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カテゴリー: ______日々のこと

日本プロ野球OBクラブに出席

2019 DEC 11 1:01:58 am by 東 賢太郎

東京ドームホテルで日本プロ野球OBクラブ25周年記念パーティに出席。江夏、張本、田淵ら往年の名選手を迎えて大盛況であった。池山、川口、中畑がデカいなあと思ったのと、松沼兄が普通の体格だったのが意外であった。V9のころカープがひねられていた中村稔さんは小さかった。

江夏・田淵バッテリー対談は面白かった。江夏は延長11回ノーヒットノーランを自分のサヨナラホームランで決めているが、さらに驚いたのはその5日前に広島を11回で完封しており、しかも3日前にリリーフで3回投げていたことだ。もう一つ、オールスターでの9連続三振の話も出た。「ストレートで400個も三振を取るピッチャーなんて今はもういない」と田淵。

そういえば今年5月ごろニューオータニのスパで400勝投手の金田正一さんを見かけた。隣のリクライニングチェアに座ってる人の右手がやけに大きくて、顔を見たらアッと思ったが、すぐマッサージルームに入られた。もういちど秋に同じ場所で見かけ、話しかけたかったがオーラに押されてできなかった。それからひと月ぐらいで訃報をきいた。超短波セラピーのSさんが「やりますか」と尋ねると「球が速くなりますか」と逆にきかれたそうだ。

この日のパーティーにおられた99人の元プロ野球選手にはいろいろ思い出がある。書いているときりがないからやめる。スピーチされたプロ野球コミッショナーの斉藤惇さんは元野村證券副社長で、お世話になった大先輩である。久々のごあいさつをするとさっそく飯でも食いにこいとなった。

ラグビー日本代表、スコットランドを撃破

2019 OCT 14 14:14:46 pm by 東 賢太郎

昨日、巨人の優勝を観てどっと疲れて帰ってきたら今度はラグビーのスコットランド戦が始まっていた。国と国のプライドをかけたすさまじい戦いを見た。最後の数分はもうだめかと思うほど相手は強かったのを知ったし、あってはならない殴り合いをしかけられる寸前の場面もあり、あそこまでスコットランド選手を追い詰めた力は本物なのだろうと思った。ベスト8への歴史的勝利を讃えたい。

日本代表のインターナショナルな顔ぶれはこれからの日本国、日本国民の在り方を示唆していると思う。日本文化を深く理解し『武士道』や『覚悟』といった言葉を好み、「『君が代』の意味まで知ることが日本代表だと思います」と覚悟を述べるリーチ・マイケルは誇るべき日本人であり、彼らのような才能に対してスポーツに限らず各界は大いに開かれていくべきだ。日本国籍だから日本人なのだという人がいても多様性としては受容しなくてはならないが、日本の文化と歴史を深く理解しリスペクトしない人はリーダーにはなれないし、日本国のサステナビリティを築き上げることはできない。なぜならそこに、あらゆる意味で日本を永続させる、世界における日本の絶対の強みが凝集しているからであり、したがってそれを失えば国は滅びて子孫は不幸になるからだ。

戦況を見ていて思ったのは、あそこまで両軍選手全員が一極参加してぶつかって体中の筋肉の力と知恵を振りしぼるスポーツはないだろうということだ。野球も「総力戦」とは言うが、ベンチにいる者が全員ゲームに出るというだけのことであって、戦場は基本的にバッテリー間だけ、全員一極参加になるのは乱闘のときぐらいだ。スクラム、モールのような一見乱闘に見えるバトルをルールに則って整然と進めるラグビーは格好いいと思う。だから終わればノーサイドなのであり、実に紳士的である。英国でアッパー(上流階級)の競技たるゆえんだ。アッパーは支配者層であり、支配する以上は戦争で一般市民より前線に出て戦うことを求められる。それがいわゆるノブレス・オブリージュ(noblesse oblige)であり、喧嘩が強くて賢いことを求められ、それが「ラグビー憲章」の5か条である「情熱」「品位」「規律」「結束」「リスペクト」となって結実している。

英国に6年お世話になっていた僕としてはラグビーというブリティッシュ・エンパイアの看板スポーツで日本が世界ランキングで過去最高の7位というのも誠に誇らしい。韓国は31位、中国は80位である。当然のことであるが、ノーベル賞の授賞者数と同じくアッパーのスポーツで国の差が見えている。数々のノーベル賞は日本人科学者が明治時代から基礎研究を営々と積み重ねた努力の成果であるが、ラグビーも田中平八の長男、田中銀之助(1873-1935)がケンブリッジ大学から持ち帰って慶応のラグビー部を作り「日本ラグビーの父」と呼ばれる。こっちも明治時代から営々とやっているのである。ラグビー憲章の5か条である「情熱」「品位」「規律」「結束」そして「リスペクト」。カネやミサイルでは手に入らないものがあることを認めるのが文明国というものだ。

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やっぱり強かった巨人とソフトバンク

2019 OCT 14 9:09:13 am by 東 賢太郎

朝から昨日の台風がなかったかのような青空だ。3時半からクライマックス・シリーズ・ファイナルステージの巨人・阪神戦を観た。

まず、おとといの第3戦のことを書いておくと、巨人楽勝で終わりと思ってたら8-7で阪神が勝ってしまった。立ち見を入れたら5万はいたかという超満員で、あっけない2連敗の上にこの日も巨人ペースであったから阪神ファンは大人しかったのだろう、はじめのうちはいるのはレフトスタンドだけかと思っていた。それが7回表の六甲おろしあたりからエンジン全開となって興奮度はすさまじくなり、いるわいるわ、我々の席の周囲からも大坂弁の強烈な怒号が飛び始める。大山の勝ち越しソロが出ると、ついにここは甲子園かという沸騰ぶりで何も聞こえなくなった。「今夜から台風に警戒」の予報だったから早く帰りたいが、そういう時に限って延長でもないのに5時間近いゲームである。8、9回をぴしゃりと、特に9回の坂本、丸、岡本をあっさり片づけた藤川の快投には快哉だ。帰りの混雑は未曽有のレベルで命からがらどっと疲れて帰宅した。

最後の打者鳥谷が倒れて巨人が優勝

台風で一日休んだこの日曜日、西投手は完封を狙ってただろう。見ていてそんな気がしたし、そうなっていたら阪神は行くところまで行ったかもしれない。それを打ち砕いたのが岡本だった。第1打席、見逃し三振にとられた144キロは目をみはった。いい投手だ。第2打席、特に悪くない外角低めスライダーを腰をためてバックスクリーンに放り込んだ。シリーズ3本目で当然のごとくMVPに選ばれた。そして同点の6回には2死3塁から球場が唖然、騒然、ベンチも驚いたというセーフティバントで1点をもぎ取った丸。倒れこんで動かなくなった西。すばらしい激突だったが巨人が強かった。負けはしたが阪神のペナントレース終盤からの勢いは凄かった。新人の近本、木浪の加入が効いていたが、特に近本はドラフトで藤原、辰巳のはずれ・はずれだから近来稀に見る野手の大当たりだ。矢野監督の積極采配もさすがは捕手で図星が多くなり、若手が多いことからも広島カープの2015年あたりの雰囲気がある。投手陣はどう見てもカープより上だ。佐々岡新監督はよほど投手を立て直さないと来年は阪神にやられるだろう。

鳥谷、阪神最後の打席

この試合、最後の最後で鳥谷が代打で登場した。結果はセカンドゴロ。阪神・鳥谷、最後の姿だった。彼を初めて見たのは2002年の明治神宮野球大会準決勝だ。3年で早大の3番ショートだった。さっき調べてみてわかったことだが、その試合の早稲田は1番・田中浩康(ヤクルト)、2番・青木(ヤクルト)、3番・鳥谷(阪神)、4番・比嘉(広島)、6番・武内(ヤクルト)、7番・由田(オリックス)、そして投手は先発が和田(ソフトバンク)、救援が越智(巨人)と錚々たるメンバーだったが東北福祉大に5-2で負けた。この日の神宮ではもうひと試合、亜細亜大vs九州国際大があって、亜細亜の永川(広島、今年引退)が11奪三振の3安打完封を演じて1-0で勝ったが、捕手で4番は横浜高で松坂と組んだ小山(中日)、サードで3番が1年生だった松田宣浩(ソフトバンク)だった。この日は息子を連れて評判だった和田を見に行ったと記憶するが不調であり、永川の快投が鮮烈で、同期で巨人に入団した木佐貫が先発だったが彼は抑えに回ったのが不満だったのを覚えてる。3年生鳥谷は4打数1安打だった。

東京ドームで途中経過で気になっていた西武ドーム。またまたソフトバンク(SB)が勝っている。公式戦の対戦成績はほぼ互角で、差が出たのはロッテをカモにしたかされたかだけだから別に不思議でない。西武の打線は脅威だがSBの中継ぎ以降は鉄壁である。打線は水物、いい投手が出てきたら手も足も出ない。いっぽうでSB打線は弱体の西武投手陣を打ちまくり、公式戦14本塁打の今宮が決めの一戦で3本も打ってしまう。松田をスタメン落ちさせるなど非情の采配に徹した工藤監督が選手全員のテンションをうまくピークにもっていった勝利かもしれない。同じく手駒を自在に動かして、丸以外は去年とさして変わらない戦力で圧勝した原監督といい勝負だ。面白い日本シリーズになりそうだ。

いっぽうで浅村、菊池雄星とエースと4番がぬけたのにリーグ優勝した辻監督の手腕も讃えたい。当然の留任だし、来年は投手力をつけて雪辱してほしい。西武の選手たちも本拠地で2年連続して2位に、しかも同じSBにやられてしまうのは男として耐え難い屈辱にちがいない。しかし平穏に終わってしまうより一敗地にまみれてマグマを溜めておいたほうがいいこともある。

 

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我が家の真上を行った巨大台風19号

2019 OCT 13 2:02:07 am by 東 賢太郎

過去最大の台風といってもピンとこなかった。我が家は南西方向が崖の高台に建っているから風はもろに受けてしまう。ついこの前のも大型だったが、あれは暴風雨が夜中であり、家族は眠れなかったらしいが僕は来たのも知らずに朝まで熟睡だった。

しかし今回の19号は二日も前に巨人・阪神のCSの中止が発表されており、ドーム球場なのによほど強力なんだろうということで一応の心構えはあった。世田谷区から防災警報が放送マイクで何度も何度も物々しい口調で流れ、スマホ情報で台風を眺めてみるとなるほどでっかい。東は仙台あたりから西は愛媛あたりまでの図体ではないか、こんなのはたしかに見たことない。アメリカで巨大ハリケーンとして勝手に名前はついてるし、娘にはブラジルの友達から安否を心配するメールが入っている。なんか地球規模の化け物みたいだぞ。

そうこうするうち、こいつはずいぶんゆっくりと北上してきて、午後7時にとうとう伊豆半島に上陸した。なにもわざわざそこまでキレイに伊豆を狙わなくてもいいだろうというほど見事にドンピシャだ。まずいね、ウチの辺も雨脚が強まってきているぞ。心配になってきてそこからの進路予想図を見てみると、伊豆からいい塩梅にスライス気味にカーブしていて、「目」はどうも我が家のあたりを直撃しそうである。直撃も初だが、そいつが過去最大だなんて・・・。

「その時」は午後10時に来た。我が家のほぼ上空にこいつは悠然とやってきた。伊豆南端からちょうど3時間で意外に速いではないか。その30分前から窓という窓に吹きつけるかつてない暴風のピューピュー、ゴーゴーいう音と、バリバリと全開の高圧シャワーのような強烈な雨音の宣戦布告がフォルティッシモで始まっていた。話し声も聞こえなくなってくる。ガラスは二重だし壁も頑丈だから大丈夫と思っていたが、窓や壁の心配をするまえに家ごと持っていかれるかというド迫力だ。それが1時間も続くとさすがに怖さを覚える。といって何ができるわけでもなく、家族5人とネコ3匹で耐えていたらだんだん音はフェードアウトになっていった。

そうしたら午後11時ぐらいになって「多摩川の水位が上がって、ついに氾濫した」という聞き捨てならないニュースが出た。箱根の降水量が日本一になったようで、ここからは川の氾濫が危険だ。一難去ってまた一難。サイレンを鳴らしながらパトカー、消防車が何台も通る。場所は二子玉川らしい。あそこはあり得るなと無事をいのる。我が家は離れてるし30メートルの高台だからと高をくくっていたら、そこでいきなり停電に見舞われた。ここから家中がやおら災害モードになる。真っ暗になって歩くのも不如意になってしまうと人間は何もできなくなることを悟る。しかし妻子は懐中電灯とスマホで家中を照らして手際よくブレーカーを落とし、復旧時期が不明だから冷蔵庫の生ものを片付けてしまおうという機関決定がが僕ぬきで下されていた。昔からそうであるが、こういう時に家長はからっきし役に立たない。階段でころげ落ちないようにへっぴり腰で手すりを伝い、義務で平らげた生ものは一番どうでもいいヨーグルトであった。

そんなドタバタをしり目にネコたちは平然としたものだ。世田谷区の防災警報が「レベル5です、避難してください、命の安全を第一にしてください」になったときまっさきに心配したのは、ネコを連れていけないかだ。「避難所はダメらしいよ」「どうしてだ、犬は」「犬もだめ」「じゃあインコはどうだ」と禅問答になっているのを横目に我関せずと寝そべったままだ。最悪クルマに積んで逃げるんだろうなあなどと考えていたが幸い避難するには至らず、大箱のヨーグルトをがんばってフィニッシュしたと同時に停電は15分ぐらいでおさまった。そうしたら、やおらクロが僕の膝に飛び乗ってきた。普段は家長はただの踏み台であって、そこからいい匂いのする食べ物が並ぶちゃぶ台に乗り移ろうという魂胆のクロなのだが、この日はそうしない。ピューピューバリバリが怖かったんだろう。

11時半で外はすっかり静かになった。雨も風もなし。玄関から出てみると湿った外気がそこでひと騒動あった物々しさを残しているが、塵ひとつない自然の香りに満ちていて胸いっぱい吸い込むと新鮮な気持ちになる。前の道へ出ると人っ子一人いない。完全な静寂。それにしても凄まじいエネルギーだった。あれで発電、蓄電できたら原発いらんだろう。台風はミクロネシアあたりで生まれるからマリアナ海溝で産卵するウナギみたいなもんだ、台風の赤ん坊なら核爆弾を打ち込めば日本に来ないよう進路を変えられるんじゃないか?いろいろ馬鹿なことを考えながら戻ってきて、2台の車を見たらこれが洗車したみたいにピカピカに光ってるではないか。

古来より日本人は台風を仕方ないものとして甘受してきた。清冽な水、豊かな作物、みんなそのおかげであって、いろいろ厄災はあったけど神様はお恵みだってくれてるじゃないかと長いものには巻かれ、つにには争い事まで「ここはひとつ水に流して」なんてノーサイドのきっかけにまでなってしまった。とても疲れた一日であったが、過去最大のモンスターに耐えられたんだからもう何が来ても大丈夫。水に流そう。これを古来より台風一過という。

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不思議な出会い

2019 OCT 4 1:01:40 am by 東 賢太郎

本当に世の中は不思議なもので、まず、きょうは元野村の部長O君の紹介で「スモル・ワールド」のK社長に中をご案内いただいた。場所はりんかい線の「有明テニスの森」だ。写真の駅の両側が東京オリンピックの競技場になる。

スモール・ワールドは来年3月にここでオープンだ。

世界最大の屋内型ミニチュアパークSMALL WORLDS TOKYO …

 

SNS禁止なので内部の写真は載せられないが、エヴァンゲリオン、美少女戦士セーラームーン、関西国際空港、スペースシャトル5機の打ち上げ、イタリア・ドイツ・スイスの鉄道ジオラマなど話題のエリアを8000㎡に展示した世界最大のミニチュア・テーマパークだ。ソナーに出資を要請されたが検討に値する。

終わって食事して、銀座へ。久々にSMCメンバーの靖子さんの店「佳蓮(かれん)」になだれこむ。そうしたら、やっぱりメンバーであるブルーベイ・アセットの吉田社長が外人さんとふらっと来店。瀬戸内海は直島以来のまったく偶然の遭遇であった。お連れさんはマーキュリー・アセット社長だった英国人のSさん。ロンドンの話に花が咲いた。Sさんはバークレー銀行で12か国に赴任したつわもので5か国の僕などかわいいもんだ。ケンブリッジ大学物理学部と日本語学科卒でチェス部のキャプテン。日本語ぺらぺらの超インテリで今はケイマンに住んでいるがラグビーWCの応援で来日されたそうだ。イギリスはいい。なつかしくなってまた行きたくなった。

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2019 SEP 30 19:19:43 pm by 東 賢太郎

今年は蚊に食われなかった。人生初めてだ。体質によって狙われやすい人とそうでない人といるらしいが、僕は前者なので夏はいつも注意を怠らない。にもかかわらず毎年やられる。不倶戴天の敵であったのだが・・・。

ガキの頃は放課後も休日もほぼ屋外にいたから蚊にとっては格好の獲物であり、いつも手足がかゆくてムヒなしにいられなかった。部屋にも侵入されてしまう。夜中にプ~ンという不快な音で目がさめ、眠気まなこで電気をつけて逆襲にかかるとぱたっと気配が消える。これはなぜだろうと思っていたが、蚊は自分を襲った相手のにおいを覚えていて身を隠すそうだ。何億年もかけて吸血で生き残った生物だ、すごいセンサーを身につけている。まるで忍者みたいだが、こっちもスナイパーだ。睡眠時間をけずっても絶対殺すと意を決して家中さがしまくり、机の下の暗がりの壁にとまっているのを遂に見つけるのだ。

敵は血を吸って丸々と太り、もう逃げられない。この瞬間の気持ちをどう表現したらいいんだろう?快哉を叫ぶと同時に、明日は大事な試験があるというのに寝不足だと怒りは頂点に達しており、風前の灯火のこいつをどうやって殺してやろうと考えるのだ。キンチョールじゃ面白くない、手でぶっ潰してやろうなどと。この瞬間、僕はギャングを追い詰めた刑事のつもりでいるのだが、実はギャングは自分なんじゃないかと思ったりする。動物は相手を食うための殺しはやるが人間は怨恨でもやる。鶏を裂くに牛刀を用いるぐらいの勢いでそいつをつぶすと、壁紙が血で赤い。やったぞとは思うが、ごめんよ悪かったなという気も残る。幸福な幕切れではない。

いまの家は蚊が来ない。やられるのはもっぱら暗闇の帰宅途中の路上だ。スマホのながら歩きなぞしているとほぼ確実に腕や首をやられる。それもあっという間にだから大変な凄腕であり、敬意を表したいぐらいだ。しかし不思議だ。これらの個体は卵を産んで死ぬはずだが、毎年どういうわけかそのあたりで同じようにやられるのであって、凄技は子供に遺伝しているとしか考えられない。そう考えると、今度はギャングではない自分がいることに気がつく。そうかこの蚊も母親なんだと。

すべての生物にお母さんはいる。それで同情してたら世の中は大変なことになる。そこで刑法では罪刑法定主義というものが出てくる。人と罪は分離して、犯した罪を法律に書いてあることに従って罰する。罰せられるのはその人だが、そしてその人にもお母さんはいるのだが、それはそれこれはこれで刑は執行される。権力を持って裁く側の人間がギャングかもしれず、人間というものの愚鈍さを歴史から学んだ英知から出たスマートな考え方である。血を吸ったら死刑という法律はないから、僕はあの帰り道の蚊を殺してはいけないかもしれない。

蚊にはひとつだけだが感謝することがあって、それは蚊取り線香というものを日本人に発明させたことだ。あの紫煙の香りは風鈴の涼やかな音色と同様に欠くべからざる夏の風物詩で僕は大好きだ。家族で海水浴に出かけた伊豆白浜や勝浦の民宿の夜、蚊帳を吊って親父がさあ寝るぞと消灯するが、明日も泳げるのが嬉しくて興奮して眠れなかった真夏の夜の空気をありありと思い出させてくれる。

なんとなく、見つけても蚊は殺すまいと決めていた。そういう奴はつまらないから狙わないのだろうか、今年は蚊に食われなかった。

 

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僕の五感強化法

2019 JUL 30 0:00:04 am by 東 賢太郎

雨あがりの朝に今年初めてのセミが鳴いた。先週の火曜日、7月23日のことだ。その瞬間、あっ梅雨が明けたぞと思った。気象庁は台風を気にしてか梅雨明け宣言しなかったようだが、セミはハズレて批判されるリスクは気にしない。

僕は永いことネコと暮らしてきたせいだろうか、人間のなまじっかの理性より動物の本能を信じるところがある。我々は嗅覚、聴覚、視覚も運動能力も圧倒的にネコに劣っている。理性だけは少しは上回っているようだが、だからネコより偉いと断定はできない。ヒト一人とネコ一匹が人里から完全隔離された原野に裸で放置されたら一週間後に生きてるのはネコの方だろう。

我々は理性の代償にだんだんと五感を失ってしまった。でもバランスの良い生活を送るには動物としての感覚はないがしろにはできないと考えているので、僕はいつも五感を自覚しようとしている。できればもっと鋭敏にしたいとも思っている。先の週末に海が見たくなった。こういう時は欲求にさからわない方がいいというのが生き方だ。どこか近場でということで、三浦半島は油壷にでかけてしばし海辺の岩場でぼーっとした。我々に残っている五感は儚い。ひらひら飛ぶ蝶々みたいなものだ。海を見ているとほっとするのは、太古の昔は魚だったからだろうという気がしてくる。そういうとりとめのない「気」というものは、どこからともなく泡のように心にぽっかりと浮かんでくる。それをしっかりつかまえてみる。それが僕の五感強化法だ。そうやっているうちに、日々積もりに積もった心の澱を足元のさざ波が洗い流してくれる。わが身は逆巻く水にのまれてくるくると水底をころがる子蟹みたいである。そう思うと、泳ぎたいなという「気」が降ってきた。

見たことのない木だ

僕にとってロンドンや香港は仕事をする場所であった。東京だけはそうじゃない、故郷だと思っていたが、どうも近頃はそっちになってきた。仕事も五感が大事だ。鈍ると判断を間違える。我々は言語というものを駆使できるし、それが理性を産んだ。しかし、便利ではあるが言語は時に自分をも縛って自らを欺いてくれたりもする。そこから不安やら疑いやら怒りやら、あんまり健康によろしくない感情というものが生じてもしまう。だから時には一切の言語と理性を絶って、自然の一部になったほうがいい。

横堀海岸にて

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渋谷を歩いて気づいたこと

2019 JUL 10 1:01:12 am by 東 賢太郎

金曜日の大学のクラス会を楽しみにしていたら事情で行かれなくなってしまった。そのいきさつを秘書に話すと、もう彼女の世代にとってはクラス会というものは当たり前のようにある存在ではないらしい。仲良しとラインするだけで用が足りるというが、文字だけでそうできるのは仲間や友達というものの在り方が我々とは変わってしまっているんだろうか。

今日は健康診断で渋谷を久々に歩いたが、道玄坂から井の頭線に向かうとガード下は今でも飲食街でごちゃごちゃしてる。僕が学生のころはもっと下世話な赤ちょうちん、屋台が雑多にひしめいてた。仲間で駒場で麻雀やって夜に歩いて松濤から下ってここまでくる。焼き鳥屋で飲んで騒いでどうやって帰ったか覚えてない。渋谷はそういう所だった。ここを自分が歩いてた。史跡に来たようだ。

文化村あたりでつけ麺屋に入ったら外国人が多い。半分ぐらい外人である。それも団体じゃない、バックパッカー風の男女がふつうにてんでばらばらに入ってくるのだ。このへんは昔から相変わらずの風情だ。ストリップの「道頓堀劇場」から猥雑な小道を下ってくる。そのほんの100メートル先ではオーチャードホールでベートーベンを演奏しているのである。なんてところだ。

東急デパートと109の間の大きな道は文化村通りという。左へ登ると住宅街の松濤だ。反対のつきあたりにはブックファーストの大型店舗があったが2年前に消えた。こういうよく来た店は何階のどのへんに何があってとはっきり覚えてるだけにつらい。でも思えば本もCDもあまり必要なくなって久しいのだからこっちの問題なんだ。どっちも手当たり次第に買ってたくさん積んだままだ。

健康診断は3月に指摘されたものの経過観察だが、「近頃は何でも医師は指摘するんですよ。見落としのミスの指摘を避けるためです」と写真を見た別の医師が指摘した。そして、その所見と限界を説明する。「じゃあ心配ないんですね?」「ですから申し上げた所見ですが、限界はあります」。天気予報を思い出した。「年1回のCTで結構。2回以上だと被爆しますから」。これ2回目だ。

運命の車輪はゆっくりゆっくり回っている。

O Fortuna おお、運命の女神よ

運命の女神よ、貴女は月の如く満ちたり欠けたり、常に定まらない。 人生も同じこと、確かなものは何もなく、運命に弄ばれ貧乏も権力も氷のように無に帰する。 恐るべき空虚な運命よ、おまえは車輪の如く回ってゆく。 信頼能わず、隠れたら現れ、健康と徳を授けたらすぐに欲情と背反をよこす。 我らは常に憂悶しながら、たえず恐れおののく。 さあ、運を掴んだ者も投げ落とされた者も、私と共に運命に泣こう!

(カルミナ・ブラーナ)

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いろいろ思う「白い巨塔」

2019 MAY 27 1:01:48 am by 東 賢太郎

「白い巨塔」を見ました。TVドラマは縁がないのですが、これと忠臣蔵は結末がわかっているのに見てしまう。財前が嫌いな正義漢、東教授のファンなのです。学究肌であり、出身校の東都大学で教授になれず浪速大学教授になった負け組というのがまたいい。まことにどうでもいいのですがアズマという苗字もあんまりメジャーでないのです、それで毎回役者は誰かなと気になります。石坂浩二がイメージに合いましたが、今回、こんなブログ(寺尾聰「ルビーの指環」)まで書いた大ファンである寺尾聰というのも意外でした。ご縁ということにしておきたい。財前教授は田宮二郎、唐沢寿明ときて今回は岡田准一。熱演でした。

最後のシーンはいつも悲しいですね。それでつながってしまうのですが29日はおふくろの二周忌だ。あの日、帰宅しぐったりしていたら家内に「ベランダへ出てお空見て空気すいなさい。お母さんと交信できるわよ」と言われ、なるほどとそうしてみたら、見たこともない筋を何本も引いた巨大な流線型の雲が西空にかかっていてこっちにだんだん向かってくる。これは何だ?とびっくりしたのです。後にも先にも長い人生でその時しか見たことがない。そういえば隣の神社の縁起にあった、源氏の大将・源頼義が奥州平定(前九年の役)で多摩川を渡ってウチの目の前の丘に陣取った時、「空に白雲が八つに分かれて棚引き、源氏の白幡のように見えたのを大いに喜び、勝利の暁にはこの地に八幡社を創建することを誓った」というあれ、それで勝利したのでここに八幡様がいまあるわけですが、そうか、たしかに八つの線だ、それにちがいない、お袋のメッセージだと信じているのです。

ところで、息子がイギリス国鉄の列車の名前がAZUMAになったよというので見たら本当だ。常陸国の日立製である。

ハムステッド・ヒース駅の「あずま」

「あづま」でなく「あずま」にしてくれたのがうれしいですね。我妻と東で違うのです。由来はロンドンから東海岸を北上するイースト・コースト線だからのようですが、まさにこの線で2009年に息子とヨークの鉄道博物館へ行ったのだからこれもご縁です。僕にとって最も縁の深い外国である英国が粋なことをしてくれる。またおいでとラブコールされた気分です。

縁なんて探してこじつければいくらもありそうなものですが、そうはいっても立て続けに出てくると特別と思いたくなります。そうやって大切にするものが増えれば何も大切にしない人生よりは面白く過ごせそうです。

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大江戸な一日(国立能楽堂と新宿末廣亭)

2019 MAY 20 6:06:36 am by 東 賢太郎

SMCメンバーの阿曾 靖子さんのお手引きで国立能楽堂で能(田村)、狂言(萩大名)を観ました。ここは2回目です。お招き感謝します。ド素人ですから無粋なことは書きませんが、前回もそうだったように異次元の空間に入り込んだような気分で、終演後は別の人になって能楽堂を後にします。歌舞伎ともちょっとちがう、浮き立ったものはなくてむしろ心が広々と静まりますね。いいものです。能が足利、織田、豊臣が保護したオペラなら歌舞伎は江戸町人のミュージカルという感じでしょうか。

プロの方とアマチュアの方が混合なのですが、前回は恥ずかしながらその区別がつきませんでした。今回は囃子方がオーケストラ、謡が合唱団とわかってきて、そこがプロで固まれば舞はアマチュア(勿論修練されればですが)でもいけるのかななんてことを考えながらおりました。信長、秀吉が舞台にはまった背景はそれかもしれませんね。野村萬斎の萩大名、片山九郎右衛門、観世喜正の仕舞などやはりオーラがあって、異界を楽しませてもらいました。

娘がいたもので終了後は新宿の寄席、末廣亭へ。午後の部の中入りまでじっくり落語、漫才、手品を楽しみました。この一週間、大相撲、能・狂が言、寄席と江戸文化のオンパレで、全部が異界でありましたが金融なんてドライなものをやってますと、人肌があってしっとりしてよろしかったですね。生き返ります。

寄席はどれも存分に笑いました。僕は寄席もお笑いも大好きなんです、一日中いてもいいぐらい。漫才の「ホームラン」さんが昭和の同世代の笑いで面白かった。ハズキルーペ、ひじかたきくぞう、最高。応援したいですね。こういうネタはその人がどういうものが面白いかってことで、ケミストリーというぐらいだから同じものが笑える人は気が合うということなんで。僕も日々全く自然に面白いものを探して生きてまして、別に人に聞かせるわけでもないですが、人生楽しくて明るいほうが幸せですよね。

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