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日本の根幹がここまで腐敗したかと絶句

2024 MAY 26 2:02:05 am by 東 賢太郎

去年のプロ野球オールスターのファン投票は唖然とした。阪神タイガースの選手がセリーグの全ポジションで1位だったからだ。阪神は強かったしファンが熱狂したのはよくわかるが、それを見て僕は選挙の「組織票」というものを連想し、あほらしくなって試合を見る気が失せた。昔はセ・パ名選手のプライドをかけたガチンコ勝負が国民的人気で、最下位球団からでも実力者は選ばれた。実力など一顧だにせずリスペクトもなくブルドーザーでなぎ倒したかに見えるあの投票を見て、他球団のファンの野球少年たちはどう思っただろう。オールスターがエンタメの芸能野球に堕落していくばかりか、プロ野球全体の未来まで心配になる。

同じようなことが政治で起きてないだろうかというのが本稿の趣旨だ。4月にあった衆院選挙の東京15区は自民党、小池都知事の趨勢を占う選挙として全国的に注目の的であり、目に余る選挙妨害が社会問題にもなり、江東区民も大いに熱くなっているものと思っていた。ところが、ふたをあけると投票率は15区の過去最低を更新する4割である。GW前の補選だったにせよ、大山鳴動して鼠一匹の感を禁じ得ない。その「低投票率の必然の結末」として、立憲・共産の組織票を獲得し、有権者のたった12%が名前を書いただけの酒井菜摘氏が当選した。凄いもんだ、1割ちょっとの得票で衆議院議員になれてしまう国会って何なんだろう。これが民主主義ですからで済んでしまってこの国はいいんだろうか。

その日に限らず、投票率はおおよそいつでもどこでも低い。地縁が希薄な東京は区議会だと候補者の顔も名前も知らない。選挙の時だけ駅に立ってる知らない人に握手してもらったぐらいで都民はその候補に投票しないし、投票所に行こうという気にもならないだろう。国会議員や都知事になれば顔、名前は知っている。しかし、どうせメディアが祭り上げた著名人が当選するんだろうとなるからやっぱり投票所に行かない。このことは、どうせオールスターは阪神ばっかりだろとなって、僕がそうだったように、野球をよく知ってる玄人のファンほどあほらしくて試合を見なくなるのと非常によく似ているのである。

選挙においては「よく知ってる玄人のファン」とは、保守であれリベラルであれまじめに働きまじめに納税し国と家族を愛するまともな有権者を意味する。この人たちがあほらしくて投票所に行かなくなる。見るからにパッとしない経歴の、愚鈍にしか見えない候補者のポスターが並んでいるからだ。こんなのしか選択肢がないのか。まともに勉強してきた高学歴の意欲をそぐための、これは極めて有効な一撃である。貴重な週末になんでわざわざこんな奴らの名前を書きに行くんだろう。ますます投票所に行かなくなる。そこで投票率3~4割となり、組織票というブルドーザーで押し切って1割ちょっとをむしり取った自公が圧勝する。これぞ権力者の思うつぼなのだ。

この作戦で国会を利権団体や大企業やいろんな名前の神様の組織票をもつ候補だらけにしてしまう。あほらしさの演出だ。馬鹿のカーテンで見えなくした向こう側で、過半数を得た自公が立法権と予算配分権を握る。これで無敵だ。ザルの政治資金規正法を制定して裏金・脱税やりたい放題。税金を原資とする政党交付金から領収書のいらない「政策活動費」を50億ももらって地元の地方議員を買収し放題。バレても「適法です」で処理。こんな醜態が目に余るようになり、あげくの果てに国民の関与なくその議員たちの都合で選ばれた総理大臣がせっせと国まで売り始めてしまった。これがいま起きている国家的危機の内実だ。すべての元凶は、まともな有権者が投票にいかないことなのである。

そうやって御簾の向こうで選ばれた岸田総理が安倍氏の暗殺があってからアメリカ民主党の傀儡になっていることは去年に何度も書いた。それがだんだんバレてきて、いまや国民の常識である。我々の税金をアメリカに勝手に10兆円も貢がれて喜ぶ国民などいない。ましてそれが自分の延命目的だ。読売の「次の総理にふさわしい人」で岸田氏は4%。酒井菜摘氏の12%当選などかわいいもん、支持率が四捨五入で0%の人が総理大臣をやってるという日本憲政史上まれに見る事態だ。背景の勢力は同じなのだから上川陽子氏に首をすげ替えたところで同じことがおき、何の意味もないだろう。

つまりこういうことだ。それなりにもっともらしく見える「表看板」を立てておけば日本人は「これが民主主義だ」とあきらめ、投票所に行かなくなり、看板の裏で真の権力者が甘い汁を吸える。日本はおいしい国なのだ。看板はどんな馬鹿でも支持率0%でも構わない。そこで理念も政策もなく売り物は操(みさお)だけの政治家が総理にしてもらおうとアメリカ詣でをする。メディアは広報担当であり、その政治家をもてはやして看板に祭り上げ、お駄賃をもらう売国奴の構図が確立している。昨年、多くの人が名前も知らなかった上川陽子氏を僕がいきなり次の総理だと書いたのはその背景の “原理” からだ(彼女のことはなんにも知らない。だから「物理学による」と書いた)。上川氏は連中に “女性初” がアンタの売りだよと言われ、地元静岡で知事選の応援に立った。総理は選挙の顔である。よし「女性」で攻めよう、強いところを見せなくちゃと柄にもなくおーおーとやっちまってあげ足を取られた。めちゃくちゃ相場観悪いわ、この人。民意へのリスク感覚の欠如はエッフェル姉さんとかわらないようだ。

本稿の読者である多くのまともな有権者はすでに目覚めているだろう。しかし、日本人は政策への理解と関心があまりに希薄だ。住んでいた諸外国と比べて痛感する。それは表看板がそろって政策を自分で策定できない馬鹿であることと裏腹の現象であり、だからこそ「七つのゼロ」を高々とマニフェストに掲げ、結果としてゼロだったのはその達成率だけだったというとんでもない都知事が出てくる。この人は自分に都合の悪いことは「なかったことに」で渡世をしのいできた。マニフェストの無視など朝の化粧より朝飯前だろう。政策は政治生命をかけたコミットメントではなく、票を集めるための化粧品ぐらいの感覚なのだ。

ところが、彼女がいくら頑張ってもなかったことにできない難物が出現してしまった。学歴がウソである疑惑だ。これまた国民の常識となっているわけだが、事実であれば公職選挙法違反で即刻逮捕だ。しかし、重要なのはそこではない。「カイロ大首席卒業はウソじゃないの?」と巷の家庭や職場や居酒屋で公然とウワサされてしまい、その火元である「女帝 小池百合子」の著者を名誉棄損で訴えて反撃もしない(できない)。だから疑惑の火種はどこまでもくすぶり続ける。やがてこのことは歴史に残り、「ねえパパ、ウソはいけないことでしょ?ならどうしてそんな悪い人が都知事やってたの?」と娘にきかれたお父さんは答えに窮する。公人としては、すでに完璧に失格なのだ。

日本はメード・イン・ジャパンに値打ちがつくほど偽物がない国である。ニセ証明書を平気で発行、黙認するような品性の劣る国ではない。だから「妙な卒業証書を提出してきたな」と人事部が不審に思うような人物が日本を代表する一流企業に採用されることは絶対にない。まして社長などなるはずがない。ところが、驚くべきことに、都知事にはなれるのである。公職選挙法に虚偽事項公表罪の規定があるのは、公職に就く者の方が経歴のディスクロージャーの真正性の縛りにおいて民間人よりも厳しく審査されなくてはいけないという法益があるからだが、いまそれと真逆なことが堂々とおこなわれているのであり、この不可解な事実を外国人に論理的に説明するのは何人たりとも不可能である。つまり日本の赤恥なのであり、こんなことを都民のみならず日本社会が認容していいはずがない。

学歴というのはその人が学生時代に何をしたかを “事実” で示す「人物証明」のひとつだ。社会において、初見の人を客観的に評価する手がかりとして広く使われる。ウソをついて〇〇大卒を名のれるなら、まじめに勉強して〇〇大を卒業した人にとって不当な利得となり、〇〇大の信用も棄損して社会に損害を与える。この社会悪の甚大さは「人間」でなく「お札」の偽造、つまり「ニセ札作り」に法律がどれほどの罰を用意したかを見ればわかる。通貨偽造(ニセ札作り)はまじめに働いてお金を得た人にとって不当な利得となり、通貨の信用を棄損して社会に損害を与える。その罪は刑法第148条によって「無期又は三年以上懲役」とされる。殺人罪ですら、死刑でなければ「無期又は五年以上の懲役」(刑法第199条)である。社会犯罪としての公人の学歴詐称の罪の重さが類推できよう。

政治に学歴は無用だという人がいる。そうかもしれないが、ここで言っているのは学歴が立派かどうかというコンテンツの話ではぜんぜんない。記録を平気で「改竄」してしまい、ウソの人生を平然と送れる人のメンタリティー、精神構造、性癖のことを言っているのである。2014年にSTAP細胞の論文でデータ・図表を改竄した事件があったことを多くの方はご記憶だろう。大手新聞、NHKがこぞってけしからんと報道した。人も亡くなった。しかし、それ自体は犯罪ではなく、そういう性癖の人が科学者を名のっても、人をそれでだまして詐欺罪にならなければ刑事罰はない。しかし、それでも、彼女の学者人生は問答無用で終わりだったのである。まして、本件は刑事罰が用意されている公人の学歴詐称問題だ。ウソでない証拠が出ない限り噂は永遠に残る。そういう性癖の人かもしれない疑念も残る。そういう人をわざわざ選んで権力を握らせる理由はどこにあるのかということだ。しかもそれを糾弾するどころか堂々と持ち上げる大手メディアがある。何のざまなんだそれは? STAP細胞事件から10年の時を経て、日本の根幹がここまで腐敗したかと絶句するしかない。

Categories:政治に思うこと, 若者に教えたいこと

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