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炎天下は喜び

2018 JUL 31 20:20:28 pm by 東 賢太郎

体感39度の炎天下で娘に「この気候になると俺は戦闘モードに入るからね」という話をした。ひなたは避けなさい、こまめに水分を、いい年なんだからといろいろ心配してくれるが、そういう危惧は僕に関してはまったくない。「へ~、得だね」と相槌を打ちながら、でもたぶん娘もわかってない。

必死に試合を戦ってる子は暑いなんて思ってないのだ。だから猛暑の記憶は体にだけあって、校歌を聞いて「あの頃」を思い出すみたいに肌から「あの頃」がよみがえってくるという具合だ。そして、その連鎖反応で、やおら頭が思い出すのは「野球ができてうれしい」という心の底からわきあがる喜びのマグマなのだ。それこそが「戦闘モード」の正体だ。

「おじさん野球に入れてもらえばいいじゃない、たくさんあるわよ」と言われる。そうかもしれないが、きっとぼこぼこに打たれてしまうだろうし、どうもそういう自分をなだめて持ちこたえる勇気が出ない。若者にはチャレンジしろとすすめながら、なんのことない自分は尻ごみという情けなさだ。こういうつまんないプライドを男はなかなか捨てきれないのである。

ときどき夢に出るのは河原の草野球?で、さあ待ちに待った試合だとグラウンドまで走っているシーンだ。本当にそんなことがあったのか、ただの夢なのか、とにかくそのころ僕を支配していた打たれないという絶対の自信があって、早く早くと気ばかり焦る。皆さんが僕の到着を待っている。そうしていよいよ着いたとなって必ず、試合になる前に目が覚めるのだ。

会社の野球大会でダブルヘッダーを一人で投げ、14イニング目で腕が上がらなくなった。しかたなくカーブ連投になったら打席のおっさんが「ストレートで勝負してこい!」とバットを僕に向けて凄い剣幕で怒鳴った。彼はカーブで三振に打ちとった。その回に5点取られて負けたが準優勝トロフィーを部長がくださった。もうその時は肩も肘も壊していた、でも炎天下で鍛えてあった。

大阪の野球大会。受けてくださった名門・広商出身のYさん。不思議な「磁力」のあるリードで、ミットめがけて投げればちゃんとそこにボールは行き、なぜか打たれない。あんな経験は後にも先にもない。投げている方がキツネにつままれ、1対0の1安打完封だったから生涯ベストピッチだったかもしれない。あれぞ炎天下で戦った甲子園強豪校。Yさんはエースだった。

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