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株式市場はタンザニアのサバンナである

2022 OCT 9 7:07:50 am by 東 賢太郎

ついでだから前回の続きを書きます。

面白いんですね、そういう人は、それこそ本格的な陰謀にはひとたまりもなく騙されるんです。だから下等な詐欺師はオレオレをしますが、高等な詐欺師はそういう人達を狙ってカモにする傾向がありますね。

についてです。これはプロレベルの、ちょっと深いことを書いてます。詐欺は犯罪なんで上等も下等もないんですが、テクニックとしてみればそれはあります。そして、僕のショバである投資というビジネスにおいて、他人様のお金を増やしてさしあげる努力をする業務(投資運用業、投資助言業)では業者とお客様にはレベルの二層構造があることをご説明します。別に業界の内幕を暴くわけではありませんよ、なにせ、暴くも何もこんなわかりやすい業界はめったにありません、だってド素人でも堂々とプロみたいな顔して参入できるんですから。

一般には顧客によってリテール業務(アマチュア相手)とホールセール業務(プロ相手)に区分されますが、僕から見れば業者もアマチュア程度のがたくさんあり、キャッチボールも満足にできないのが金融庁に届け出さえすればプロ野球選手の看板出せるんです。凄いでしょ? アマがアマから手数料を取るなど言語道断なんで、存在自体が僕の目には詐欺師に見えるという実に不思議な業界なんです。でも、政府は一億総株主言い出しちゃってますしね、金融庁は大変だろうなとお察しいたします。そんな業者を跋扈させるのも、国民の投資リテラシーが低開発国の農村なみという悲しい現実があるからなんで、パンツ泥棒や“パパ活”疑惑の男が堂々と衆議院議員に選ばれちゃうのとあんまり変わらんのですね。右翼左翼、学歴に関わらず「一億総株式音痴」というのが実態であるとご認識ください。

僕が証券会社をやめたのは、そういうお客様をたくさん持つと大変だからなんです。こういう言い方がいいかどうか、ハードボイルドなんでご容赦いただきたいのですが、音痴の人に音楽を教えたり、運動音痴の人にゴルフを教えるのは大変です。それはそれで上手なプロがおられるわけですが、僕は生まれつきそういう能力がありません。投資判断というのは100%正しいわけでありません。だから助言はしますが是非は自分でご判断をというのがあるべき姿なんです。ワタシ失敗しないのでなんてふりをしないと信用されない詐欺師みたいな商売などまっぴら御免だし、むしろ、そういうお客様に株式投資をしていただいてはいけないという主義なんです。業者の方が教育レベルもいい加減でそれなりの倫理観を持って潔癖な業務ができる者は少数でしょう。したがって、岸田総理には悪いが、「一億総株主」なんて大多数の国民を不幸にする可能性があります。やるべきは、体系的な投資教育ですが、それを一億人が理解することは音痴の人が歌手デビューするより可能性が低いです。

詐欺師は俗語ですが、その行為である詐欺(Fraud)というのは「詐欺罪」という刑法犯です。国際的にそうです。英国は刑法典がありませんがFraud Act(詐欺法)で刑罰を科します。日本の刑法では罪刑は第246条に「10年以下の懲役に処する」とあります。殺人罪を犯しても「5年以上の懲役」はありなんですから「10年以下の懲役」は法定刑として長期で重いことがおわかりでしょう。

「詐欺罪」を含む次の犯罪は、被害者による告訴がなければ公訴を提起(起訴)することができない「親告罪」になっています。

強制わいせつ罪・強姦罪・名誉毀損罪・侮辱罪
ストーカー規制法違反の罪・窃盗罪・恐喝罪・詐欺罪

つまり、被害者が被害を受けたと思っていなければ犯罪でなく、配偶者や親族は告訴できないなどプライバシーの配慮もあり、間口が狭いのです。性犯罪や窃盗・恐喝といった知能犯でないものと並べると、詐欺罪は僕にはちょっと違和感があります。

未公開株詐欺ってのがありまして、存在もしない会社や、存在はしても上場なんかできっこない会社の株のIPOをうたってお金をだまし取る、絵に書いたような詐欺師がいます。何の運用スキルもないのに偽の実績を語って一任勘定(お金を預かって売買)を行う者は数知れずいます。損させる意図もなく、するとも限らない場合は詐欺罪にはなりませんが、限りなくいかがわしいです。大事なポイントなのでくりかえしますが、金融商品取引法の規定により、金融庁によって内閣総理大臣の登録を受けた業者でありさえすれば一任勘定はできますが、お客さんが納得すればですが、「星占い」や「神のお告げ」で運用しても違法ではありません。「合法的です」が流行りの昨今ですが、それが何の意味もないことはこれでもお判りでしょう。詐欺罪が「知能犯でない親告罪」と似てなくもない側面があるとすると、こういう部分なのですね。だから取引する場合は経営者がどんな経歴の人間か徹底的に調べたほうがいいですし、我々のような会社に照会いただけば信頼度はすぐわかります。

詐欺の巨大なケースというと、CEOが一般投資家を欺いて利益を得る場合でしょう。イーロン・マスク氏とSECの対立がそれでした。空売り筋の攻勢に悩まされたマスク氏は2018年8月、ツイッター上で突如としてテスラ株を非公開化する計画を表明。「資金は確保した」と書き込んでいたが、SECは「可能性のある資金源と交渉さえしていなかった」として同年9月にマスク氏を「証券詐欺」の疑いで提訴したんです。この時はテスラとマスク氏はそれぞれ2000万ドル(約22億円)を支払うことでSECと和解してます。かように詐欺罪は規模が大きくなり得ます。

しかしマスク氏は世界一の資産家ではあってもいちクルマ屋の経営者にすぎません。前稿に書いた「多国籍資本家同盟」から見れば末端の足軽みたいなもんです。彼の滑った転んだに一喜一憂して株を売ったり買ったりしても、それで詐欺にひっかかるリスクはマスク氏の証券詐欺以外は一切ありませんが、個人投資家がアクセスできる情報レベルからしてまず儲からないし証券会社が儲かるだけなのでやめたほうがいいでしょう。では同盟はどうか。彼らがダボス会議で「グレートリセットが来るぞ」と予測して大勢の投資家が関連した株を買ったとしましょう。3年たっても何も来ませんでした損しましたとなってもこれを間口が狭い詐欺罪で裁くのは限りなく無理です。まったくの仮定の話ですが、彼らが保有する株を高値で売る意図で議題を選んで実行したとしても、表向きは世界経済の方向性予測ですから人を欺く意図があった証拠が出る可能性はまずなく、世界最高レベルの知性がやってますから馬脚を露す馬鹿が内部にいるはずもなく、立件できる期待値は限りなくゼロに近いです。するとすれば被害者の出た国の検察ですが、その国の大きな力を巻き込んで簡単に潰されるだろうし、そもそも被疑者がどこの誰かもわからないし外国人である可能性が高いので受理のしようもないでしょう。嘘は大きい方がばれないといいますがこういうことかもしれませんね。

ダボス会議の投資インプリケーションを個人投資家(リテール)が咀嚼して、自己の判断で投資行動を起こすのは難しいでしょう。それは調査部門を持ってる証券会社や機関投資家(ホールセール)の仕事なんですね。だから情報は二重構造になるんです。かような世界を渡って40年もしますと、これって、目をつぶるとだんだんタンザニアのサバンナに見えてくるんです。日照り続きで草が減ると草食獣が減り、次いで肉食獣が減り、その頂点のライオンが困るんですね。だからグレートリセットみたいなことを時宜に応じて言うんです。僕は草の生え方を長年見て研究してますんで、そこから少し時間がたって生じる生態系連鎖の具合がそこそこ想像つきます(草は増えても減ってもいいんです)。で、大事なのは、ライオンの動きなんですね。ライオンはこっちへ移動するだろう、シマウマやめてヌー狙うだろうってなことです。

相場を読むのにいちばん確率がいい方法は、断言しますがそれなんです。僕はそれで107円ぐらいの時にドル高・円安に思いっきり張ったわけです。ただ、この方法はマクロにしか効果が及ばないので、草食獣の数や生態の変化みたいなミクロが見えません。これはリスクであり機会損失でもあるので当社はそれをプロにまかせてます。12年やってますがお客様の資産は失敗確率の低い方法で5倍ほどになってるのでご満足いただいてます。テレビや本でもっともらしいこと言っても自分で相場を張る能力はない評論家の方々は僕が書いていることはわからないです。自分でやらないと何事もわかりませんが、投資はスポーツに似てまして、我々と彼らは、毎日一軍でグラウンドにいる選手と外野席のお客さんぐらい違います。我々の世界、儲ける方法を他人に教える気のよい者はいません。評論や著作で教えて小銭をもらうのは、彼のお薦めの方法を実行しても儲からないからなんです。

前稿をしっかり読んでいただいた方は、ライオンとは「多国籍資本家同盟」であることはお分かりですね。この人たちは資金力で世界最大のインパクトがあり、グローバルな発信力は世界トップであり、大国へのロビーイングで自分に都合のよい法律や制度を作る力があり、結果責任は取ってはくれませんが自分たちも自己ポジションで投資しているわけですから、彼らが投資で負ける可能性は非常に低いのです。僕がそれに気づいたのは2003年、野村證券の投資調査部長だった時に中国のWTO加盟に群がる「多国籍資本家同盟」の動きを初めて知って、中国株や中国関連日本株に買いを集中して大成功したからです。セミナーを開いたら錚々たる企業が1000社も来て、先日亡くなられた稲盛和夫さんも基調講演者として来て下さって、かなり注目されましたからご記憶の方も多いと存じます。これを企画したのは僕なんです。ただそれができたのはその直前に自分が香港の社長を2年半した経験によるひらめきと野村総研という日本最高のシンクタンクの調査力が自由に使えたからでした。その手法が今でも応用できるのです。僕はべつにライオンのお友達ではありませんから、誰かに情報をもらってることは一切ありませんし、仮にもらっても信じません。テレビは見ないし、日経新聞は購読を打ち切りましたし、経済誌や本も一切読みません。ぜんぶ、何の役にも立たないからです。

猫好きなのでライオンの習性はよく知ってるってだけですね。簡単ではないですが彼らの判断を推理して予見さえできれば、「お金を増やす」を合言葉とした同盟の先回りをするのですから勝つ可能性が高いのは当たり前ですよね。僕の目的も同じですから、要は「ライオンの気持ち」になることなんです。それを誰が「陰謀論」と呼ぼうが何だろうが、そんな議論は実はどうでもよくて読んで下さっている皆さんがインテリジェンスをつけて詐欺師に騙されないようになっていただければそれでいいのですが、それがないのだけは困るんですね。幸いあるから食えてるっていうことなんです。

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Categories:______グローバル経済, 若者に教えたいこと

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