Sonar Members Club No.1

カテゴリー: 徒然に

安い女

2020 SEP 20 14:14:17 pm by 東 賢太郎

「ワタシ、そんな安い女に見える?」。どういう成り行きだったか、言われてぎょっとしたことがある。いつどこだったのかさっぱり覚えがないからひょっとして夢だったかと思うが、たぶんそうじゃない。女が酔っ払っていたのを覚えてるからだ。いくら若いころでも見知らぬ酔客を口説くなんてことは僕はない。しかし、それなら、じゃあなんだったのか、まったくわからないのである。

安い男ってのはない。男の価値はカネで測れない暗黙の了解があって、口にしたら血を見るかもしれない。もちろん女だってそうなのだが、それを自らぶち破る言葉が飛び出したものだからぎょっとしたのだ。およそ品はないが今になってなかなかハードボイルドである、アイリッシュの幻の女はきっとそんなだったろうという気がしないでもない。

なぜって、「安い」というところに有無をいわせぬインパクトがあるではないか。「兄ちゃん、わて、そんな安もんとちゃいまんねん」こう来たら笑って返すのだ。「おおこわ、高うつきそうでんな」。大阪は都構想が無くても一個の国である。商都文化の蘊蓄でできた大人の練れまくった会話が街でも漫才でも並立する。東京の人間関係は浅薄なもんだ、この会話が成り立たないのだ。

「罪と罰」で高利貸しの老婆を殺したインテリ頭のラスコーリニコフに罪を告白させ自首させるのは、他の誰でもない、売春婦のソーニャである。ロシア正教を盲目的に信じる無知な女だが、地球が太陽を回ってることを知らなくても女は男を動かせる。もしも僕が演出家でこの劇をやったら、インテリ頭は東京弁に、ソーニャは迷うことなく大阪弁にする。

東京ドームで阪神戦を観ると、あなたは7回の表と裏に2度、古関裕而の名曲を聞くことになるだろう。「六甲おろし」と「闘魂こめて」である。福島生まれの作曲家が音で描いた大阪と東京にどちらのファンも何ら違和感なく浸っているが、そんなのはかわいいもんだ、彼は国家も描ける。「東京オリンピックマーチ」である。まさにTPOを心得たモーツァルトの職人技だ、感嘆するしかない。

甲子園に鳴り響く勝利チームの校歌はあまりにつまらなくていつも早く終わらんかなと思ってる。2,3分で限られたコード進行でやれというのも無理があろうが、大方が作曲が素人くさい。安いのである。かたや、こういうのを我々は知っている。本邦音楽史上、最高傑作の一つである涅槃交響曲の作曲家、黛敏郎のNTVスポーツ行進曲だ。

たった1分。それでこのインパクトである。校歌ではないが条件は一緒だ。その昔、プロ野球は巨人、巨人は日テレだった時代、この曲を聴くと胸が高鳴った。サビの部分があって普通そこまで行かないが、このビデオのメインテーマの1分で心拍数が2,3割増え、しかも、何度聴いても飽きないのである。そういう音楽をクラシックと呼ぶのだ。要するに、高い音楽である。

この「題名のない音楽界」は今もやっているが素晴らしい番組だ。大衆は安い音楽しか知らない。高い音楽の一端をわかりやすく教えてくれ僕もとても勉強になったが、収録当時の会場にいる聴衆もこうして見るとそこそこレベルが高そうだ。紅白歌合戦とは違う。黛さんは「スポーツなんかいらない」とのたまわっている。僕はそうは思わないが、音楽家にはきっといらないだろう。というより、サッカーもやりますロックも好きです実はオモロイ人ですよなんてのは、本当にそうなら結構だが、大衆に寄せようという醜い欺瞞以外の何物でもない。

「ワタシ、そんな安い音楽家に見える?」

モーツァルトはいつもそう言いながら欲求は満たされず死んだが、その音楽は高かった。ゴッホの絵は生前は数枚しか売れなかったが、けっして安い画家でなかったことが後日わかる。

大衆に寄せようという欺瞞を盛大に執り行っているうちに、存在そのものが欺瞞な人の集団になってしまったのが今の日本国の政治だ。したがって、後日になればなるほどその安さが見えてくるだろう。

「ワタシ、そんな安い政治家に見える?」

吹けば飛ぶような安い、騒音でしかない常套文句を選挙カーから垂れ流して実は組織票だけ狙ってるアナタ。とっても安いですね。

ヘタすると、あと2,30年もすれば、日本が安い国になってしまわないだろうか?スポーツ行進曲に拍手していた年輩の聴衆の大半はもう世におられないだろう。文化が世代と共に廃退するなら危険だ。強く主張するが、政治は若い世代にまかせるべきである。爺いは退場だ。当たり前だろう、我が世を謳歌した世代が使いまくった膨大な債務を背負うのは彼らだからだ。そして、我が世代は、文化を継承するのである。コロナに負けて灯を消してはいけない。

 

大ダメージになった我が家の地下浸水

2020 SEP 7 13:13:59 pm by 東 賢太郎

「最近、投稿減りましたね」といわれた。実は豪雨による浸水で地下の音楽室がめちゃくちゃになり、ショックから立ち直れていない。LPレコード200枚と昔のプログラムが泥水に浸かってしまい、ジャケットは見る影もなく、音溝にも泥が入ってしまったからもうだめだろう。

突然停電があって、地域ぜんぶかと思ってしばらく待っていたらそうではなく、パティオの排水溝がつまって水位がポンプの電源まで上昇し、ショートしてブレーカーが飛んだ。その水が乾燥機のパイプから逆流して勢いよく噴き出すという信じ難いことが起きていた。息子が奮闘して水はなんとか止まったが、唖然としてモノが言えない。住建会社が夜中2時までかけてポンプを入れ替えた。家の機能的にはもう大丈夫のようだが失ったものは保険でどうにもならない。

200枚についてはもうふれたくないが、それぞれいつどこで買ったか覚えている自分史みたいなものだ。ジャケットとプログラムは一枚一枚べたべたの泥水を水道で洗い流し、消毒液でふき取り、居間一面に盛大に広げて乾かしていたら家中すごいにおいで中毒になりかかった。これで二日徹夜した。ドライヤーで乾かすのにもう二昼夜かかった。とはいえこんな程度のことでこれだ、岡山や広島や熊本の被災地の方の大変さが身に染みた。

悪いことに、仕事が佳境に入っているさなかだったからこたえた。がっくりきた。もう心身ともに無理がきかないことが良く分かった。

気の持ちようも変わった。もう、これからは健康第一しかない。あれもこれもできない。

ということで、そうなってしまっています。

 

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ランナーズ・ハイ

2020 AUG 7 17:17:48 pm by 東 賢太郎

4か月のステイホームで体重は増え、足はてきめんに弱った。ダブルパンチだ。スクワットどころか、立ち上がるのに膝が痛い。靴下を立ってはくのによろける。走りたかったがこういう時に限って梅雨明けが遅いのは困ったもので、7月24日にはじめてセミの声を聞いて、いよいよかと思ったらまた雨だ。

やっと外へ出られたのは29日だ。小雨の日もあったがもう無視である。そこから9日連続で毎日5~10キロは走っている。世間は熱中症がどうのと騒いでるがそれどころではない。4か月のツケは大きいのだ。体重は1キロしか落ちないし体脂肪もBMIもだめだ。もっとやるっきゃない。

例年だとこの時期は甲子園で気持ちがもりあがって自然に走るが、今年はそれもない。だんだん修行の感じになってくるが、昔からそれが苦手だ。トレーニングマシンでハツカネズミみたいに走るのは続かない。現役時代も、投手は鬼のように走らされるが、あればっかりは地獄だった。

そうも言ってられない、メタボは寿命が縮むぞという恐怖感から走ってるわけだが、9日目のきのう、妙なことに気がついた。走りながら「ちょっと眠いな」と思ったのである。そこの草むらに横になれば5秒で寝られそうだ。それどころか、このまま走りながらでもOKじゃないか?

それってランナーズ・ハイですよと言われてネットで調べた。たしかに、1時間も走ると脳内に麻薬のような快感物質が出て恍惚感にひたる人がいるらしい。どこまででも走れる気になると書いてあるが、思い当たる。ペースはすごくゆっくりではあるが、息も切れてないし苦痛は何もないのもそのとおりだ。

科学的な説明はよくわからないが、太古の昔、狩猟時代の人類に脳が与えた「ご褒美」だという説がwikipediaに書いてある。毎日走って獲物を追いかけさせないと餓え死にするからだ。その仕組みが、デブは早死にするぞと食いすぎの現代人を走らせてるなら皮肉なものだ。

昔から苦手と書いたけれど、高校、大学とも中距離(1500メートル)はクラスで一番だった。人生ベストである高校のタイムが5分15秒だ。しかし、このタイムで1万メートルを走っても35分ほどで、箱根駅伝の走者は30分ほどだからひと区間走れば10分も差がついてしまう。とうてい陸上はダメだったことがわかる。

しかし、レースが気温35度の炎天下ならどうだろう。夏が本番の野球部はけっこう強いと思う。その中で厚手のシャツとユニホームに紺の帽子までかぶって毎日7キロ走ったのだ。高校球児に熱中症など恐れる者はいない。65のジジイになっても、女房・娘は心配するが、40度あっても僕は絶対に倒れない自信がある。

きょうはZOOM会議を3つ、つごう4時間やった。頭はくらくらで倒れそうだ。仕方ない、じゃあそろそろ走りに出かけよう。

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それでも若者は旅に出ろ

2020 AUG 1 23:23:01 pm by 東 賢太郎

放課後に遠くまで出歩いて家に帰ってこない子供だった。何度も「お前は鉄砲玉だ」と父に罵倒されたが癖は治らず、ある日のこと、つい暗くなるまで遊んでしまって親父が帰宅してたらやばいと全力で走って帰ったら、警察に届ける寸前で近所が大騒ぎになっていた。高校まではおとなしくしていたが、大学に入るとアメリカに2度、西と東に飛び出し、どっちも1か月の雲隠れで家には電話もいれず鉄砲玉に戻った。海外に出る縁のある家系で、祖父はアメリカに野球をしに行って勤務は上海だったし、祖母の叔父は陸軍でドイツ駐在し台湾軍司令官を1年やっており、自分の鉄砲玉人生には見えない引力が働いていたと感じる。

当然、ステイホームは辞書にない。ZOOMで仕事が回ることがわかったが、執務する書斎が寝室でもあるからともするとステイルームになってしまい、それはもっと辞書にない。自宅がオフィス化してしまって寝ても覚めても仕事になり、気がつくと休息する場所がなくなっているのは困ったもので、僕は発想が命だから気分転換が必要である。そこで、危うくなったと感じるとジョギングに出る。多摩川は右へ行っても左へ行っても決まった道で飽きたので、近ごろは近隣の住宅街コースのほうが気に入っている。二子玉川方面に気の向くままに走るとだいたい5~10キロにはなり、ちょっとしたお出かけ気分にもなれる。

等々力不動尊

たとえば走って10分の等々力渓谷に日本庭園があり書院で休む。なかなかの風情だ。渓谷の底を流れる矢沢川沿いはこんもり茂った木々の谷間で昼でも薄暗く、気温も心なしか低い。およそ東京と思えぬ森林浴の遊歩道である。滝の横にある石段を登ると等々力不動尊だ。ここの境内に漂う密教的な雰囲気は高野山金剛峯寺で感じたものを想起させる。境内の椅子で心を無にする。落ち着くが、その理由を見つけるのは難しい。

もうちょっと走って第3京浜の先に広大な森のある小佐野邸、上野毛をもうすこし行って美術館のある五島邸がある。その先の瀬田のセント・メリーズ・インターナショナル・スクール界隈は外国人も多く教会もあって、そういえばチューリヒで娘をインターに入れたが、そこでは逆に我々が外国人でやっぱりこんな感じの高台だったのを思い出す。瀬田の国分寺崖線(ガケ)の上側沿いは、豪壮な家並みの佇まいが鉄砲玉のころ徘徊した成城と似た風情である。多摩川に向かって坂を下るとニコタマだ。僕が高校にあがった年に高島屋ができて洒落た感じになったが、昔は玉電の操車場と二子玉川園がある川辺の駅だった。

ここから川の下流にかけて、崖線の上側の見晴らしのよい丘には4,5世紀の古墳がたくさんある。遺跡好きなのでこれがまた魅力だ。世田谷区内に80基の古墳があるがいずれも多摩川沿いの高台か崖線の斜面上に位置する。野毛大塚古墳はこの中でも最大で多摩、川崎あたり全域の支配者の墓らしく大ぶりだ。もう少し下流の尾山台に来ると狐塚古墳があり、5世紀第4四半期造営とわかっている。さらに進むと皇后雅子さまの田園調布雙葉学園(でんふた)がある。白い校舎が美しいこの学校は急斜面の広大な崖一面を占めており、古墳に祭られる豪族の首長やカトリック教会の設計者と共通するジオポリティックな発想を感じる。学校は30mほどの高低差があり、近場で済ましたいときはこれを2、3周するだけで手軽にへとへとになれる。さらに行くと大田区になり、V9時代の巨人軍が使った多摩川グラウンドがある。

多摩川台公園からの眺め(川の右手が巨人軍グラウンド)

多摩川台公園は広々した敷地にやはり古墳がたち並び、古代豪族が選んだ土地だったことをうかがわせる。遊歩道のベンチから臨む富士山を背景にする多摩川上流の遠望は素敵で大好きだ。先祖を祭ったのだから1500年前の人もこの景色が美しいと思ったに違いなく、人間の美感は何年たっても変わらないものだと実感する。カンヌ、ニースを初めて旅した時もこれに似た景色に打ち震える感動があって、それから地中海のマニアになった。そうしたちょっとしたことに心を揺さぶられるのは旅の醍醐味である。

ここあたりが国分寺崖線の終点になる。登って田園調布駅へ向かうとここはここで著名人の邸宅が立ち並び、走りながら目の保養になる。以上書いてきた行程をお弁当を持ってきて散歩するだけで一日充分に楽しめるからマイクロ・ツーリズムのバジェット版といえるかもしれない。宿泊も食事もしないから経済貢献はなく、奨励しても政府にはありがたくないだろうがステイホームで鬱病になってしまうよりましである。ちょっとした感動は探せばどこにもあることを知るのは、人生をリッチにする最高の知恵になる。

コロナで旅行というものが難しくなり、ワクチンができてもウィルスが消えるわけではないから我々年配者にとっては恒久的にそうなるかもしれない。「リスクは減ったけどゼロではありません、それでも行きますか?」という時代になるのだろうか。とすると外国に行く前に当地のコロナ病床数の空き具合をいちいちチェックするのだろうか。「一度は行ってみたい」が旅の動機の大半とすると、僕は欧米もアジアも観光地はみな行ってしまったのがむしろハンディだ。ポートダグラス(豪)のシェラトンミラージュのあの部屋みたいなリピート型以外はもう積極的にリスクを取る気にはなれなくなってしまう気がする。

ただ、本稿の最後のメッセージとして若者に贈りたいことばがある。僕は大坂の2年半、海外の16年を足した18年半を「旅先」で過ごした。モーツァルトが人生の3割を旅していたのは有名だが、僕も人生の3割は旅だった。だから何が良かったということではない、なんとも面白い、エキサイティングで濃い人生を送らせてもらってありがとうということだ。旅先で知り合った家内がそれをすべて支えてくれ、子供もみな旅先で生まれた。仕事も、記憶に残るエポックメーキングなディールはみな旅先でやった。もし東京にずっといる仕事を選んでいたら、楽だったろうがこんな人生は100%あり得なかった。両親にとっては最後まで「鉄砲玉」だったが、感謝あるのみだ。若者は知恵を絞ってコロナを攻略しろ、そして、恐れずに、それでも旅に出ろ。

 

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きざみニンニク殺人事件

2020 JUL 24 0:00:03 am by 東 賢太郎

「もういいかい?」「まあだだよ」

“かくれんぼ” をしていると、見つかりにくそうな場所は取り合いになる。すばしこい子にさっと入られてしまったり、大きい子にはじかれたりする。僕は体が小さくて体力勝負で負けた。つまんない所に隠れて、真っ先に見つかって鬼なのだ。しかし、ある日の事、いい作戦を思いついた。いま自分が見つかって失敗した場所は、次のラウンドではみんな危ないと思って隠れない。僕もドジを踏んだ場所を最初に探す気がしない。そうか、鬼になった子がつかまった場所に隠れればいいかもしれない?やってみると図星だった。この計略には長所、短所があることもわかった。長所は、何も考えなくていいということ。短所は、何も考えてない鬼には効き目がないということだった。

子供でも因果関係はわかる、当然だ。道具を使える猿もわかっているし、カラスは胡桃(くるみ)の実を道路において車のタイヤに轢かせて割る。「因」を観察して「果」を予測している。これがインテリジェンスで、動物にもそれはある。「情報」を「因」という形で処理できるからだが、情報は見たり聞いたり嗅いだりして集めるわけだ。その能力は動物によって千差万別で、犬の嗅覚は人の100万倍~1億倍だから、匂いにおいて犬は想像を絶する世界に生きている。雪の下にいるネズミを何メートも先から嗅ぎ分け、走って行って真上から飛び込んでつかまえるキツネは、そのインテリジェンスで狩りをして生きている。人間がキツネと同じ狩りができるロボットを作れるかどうか?できたとしても巨額の投資が必要だろう。

人間は動物よりも知性はあることになっていて、因果関係をさらに「法則性」という予見可能性の高低で分類している。「因」⇒「果」が100%起こるなら「方程式」と呼んでいる。方程式を発見すれば、それに何か「因」を代入すれば100発100中で同じ「果」が出る。だからロケットは月に命中するし、安心して人を乗せられるのだ。カラスのくるみ割りは、道が舗装してなかったり車が軽自動車だったりすれば失敗もあり得るが、かなりいい線を行っていると思う。「舗装道路」「軽自動車」はそのインテリジェンスを働かせる重要な情報であり、方程式を適用できる「因」かどうかを正確に見極めないと、胡桃は割れず食べられない。

ゴルフの上達はそれにかかっていると断言できる。まず第一にすべきことは、自分のスイングを「方程式化」することだ。つまり、同じ条件で打てば常に同じ打球が飛ぶように自分をロボットにする。現に、僕が読んだ「練習しないでシングルになれる」という本に堂々とそう書いてあり、その通りやったらなれたから、それは正しいと結論するしかない。ロボットは何も考えない。距離、高低、ライ、風・・・これらの「情報」を処理して、因果の「因」を得る。それがクラブ選択という決断だ。これで準備完了だ。あとは打つだけ。ロボットにおまかせ。もしも計略通りの結果が出る確率が8割なら、失敗した2割は情報の読み違え(「因」の判断ミス)に他ならない。あとはその精度を上げるだけだ。

以上の考え方は物事の上達のプロセスをきれいに因数分解しているのでわかりやすい。自分がなぜうまくならないのかを独習できる有用な方法だ。受験生は勉強ができるようになると思うし、ゴルフ以外のスポーツでも応用できるのではないか。僕は野球しかわからないが、特にピッチングにはほとんどそのまま適用可能である。さて、いいことばかり書いたが、実は、この方程式化のメソッドは大きな危険をはらんでいることもお示ししなくてはならない。極めて恐ろしい結末になることもあるということを。

きょう、腹がへったので台所を探検したら「揖保乃糸素麺(そうめん)」を見つけた。棚を探すと「永坂更科」のそばつゆがある(僕はそれ専門だ)。冷蔵庫に長ねぎもあるではないか。完璧だ。ゆであがりは3分ぐらい。すぐできて旨いのがいい。ねぎを蕎麦屋風に切って、素麺はザルで水を切って大椀に盛り、冷水を入れて氷をのせる。すばらしい。薬味はワサビもいいが、今日は生姜の気分である。冷蔵庫にちゃんとあった。「桃屋のきざみしょうが」である。椀にそばつゆを注ぎ、ねぎを少々、そして、きざみしょうがをたっぷり目に入れた。

食ってみて、一瞬、何がおきたか了解できなかった。なんじゃこりゃ?臭いでやっとわかった。生姜じゃない、ニンニクだったのだ。

調理に時間をかけたくない。腹はへっているし。そこで、冷蔵庫の棚の手前にニンニクがあったのが不幸だった。見かけはそっくりだ。

しかし、真の原因はそれではなかった。僕は鍋ものの時に味噌だれを自製する。なぜかというと、大阪梅田駅のカッパ横町に今もある「しゃぶ亭」さんのタレが絶品で40年前の梅田支店時代から毎週の如く通っていて、あれを自分で作りたいと毎度チャレンジしているからだ。その薬味がニンニクであり、もちろん、自分で生ニンニクを擦りおろす。

それが頭にあるから、まさか、家の冷蔵庫に「きざみ ニンニク」などという品が鎮座しているなど想像もしなかったのだ。きざみしょうががあることは知っていたから、完全にそれだと思い込み、何の疑問もなく取り出して、椀に盛大にぶちまけてしまったわけだ。

情報の見極めを間違うと、こうやって「因」が間違ってしまう。すると、「果」はまったく当たり前のように確実にやってきて、大変なことになる。仕事でやってらぞっとする。きざみしょうがと思い込んで僕はロボット化しており、何も考えず、ふたを開けても気がつかず、ちょっとゴロゴロしてるなとすら思わず、なんと臭いも感じなかった。我ながら信じ難い。

素麺はとてもまずかった。捨てようかなと思ったが、「お百姓さんが一所懸命に・・」という親の声がきこえ、ぜんぶ食べた。ちょうど刑事コロンボをやっていて、笑ってしまった。「ここがどうしても引っかかってたんです。どうして素麺のつゆにニンニクを入れたんだろうってね。おかしいでしょう?ウチのカミさんにきいたら、そんなことする人は絶対にいないって、ねっ、それでわかったんですよ、犯人はあなただって」。あるある。

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私的ポスト・コロナ序論(飛行機の終焉)

2020 JUN 11 17:17:16 pm by 東 賢太郎

これまで我々の業務はリアル(自社で会議、顧客訪問、電話)とバーチャル(メール等、ビデオ会議)に分かれてました。比率は8:2ぐらいでしたが、それがテレワークにしたこの2か月は逆転していて2:8ほどです。リアルの会議、顧客訪問がゼロになり、電話とメールはそのままで、バーチャル会議(ZOOM)が増えているという内訳です。ZOOMの利点は音質ですね。バーチャルの弱点はリアル感の欠如でしたから、飲み会ができるほどそれを補ったというのは非常に大きいメリットです。「すぐそこに相手がいる」感じは画質の良さのせいもありますが、僕的には音質がすごく評価できます。

トータルのイメージはというと、仕事の質は落ちておらず、量はむしろ増えてます。それで感染リスクゼロですから、僕の仕事かぎりで言えば、満足です。

例えば昨日はZOOMのビデオ会議が4本、ひとつ1~2時間ぐらいです。電話も数えたら23本あって増え、朝9時から午後6時まで食事もそこそこでぶっ続けでした。海外とも違和感なくでき、オフィスまで往復で2時間近く仕事できない、東京だけでも4件を一日で訪問するのは時間もコストも体力も無駄、ということを考えると業務効率もテレワークのほうが上でした。

欠点があるとすると、ZOOMは会議の両側がそれでOKという了解がないとできないことでしょう。しかしOKの輪はどんどん広がると予想します。思い出すのは「クールビズ」です。小泉首相が言いだして、即座にみんないいなと思いました。くそ暑い夏に誰もネクタイなんかしたくないのが本音です。でも「してないと無礼だ」と社会が刷り込まれていたので勇気が出ない。結局、クールビズは官庁が先陣を切ってやったのが効きました。お役所もしてないんだから俺達もしなくていいよねとなって民間にコンセンサスができ、一気に広がったのです。

昭和生まれの人しか知りませんが、1989年の昭和天皇の崩御で「歌舞音曲は控えましょう」のお触れが出たのです。このときも同じことが起きてます。当時野村証券は利益が5千億もあって儲けすぎの批判があり、カラオケで殴られた奴が出たらしいと社内で噂になりました。それでバッジは(はずすと違反なので)裏返しにつけて行くようになったのです。

ところがだんだん「接待だからってそこまでして行くか?」の空気が社内に流れ始めました。すると接待される側のお客さんもそうだよねとなってきて、「実は私、あんまり好きじゃないんです」みたいになってカラオケ接待は自然に消えました。奥様達にはわからないでしょうが、ああいうのは旦那が好きでやってるんじゃなくて、ネクタイと一緒ですね、みんなやってるから仕方ないお仕事なんで、この時も会社からやめろとなったのではなく、双方がやる意味を感じなくなって自動消滅したのです。

そんな感じで世の中はじわじわっと変わっていきます。

いま、同じことがいろんなところでコロナでおきてます。まだはっきりとは誰にも見えませんが、2,3年のうちに社会現象として出てきます。ひとことでいえば「バーチャル慣れ現象」です。長いこと家にいて誰もがネットにつながる時間が増えてます。するとだんだん、ネットで見るものをリアルだと感じられるようになってきます。無意識にそういう「置きかえ」が脳内で回路化されるからです。リモート飲み会がいい例ですが、そんなのいらんと言ってたのがやってみたらハマったという人がたくさんいます。そうやって人は環境に適応していきます。バーチャルでもおんなじだねとなってくると、リアルに高い金を払うのがアホらしくなってくる。それが人間というものです。ネクタイ、カラオケ接待は日本だけの話でしたがコロナ禍は世界共通の現象です。「バーチャル慣れ現象」はクロスボーダーで、いまは誰も予想もしてない莫大な規模で起こります。

コンコルド

その昔、エールフランスとブリティッシュ・エアが事業化したコンコルドという飛行機がありました。超音速でニューヨークからロンドンに3時間で着く。通常5時間です。2時間短縮するのに1stクラスの2倍の料金がかかります。それを払ってペイする時給の人がそんなにたくさんいますか?ということですね。いないから2003年に。コンコルド事業は潰れました。とてもわかりやすいですね。

いちど乗りましたが内部はエコノミーというか、新幹線の自由席をさらに狭くした感じです。爆音+キーンという音で2万メートルまで昇ってスピードメーターはマッハ2を超えました。ジャンボの倍です。空は成層圏で青黒く、二重ガラスの窓は空気摩擦で触るとあっちっちとなるほど熱い。高い料金払うなら1stクラスのサービス受ける方がいい、それで5時間かかってもいいと思いましたが、そんな思いを補って余りあるほど「速い」ということに価値があったのですね、当時は。搭乗記念品をいろいろくれましたが興味ないんでどっかへ行ってしまいました。思えばあれは強烈な「三密」でしたんでね、仮に復活しても誰も乗らないでしょうし、経費申請して通してくれる会社はもうないでしょう。

さように、高速で移動すると得して儲かる時代はもう完全に終わりました。ロスチャイルド家の資産はナポレオンの戦争敗北のニュースを誰より早めに仕入れたからできましたがそれは200年前の話です。今やニュースはネットで瞬時に流れますから速さの価値は確実にゼロです。まして人が短時間に行き来することに経済的優位性など既にまったくなく、もはや個人の趣味の世界でしかありません。つまり飛行機の出張などカネをどぶに捨てるようなものであり、安価で目的は100%達することのできるZOOM会議に置き換えないと株主総会で経営者が糾弾される時代に確実になっていきます

ウォーレン・バフェットはそう結論して、保有していたエアライン株を一株残らず売りました(大損にもかかわらず)。利益率の高いビジネス需要は激減して、もう元には戻らないと、つまり民間航空機はネクタイ、カラオケと同じ運命になるという読みです。僕も同感です。むかし社内で「不要不急の海外出張の禁止」とお触れが真面目に出て笑いを誘いましたが、そもそも日本の大企業のお偉いさんの海外出張は今も昔も物見遊山だったのです。だから外国行きたい人は自費で行ってねってことになります。でも三密のエコノミーなんか誰も乗りたくないからなくなって、LCCでもビジネスクラス仕様の座席になって海外旅行はこれから高くつくでしょう。僕は若者は海外へ出ないと遅れると主張してきましたが、コロナで人のモビリティが世界的に減るので条件はいっしょ、そうも言えなくなりますね。

いま個人的には温泉に行きたいです。あと日本各地のうまいものが食べたい。海外旅行は猫も杓子も行くものでなく昔のように富裕層の贅沢品に戻って、代わりに精度のいいVRが出てくるでしょうね。高性能360度ヴィジョンで完全に外国に行った気になれ、墜落の心配はないしめんどうくさい外国語をしゃべる必要もないし、実際に足を動かして歩けば名所めぐりのめちゃリアルなVR散歩ができ、恋人と手をつないでヴェルサイユ宮殿やナイアガラ瀑布で食事(マックかコンビニ弁当だけど)ができ、音もリアルにシミュレートされてウィーン国立歌劇場でオペラが高音質ヘッドホンでVRで臨場感たっぷりに観られる。ソフトは世界中を網羅してタンザニアのライオンの群れの中から南極のペンギンのコロニーから月面、火星までなんでもあり。安心だしチョイスはユニクロみたいに趣味に合わせて豊富だし、なにより激安だし、グーグルあたりが本気でやればすぐできちゃう。そうかなと思われるでしょうが、「バーチャル慣れ」に進化した人の感覚はもう今の我々と違うので、それで十分楽しめてしまうでしょう。

4,5年後にコロナのワクチンができようと致死性のウイルスは永遠に絶滅はしないから三密だけは死ぬまで避けるつもりです。となるとリアルの旅行は自分の車で行ける箱根ぐらいまで、セーブした飛行機代は宿泊と遊びに投入するという新たな重要が出てきます。ホテル、旅館もコテッジ型でクルマで到着して一切ほかの客に会わずにワールドクラスのサービスを受けられるスタイルが出るはずです。僕はオーストラリアの某ホテルのコテッジが気に入ってますが、あれが箱根か葉山あたりにできれば1か月入りびたってもいい。10なん時間も狭い機内で外国人と同じ空気を吸うのはエアロゾル感染で実に危ない。清潔で倫理観が世界一の日本にいるのが安心です。高い金払ってそんなリスクを犯さなくても東京の近場でいいところはいくらでもあるし、それに金をかけるのがカッコいいという感覚に進化して真の贅沢は近場旅行とVRという人たちが主流になるでしょう。

 

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ジョージ・フロイド事件

2020 JUN 2 13:13:36 pm by 東 賢太郎

ドイツにいたころ、チャイコフスキーの音楽というとどうもあんまり上等と思われてない気がした。部下の通にきいてみるとやっぱりそのようだ。もっと言えば、ショパンやグリーグもだめなのだ。彼はバイエルン人で年上だ。「そうかなあ、R・シュトラウスよりいいと思うよ」などというと真っ向から否定されてしまう。彼とはミュンヘンに出張してバイエルン放送響でベートーベンのコンチェルトをきいた(チョン・キョン・ファだ)。素晴らしい演奏だった。「韓国人はいいのか?」と聞いたら、「なに、彼女、日本人じゃないの?」ときた。演奏家はいいよと取ってつけたが、そのころ、博士号を持って日本企業に勤めるインテリでも東洋人の認識はそんなものだった。

ドイツ人が音楽で覇権主義なのは仕方ないと思う。自分もそうだし。イタリア、フランスは別種であり存在ぐらいは認めるがスペイン、ポルトガルは未開地、東欧は格下の親類と思ってる。ロシアや北欧は辺境であって英米などは最果ての地で無きに等しい。クラシックに浸かっていたからこういう差別的世界観は元からあったが、ドイツで彼と意気投合してさらに鉄壁となってしまったから後でずいぶん困った。というのは米国でMBAを取ったインベストメント・バンカーにとって、世界はその真逆であって英米以外は辺境の未開国だ。ユニバーサル・バンク方式という銀行支配型のドイツの田舎くさい金融など前世紀の遺物であった。野村のなかでドイツ人の言うことなど通る風土はかけらもない。文化と言えばきこえはいいし、根はたしかに文化にあることはあるのだが、人種差別とはこうやって知らず知らず心に巣食ってくるものなのだ。

アメリカにいたときは、通りにたむろしてる黒人の下衆で薄汚い奴らがあからさまに東洋人を差別してきた。体格は立派で運動能力もありそうでそれを誇るのは一理あるのだが、字も読めないどうしようもない、目があえば恐喝の危険を感じるようなグレた連中だ。イギリスもロンドンのソーホーやピカデリーあたりに怪しげな黒人はいたが、ニューヨークやフィラデルフィアで見慣れてるものだから顔が温和に見えた。僕は白人の大学に行き、ウォール街やシティの仕事をしたから目だけでなく頭も白人に感化されているに違いない。だから香港に着任した時にえも言えぬ都落ち感があった。そのフィーリングは誰にも説明できないし言葉にもならない。ドイツやスイスの何倍も大きい現法のトップで一応は出世なのに心に巣食ってしまったものが剥がれるには2年ほどかかった。

アフリカ系米国人のジョージ・フロイド氏がミネアポリスの路上で警官に殺害された動画は、僕の中にある様々なものをえぐり出した。まだ「あれ」があるのか・・・オバマの8年は何だったのか?「あれ」とは40年ほど前にマンハッタンで目撃した黒人青年の射殺死体だ。まだ息があったが救急車が来たときはもう遅く、あとに血の海が残った。映画で見るマフィアの銃撃戦がアメリカでそうそうあるわけではないが、気持ち的には日本人に理解できないほど身近で、シリコンバレーで会った男など「俺はガードが固い、金庫に銃が40丁ある」が自慢だった。その彼が丸腰で夜の街に出てロスでホールドアップを食らった話が仲間のジョークのネタになっていた。刑事コロンボで犯人の女が計略を練っていとも簡単に浮気者の亭主を撃ち殺したりするが、それがお茶の間のドラマだという点にアメリカを感じるようにならないとあの国のヤバさはわからない。

ジョージ・フロイド事件への抗議デモは各地の都市に凄まじいマグニチュードで飛び火して、5月30日のCNNを見ていたら、アトランタの、まさにそのCNN本社が襲撃されているシーンが実況中継され、夜間外出禁止令が放送中に施行時刻となったが誰も帰宅せず無視して警官隊とにらみ合っている。ニューヨークで暴徒が発生し6月1日にはついにホワイトハウス前で火の手が上がった。すでに大事件であるのに感度が悪い田舎者の日本のテレビはあんまりニュースにしない。与党も野党も東部も西部もない。トランプは連邦軍を出すと言いだしたが、選挙がまずいと思っていることだけは確実だ。香港の国家安全法批判をプロパガンダの目玉にする予定がお膝元でおんなじことになってしまったからだ。中国はざまあみろ、してやったりの声明を出しているが敵のオウンゴールで香港弾圧が正当化されるわけでもない。

1997年、米国の資本原理主義にどっぷりつかった頭で香港に赴任して、その主義に「超」がつくことを発見した驚きは忘れない。要はどちらも拝金主義なのだが、金鐘(アドミラルティ)にそびえる48階建ての遠東金融中心ビルのてかてかの金色にニューヨークでおなじみのトランプタワーを思い出し、あまりのあけすけな成金趣味に憎めないものさえあった。僕の赴任は1997年12月でパッテン総督が香港を返還して船で去ってから5か月後だ。最初の半年、あれほどに、すがすがしいほどピュアな自由主義、資本主義の息吹を僕はアメリカですら感じたことはない。低福祉、低課税。自己責任で生きろ、能力あるものは好きなだけ稼げという国である。持てる者に過剰な嫉妬もしない。お札が象徴的だ。米ドルのリザーブで発券される「HSBC」「スタンダード・チャータード銀行」「中国銀行」の3種類の同額紙幣の存在は有名だが、日本人の感覚で言うなら日銀券の威厳にほど遠く、偽造できそうだなあと思う程やっぱり軽い。英独スイスで感じたことのない軽さ。これに唯一匹敵するのは北朝鮮がせっせと偽造している米ドルだけだ。

香港人はエスニックには中国人だが、そういうことに鑑みるに、東洋人ではあっても日本人よりは遥かにアメリカ人に近い。巷の人の英語はヘタで語彙も少ないがそこそこ通じるし、立派と思うのは誰も何の抵抗もなく臆面もなくしゃべることだ。そうしないと食えないからだ。会社では社員はフレッドだシンシアだと好き勝手な英語のファーストネームを名乗り、こっちも経理部のスーザン、人事部長のフランクだなどときっちり認識している。社長が実は社員の中国名(漢字)を知らない、なんともこのポップな軽さもアメリカンっぽい。会食で使う店はみな一流だがサービス精神は誠に乏しく、給与が安いのもあるのだろうが、なにより料理が美味であればそれでいいではないかという割り切りだろう、華僑の大御所である顧客たちがサービスに文句を言ったのを見たことがない。「江蘇省・浙江省同郷會」の50がらみの給仕長だけは例外でいつも愛想がよかったが、それはチップのせいというより僕がそこの剥き海老と上海蟹が好物で真剣に世界一であると褒めた美学的な理由からだろう。

かように、香港では老若男女、職業、貧富を問わず差別というものを明白には感じたことがない。入国管理の法務局と監督官庁であるFSA(金融庁)の役人だけは偉そうだったがそれは差別ではなく役所というものの世界的特性だ。白人というと歴史の成り行きから英国人が多いが、本国でのように高飛車でない。というより当時は香港に来る階層というのはまずアッパーでもピカピカのエリートでもなく、こう書いては悪いが流れ者っぽいアジア好きか出稼ぎ感覚の連中だった。前者は結婚して土着する者も多く、もとより差別感情はない。香港は阿片戦争で英国人が暴力と麻薬で強奪した租借地だが、借款で期限切れになると延長はなく、金の卵を手中に収めようと画策する中国にすげなく追い出されたわけだ。一国二制度はその時のおためごかしの言葉だが、当時から、きわめて嘘っぽく響いており、いずれ牙をむくぞと華僑たちは警戒していた。

香港のエリート層は誇り高い。自由主義で能力を発揮して富豪に昇りつめた自負、自信にあふれた人ばかりで僕自身もああなりたいという気持をかきたてられたほどの熱量だった。もともと中国から逃避した者たちであり中共のヘゲモニーに服する気などかけらもないだろうし、台湾の商人と同じく中国を利用して儲けられるなら服したふりぐらいはするだろう。ただ、一国一制度になった瞬間に香港は香港でなくなるから中国全体の利益にはならない。香港は全体の一部分にならないゆえの「軽さ」(フレキシビリティ)が発展の原動力で、それは米国の資本主義に近いがより軽やかで独特なものである。それが能力はあるが母国では上の階級に抑えられて開花できない層を魅了してきた。その点も、欧州からメイフラワー号で流れてきた移民の国アメリカと気質が共通する要因だろうと思う。

中共がかぶせる国家安全法なる網は権力による差別である。若者が反対するのは必然だ。中国に足場のない彼らの未来がなくなってしまうからだ。ジョージ・フロイド事件とは発端は異なるものの、国家権力による弱者の蹂躙、差別への反駁デモという結果は同じである。両国の暴動をひとくくりにしてコロナに結びつけるのは短絡的かもしれないが、それでも、世界中で社会に個人に鬱積したコロナ・ストレスが何かの形で爆発するのではないかという社会学者の予測は各国にある。デモ隊が三密を気にする様子はなく、正義を求めてそれに参加することはコロナの呪縛を解きはらってくれる精神的大義になっているかもしれない。貧困と飢えとストレス。コロナでたまったマグマがナショナリズム、ひいては人心に根深く燻っていた差別感情に火をつけ暴動、戦争につながるリスクは常に覚悟しなければいけない。

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ブルーインパルス

2020 MAY 29 21:21:28 pm by 東 賢太郎

北から迫ってきてヘアピンカーブぐるっと旋回してまた北へ向かう。

速い。カッコよかった。

なぜか今日は母が亡くなって3年目、そういえばあの日もこんな雲がかかってたっけ。

夕方、元気をもらって川まで走って子供と何年ぶりかのキャッチボール。意外に伸び健在。70でもいけるか。

夜のニュース。医療従事者のみなさまの輝くような笑顔、笑顔。ありがとう、いい一日でした。

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男にはそれをやっちゃあお終いの一線がある

2020 MAY 12 9:09:33 am by 東 賢太郎

どういうわけかイスラム圏らしき異国に赴任していて、家族と部下のために懸命にサバイバル・グッズを買い求めている夢を見ました。寝ても覚めてもビジネスを考えてるせいでしょうか、夢も突拍子もないことになっています。

こういうのをコロナ・ドリームと呼んでるそうですね。海外の店に社長として着任して社員に迎えられる夢は本当によく見るので、それのコロナ・バージョンでしょう。どれも現実でないのばかりなんですが、例外なくよしやるぞとなる。その高ぶりがあまりにリアルで、目覚めた瞬間に「あれはどこの店だったっけ?」と真剣に思い出そうとしてたこともあります。

平課長に降格でデスクヘッドで雇われてるシーンもけっこうあります。決まって成績悪くて追い込まれてます。ああ今日も商売できんな、そろそろクビかなと悩んで朝になります。さらに降格で梅田支店のいち営業マンというケースもあって冷や汗もの。ひとりリーフ(顧客取引簿)をめくって、やばい、今日も何もできない、これだ、この人に電話してみなくちゃとリアルに焦ってます。

僕の愛読書に「なにわ金融道」(青木雄二)があります。出た当時から何度も読んでるこの漫画、人生勉強になるなどとしたり顔で言ってる甘ちゃんインテリは多いですが、僕にとっては梅田支店の日々、飛び込み外交に出歩いて遭遇する大坂の商売人の人間模様。別に金貸ししてたわけじゃないが、株を売るのはもっとこわいですよ、朝の船場あたりの殺伐としたどやどやした商売人の街の空気がですね、「儲かってまっか?」というウソも虚飾もないストレート勝負のわかりやすい世界がですね、あるある(あったあった)の連続なんです。今も社会人として育てて頂いた大阪のお客様への感謝と愛情に涙が出ます。

似た路線では日本映画専門チャンネルでやってる「難波金融伝(ミナミの帝王)」ですね。竹内力のギンギン、コテコテの極道もん風情が最後は善玉というのが最高だ。カネの恐ろしさがわかるハードボイルドの極致でレイモンド・チャンドラーなんかより日本人にはずっとわかりやすい。情でなく理で悪を倒すエンディングは刑事コロンボに通じるグローバルな勧善懲悪ドラマですね。

もうひとつは「静かなるドン」(新田たつおの漫画が原作)。カタギとヤクザの間で揺れる後継ぎ組長の話。派手な撃ち合いは一見壮絶ですが時代劇のチャンバラみたいにリアル感は実はなく、人物名が新選組や歴史上の人物のパロディで「作り物」感を認めちゃって、主人公のキャラと奮闘を今風の遊び目線で楽しむスタンスですね。

かように、紳士淑女の皆さんには申しあげにくいのですが昔から任侠映画の大ファンです。高倉健、松方弘樹、北大路欣也、マーロン・ブランドが恰好いいと思って育ちましたんでどうにもなりません。だからやってるとついつい見てしまい、どんどんドラマに没入、俺、どうしてこんなにヤクザもんが好きなんだ大丈夫かと心配になったりするのです。

このルーツが少年サンデーの伊賀の影丸にあります。忍者集団の殺し合いドラマだから現代版がまさにそれ。戦争物はアノニマス(匿名)で個人技が見えずいまひとつ面白くない。ヤクザは忍者ほど個性はないですが顔が見えるんでOK。戦国武将も三国志も相撲の星取表もアニマルプラネットもそのノリで観てますんで、三つ子の魂でしょう。投手対打者も熱中して、それで自分でやりました。

いいわけですが、男子が強い者にあこがれる、これ自然と思います。でもやっちゃあいけないことがある。法律でなく世の中の掟を破ることです。破ったら自分に負けという掟でもある。これで生きてる男は格好いいです、信用できます。逆に、法律に書いてないからいいだろう?最低ですね。そういう奴は信用しちゃあいけません。そういう輩に忖度して精神的売春して生きてるのは男のクズです。

男の器量というものがある。本物は知りませんが、映画が暴対法問題にならないのはそれを描いているから、日本人の奥底にそれがあるからです。腕力でも学歴でもない素っ裸の男前ですね、それがないとボスにはなれない。部下が馬鹿にするんでね。ところが今はどうだ。器量のかけらもないチンケな男が権力をもって偉そうにしている。僕はそういう奴は恨みなくても本能的にぶん殴りたくなる。

そういうのはだいたい運動もだめで「男の勝負」という人間の修練の場を経てないから汚いことを平気でします。勝つためにはウソも裏切りもありというのが三国志であり孫氏ですが、それで生きるのは中国、朝鮮までの話であって、日本の男にはそれをやっちゃあお終いよという一線があります。それをわかってない奴というのは日本の男じゃない、僕など1秒で馬鹿にしておわりです。

そういえばビジネスの戦場で何人か同期、部下にいい男がいましたね。ゴルフしたり飲んだりのお友達関係が先に来るなんてのは、誤解を恐れず言えば女の世界です。女子会、ママ友です。奴らはあくまで仕事で男ぶりが良かった。それだけなんで会社辞めたらつき合いはありませんがね、プロ野球選手が選ぶオールスターなんてもので今でもずっと敬意をもってます。

政治家にそういう光を放つ男が少なくなりました。見事に劇貧ですね。私利私欲の前に掟なしのふぬけばっかり。男はそれをやっちゃあおしまいなんて微塵もなく、邪魔者は情け容赦なく消す曹操の凄みもなし。本性を見たからもう何を言っても無駄。何人かの特定の政治家に贈っときます。女性はよくわかりません僕の本能の範疇に入らないんで、でもあねさん組長ってのもありでしょうね今時。

 

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BCG有効説と感染研のメンツ仮説

2020 MAY 4 2:02:11 am by 東 賢太郎

GW後半ですが人出はかなり減っているイメージですね。強制もなく。これは「空気」が働きだしていると思います。従わない人もいますが世界のどこの国もいます(むしろ、圧倒的にいます)。カリフォルニアのビーチにはじけだした若者の群れはファウチが自由を奪ってると騒いでる。このひとたちはいったい誰と戦ってるかもわかってない。アメリカですらこんなものです。パチンコや江の島ぐらいでニュースになってる日本人はほんとうに真面目で、法律もないのにおカミの言うことをよく聞く国民という思いを新たにいたします。こんな景色は僕が住んだり訪問したりした約40か国、どこにもありません。

僕は「きれい好き文化」、「空気に従うこと」が爆発的感染拡大にはなっていない大きな要因と思ってますが、しかし、{人口、感染者数、死者数} でアメリカ {3億、100万、6万}、日本 {1億、1万5千、5百} という数字が本当に正しいならば、どう贔屓目に見ても初動対応も法的措置もお粗末だった日本がこんなに優等生である理由にはなり得ません。あれほどPCR検査をこなして医療対応もSARS、MARSの経験値のある医療機関がうまくやった韓国の死者数が250です。あれほど何もしなかった日本が人口比換算でほぼ同じ死者数というのは非常に不思議であります。

コロナ死亡数が肺炎死亡数に紛れてないかと言う声がありますが、その理由でアメリカより少ない数字になっていると仮定すると例えば年間約10万人の肺炎死者数の6分の1(3~4月)である1万7千が実は全部コロナでしたという計算(人口比換算)になり、実際にあったミス、PCR検査数の少なさ、検査精度の誤差を勘案したとしても無理があるように思います。国と国を比較する場合、ミス、検査精度は比較的無視でき検査数のバラつきは無視できないという立場から僕は死亡者数を注視しております。

すると3つ仮説が出ていることを知りました(もっとあるかもしれませんが)。

①「日本のBCGが有効」説

これは要検証です。日本株BCGを使用しているイラク、台湾、タイもコロナは抑えてます。暴発してしまったアメリカ、イタリアは接種を行っていません。スペイン、ドイツ、フランス、イラン、イギリス、オーストラリア、スウェーデンは過去はしていたが現在はしていません。大阪大学免疫学フロンティア研究センターの宮坂昌之招へい教授の作成された表をご覧ください。

100万人当たりの死亡者数が10以下の国が7カ国(赤字)あり、そのうちの6カ国が広範なBCG接種を現在行っており、その6カ国のうち3カ国がBCGワクチンの日本株、2カ国が旧ソ連株(筆者注:両者はほぼ同じ株と理解)を使っているという結果は、偶然でなければ説得力があります。韓国が3.7と日本より高いのは韓国のBCGが日本株でないための可能性とも考えられます。京都大学iPS細胞研究所の山中伸弥教授が「BCGの接種と死亡者数に逆相関がみえるのは確か」と発言したそうです。

(ご参考記事、4月5日)

http://新型コロナとBCGの相関関係について免疫学の宮坂先生にお伺い …

 

「東洋人かかりにくい」説です。中国の数字は {14億、8万、5千} ですが、感染者、死者の人口比をアメリカ並みとすると460万、28万で、中国は60倍のウソをついていることになります。感染地図でインドを含むアジアの丸印の小ささは確かに目立ちます。民族の遺伝的要因(遺伝子配列の違い)による違いの可能性はあるとされますが、アメリカで黒人、ヒスパニックの死亡率が高いのはむしろ経済格差が主因と思われます。今のところこの説の科学的根拠からの説明は目にしておりません。地図の印象はむしろ①説の表で「赤字」(優等生)7か国中5か国がアジア・オセアニアあるためとも考えられます。

 

「ウィルス変異説」です。一応「仮説」として挙げますが、後述のように、そうではない可能性が高い。武漢型が欧米で変異して強毒化したために欧米では大量の死者が出たが、その時点で日本にはまだその変異株は上陸しておらず、1月に上陸させてしまった武漢型はすでに封じ込めに成功した、だから日本の死者数は欧米のようになっていないのだとする説です。

これは感染研、専門家会議の主張であり、欧米型変異株は3~4月に上陸して国内に拡散したと強く示唆されると強調しています。事実なら強い示唆などなくてもいいわけで、自ら「仮説」であることを暴露しています。即ち、③説は強毒化したことの疫学的証明、日本の医療が武漢型を消滅をさせたことの証明が必要です。「現在は欧米変異型が蔓延している」事実だけではそのどちらも証明されません。

その2点目、「武漢型を制圧するのに成功した」という言明に弊職の周囲の多くが違和感を感じています。「検査で陽性と判定された国内の約560人の検体」だけからどうしてそれが科学的に結論できるのでしょう?世界でビリから2番目のPCR検査数によって当初から無症状者は野放しだったわけですし、現在も引き続き国際比較で少ない検査数で無症状者の凡その数すら推定の域を出ないのだから、武漢型が国内で変異して欧米型と別個に大量に存続している可能性を排除できるはずがないという子供でも気がつくウソではないかということです。

「医療崩壊が危険」と検査を抑えて野放しになった無症状者が患者を激増させて医療崩壊させました。即ち、どう贔屓目に見ても、無症状者は無視のクラスター戦略が大失敗だったことは明白なのです。それを「再び無症状者を無視したデータ」で「成功だった」と「自認」し、その理由が「日本の死者数は欧米のようになっていない」(5月4日、尾身専門家会議副座長)なのです。そうではない、「大失敗したけどなぜかそうなってない」が真相であって、その疫学的理由を感染研がつきとめているなら自身の名誉のためにも即座に公表すべきだ。そうでないなら「私は正しかった。なぜなら神風が吹いたからだ」と言ってる単なる馬鹿です。

その程度の③説に基づいて「目の前の第2波を国民一丸で抑えないと今度は欧米なみの拡散になってしまう危険がある、よって、ステイホームは5月末まで続けるべきだ」という論旨が組み立てられ、それが専門家会議の結論となり、それを受けた形で政府が緊急事態宣言の5月31日までの延期を発表したのですから、説の正否は国家の命運をかけた決定的に重要なものであることは論を待ちません。このことはいずれ精緻に検証される時が来るでしょう。

①「日本のBCGが有効」説が正しいと仮定すると?

今後も宮坂先生の表のまま進むので、第2波封じ込めに関わらず100万人当たりの死亡者数は韓国(3.7)、台湾(0.2)、日本(0.6)の延長線上の数字が緊急事態宣言解除後も出てくる可能性があります。これは要注目です。防御しているのは政府でなくBCG抗体ではないかという可能性が確認され、それを検証すべきということになるからです。BCGは子供しか使えず大量確保できないので検証する意味がないという議論ではない、政府がしていることが正しいかどうかという有権者の眼として大事な観点からそう考えております。

政府の危機対応レベルが非常に高い台湾は5月3日でも0.2のままですから、政府対応の巧拙にはBCG抗体によるセーフティネットがかかっていると書けば台湾に失礼にならないでしょう。また、そうであったとしても、日本の医療現場の最前線で戦っている医療関係者の皆様のご努力をいささかも軽視するものではありません。あくまで「大本営」の戦略の話をしております。

表のデータは4月初め時点ですから、3月からであった日本への欧米型変異種もブロックできていたということになるでしょう。今後の第2波の防衛に政府が成功しようと失敗しようと、感染研の言うように変異種が強毒化していようといまいと、出てくるのは優等生の韓国、台湾と変わらない数字になり、すなわち、日本は今度は水際防衛に成功しましたという “輝かしい成果” を発表できるようになるでしょう。

つまり、官邸にとってベストで厚労省、感染研のメンツも立つシナリオは、

①が実は正しいかもしれないがあえて証明はせず、③の強毒化は仮説と言わずにそうなのだと主張し、国民に頑張ってもらって3週間たって予定通り優等生の数字が出てきて、「みなさんのおかげです、では少し緩めましょう」とほほ笑んで経済政策に舵を切って、よくやったと支持率があがる

ということでしょう。今回はここまでの指摘にとどめておきます。

最後に、実効再生産数をオンゴーイングの指標として時々示すのではなくドイツのように毎日公表していただきたい。岡田先生の言われるように計算根拠とデータも開示したほうが良いでしょう。

(ご参考)

5月3日のデータ

韓国(4.88)、台湾(0.25)、日本(3.89)

こちらで日々確認できます

http://人口あたりの新型コロナウイルス死者数の推移【国別】

 

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