増え、しかも、何度聴いても飽きないのである。そういう音楽をクラシックと呼ぶのだ。要するに、高い音楽である。

この「題名のない音楽界」は今もやっているが素晴らしい番組だ。大衆は安い音楽しか知らない。高い音楽の一端をわかりやすく教えてくれ僕もとても勉強になったが、収録当時の会場にいる聴衆もこうして見るとそこそこレベルが高そうだ。紅白歌合戦とは違う。黛さんは「スポーツなんかいらない」とのたまわっている。僕はそうは思わないが、音楽家にはきっといらないだろう。というより、サッカーもやりますロックも好きです実はオモロイ人ですよなんてのは、本当にそうなら結構だが、大衆に寄せようという醜い欺瞞以外の何物でもない。

「ワタシ、そんな安い音楽家に見える?」

モーツァルトはいつもそう言いながら欲求は満たされず死んだが、その音楽は高かった。ゴッホの絵は生前は数枚しか売れなかったが、けっして安い画家でなかったことが後日わかる。

大衆に寄せようという欺瞞を盛大に執り行っているうちに、存在そのものが欺瞞な人の集団になってしまったのが今の日本国の政治だ。したがって、後日になればなるほどその安さが見えてくるだろう。

「ワタシ、そんな安い政治家に見える?」

吹けば飛ぶような安い、騒音でしかない常套文句を選挙カーから垂れ流して実は組織票だけ狙ってるアナタ。とっても安いですね。

ヘタすると、あと2,30年もすれば、日本が安い国になってしまわないだろうか?スポーツ行進曲に拍手していた年輩の聴衆の大半はもう世におられないだろう。文化が世代と共に廃退するなら危険だ。強く主張するが、政治は若い世代にまかせるべきである。爺いは退場だ。当たり前だろう、我が世を謳歌した世代が使いまくった膨大な債務を背負うのは彼らだからだ。そして、我が世代は、文化を継承するのである。コロナに負けて灯を消してはいけない。

ソナー・メンバーズ・クラブのHPは http://sonarmc.com/wordpress/ をクリックして下さい。

大ダメージになった我が家の地下浸水

2020 SEP 7 13:13:59 pm by 東 賢太郎

「最近、投稿減りましたね」といわれた。実は豪雨による浸水で地下の音楽室がめちゃくちゃになり、ショックから立ち直れていない。LPレコード200枚と昔のプログラムが泥水に浸かってしまい、ジャケットは見る影もなく、音溝にも泥が入ってしまったからもうだめだろう。

突然停電があって、地域ぜんぶかと思ってしばらく待っていたらそうではなく、パティオの排水溝がつまって水位がポンプの電源まで上昇し、ショートしてブレーカーが飛んだ。その水が乾燥機のパイプから逆流して勢いよく噴き出すという信じ難いことが起きていた。息子が奮闘して水はなんとか止まったが、唖然としてモノが言えない。住建会社が夜中2時までかけてポンプを入れ替えた。家の機能的にはもう大丈夫のようだが失ったものは保険でどうにもならない。

200枚についてはもうふれたくないが、それぞれいつどこで買ったか覚えている自分史みたいなものだ。ジャケットとプログラムは一枚一枚べたべたの泥水を水道で洗い流し、消毒液でふき取り、居間一面に盛大に広げて乾かしていたら家中すごいにおいで中毒になりかかった。これで二日徹夜した。ドライヤーで乾かすのにもう二昼夜かかった。とはいえこんな程度のことでこれだ、岡山や広島や熊本の被災地の方の大変さが身に染みた。

悪いことに、仕事が佳境に入っているさなかだったからこたえた。がっくりきた。もう心身ともに無理がきかないことが良く分かった。

気の持ちようも変わった。もう、これからは健康第一しかない。あれもこれもできない。

ということで、そうなってしまっています。

 

ソナー・メンバーズ・クラブのHPは http://sonarmc.com/wordpress/ をクリックして下さい。

ランナーズ・ハイ

2020 AUG 7 17:17:48 pm by 東 賢太郎

4か月のステイホームで体重は増え、足はてきめんに弱った。ダブルパンチだ。スクワットどころか、立ち上がるのに膝が痛い。靴下を立ってはくのによろける。走りたかったがこういう時に限って梅雨明けが遅いのは困ったもので、7月24日にはじめてセミの声を聞いて、いよいよかと思ったらまた雨だ。

やっと外へ出られたのは29日だ。小雨の日もあったがもう無視である。そこから9日連続で毎日5~10キロは走っている。世間は熱中症がどうのと騒いでるがそれどころではない。4か月のツケは大きいのだ。体重は1キロしか落ちないし体脂肪もBMIもだめだ。もっとやるっきゃない。

例年だとこの時期は甲子園で気持ちがもりあがって自然に走るが、今年はそれもない。だんだん修行の感じになってくるが、昔からそれが苦手だ。トレーニングマシンでハツカネズミみたいに走るのは続かない。現役時代も、投手は鬼のように走らされるが、あればっかりは地獄だった。

そうも言ってられない、メタボは寿命が縮むぞという恐怖感から走ってるわけだが、9日目のきのう、妙なことに気がついた。走りながら「ちょっと眠いな」と思ったのである。そこの草むらに横になれば5秒で寝られそうだ。それどころか、このまま走りながらでもOKじゃないか?

それってランナーズ・ハイですよと言われてネットで調べた。たしかに、1時間も走ると脳内に麻薬のような快感物質が出て恍惚感にひたる人がいるらしい。どこまででも走れる気になると書いてあるが、思い当たる。ペースはすごくゆっくりではあるが、息も切れてないし苦痛は何もないのもそのとおりだ。

科学的な説明はよくわからないが、太古の昔、狩猟時代の人類に脳が与えた「ご褒美」だという説がwikipediaに書いてある。毎日走って獲物を追いかけさせないと餓え死にするからだ。その仕組みが、デブは早死にするぞと食いすぎの現代人を走らせてるなら皮肉なものだ。

昔から苦手と書いたけれど、高校、大学とも中距離(1500メートル)はクラスで一番だった。人生ベストである高校のタイムが5分15秒だ。しかし、このタイムで1万メートルを走っても35分ほどで、箱根駅伝の走者は30分ほどだからひと区間走れば10分も差がついてしまう。とうてい陸上はダメだったことがわかる。

しかし、レースが気温35度の炎天下ならどうだろう。夏が本番の野球部はけっこう強いと思う。その中で厚手のシャツとユニホームに紺の帽子までかぶって毎日7キロ走ったのだ。高校球児に熱中症など恐れる者はいない。65のジジイになっても、女房・娘は心配するが、40度あっても僕は絶対に倒れない自信がある。

きょうはZOOM会議を3つ、つごう4時間やった。頭はくらくらで倒れそうだ。仕方ない、じゃあそろそろ走りに出かけよう。

ソナー・メンバーズ・クラブのHPは http://sonarmc.com/wordpress/ をクリックして下さい。

それでも若者は旅に出ろ

2020 AUG 1 23:23:01 pm by 東 賢太郎

放課後に遠くまで出歩いて家に帰ってこない子供だった。何度も「お前は鉄砲玉だ」と父に罵倒されたが癖は治らず、ある日のこと、つい暗くなるまで遊んでしまって親父が帰宅してたらやばいと全力で走って帰ったら、警察に届ける寸前で近所が大騒ぎになっていた。高校まではおとなしくしていたが、大学に入るとアメリカに2度、西と東に飛び出し、どっちも1か月の雲隠れで家には電話もいれず鉄砲玉に戻った。海外に出る縁のある家系で、祖父はアメリカに野球をしに行って勤務は上海だったし、祖母の叔父は陸軍でドイツ駐在し台湾軍司令官を1年やっており、自分の鉄砲玉人生には見えない引力が働いていたと感じる。

当然、ステイホームは辞書にない。ZOOMで仕事が回ることがわかったが、執務する書斎が寝室でもあるからともするとステイルームになってしまい、それはもっと辞書にない。自宅がオフィス化してしまって寝ても覚めても仕事になり、気がつくと休息する場所がなくなっているのは困ったもので、僕は発想が命だから気分転換が必要である。そこで、危うくなったと感じるとジョギングに出る。多摩川は右へ行っても左へ行っても決まった道で飽きたので、近ごろは近隣の住宅街コースのほうが気に入っている。二子玉川方面に気の向くままに走るとだいたい5~10キロにはなり、ちょっとしたお出かけ気分にもなれる。

等々力不動尊

たとえば走って10分の等々力渓谷に日本庭園があり書院で休む。なかなかの風情だ。渓谷の底を流れる矢沢川沿いはこんもり茂った木々の谷間で昼でも薄暗く、気温も心なしか低い。およそ東京と思えぬ森林浴の遊歩道である。滝の横にある石段を登ると等々力不動尊だ。ここの境内に漂う密教的な雰囲気は高野山金剛峯寺で感じたものを想起させる。境内の椅子で心を無にする。落ち着くが、その理由を見つけるのは難しい。

もうちょっと走って第3京浜の先に広大な森のある小佐野邸、上野毛をもうすこし行って美術館のある五島邸がある。その先の瀬田のセント・メリーズ・インターナショナル・スクール界隈は外国人も多く教会もあって、そういえばチューリヒで娘をインターに入れたが、そこでは逆に我々が外国人でやっぱりこんな感じの高台だったのを思い出す。瀬田の国分寺崖線(ガケ)の上側沿いは、豪壮な家並みの佇まいが鉄砲玉のころ徘徊した成城と似た風情である。多摩川に向かって坂を下るとニコタマだ。僕が高校にあがった年に高島屋ができて洒落た感じになったが、昔は玉電の操車場と二子玉川園がある川辺の駅だった。

ここから川の下流にかけて、崖線の上側の見晴らしのよい丘には4,5世紀の古墳がたくさんある。遺跡好きなのでこれがまた魅力だ。世田谷区内に80基の古墳があるがいずれも多摩川沿いの高台か崖線の斜面上に位置する。野毛大塚古墳はこの中でも最大で多摩、川崎あたり全域の支配者の墓らしく大ぶりだ。もう少し下流の尾山台に来ると狐塚古墳があり、5世紀第4四半期造営とわかっている。さらに進むと皇后雅子さまの田園調布雙葉学園(でんふた)がある。白い校舎が美しいこの学校は急斜面の広大な崖一面を占めており、古墳に祭られる豪族の首長やカトリック教会の設計者と共通するジオポリティックな発想を感じる。学校は30mほどの高低差があり、近場で済ましたいときはこれを2、3周するだけで手軽にへとへとになれる。さらに行くと大田区になり、V9時代の巨人軍が使った多摩川グラウンドがある。

多摩川台公園からの眺め(川の右手が巨人軍グラウンド)

多摩川台公園は広々した敷地にやはり古墳がたち並び、古代豪族が選んだ土地だったことをうかがわせる。遊歩道のベンチから臨む富士山を背景にする多摩川上流の遠望は素敵で大好きだ。先祖を祭ったのだから1500年前の人もこの景色が美しいと思ったに違いなく、人間の美感は何年たっても変わらないものだと実感する。カンヌ、ニースを初めて旅した時もこれに似た景色に打ち震える感動があって、それから地中海のマニアになった。そうしたちょっとしたことに心を揺さぶられるのは旅の醍醐味である。

ここあたりが国分寺崖線の終点になる。登って田園調布駅へ向かうとここはここで著名人の邸宅が立ち並び、走りながら目の保養になる。以上書いてきた行程をお弁当を持ってきて散歩するだけで一日充分に楽しめるからマイクロ・ツーリズムのバジェット版といえるかもしれない。宿泊も食事もしないから経済貢献はなく、奨励しても政府にはありがたくないだろうがステイホームで鬱病になってしまうよりましである。ちょっとした感動は探せばどこにもあることを知るのは、人生をリッチにする最高の知恵になる。

コロナで旅行というものが難しくなり、ワクチンができてもウィルスが消えるわけではないから我々年配者にとっては恒久的にそうなるかもしれない。「リスクは減ったけどゼロではありません、それでも行きますか?」という時代になるのだろうか。とすると外国に行く前に当地のコロナ病床数の空き具合をいちいちチェックするのだろうか。「一度は行ってみたい」が旅の動機の大半とすると、僕は欧米もアジアも観光地はみな行ってしまったのがむしろハンディだ。ポートダグラス(豪)のシェラトンミラージュのあの部屋みたいなリピート型以外はもう積極的にリスクを取る気にはなれなくなってしまう気がする。

ただ、本稿の最後のメッセージとして若者に贈りたいことばがある。僕は大坂の2年半、海外の16年を足した18年半を「旅先」で過ごした。モーツァルトが人生の3割を旅していたのは有名だが、僕も人生の3割は旅だった。だから何が良かったということではない、なんとも面白い、エキサイティングで濃い人生を送らせてもらってありがとうということだ。旅先で知り合った家内がそれをすべて支えてくれ、子供もみな旅先で生まれた。仕事も、記憶に残るエポックメーキングなディールはみな旅先でやった。もし東京にずっといる仕事を選んでいたら、楽だったろうがこんな人生は100%あり得なかった。両親にとっては最後まで「鉄砲玉」だったが、感謝あるのみだ。若者は知恵を絞ってコロナを攻略しろ、そして、恐れずに、それでも旅に出ろ。

 

ソナー・メンバーズ・クラブのHPは http://sonarmc.com/wordpress/ をクリックして下さい。

▲TOPへ戻る

厳選動画のご紹介

SMCはこれからの人達を応援します。
様々な才能を動画にアップするNEXTYLEと提携して紹介しています。

たむらあやこ
久保大樹
深田崇敬