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ガリア戦記はカエサルのブログである

2013 DEC 7 1:01:08 am by 東 賢太郎

ローマ三部作のブログを書こうとなったとき、久々に本棚からひっぱり出したのがガリア戦記だ。

子供のころ「尊敬する偉人は?」と何度もきかれてうんざりした。答えに迷うほど偉人なんか知らない。野口英世だリンカーンだと言えば大人が喜ぶさという不埒な子だった。大人になるとウンチクは増えたが誰もきいてくれなくなっていた。58にもなるとだいたいの偉人は年下だ。馬齢なる言葉が頭をかすめる。

日本の偉人は意外に自著がない。どうしてだろう?中世では明月記やら近代では福翁自伝、氷川清話などあるが、僕の勝手を言わせていただくとあんまりおもしろくない。お公家様の作法はよくわからない。昔話やら大御所の語録は歴史としては貴重な証言だが、今の若い人にはちょっとリアリティーに欠けるのではないか。

土佐日記(紀貫之著)は面白いが女性に仮託するレトリックなど男のプライドがややうっとうしい。その分、肌感覚の枕草子はリアルである。当時の女性は姓名がはっきりしない。清少納言の「少納言」は役職名だ。課長や部長と同じ。清は清原の清だから「清原課長」みたいな感じ。本名は「諾子(なぎこ)」という説がある。ならば枕草子というのは今なら「清原課長」キャラがアバターのブログ「なぎ子の部屋」みたいなものと思えばいいのではないか。

桶狭間戦記(織田信長著)、一ノ谷奇襲秘話(源義経著)なんかがあればガリア戦記に対抗できたろう。「今だから書ける壬申の乱」(大海人皇子編著)なんてのは是非読みたかった。「人たらし日記」(豊臣秀吉著)、「プレイガールじゃいけませんか?」(額田王著)、「忘年会であっといわせる7人腹話術」(聖徳太子著)、「正しい犬の飼い方」(徳川綱吉著)はノウハウ本のベストセラーだ。中国でも「論語」というのは2500年前の賢者である孔子の言葉を弟子が筆写したブログ集だと考えれば親しみがわいてくるのでは。

ガリア戦記をブログ集と思って読むと、実に面白い。戦記だからそれなりにエキサイティングでもある。ブリタンニア(今のグレート・ブリテン島)への上陸など、紀元前の黒船来襲シーンを黒船の目線で書いたものと考えれば別な読み方ができる。結局思ったようには上陸できなかったが、失敗とは書いていないものの事実は正直に書いてあるのではないかと想像する。一見お固い書物でも視点を変えればとても親しみやすいものの一例として、若い方にはぜひご一読をお薦めしたい。

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Categories:______歴史書, 徒然に, 読書録

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