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国家管理下の金融市場という史上最大の危機

2020 APR 30 16:16:46 pm by 東 賢太郎

CNNを夜中ずっと見ている。アメリカは感染者100万、死者5万だがロックダウンを州によって緩める方向に舵を切っている。これは大きな、ひょっとして非常に危険な賭けだ。カリフォルニアではビーチに普段なみに見える人が押し寄せている。大都市のある州の知事は民主党が多く言うことは聞かない。トランプは選挙の11月までは財政発動し、大企業に資金供給し、株価をなんとしても維持するだろう。11月までは・・・。

アメリカもPCR検査不足が問題になっておりウィルス感染症の世界的権威ドクター・ファウチは週に3~5百万必要と言っている。抗体の信頼度はまだ高くないとも。PCR検査のキャパは増えているが実数が至らないのは日本と同じ事情があるだろうか。ファウチは検体サンプル数が多い中国とのワクチン開発競争に劣後するという政治的危機意識もあるだろうが日本国でそれをやるのが感染研なのか民間なのかアメリカさんにおまかせなのか、開示がないのでさっぱり政府の戦略がわからない。密室政治だ。首相に大統領の指揮権がないならなぜそれを仕切る厚労大臣が素人の文科系で医師、疫学専門家が任命がされないのだろう。まったく危機感を感じない。

多少のやらせはあろうが、アメリカの意思決定はTVで可視化されている。ファウチは「レムデシビルは回復日数がプラシド・グループが15日に対し11日と効果があり、単独または別の薬との併用で死亡率を下げる可能性がある」と言った。トランプはJ&Jのワクチンを期待してるがファウチは12~18か月かかる、治療薬が先と明言していた。仮にワクチンができても量産は別の問題で220か国にすぐ行きわたることはないとも(ならば来年のオリンピックは無理ということだ)。僕の知人が人工呼吸器寸前まで行ったが、アビガンを4日で50錠飲んで自宅療養まで回復した。レムデシビルはアメリカが承認すれば日本でも5月に特例承認かというニュースも出ているが中国は効果を確認しておらずここにも政治のにおいはする。ただ治験数が増えることで早晩両者のプロコンがわかってくるだろう。

とにかく、どちらでも結構だ、既存薬を組み合わせてでも重症患者の治療、軽症者の早期回復を可能にする最適なオプションを ”早期に” 手にしてウィルス拡散を止めることは全人類の命運をかける絶対の使命だと確信する。そうしないと、後述するが、「財政ファイナンス」という劇薬を投与されている国の方が先に破綻して世界経済は大恐慌と金融恐慌のダブルパンチに見舞われ滅茶苦茶になる。困窮した国民や民族は追いはぎ、強盗となり、あらゆる犯罪、大量難民押し寄せ、国家安全保障放棄、へたすると武力衝突、戦争という道かもしれない。国家が投薬で歩けるうちに、ウィルスをどんな方法でもいいから抑え込まないと万人が生き地獄になるだろう。

そのためには無症状陽性者を洗い出して隔離すること、つまりPCR検査数を限界まで増やすことを徹底しなくてはならないのに増えない。パチンコや江の島だけで騒いでる場合ではない。ホテルから軽症者が逃げ出し、陽性が出ても入院を断る人が出ているが例外を放置すると意味がなくなる。時限立法で私権制限やむなしだろう。日本がここまで死亡数が少ないのは何らかの国民独自の文化的あるいは疫学的な “アプリオリな” 理由があると思料するが、永続する保証はない。何より大事なのは治療するオプションを手にできるスピードである。意思決定のスピードの遅さという点において日本を凌駕できる国はそうはない。前例踏襲の役所の演繹型では国が致命傷を負う。負ってからいくら入念に傷口を調べても、調べがついた時は死んでいるのである。医師、疫学専門家が全責任を負ってトップダウンで指揮すべきである。一説には小池百合子は国政に出て後継に医師を都知事にというプランがあると聞くが、その発想を持つだけでも素晴らしい。こういう手を迅速に打てる政治家だけで国政をやって欲しい。

アメリカはホワイトハウスでトランプと専門家のディスカッションの場をCNNが放映し、そこに記者も入れて質問させているから実にわかりやすい。ニューヨークのクオモは毎朝地下鉄の消毒を徹底的にやれ、それなしでどうやって働きに出れるんだと強く語り愛国心とリーダーシップを見せた。しかし、それでも感染者100万、死者5万と最大の犠牲者なのだ。僕の中でアメリカという概念が変容しつつある。アメリカの覇権は軍事とエネルギーとドル(金融)が切り札だが、軍事は空母まで感染し要諦のボーイング社も業務縮小、エネルギーはシェール油田が絶滅の危機で、命脈は株が下がってないぐらいだ。エスニックには国内にアフリカ、メキシコ(ヒスパニック国)があるような特殊な国家で大都市をロックダウンしても最下層は守れないことが露呈した。ウィルスは人体でしか生存しない。守れない層がそれとなり劇的に拡散する温床と化したかもしれない。

トランプは選挙だけでなく覇権維持に必死なのは当然だ。厄災の元凶をWHOに見立て敵国中国を叩く戦略だろうが、テドロスが台湾のデータを無視したぐらいでは弱い。「近々に調査結果が出る」というが何かは不明だ。FATCAを通じ世界のドル口座の送金データからしっぽを握ったか?この手で中国要人のマカオ等への裏金流出をつかんで習近平を脅した(それで習自身の口座もあげられ見せしめに配下を何人か切ってアメリカとは通貨主権戦略でバーターして手打ちした)前歴があるから当然調べてるはずだ。潰したい本命はアフリカを賄賂で手籠めにしてレアメタルと国際機関のアフリカ票を囲い込む中国の周到な作戦だが口実がない。WHOはそれの格好の標的になる。クオモはニューヨークは守ってもアメリカは俺が守ったというプロパガンダになる。

トランプが経済活動を消毒液を注射してでも緩めたいのは経済がヤバいからである。本当にヤバい。1QのGDPのが4.8%減だが2Qは間違いなくその何倍も落ちる。通年で3~40%は覚悟だ。航空産業は悲惨で日本もANAに4千億円入れるがデルタ、アメリカン、ユナイテッドも50~60億ドルの政府支援をするがそんなのは3か月で蒸発する。英国はそんな応急処置では持たないとBAが最大1万2千人(従業員の3割)を解雇すると発表した。原油先物が負の値とはどんな天変地異よりも異常な光景だ。スタンドでガソリンを入れるとお金をくれるわけだ。シェールガスは原油が$40~50が損益分岐点であるから、世界の経済活動を再点火して石油を盛大に燃やさない限り業界破綻が起きる可能性が高い。それにはファウチの言う数のPCR検査をしてコロナを止めるしかないのだ。当面はFRBが面倒を見るにせよ限界に来れば中西部地銀などから金融に連鎖が広がりリーマン再来の火種になる。

この事態でありながら昨日NYダウは$500も上がっているわけだ。$2兆の財政出動を評価していると素人は表向きを見るが、同様に世界の中銀が禁じ手の財政ファイナンスに踏みこみんでいる。今期の企業収益見通しは国家容認で下駄をはかせるのである。こんなこと聞いたためしもなくアナリストは合理的な予測をたてようがない。従って、唯一合理的に結論できることは、世界の株式市場はもはや官製の鉄火場であるということだ。FRBは企業の短期債務であるCPの購入まで宣言したがそれは市中銀行の仕事だ。むしろ銀行が吹っ飛ぶことを心配しているという意味なのだ。そこまで事態はひっ迫している。鉄火場でエクイティファイナンスなどできるはずもないが、政府が潰さないように資本はつっこむからとにかく国民が動揺する株の暴落だけは避けたいということ。それが怖いからヘッジファンドはショートできず、ロングでバクチを張りたい奴はやる意味があるぞということなのである。

なぜなら、言うまでもないが、トランプは株安は絶対にまずい。経済失速の代名詞として攻撃されると過去の大統領選は現職が8割負けているというパターン認識が有権者に発生する。FRBの「大人買い」の限界が見えるまでに経済活動を戻さないとフェークの株価はもろい。しかし経済に舵を切ってコロナの第2波に襲われるとその作戦の戦線は全滅するだろう。だから保険として、なんとしてもコロナの初動の失敗の責任を中国、WHOに押しつけなくてはならないのである。責任回避の上でアメリカのヘゲモニーを守るというのは実はクリンチして逃げまくりのボクサーなのだが、一見するととてもアグレッシブに攻めているように見える鉄壁の戦略だ、うまくいけばだが。「WHOの忖度の根拠になる密約メールがないか」、「カネが流れた証拠があれば無敵だ」、「探せ」。至上命令が飛んでいるだろう。ジェームズ・ボンドには任務遂行中は自分の一存で容疑者を殺めても不問にされる殺人許可証が与えられる、それぐらいのことと思料する。

それに呼応するように日本国ではマスクが2枚配られた。トランプ政権同様に、安倍政権には衆院選挙が重大なハードルになってきている表れと思料するものである。安倍マスクはシャビイだが百合子マスクは小粋だとネットで評判だ。「あれを送ってくれ、1枚でいいから」という声が政府に向けて国民からあがることだけはなんとしても阻止せよという至上命令が官邸官僚に飛んでいるだろう。広島では元法務大臣からカネが流れた証拠がたくさんあがってしまった。財務省自殺問題はくすぶったままだ。こんな状況の中で連休明けに経済に舵を切ってコロナの第2波に襲われると政権は全滅だ。しかし舵を切らなけらばフェークの株価はもろい。しかし日本には中国、WHOを叩くという保険はない。つまり王手飛車取りなのである。

安倍総理の在任7年間で顕著に成功したのは株価政策だけだ。この点に関しては株式関連業務コンサルである弊社は恩恵に浴したが、それは株が上がったからではなく安倍政権になれば株が大きく上がる理由があるという弊社の仮説的予測が的中したからだ。現在はどうか。安倍政権の7年間で一人当たりGDPが4万ドルと横ばいなのはアジアで日本だけだ。シンガポールに次いで2014年に香港に抜かれ、いまのペースだと5,6年で韓国に抜かれる可能性がある。それでいながらその7年間に日経平均は7千円から3倍になった。日銀のBSを使ったこと以外に合理的な理由はない。日銀の資産の中身(ETF、10年国債)はボラが他国よりずっと高い。株のコストは1万9千円と推定されそれ以下だと評価損だが長期金利が上がると国債の下げでもっとやばい。だから宣言のみならず買う必要もある。すると内容はさらに悪化する。150円、インフレもありかもしれない。財務省はプライマリーバランスを盾にこれを忌避する(役人は相対的に貧乏になる)。だから経済対策の真水は少なく、ショボい。責任は首相に行く。それで降りてもらって全然結構というのが本音だろう。これが森友事件の貸しであるなら、ツケの請求書はなんと国民に回ってきていることになる。

ウィーンのペスト記念柱

困ったもので、株価は僕にとって経済の体温計だ。これを日々読みながらやってきたが、国家にここまで堂々と株価操作されるとお手上げだ。強力な解熱剤を打って「平熱です」と診断する医者のようなものだ。よって僕は社業の危機管理として最大のリスクを想定するしかない。それはコロナの有効な治療薬、ワクチンが変異などの理由で2,3年もできず、財政ファイナンスが燃料ぎれとなって民間企業はもちろんのこと財政の危ない国家の破綻にまで至ることだ。大恐慌(経済恐慌)に金融恐慌が重なったら大変だ、リーマン以上だなどと騒ぐ輩が増えているが、コロナに金融など存在しない。国がやっているのである。ということは、それは国家破綻を意味するのである。みなさん、いま日本国がなかったら生活も未来もどうなるかご想像いただきたい。2、3年の巣ごもりができるかどうかなどというレベルの話ではない。ポスト・コロナ、ニュー・ノーマルはコロナが終わらないと永遠に来ないが、数が減った生き残りの人々がついに耐えきれなくなり、「もういいじゃないか、終わったことしよう」という世界がそれだ。ウィーンの奇っ怪なペスト記念柱はそうして建った。

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