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自民党に漂う「オワコン感」の真因を解く

2024 APR 7 1:01:35 am by 東 賢太郎

ネーミングのセンスというものはある人にはある。「アベノマスク」は歴史に残る傑作であるし、その昔、平成になって日本に帰ってきたすぐのころ、猥雑な新宿の歌舞伎町をタクシーで通りかかったとき目にとびこんできた「平成女学園」の看板にはいたく感心したものだ。最近のところでいうなら、上から目線のぼったくりが過ぎて日本ハムファイターズに逃げられた「札幌ドーム」だろう。大繁盛の「エスコンフィールド」に対抗したいのだろうが、気張って募集した命名権は値段を半額にしても応募ゼロ。これぞ政治家とお役所による殿様商売の見本なのだが、当人たちは相場観がないから不人気の理由さえわからない。そこで週刊誌FLASHが命名した「オワコンドーム」。なかなかの出来ではないか。

札幌ドーム

「札幌市」を「日本国」にズームアップしてみよう。象徴である札幌ドームが小さく見える。日本国の政治の象徴である自民党本部も小さく見える。よく見ると、政治家とお役所の昭和的センス、いわれなき殿様感覚、救いがたい相場観の欠如において両者はいい勝負である。ということは、すなわち、論理的帰結として、「自民党のオワコン感も半端ではない」ということになってくるのである。

「裏金議員」事件。そもそも検察は裏金づくりを犯罪と考えているのかどうか?それで脱税すれば逃れようもない犯罪であるのだがどうして国税は厳格にメスを入れないのだろうか?岸田派の会計責任者だって有罪なのになぜ安倍派、二階派だけ悪いとされるのか?どうしてそういうことが法治国家で堂々とおこなわれて放置されるのか?そして、どうしてマスコミはそれを報道しないのか?

こうしたことが初めから思いっきり意味不明だったが、岸田政権が米国民主党にハイジャックされた傀儡政権だという仮定をとれば、これまで僕がブログで予言してきたことが現実になりつつあることと同様に説明できてしまう(ということは、やっぱり傀儡だったのだ)。見抜き方は実に簡単だ。マスコミがこぞって報道しない。これを見つけたら「政府は何か隠してる」「なにかバレるとやばいものが裏にある」と自動的に考えるだけでいい。マスコミは実はそれ自体が丸見えの「報道」になってることに気がつかない。確信犯かもしれないがみんなで赤信号を渡っているから怖くない。だから毎回やってくれる。

論考のスタートは検察によって安倍派だけで91人の「悪人」が疑義ありとあげられたことだ。この時点でキックバックの記載漏れ、使い残しは脱税問題であるというのが世間の認識だった。ところがそれが裏金という下世話で甘い定義の言葉に置き換わり、検察が「4千万円以上は立件」としたことで、「なんだ4千万未満はオッケーなのか」の空気に変わった。というより、マスコミが巧妙に変えた。そんなことは法律に書いてないし、堂々たる法律違反ではあるが訴訟技術上の理由で、というより、それ以前に政治資金規正法が阿保らしいほどザル法すぎて、当面は起訴はしないという判断を下しただけのことだ。

注目しておくべきは、ここまでは検察という「国家」の判断だということだ。検察庁は行政機関だから国家(=主権者である国民)ではなく総理と官邸の支配下にあるではないかという議論は違う重要な場所で展開されている。私見ではこうなったのは第2次安倍政権の功罪の「罪」の方であり、政権のチョウチン持ちであるマスコミ・政治評論家はそれを「そんなに悪事でもない」というニュアンスで報道し、世論の認識を徐々に変質させた。それこそがまさしく重罪なのである。本稿はその解明が目的ではないので「裏金」という下世話で甘い定義の言葉を「気持ちが悪い」と思いつつも、皆様への説明の便宜上、論旨を損なわない範囲で使用する。

 

検察の判断はサンフランシスコ市が決めた「950ドル以下の万引きはセーフ」と同じである。米国はバイデンの政策で激増した不法移民を現状の警察力で取り締まれず、万引き程度で厳罰にして凶悪犯罪を起こされても困るという窮余の策だ。欧米にはこの手がよくあって、僕がチューリヒにいたころ、政府が若者の麻薬取締りを断念して駅前の公園で新品の注射器を無償で配っていた。無闇に厳罰に処すと地下に潜伏されてしまい、仲間の回し射ちでエイズまで国中に蔓延するのを防ぎようがない。その国家的損失の方を重く見て「やっていいから新品で射ってくれ」と釣って中毒者を表にあぶりだしておいて、いずれ一網打尽にするという意図である。そうであるなら(そうと信じるが)、日本の検察の判断はすぐれて欧米的なのかもしれない。

目の粗いザル

とすれば、国民の理解としては、政治家の裏金作りは万引きかシャブ中毒みたいなものかという話になってくる。だから「合法だ」と言い張ってその芽を摘んでしまわないとまずい。そこで、目の粗いザルである「政治資金規正法」が大活躍だ。「ザルを通しました」といえば、どんなザルでも “合法” になる。しかし、この法律は泥棒が「戸締り用心!」と言いながらあけやすい鍵を売っておいたようなものだ。罪刑法定主義の国だからそうは言えない検察は、「4千万円以下は立件しない」とせざるを得ない。それを奇貨として、岸田総理は「検察が所要の捜査を尽くしたものと認識しております」「収支報告書の不記載については、法と証拠に基づいて、処理すべきものは厳正に処理したものであると認識しております」と、ことあるごとに “合法性” をにおわせているが、その「法」こそが問題なのはほおっかぶり。総理大臣は国会議員であり立法の責任者である。瑕疵のある法律を放置してその責務を果たさないなら国会議員を辞職してもらうしかない。あげくの果てに「報告書に記載があって領収書があれば中身は問いません、各議員がおのおのの判断に基づいて政策活動に支出していると認識しているところでございます、(50億円でも)」なんて凄まじい答弁がしゃあしゃあと出てくる。こんなものを主権者たる国民は許していいのか?

非常に重要なことだが、ひょっとして、われわれ国民は知る由もない自民党の深い闇に関わっているのではないかという直感を多くの国民が今回の事件で言わずもがなに懐いてしまったのではないか。マスコミは隠す。しかし隠されると見たくなるのが人間のサガだ。総理大臣が「認識」するなら国民だって「認識」するのだ。裏金事件をうわべのもみ消しで葬ろうとすれば、そうすればするほど、そうした国民の疑念はふくらみ、自民党は自ら終わらざるを得ないデス・ロードに入りこむだろう。

「4千万円未満はセーフでいいのか」。これはコップに半分の水を見せて「まだ」か「もう」かとやるに過ぎない。どっちであろうが「法律違反」なのだ。マスコミが「おかしいではないか!」と正義の味方のふりをして扇動し、ああだこうだとお遊びに興じているうちに国民は何が問題だったか忘れてしまう。それに乗じて法律違反という火種を消してしまう。すると「法律問題ではないのだから」というウソがだんだんホントに見えてきて、「犯罪事件」が「裏金問題」というとんでもない大嘘、つまり、やんちゃな子をお仕置きすればすむ程度の話にすり替わってしまう。これが本件のメイントリックである。だから、いつの間にか国家(裁判所)でなく自民党の党紀委員会が本件を「裁く」ことになってきて、党則および党規律規約に基づいて、国会議員ら39人の処分を決定するという、学芸会の劇にすぎない出し物で「大団円」感を演出しようとしているのである。台本作家には申しわけないが、日本国民はあなたが考えているほど馬鹿ではない。

いつの間にか悪人が39人に減っている。

まず、これがトリックの小ネタなのだ。この数字が何度も報道されて目が慣れると、なんだ91人の大事件と思っていたが高々39人の話だったのかと、事件全体の重さが軽く感じられ矮小化されてくる。10万円の物を売ろうと思ったら、10万円でも安いと説明してはいけない。まず100万円のを見せれば、何も言わなくとも安く見えてくる。猿をだます朝三暮四に引っかかってはいけない。党紀委員は民間人も入っており国家機関でない。党則および党規律規約など法律でも何でもない。ところがだ。脱税議員は裏金議員にすり替わり、裏金は犯罪ではないが怪しからん、綱紀厳正である自民党は国民と一緒に怒っておるぞ、ついては自民党の議員なのだから自民党が自ら裁くのがいいだろう。

こうして「被告人」のはずの自民党がいつの間にか「裁判長」になっていて、やりたい放題の判決を国の顔をして出してしまう。これは「換骨奪胎」という「なりすまし技」で、だまされる人がいても無理ないが、所詮はタコの変身とおんなじで、ハリボテのインチキである。

「いつの間にやら裁判長」作戦

メイントリックをわかりやすくご説明しよう。サラリーマン時代のことだ。どこかの本部で不祥事があると本部長が本社に呼びつけられ、監督不行き届きで左遷される。普段はいい稼業に見えるが実は体を張っているから部下は命令に従う。これが組織の規律というものだ。ところがだ。某本部長は被告人のような気弱な顔をして本社に出向くのだが、戻ってくると裁判長の厳しい顔になっていて部下だけ処分され自分は昇進する。サラリーマンのプロというのがいるのだ。部下は委縮して戦々恐々となり、仕事のパフォーマンスは落ちるわ、あいつ早く死なねえかなと飲み屋で呪詛するわでムードまで最悪だ。

タコの変身術

被告席にいたと思ったらいつの間にやら裁判長席に座っている某本部長の変身術はタコもビックリで、こりゃ凄いとタコが彼の顔真似をするんじゃないかと思うほどだったが、社員にも真似る奴がどんどん出てくる。これがまた見事なもので、得意なものはいろいろあるができないのは仕事だけという奴ばっかりだ。そうやって体を張らないタコ上司が蔓延しだしてからだ、会社がにわかにおかしくなったのは。いま自民党が仕掛けている技がそれであり、そうやって自民党も腐っていく。「おまいう」の岸田総理が「岸田派の超過分は性質が違う。検察がそう判断している(捜査は米国によるやらせだ)。だから再発防止、政治改革に全力で取り組まなければならない。それが総裁としての責任である」と強調。皆さんどうですか、白状してますね、「総理」でなく「(自民党の)総裁」なんです。自民党など下野すれば国家でも何でもない。その総裁が、国家元首の顔をして国民が選挙で直接選んだ国会議員を処分している。部下だけ処分され自分は昇進。外野席から見ても見事なタコ野郎っぷりでしょ?生贄(いけにえ)にされた議員たちは怒って当然。怒らないならいずれタコの仲間になって腐敗を加速する奴だ。個人的な趣味ではあるが、僕はお寿司屋のタコは好きだが、こういう糞ずるい奴は子供のころから大嫌いである。

もっと詳しく見てみよう。

39人のお裁きの理由を4月4日夜に岸田総理は「派閥幹部などの立場にありながら、結果として長年にわたり不記載の慣行を放置し大きな政治不信を招いた責任」と述べている。罰を受ける具体的な行為は1回でも法律違反の「不記載」ではなく、法律違反にならない「不記載の慣行の放置」に巧妙にすり替わっている。慣行を最初に作った人は無罪になっており、「落選中」「政界引退」の者は1人を除いて消えており、「派閥幹部などの立場にありながら」の部分が重いかのように見せている。つまり、派閥が害悪だと自分の派まで潰しておきながら、その幹部の立場は重要だったと矛盾したことを自分で言っている。「暴力団だ」と解散させながら「組長は不信を招くな」と言ってる。さすがにここまでくるとこの人は真正の馬鹿ではないかと疑わざるを得ない。「じゃあその一人であるお前は何なんだ?」と言われれると「私は裁判長だ」(=それが総裁としての責任である)としゃあしゃあと答える。タコの変身の瞬間を皆様は心の写真に残し、絶対に忘れてはいけない。そのためには、脱税議員を裏金議員にすり替え、法律問題を自民党問題にあらかじめすり替えておくことが絶対に必要であり、それが何月何日に誰によってどう行われたかは良いケーススタディなので若い方はご自分で調べてみる価値がある。

そして問題の39人の顔ぶれだ。

とても著名な面々がリストから消えており、話題にもならない人がたくさん入っており、著名だが消せないほど悪辣な場合は役職についてもいないのに「役職停止」だ。しかも「党の」である。そんなものは国民にとってどーでもいい。次の選挙に出ません。そんなものは**県民じゃない国民にとってどーでもいい。

つまり、このリストの顔ぶれを眺め、マスコミに乗せられて処分は8段階あるとかないとかクソどーでもいいことをああだこうだピーチクパーチクやりだした瞬間に、あなたはすでに自民党の詐術にかかっている。タコがアンコウに化け、あなたの目の前でゆらゆらさせてるチョウチンがそのリストなのだ。もちろん、食いたいのは「あなたの貴い一票」である。

それだけではない。チョウチンを光らせて脱税および政治資金規正法の改正という法律問題に国民の目がいかないようにしながら、総裁選のライバルになる他派閥の幹部(要は例の5人組)に罪人のイメージを着せて追い落とし、場合によってはリストから外してやってもいいがとゆすっておいて取るものは取り、雑魚はへへーっと土下座させる。森、二階はなぜリストにないのか?「落選中」「政界引退」はセーフだからで帳尻があう。派閥を消し、その幹部も葬ってしまい、選挙の公認剥奪という議員が実は最も怖いお仕置きで他派だった下々の議員を脅せば岸田と官邸にひれ伏して忠誠を誓うようになり、トップダウンがやりたい放題になる。これが狙いだろう。

ここまでが米国民主党の意図とは思わないが、巨額のウクライナ復興予算等を通すためにはトップダウンやりたい放題になっている必要がどうしてもあり、それには抵抗勢力である現状の派閥体制をぶっ壊す策略がどうしても必要だった。それが米国の意で動かせる地検特捜部を使った裏金あばき、派閥潰し、邪魔な幹部の追い落としであり、岸田氏は総理大臣としての延命にそれを利用もしたということではないか。こういうことはビジネスでも日常茶飯事であり、猫がネズミをとるようなもので政治家が目の前のチャンスを拾って悪いことはないからその行為だけをもって総理を批判する気はない。

政治資金規正法

しかし、ここからが本稿の最も大事なポイントだ。国民は「裏金議員」は脱税という “法律違反” を犯したと怒っているのである。なぜ国民は裁かれるのに国会議員は裁かれないのだと。しかしその「法律」は、税法以前に、ザルで大甘の「政治資金規正法」だ。検察が「4千万以上しか立件できない」とするのはザルの目が粗いからで、それを棚に上げて岸田総理はことあるごとに「検察が判断している」としゃあしゃあと「検察」を免罪符に使って逃げている。検察は法律は作れない。だからお前が政治資金規正法を改正して政治とカネの問題にケリをつけろ。「自民党総裁」としての責任なんかどうでもいいから「総理大臣」の仕事をしろ。

この怒りのマグニチュードは、岸田氏が食ったネズミが運悪く納税(確定申告)の最中に出てきたことで、国の隅々まで凄まじいレベルに増幅されてしまった。91人をぜんぶ打ち首にしても「金の切れ目は縁の切れ目」「百聞は一見に如かず」を払しょくできたかどうか。それが39人?課税はゼロ?政治資金規正法の改正はどこへ行っちまったんだよ? ふざけんなコノヤロー、となってる。

そこに39人の処刑の図などぶちこめば、ほとんどの国民はそれが「やらせ」「目くらまし」「ほとぼり冷まし」「いけにえ」だと知ってしまう。そのセコくて薄っぺらい人間性というか党員性というか、国民はそれを見抜いてさらに怒っているのだが、それは、自分が苦労して働いて納税した金を使ってこいつらはこんなことを一生懸命やっているのかというもっと凄まじい怒りである。

しかも、どうも、こいつらそれに気がついてないんじゃないか?命名権の値段を半額にしても応募ゼロ、それ見ても気がつかねえんじゃねえか?

そういうのをオワコン終わったコンテンツというのである。

札幌市民の皆様には申しわけないが、このままだと自民党は静かに札幌ドームの運命をたどるだろう。マスコミ、御用評論家の皆様もごいっしょに。エスコンフィールドが出てくるだろうから僕はどうでもいいのだが。

 

(追記)

39人を処刑。記憶の中でどこか引っかかる数字だ。わかった、これだ。

https://news.yahoo.co.jp/articles/e534336fa534d3ba0e51e94cc5b7e669c0620cf9

申しわけないが、この作戦を岸田氏が自分の頭で考えたとはとても思えない。参謀の人間は受験で日本史を選択していればこの事件を知らないはずはない。もし僕がするならこのぐらいは遊んでみたくなるなあと思わないでもない。

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Categories:政治に思うこと, 若者に教えたいこと

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