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カテゴリー: 若者に教えたいこと

これからやってくる「オンディマンド時代」

2023 JAN 25 2:02:12 am by 東 賢太郎

What can you do for me today、Mr.Azuma(東さん、今日は何をして下さるのですか)?」

約束の時間ちょうどにドアが開いて現れると、足が自由でないS氏は無言のままテーブルの向こう側にゆっくりとまわって、僕の真正面の椅子に大儀そうに腰かける。英国王室御用達のGIEVES & HAWKES製と思われるスーツに身を包んだ40がらみの小柄な紳士だ。にこりともせずノートを開くと、検事が尋問内容を書き取るみたいにしてペンを構え、僕の目を見て2、3秒ほど完全に静止する。そこで決まって口から出る判で押したように毎回まったく同じ冒頭の質問が挨拶代わりなのだ。「今日は**株を買ってほしくて来ました、Sさん」。僕の答辞もいつもおんなじこれにしていた。

そして「なぜそれを買うべきか」をゆっくりと話す。今日はペンが動かない。ああだめかな。案の定、5分ほどで彼は Thank you. と小声で僕を制止し、立ちあがって慇懃にドアに向けて送り出す格好をする。無言のお払い箱なのだ。この屈辱はいま思い出しても耐え難い。大英帝国植民地の支配者たちはこんなだったのだろうかと思った。しかし、これでめげては任務は勤まらない。何回かに1度はペンがサラサラ動く時もある。すると今度はネガティブな質問の矢がこれでもかと飛んでくる。うまく身をかわさないと即死。やはりご苦労さんのゲームオーバーなのだ。だから予定の30分を無傷で満了すればまず成功と考えていい。この場合は勇躍オフィスに戻る。何時間か、今か今かと待っていると、夕刻に電話が鳴る。来たぞ!!周囲がシーンとなって聞き耳を立てる。お薦めした**会社株式の数十億円分の買い注文執行が厳かに委託される。わかりにくい英語だ。聞き間違えたら一大事で、2,3回も確認のリピートをする。周囲はそれでわかる。受話器を置くと大拍手が起きる。代々ノムラでS氏のアカウントを担当できるのはエースのしるしなのだが、裏舞台ではこうした緊迫の綱渡りが行われていた。

S氏はノムラが最大手だからといって手心を加えて注文をくれることは一切なかった。世界一の証券会社だと思いあがっていた当時の社内では批判するムードがあったが、相手は10兆円も運用する世界一の機関投資家であり、S氏はそこで認められ雇われているマトモな人物なのだ。だからオーダーが少ないのはこっちの実力不足なのだと僕は擁護していた。批判する人たちはその緊迫の裏舞台など知らないし知ろうともしないし、特に東京本社などアホばかりで想像だにしてない。全盛期の野村の内部もレベルはそんなもんであり、わけもわかってない奴らが偉そうなこと言うなという気持があった。S氏が本当に平等だったことは毎回のプレゼンの自分の出来不出来でわかっており、その感触通りの結果になることで体感したプロの自負があったのである。その方法でこそ良質の情報が集まるということを逆に目の前で教わり、ビジネスは正攻法に勝るものはないことを思い知った。できれば人間関係で仲良くなってビジネスしたい怠惰な僕だったが、勉強と訓練という正面突破で注文をいただくしかなく、おかげ様で力をつけてもらったことを今も感謝している。

1980年代当時のロンドン。stock broker(証券マン)とfund manager(機関投資家の運用者)の仕事は大なり小なりそんなものだった。運用者はひっきりなしに数多ある各社の証券マンの訪問を受け、毎日何十もの「なぜ買うべきか」を聞く。腑に落ちれば買い、そうでなければ無視し、用がない株は売り、それを年末まで毎日くり返すと、1年間の相場のすったもんだの中での彼の “ファンド運用成績” が出る。これが運用者の通信簿だ。ファンドの運用益が増えていれば彼の会社はそれを宣伝してお客が増える。だから彼の出世と報酬はそれにかかっている。こちらとしても、推奨の成果で彼の信任を得ればそれに貢献したお駄賃としていただく手数料が天文学的に増えたから通信簿であり、日本国内の支店では想像もできないだろうが毎月数千万円、トップセールスである僕は他の顧客も入れるとピーク時は毎月3億円の手数料収入があった。後に社長になるドイツ、スイス、香港現法の店の収入ぐらいをひとりで稼いでいたことになる。

80年代、高度成長を成し遂げた日本の株式はシティで注目の的だった。一般の個人や年金基金は買いたくても情報がないので運用会社にお金を委託して日本株に投資してもらっていた。株式投資の元祖である英国には古くから世界的に著名な運用会社が数多くあり、良い成績を上げて委託資金を増やす激しい競争がくりひろげられていたのである。だから各社は日本株運用部門を設けて英国人でキャリアのある専門家(fund manager)を雇ったが、日本語ができない彼らは株を選別する有能な日本人証券マンの情報提供が絶対に必要だったのだ。この関係は花と蜜蜂に似ている。蜂は蜜を求めて花に群がる。花は蜂が来ないと受粉できないから蜜は惜しまなかった。だからロンドンには日本の証券会社が中小から銀行系に至るまで、甘い蜜の匂いを嗅ぎつけてウンカのようにこぞって現法をつくり、失礼だが英語もままならない程度の営業員をおいてでも注文の片割れをもらおうと猛烈なセールスをかけていたのである。日本の証券業界の歴史において1980年代のロンドンほど巨大なビジネスチャンスがあったことはない。その時代に6年そこにいて、ノムラというダントツ世界No1の会社の株式営業デスクのヘッドだった僕は幸運だった。

その蜜が売買手数料だ。当時はそれが公定であり自由化される前だった。だからネゴや割引の余地がなく有能な運用者よりも有能な証券マンの方が年俸が高かった。僕にも水面下で外資から凄い年俸のお誘いが来たが、それほど日本株ブームはロンドンを席巻していた。日本企業のサラリーマンだから僕の給料はまったくたいしたことなかったが、それでもシティではノムラの名刺はいっぱしのバリューがあって普通の人でも名前ぐらいは知っており、まさに肩で風を切って歩いていた。日本の文化まで流行になり、ロンドンに日本食レストランが増えだしたのもこのころだ。ただ我々の労働環境は過労死しておかしくないほど常軌を逸しており、出社は毎朝6時半、東京本社株式部と連絡をとり、調査部から情報を収集し、昼間は蜜蜂としてシティ中を飛び回り、夕刻には運用者の自宅にまで電話をかけ、深夜1時2時まで会社で翌日の準備のための侃々諤々の会議をした。中世の奴隷だってもう少しは楽な暮らしだったろう。

リーマンショックと共にそんな夢舞台は消えた。しかしあの What can you do for me today?の記憶は強烈で忘れない。「君は僕に何をしてくれるの」?いやあ、なんて本質を突いた質問なんだろうと感動すら覚える。「はい、賄賂を差し上げます」という事件が最近あった。民間人だって「おいしいことしてあげますよ」と “税金たかり屋” どものコネ、ヌキ、談合、身内贔屓みたいな “ズル” は横行している。ところが、これが軽いタッチでひょっこり内部告発されるのは防ぎようがない。ネットで大炎上してさらし者になり、一瞬で罪人だという「私刑」が科される。何を弁解しようと書かれたらサーバーに残って永遠に汚名は消えない。したがって、会社経営も裏口**みたいのが表に出ると非常にまずい時代になったと考えるのは常識だ。社会的責任に欠ける、サステナブルでないと社会的制裁を受けたらつまはじきになって、世界の機関投資家はSDG、ESGを満たさない会社は自動的に投資しないから株価も下がる。すると大株主でもある彼らは社長の首を株主総会で切るだろう。だから大企業であるほどひとたまりもなく、これからは上場しているメジャーな企業が率先してビジネスを正攻法に収斂させていかざるを得ないのである。表ではコンプライアンス重視をうたいながら水面下で品質不正やリコール隠しをしていたような企業は、いくら新聞、テレビの表の報道を制御しても、ネットだけで世の中を見る人のイメージを覆すのは至難の業だ。その人口は間違いなく大多数になり、新聞、テレビしか見ない老人は死んでいく。僕は日本人が善人になると言っているのではない、ポリコレに弱いから最も安心な正攻法になるしかないのだ。正攻法の権化であったS氏の質問は、いわば未来を予見していたわけで、ますますストライクに思えるのである。

僕がテレビを見ないのも、日経新聞の購読をやめてしまったのもそういうことなのだ。 You can do nothing for me today (今日も何の役にも立たないね)と、見ながら毎日感じるようになったからだ。見逃したから経営を誤ったとか相場で損したなんてことは一度たりともないしこれからも確実にない。情報も娯楽もオンディマンドで完全に足りる時代であることは高齢者で ITリテラシーに欠ける僕ですら実感してしまっている。ペンが動かない証券マンは5分でお払い箱。これは冷徹ではあるが、メディア業界であれなんであれ、「ビジネスの基本原理だった」ということが白日の下に明らかになりつつある。原理は世の東西も時代も問わず不変なのである。正攻法でやるためには血縁や義理や私情はもちろん旧習や思いこみやノスタルジーなどばっさりと断ち切るしかない。それにしがみついて利益が出ていても、サステナブルでないと世間が冷徹に烙印を押す時代になってしまっているからだ。S氏は優良な情報を永続して集める必要があった。だからノムラと親密にしなかった。高い手数料を払うのだから情報は集まると冷徹に計算し、オンディマンドで各社の証券マンを呼び集め、競わせたのだ。お金に人情はない。冷徹なものだ。だから冷徹こそお金を増やす正攻法以外の何物でもないのである。衰弱する日本企業はどんなに人情経営が好きであろうと、どんどんその流れに飲まれていかざるを得ないだろう。

ということは雇用市場で何が起きるか、賢明な若者の皆さんはもう結論が見えただろう。What can you do for me today?すべての仕事において、あなたは雇用者やお客さんにそう問われる時代になるのだから、それに決然と答えられるようになればいいのだ。雇用者は、必要な「do」をしてくれるならロボットや AI でぜんぜん構わない。コストも安い。だから人間しかできない「do」を見つけることだ。例えば、僕の今の仕事は AI には絶対にできない。人間でできる者もまずいない。こうなれば確実にお客様から代金をもらえるし、資産を増やしたい人が減ることはないだろうから希少性からすれば今よりもっともらえる時代になるだろう。中世の奴隷以下の仕事は大変な意味があった。そんな経験は誰もしたことがないから鉄壁の参入障壁であり差別化要因になったのだ。お金をもらいたければ意味のある事を必死に勉強し、しのほの言わず粛々と訓練を積むしかない。これを当たり前と思わないならあなたは世間に甘えがあるが、世間はあなたを甘やかすほど余裕はもうない。

いい大学へ行けばそう教育してくれるだろう?とんでもない。米国留学した者はわかる。日本は明治時代とほぼ変わらない教育を営々とやっている浮世離れした大学ばかりで、そもそも存続する価値がないばかりか、そこのディマンドに合致するからという理由で雇われてる先生たちにその能力がないことぐらいちょっと考えれば誰でもわかるだろう。誰でもわかることで嘘をつくのは大変に難しいのだ。テレビで偏向情報や屁理屈をたれ流しているコメンテーターの類はみんなテレビ局や自分の利益のためにポジショントークを売る嘘つきだが、そんなもので騙される人は世代交代とネット情報への依存度アップで急速に減っていくからこの連中もやがて消える。そうして新聞、雑誌と同様にテレビも存在価値を失い、お茶の間には「かつてテレビと呼ばれた受像機」がネットでオンディマンド番組を見るためだけに残るだろう。

そうなると、今の意識のまま漫然と大学に行って漫然と就職して生きてるあなたも、滅びる職業についてしまっている確率が高まっており、もしそうならやがて失業するか、しないまでも失意の人生になりかねない。では何を職業にすべきか、どこに就職すればよいのか。そこで週刊誌の大学生の就職人気ランキングなどに頼るならもう人生終わりである。「あなたは何ができますか?」が入社試験で、採用もオンディマンドになるのだから「学歴」や「青田買い」など戦後の集団就職と同じぐらい死語になり、ディマンドのある教育を施せない大学は潰れて、あなたのゼミの先生も失業するのだと頭の中でシミュレーションをしておくことをお薦めする。「東大卒?あっそう、で、キミ、何ができるの?」。あのころ、できることなど何もなかった僕は今なら思うような就職はできないだろう。しかし、16年海外にいたので、日本でしか通用しない学歴のおかげでこうなったわけではないことが証明されている。東大卒でなくてもノムラに入れなくても、きっとなんとかなっただろうというぐらいの自負は持っていいと思っている。

ちょっと考えれば誰でもわかるだろう。東大にそんなに価値があるならそこで教えてる先生は企業から引っ張りだこになるはずだが、そんな話はついぞ聞いたことがない。僕がウォートンスクールで証券分析論を習ったM先生は前年までウォールストリートでもトップクラスの高給取りであるメリルリンチの役員だった。そんな雲の上の人のリアルな講義が半年も聞け、実技指導までしてもらえる。これが年2千万円の高い授業料を払ってでも行く価値のある大学というものでなくて何だろう。お断りしておくが、僕は大学が職業専門学校だと言ってるのではないし、学問と教養が人間形成において必須であると何度も主張してきたし、母校である東大を心から愛しているし、後輩たちには日本国をリードする人材になって欲しい。だからこその苦言なのだ。

しかし僕ごときの批判で東大が変わることは99.99%ない。なぜか?明治時代、富国強兵のために東大は創立され、それイコール国家であり、その知恵があるから日本国は世界最速の成長を遂げて一流国になることができた。それが今や世界大学ランク39位で毎年ずるずると下がっており、それがいつまでも1位である日本国も、GDPは今のところ世界3位だが実は39位ぐらいへの下降線をたどっている。東大はその先行指標ではないか。これは皆が思ってるが認めたくないことなのだ。だから言わない。言っても変わらないのに言わないのだから「99.99%東大は変わらない」と言ってる僕が正しい確率は99.99%以上だろう。そんなにテッパンで変わらないものを変えろと一人で声高に叫ぶなど見苦しいだけだからプライドにかけて言わない。この思考回路のどうどう巡りゆえに東大に限らず日本の保守的なるものはどんなに凋落しようと何十年たっても遺跡のように「変わらない」のである。

大人たちは自分もその価値体系のおこぼれにあずかっていい思いをしてきたし今もしている、だから自分が生きてもいない20年後はもういいやと諦めてるのだ。自民党の議員もそうだ。2028年には中・露を合算した軍事予算は米国を抜き、水爆を1500発保有して30分で本土にいる米国民を1億人殺すことができるようになる。その中露が日本に核爆弾を打ちこんだら米国が代わりに中露と核戦争をしてくれるだろうか?するわけないだろう。もう核の傘なんてものは存在しないのだが議員は誰もこれを言わない。マスコミも言わない。言わないのは噓つきだとさえ誰も言わない。防衛予算をGDP比2%にして在庫処分のトマホークを買っても中露は痛くもかゆくもないことも議員は誰も言わない。こんな腐った連中が政治をやってる。20年どころか10年もたたないうちに日本はとてつもなく見たくない景色の国になってしまうのではないか?そのころリーダーになる若い皆さんにはおこぼれすら枯渇しており、戦うエネルギーも枯渇してないだろうか。心配でならないのだ。だからこれを書いておくのは、何もおきなくても若者の心に警鐘を鳴らせればいい、それが税金で勉強させてもらって海外でいろんな経験を積ませてもらった一国民の責務と考えた次第だ。ちなみに僕が採用したいのは東大卒であってもなくてもいいが「やるべきことは雨が降っても槍が降っても最後まで責任持ってやります。やらなかったら坊主になります」という人だ。

 

 

 

プレゼンはパフォーミング・アートである

2023 JAN 20 23:23:18 pm by 東 賢太郎

幸い健康でいまでも丸一日仕事して平気であり、視力は1.2だし5キロは走れるし年齢記載欄にはうっかり57と書きそうになる。今年はコロナもインフルも無視でどんどん外に出ており、出れば出るほどリズムが戻り、発想からプレゼンまで現役である。WBCの選抜メンバーを見ると野球選手は35才あたりで峠を越えるようだがビジネスマンは足腰立たなくなるまでプレーヤーでいられる。

性分というのは変え難く、新しい地平が見えてくると突進したくなる。知らない景色が好きなのだ。僕にとって投資は金儲けでなく新開地だ。それが次々とインスパイア(inspire、鼓舞)してくれるから老けこむ暇はない。同類の人と出会うと、それがまたインスパイアになるから大事にする。同類ではないが薪をくべてそれを助けてくれる人もいる。これまた大変に貴重なご縁なのである。

社内であれ社外であれ人を説得しないと進まないからビジネスというのはプレゼンで成り立っているといってよい。ところが論旨明解で弁が立ってもお客様が買ってくれる(お金が動く)とは限らないところが面白い。相手を動かすのは自分がインスパイアされてるからで、その熱量が成否を握る。プレゼンの技術など考えたこともないが、相手に伝わる熱があることはそんなものの百倍も大事だ。

以前に「行動を促す情報がインテリジェンスだ」と書いた。熱量は情報でないからそれではない。つまり陳腐な情報を並べ立てるなど論外だが、立派なインテリジェンスをもってしてさえも「売れる」わけではない。熱量は感性に訴える。それが共感を呼んで行動を促す。これは音楽の名演奏がスタンディング・オベーションを引き起こすのと同じで、人間は理屈だけで動くわけではないのである。

つまりプレゼンは弁論大会ではなくパフォーミング・アートの一種なのだ。これをわかってない人があまりに多い。かつてのこと、部下が100ページもある詳細な資料を作ってプレゼンに臨み、目の前に並ぶお客の顔も見ず延々と読み上げたことがある。ふと見ると数人が舟をこいでいた。きみ、それ3ページでいいんだよ、相手の目を見てアドリブでやりなさいと教えたがその後どうなったか。

僕は音楽演奏は暗譜が望ましいと思う。現に歌手は3時間ものオペラをそうして歌っているのであって、それこそプロだ。ビジネスのプロでありたいならプレゼンごときは暗記してその場の雰囲気を読みながらやれよと言うしかない。それができないなら仮にインスパイアされても熱量が伝わるはずないのであって、つまり、物が売れなかったり社内で予算が付かなかったりしてむしろ当然だ。

スティーブ・ジョブズのプレゼンは静かだが自分が造った製品への愛と感動(インスパイア)がある。まねてる日本の経営者がいるが熱がなくド真面目なサラリーマンがカラオケでサザンを歌ってる感じだ。ハーバードのサンデル教授の講義など内なる熱量でよほどジョブズに近い。米国はビジネスマンはもちろん、学者ですらパフォーミング・アートだと心得ており、だからサンデルは人気なのだ。

僕は野村時代に日本各地の大学、オランダの大学で証券市場論の90分講義をたくさんしたが、ネタは同じなのに一度として同じ話になってない。学生が理解してるかどうか肌で感じながらアドリブでしたからだ。あれでフルトヴェングラーやミュンシュのライブ録音が毎度違う理由がよく分かった。何度ボレロを振っても同じタイムだったトスカニーニすらライブのブラームスは違ったのである。

大変な秀才であった100ページの彼はクラシックを知らないか教養と思ってるだろうが、僕が知るビジネスでトップクラスの人はみなそれなりにアート好きだ。プレゼンをしなくて良い超富裕層は大概がアートのコレクターである。

謎の岸田総理と黒田総裁

2023 JAN 9 0:00:41 am by 東 賢太郎

最近電車によく乗る。ホームの駅看板(線路ぞいの広告)がやけに白っぽいなと思ったら18枚のボードのうち7枚しか広告が出てない。それも医者ばかりで商売人はセイジョー石井だけ。カウント癖があるので何でもすぐ数えるが、14年使っているこの駅でこんなことはかつてなかった。

僕は国が出す景況感指数よりも、かような「巷の景気」のほうを見ている。趣味ではない、その方が株式市場がよく見えるという実益からだ。インフレに乗じて値上げできる大企業はいいが、国民のフトコロ具合に近い「ちまた」はそうはいかない。駅にいる消費者に宣伝しても元が取れないと広告主は思ってる。これが巷の景況感。そして日本のGDPの5割超は個人消費なのだ。ここが冷えたままでは経済は上向かない。

65才を超えると定職に就いて働く人は激減する。すると定期収入が途絶え、年金は雀の涙だ。人間は生きているだけで毎日の出費がある。しかし毎日の収入はないのが現実となる。だから退職金など手持ちの預金を食いつぶして生き、残高は減る一方。となると、本来喜ぶべき長寿すら不安材料だ。これで総貯蓄の8割を持っている50代以上に気前よくカネを使えと言っても無理だろう。巷の広告主が減るのは道理なのだ。

となると普通はデフレ、需給ギャップと呼ばれる現象がおこる。ところが日本も世界もインフレであって、金利を上げなくちゃと騒いでるのだ。これをおかしいと思わない人が経済や為替や株価をネットで語っているからますます訳のわからないことになっている。では矛盾の原因は何か?コロナで経済が窒息死するのを防ごうと世界の国が借金して突発的に厖大な額のカネをばらまいた。ところが想定外の戦争が勃発して突発的に各所で盛大にモノ不足になった。この「突発✖突発」が見かけのインフレを生んでいるわけだ。それなかりせば、日本が患ったデフレ病は世界にまん延して米中欧をも蝕んでいたろう。駅の広告数は日本が実はその病から回復してないことを示しているのである。

したがって、ここで景況感指数が2期連続で上向いたとか、見かけのインフレに乗じて次々と商品値上げがおきている現状(嘘のインフレ)を示して景気回復の予兆だとうそぶいて増税に走るのはとても愚かしい。前述のとおり、国民はみな不安。ますます財布のひもがきつくなって消費は停滞し、GDPは伸びない。その不安は君らのせいだと企業に賃上げを迫っても、消費が減れば売上も減って株価も下がる経営者は株主総会でモノ言う株主に首を切られかねない。だから口では上げますと言ってるが容易にそうできるとは思えない。とすると行く末はデフレの再現、増税はそれを単に加速してやがて減る税収を早めに減らす効果こそあるだろう。

経済は需給で動く。ディマンドとサプライだ。銀行系証券に転籍して驚いたのはアンダーライト(引受)した株が「売れるかどうか」という視点がまったく存在しないことだった。「こんな株が700円で売れるわけないだろ」と会議で言うと満座がシーンとなってしまう(証券マンにはイロハのイ)。つまり銀行は経済の「サプライサイド」(供給側)であり、ディマンドサイド(需要側)の読みに甚だ疎い(というか、わからないから触れたがらない)。だからゼロ金利にすれば企業は借りるのが当然と思っていて、借り手がない現実を前に思考停止してしまう。僕らは需要側(消費者、企業)が病気だと結論する(それを冒頭に書いた)。だから政治のやるべきは病気を治すこととなるのだ。

ところが、黒田日銀総裁はこの期に及んで謎の金利引き上げをした。僕は金利差要因の為替モデルを自分で作っているが、現在のところ効くのは米の利上げ幅(=金利差拡大幅)より速度である。簡単に言うなら接線の傾きだ。FRB決定が0.75上げなら大きい、0.25なら小さい。この基準で統計を取ると12月のFRB決定後は132~135円が目安。昨年9月27日のブログ時点(Invest in Kishida(岸田に投資を)で円安に)では「150円ぐらいはあるかもしれない。落ち着きが良いのは僕のモデルでは135円、というのは変わってないのですが」と書いた。まさにいまその辺にあるが、利上げなどしなくても多分ここに収まった(僕はモデルを信じている)。ところがどういう理由なのか知らないがやっちまった(総裁は利上げでないというが、相場は結果がすべてというのが掟で問答無用)。すると変動金利はもちろん国民生活に深く関わる住宅ローンなど新規の固定金利は軒並み上昇するに決まってる。

これが国民の出費を増やし不安を増幅し、需要(消費)を冷やして病気の追い打ちになることは自明。供給側が需要側を殺してしまう本末転倒。この結果、GDPを下げ、国債の利払いも増え、銀行や日銀保有の国債に含み損が発生し、株は上がらない。それなのに岸田政権は「資産所得倍増プラン」「資産運用収入そのものの倍増も見据え」である。ノーベル賞級の運用モデルでもあみだしたのだろうか。「NISAで節税」?損したら税金は元からゼロだ。米国民の株式保有率が高いのは長期に株が上がってド素人でも儲かっているからなのだ。「株をやる」「投機筋」なんて石器時代の言葉を吐く人達が不得手の需要側で何をやろうが、賭けてもいいがうまくいかない。そんな些末なことより、需要側の病気を治して消費を促進し、企業が成長し、株が順当に長期的に上がる王道の政策をとれば株式投資は勝手に増える。まあ票にならないこんな分野は政権の数ある「やってる感」作りのひとつだろうが。

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永遠に讃えるスペイン戦の勝利

2022 DEC 3 17:17:51 pm by 東 賢太郎

サッカーは何もわからないが、それでもスペインに勝つわけないだろうぐらいのことは思っていた。コスタリカ戦はいけるかもと思って期待して見ていたが、昔の弱い日本サッカーを見ているようだ。ああこりゃだめだで終わってしまい、なんだか世の中もドイツ戦で盛り上がった分だけ盛り下がってるではないか。TVではスペインの3トップの移籍金が合計で277億円だなんてやっていて全日本OBの解説者が聞かなければよかったですなんて笑ってる。コスタリカに1-0で負け、スペインはそれに7-0で勝った。じゃあ8-0かなと思った。

それでも気にはなって午前4時まで頑張ったが、前半はほとんどボールを支配されっぱなしであっけない1失点。やっぱりねとなって、3-0で負けならオッケーかなと寝床に入って熟睡してしまった。そうしたら「たいへんたいへん、逆転してるよ!」と娘に叩き起こされるのである。後半の半分ぐらいからアディショナルタイムの7分まで、わくわくどきどきしながら見守った。やった!この瞬間に立ちあえてよかった、娘に感謝だ。この勝利は一生忘れないぞ。ほんとうによくやってくれた!!

堂安、田中碧のゴールシーンは録画で見たが、何度見ても胸がすくほどすばらしい。三苫の折り返しがインプレー判定となったのは執念の証しである。ドイツ戦の浅野の2点目なんてのは、ああいうのはブラジルやスペインの肉食系のやつしかできない、農耕民には無理だなんて思いこんでいたプレーであって、何とスペイン戦でも8割の時間ボールを支配されながら間隙を縫ってそのレベルのを2つも決めてる。堂安の落ち着きはらった左足なんか世界レベルでなくて何だろう。

もう嬉しくて感動の極みだ。日本の20~30代の若い子たちが世界でここまで躍動し、何の臆面もなく堂々たる勝負をくり広げ、世界の超一流を完膚なきまでねじ伏せて「死の組」を首位通過。凄いとしか讃えようもない。こんなことは、サッカーに限らず、僕らの世代ではぜんぜん無理なことだったのである。完全に脱帽だ。日本人は劣化していると思っていたが、とんでもない、劣化していたのは我が世代であって、若者は進化している。

今年は暗いニュースばかりでなんにもパッとしたことがない、村上の三冠王ぐらいかなと思っていたら流行語大賞がそのものずばりの「村神様」である。それほど村上が凄かったわけだが、ここまでそれかよと案の定すぎてかえってその他の暗さが引き立ってしまうところに現状の日本社会の病気に近い閉塞感を覚えるのは僕だけだろうか。

現にコスタリカに負けると一部の選手を批判する書き込みが乱れ飛んだらしく、田中碧選手が「同じ国民なのになぜ一緒に戦ってくれないんだ」と嘆いていたと聞く。まあ期待の裏返しでもあろうし、どの国でもそんなものかもしれないが、いまの日本にはコップに半分の水を「まだ半分もある」でなく「もう半分しかない」と見てしまう空気が充満してる。それを思いっきり打破した選手たち、ありがとう、ここぞで勝てる日本を証明してくれた君たちが誇らしい。僕は心の中に君たちの銅像を建て、永遠に讃えるぞ。

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勝つまでやれば負けない(その2)

2022 NOV 28 23:23:27 pm by 東 賢太郎

前回の稿に勝つまでやれば負けないと書いた。これはよく考えるまでもなく当たり前であり、そこで勝っているんだからもう負けてないのだ。しかし事はそう簡単ではない。僕が何万回チャレンジしても100メートルを10秒で走れる人に勝てるはずがない。つまりそれは頑張ればなんとかなる範囲内の話だ。でも悲観することはない。普通に人生を楽しく生きていくにはそんな高望みは必要ない。頑張ればなんとかなる世界は広大で肥沃な荒野のように皆さんの眼前に広がっている。ではどうすればいいか。結論から書こう。それを見つけること。頑張ることをやめないこと、つまり、信じてしつこくやることに尽きる。

頑張れば何とかなるかどうかは生まれつき持ったもので決まっている。そう聞くと「どうせ私なんか」と委縮してしまう人が多い。それじゃだめだ。そんなことはない、親からもらった能力がない人などいるはずがないし、もしなければ生物として生きられないからあなたはこの世に生まれてない。前々回の稿に書いたが、親というのは(動物もそうだが)子に才能や能力を伝え、運用を預けて自分は死んでいく。それをうまく使って良い人生を送ってねと。だからそれをフルに活かして生きていくことこそ親孝行であり、僕はそれをきちっとやれば良い人生を生きたことになると考えている。

よく、人生は才能で決まらないという人がいる。才能は発揮されないと「なかったことに」になるからうまくいけば「あった」、いかなければ「なかった」となる。でもやる前に結果はわからないから、才能は後付けのモノであってやる前から論じても意味はなく、「人生は才能で決まらないよ」と言うことの実利は何事も自信の持てない人を励ましてあげるぐらいのものだ。しかしそうして甘やかして自信ないまま何かをやってその人が成功するとは思えないから、僕はそれを親身のアドバイスとは考えない。

では、それをやるにはどうしたら良いのだろうか。簡単である。自分に何の能力があるのか、あるいはないのか、それを冷静に客観的に第三者的な目でじっくり見極めることなのである。「ありのままの私」を見つめればいいのだが、実は「ありのまま」と思っている私が本当のワタシかどうかはわからない。自分の思いこみやカン違いで枠にはめて見ている場合が非常に多いのである。僕が住んだ海外5か国と比べてみて、日本の若者はちょっと自己評価が低い気がする。それは自分が親からもらった能力が何なのか、よく見きわめてないからではないか、だから親ガチャなどという言葉が出てくるのではないかと思うのだ。そんな親不孝な言葉を吐いているようでは何をしても成功しないだろう。

私事になるが、僕は早生まれで体が小さかった。だから、中学3年になるまで身長はクラスで前から1番目か2番目。喧嘩をしても弱いし、何をやってもクラスの男子にやられていた。もしもあのまま大人になっていたら卑屈な人間になったろう。しかし高校に入ると身長は伸び、周りを見渡して弱いとは思わなくなった。でもトラウマは残っているのだ。これを潰すのにはとても苦労した。ひとつだけ能力があった。野球で球が速い。これはいじめられっ子のチビ時代からそうで、それにすがって自信をつけ、ひとつぐらいあるもんだと気楽になった。

こんな風に、皆さん、自分発見をすればいい。必ずなにか知らないご先祖様からの授かりものがあると固く信じることだ。どんな小さなことでもいい、ご先祖様はそれがあるから世の荒波の中を無事生きてこられたのであり、だから、あなたが無事に生まれているのである。それを見つけたら、ひたすらそれを磨く(これも信じることだ)。それが親孝行であり、元より、能力がないことよりあることにチャレンジした方が楽だし成功率も高いのだからやらない理由などあるはずがないだろう。信じるというのは心の中だけではだめだ。やってナンボだ。それも、思いっきりしつこくやる。能力が多少でもあるものは、やってるうちにだんだんうまくなって、好きになれることが多い。そうなればもう間違いない。

僕自身、やることをすべてやってみて、後付けの客観的な事実として「才能」らしいものが多少あったのは球が速いことだけだった(笑)。習ったり特訓したりは全くなく、生まれつき速かった。これは明治時代に慶応で野球をやってた爺ちゃん由来のものだと信じている。何をやっても負け犬だった僕がマウンドに立つと無双の気分になる。打たれても一日寝るとまた無双になってる。その自信と記憶でぜんぜん関係ない分野でも負けるはずないと不思議な思いこみができ、トラウマなどぶっ飛んで「なかったことに」になり、強く生きてこられたのだから値千金。ご先祖様はこうやって子孫を守ってくれる。しつこく信じることだ。

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物事は勝つまでやれば負けない

2022 NOV 28 18:18:26 pm by 東 賢太郎

サッカーの事はよく知らないが、今回のドイツ戦の勝利は考えさせるものがある。いろいろやってみて、ダメならやり方を変えてまたしつこくやる。これを何度もやってればそのうち勝つ。勝つまでやれば絶対に負けない。もちろん今回の勝利がそんな簡単なものでないことはわかっているが、僕はこの考え方をいつも心の中に強く持って生きている。

ドイツ戦で後半に入れた5人の選手は、すごく攻撃的な選手だと聞く。だから前半とは全然違う攻め方に変えたんだろう。それが奏功して逆転勝ちしたんだからきっとそこに何かすごい秘密があったと思う。それが何かは知らないが、感心したのは、あれだけ攻める前向きで気の強い選手たちを前半ベンチに置いておいて腐らせなかったことだ。

堂安選手の俺が決める、俺しかいない。この言葉は当然だ。そう思ってなければあんな場に出られるはずがない。こんな選手がよくおとなしくベンチで試合を見ていたなと思うのだ。僕だったらなんで俺を使わないんだといてもたってもいられなくなって、そのうちにモチベーションが下がってしまうんじゃないかと思う。これは森安監督の説得力、コミュニケーション力の賜物だと言っている解説者の方がいたが、そうではないかと思う。

僕も若い頃、超攻撃的だった野村という会社の中でも超攻撃的な社員だった。守りについては全く考えていないので、後ろから支えてくれる人たちがいたから大きな失敗もなく点をとって活躍できたんじゃないかと思う。明日大仕事がある前の日などは、家で家族に一言も口をきかなかった。だからだろう、家内は私はスポーツ選手と結婚したと思っていると常々言っていた。そこで、あれこれ声をかけられ、家事などをさせられた日には、僕の攻撃力は大きく損なわれ今こうなっていないんじゃないかと思う。つまり、これは家内の監督力の賜物なのだ。

しかし、今はそうも言っていられなくなった。会社においては僕以外に監督はなく、戦略は全部僕が組み立てて、僕が指揮しなくてはいけない。コロナの影響もあり、少し仕事に閉塞感が出てきたと感じるのも事実である。だからここはひとつ思い切ってゲームプランをガラッと変えてみてもいいかなと思っている。サッカーをするのは選手だ。選手のフォーメーション、顔ぶれなどを一新してみることも手だと思う。

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止まっていた時計がなぜか動き出しました

2022 NOV 15 0:00:16 am by 東 賢太郎

今週ひとつうれしい事がありました。5年ほど前に故障して日本橋三越で修理していただいた時計があります。修理は完璧でしばらく動いたんですが、僕のメンテ不足で止まってしまってもう諦めていた時計です。これが置き場所をかえたらなぜか動いていたんです。

こういう時計です。

https://www.rasin.co.jp/blog/jaegerlecoultre/atmos-clock

こいつです

スイスのジャガールクルド製で、電池も振り子もねじ巻きもいらず、一日の温度差をエネルギー源にして200年は動くというふれこみの(ほんとかな?)「アトモス」といいます。

こいつが復活したと同時に、なぜか新しい仲間が増えだしました。コロナになってあまりできていなかったことですが、志を共有できる仲間は何としても増やしたいのです。嬉しいことです。ひとりじゃ何もできませんから。

僕の志は何度もくり返しブログに書いてきましたが、高度成長期にロンドンのシティで「強い日本」を世界にアピールし、グローバルな金融市場でご評価いただいた我が世代の経験、いまとなっては夢物語に聞こえるかもしれませんが、現実にあったその生々しい経験を40代以下の日本のホープの皆様に引き継ぐことです。次世代の50代も歓迎ですが、次々世代が日本の命運を握っていると考えてます。だからそれに余生をかけます。

ストレートに言いますが、技術立国の地位を失い、国富も失った日本に未来はありません。日本人的な物言いでないことは承知してますが、海外で金融の最前線で16年戦った戦士として申し上げます、「知恵とカネ」が両方ない国は滅びます。中国がたった20年で米国を脅かすまでになったのはその2つを得たからです。経済成長なんてアバウトな言葉で語っても何の意味もありません、これを生々しく知ること自体が「知恵」(インテリジェンス)の一部なんです。観光立国も結構ですが、それだけなら低開発国とかわりません。

いま、保守の方々も本音は対中強硬路線でいたいがそれが言いにくくなってる。だから忸怩たるものがある。僕は親中でも親米でもなく親日なので気持ちはよくわかるのですが、そのためにはバランスこそが重要です。軍事のインテリジェンスとそれとは分けて考えるべきです。それには両方から「一目置かれる」ことが必須です。軍事もその一部かもしれませんが、何よりそのための「知恵とカネ」が第一です。別に難しいことじゃないですよ、30年前まで日本にはそのどちらもあって、軍事力はなくとも一目も二目もおかれていたのですから。

米中欧と共存する方法は八方美人じゃないんです。断言しますが、そのスタンスのつもりじゃなくても、それは相手が決めることです。「知恵とカネ」がなければいじめられるか八方美人で生きるしかないです。いい悪いを言っても仕方ない、そこに正義なんてものはなく、万国共通の人間のサガ(獣性)だからです。そして、間違いなく、八方美人は世界中のどの国家元首からも国民からも尊敬されないんです。「いい人」はおだてて使われるだけです。これは外国で人間のサガがもろに現れる「お金を扱う商売」を経験しないと分かりにくいかもしれませんが、日本人の性善説はグローバルに権力、財力を握る人たちからするとあり得ないユートピア思想なんです。

国がポチになるとどうなるか。別に殺されるわけじゃありません。気がつかないうちにこうなります。ごく一部の上級ポチは心地良く外国と共存し、あとの国民は見捨てられます。外国はその国の支配者だけを釣って手なずけ、うまく操ればよく、その他大勢の幸せなど何の関心もありません、これ事実です。すると多くの若者にとって、現実的なチャンスというと中級ポチになるだけです。それで幸せな人は結構です。しかし、我々の子供世代にはもっと上をめざせる人はいくらもおられるはずです。そういう彼ら彼女らのマインドまで委縮させるなどということは国家としてあり得ないんです、それを体を張って阻止する使命を負っているのは我が世代です。

私見ですが、人間の幸せというものは、親からもらったものを100%発揮することにあるのではないでしょうか。どなたも必ずこの世に生まれてきた「意味」があります。そうでない人は一人もいません。各人各様なれど間違いなく皆さん一人一人の個性はオンリーワンですから、自分にしかできない使命が必ずあります。能力とはいわばご先祖様からの預かりもので、「いまの時代はまかせたよ」と一任されたものです。それを完全燃焼させないと親不孝かもしれないし、ご自身にとっても充実した人生にはならないのではないでしょうか。

我々は職業あっせんはできませんし、証券会社ではないので投資を直接にお薦めすることもできません。ただ同志が集まればできるかもしれません。投資家の皆さんに何らかでアクセスできれば、僕の経験からくる諸々の話を聞いていただく機会もあるかもしれませんね。

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どうして証券会社に入ったの?(その10)

2022 OCT 26 0:00:18 am by 東 賢太郎

久しぶりに1987年のアメリカ映画『ウォール街』を見ました。こいつは我々証券マンにとって、心底ガツンとくる名作です。そのころ僕はロンドンのシティで働いていました。やたらと周りにサスペンダーの奴が増えたと思ったらこの影響だったんですね。それほどマイケル・ダグラス演じる投資家のゴードン・ゲッコーはカッコよかった。この有名な “Greed is good” のシーンはその白眉です。

ビジネススクールでMBAになったらこんなプレゼンをしたい。そう思わない人は学校を間違えてます。なんだ、欲望礼賛じゃないか、そんな間違ったことを教えてるのかと思う方はアメリカという国も資本主義すらも間違えてます。場面はテルダー製紙会社の株主総会。ゲッコーはこう言い放っています。「ここにいる33人の副社長はひとり年俸20万ドルも会社からもらってるが、ぜんぶ足して3%しか株を持っていません」「株主の皆さんと同じ利害関係を負わぬ者たちが会社から甘い汁をむさぼり、損失をたれ流しているのです」「アメリカは双子の赤字に蝕まれ二流の国になってしまいましたが、コーポレート・アメリカはまさにこうやって凋落してしまったのです」「皆さん、いまするべきはこの官僚仕事だけの不適格者たちを会社から追い出し、会社再生のための私の買収提案に応じることです」(拍手)。会ったことはないが、ドナルド・トランプもウラジーミル・プーチンもこの手の男だと思いますよ。役人タイプは歯牙にもかけないでしょうし、部下はダメと見れば即 you’re fired(お前は首だ)です。トランプは「アベよりアソーのほうがいい、カネの匂いがする」といったみたいです。自分の鼻で生きてる連中を大統領にしても後ろから操れないですからね、だから民主党のロボットが必要で、トランプはマスコミまで総動員して選挙で消したんです。そういう男をファーストネームで呼んだぐらいで仲良くなったなんて、冗談も休み休みお願いしますよ。オリバー・ストーン監督はこのゲッコーを悪役に、かけだしの証券営業マンであるバド・フォックス(チャーリー・シーン)を善玉にしたハリウッド流の勧善懲悪物語に仕立てていますが、カッコ良すぎのゲッコーに憧れてウォール・ストリートをめざすエリートが増えたのは皮肉でした。僕はまさにこのころである1984年卒のウォートンMBAですからアメリカのど真ん中でこの空気にどっぷりつかっており、野村證券もそう育てるために2年間の社費留学をさせてくれたわけです。だからそれが三つ子の魂となっているのは必然のことで、SDGsの念仏を100万回耳元で唱えられようと、相場に勝つためのネタとして利用はしますが、そんなものに精神をおかされて迎合する気はさらさらありません。いま聞いてもゲッコーの発言はまったく正しいと思いますし、リアルの世界でも、日本の某社の株主総会で僕自身が社長に面と向かって「あなたは退任すべきだ」と論陣を張ってます(そうなった)。下のブログは第2次安倍政権がスタートする2013年に書いたものです。当時この古い映画のことは忘れてましたが、馬鹿みたいな経済政策を野放しにしていた民主党政権によほど辟易していたのでしょう、いま読んでみてゲッコーと同じことを言ってるのに我ながら驚きます。

若者の欲望が日本を救う

書きましたように、弱者救済のセーフティネットが社会に必要なことは当然です。しかし9割が弱者だというならそれはもはや弱者の正しい定義ではなく、体よく社会主義、共産主義を擦りこもうとしているにすぎません。9割は言い過ぎかもしれませんが、日本は平成からそれに近いことになってると感じます。だから、ゲッコーの指摘した理由が絵に描いたように災いして、コーポレート・ジャパンはおかしくなっているのです。それは若者の健全なGreed(欲望)の芽を、大人がポストに居座りたい Greed で摘んでしまった結果、若者に自分が弱者だと勘違いさせてしまい(若さこそ財産、そんなわけないだろう)、それを救うべき財政政策を政府がとるためのマネーを緊縮財政派が供給しなかったからです。罪は重いですね。このブログから9年たって我々が知ったことは、アベノミクスは日本国がデフレの底なし沼に沈むのを食い止めはしたが救ってはいないということです。20年かけてGreed を根絶やしにしておいて、あわててゼロ金利政策をとっても、投機はおきても投資はおきないんです。これだけ円安になればいずれもっとインフレになります。皆さんはそれに備えるべきです。これは運用ではなく資産防衛ですから必須です。国は平気の平左ですよ。保有する外貨準備に為替差益が発生する上に、インフレになれば国債乱発による借金の棒引きができますからね。損させられるのは国民で、為替差損分の「高率の税金」を新たに支払わされるのと同じことです。国債乱発を続けるとブタ積みの日銀当座預金がますます増え、短期金利の操作自由度をさらに失い、それにつけこんだ国債先物ショートがさらに増えます。買いオペを続けるしかなく日銀のBSはさらに悪化。金も原油も裏付けにない日銀券の価値は低いとコンセンサスができれば先物を狙われます。介入原資は無限だと言っても誰も信じないので、英国の二の舞にならない保証はないですね。相手は相場です。日本だけが騒ぐいかがわしげな「投機筋」なんてものは世界のどこにも存在しないのです。

映画に戻りましょう。当時、僕がシンパシーを持ったのは、中堅証券の営業マンであるバド・フォックスの方です。下のビデオで見るディーリングルームはゴールドマンやモルガンスタンレーではない、社員もトップスクール卒でない設定ですね。バドも平民の子ですが少しだけいい大学を出ていてエリート扱いされてる。それでも高額の報酬を得ようと激しい競争を生き残るため電話外交をしまくります。僕が「株式市場はタンザニアのサバンナだ」という意味はおわかりでしょう。バドは「いまに俺だって電話を受ける側になるぜ」とうそぶきます。そしてある日、狙っていた大物投資家ゲッコーの秘書にうまくとりいって、ついにボスの時間を5分もらいます。新米に2,3質問をしたゲッコーは「小金持ちにクズの株を売ってるお前ら証券セールスはカスだ、何の役にも立たねえから早く消えろ」と追い返そうとします。そこで苦しまぎれに語った父の勤める航空会社の情報がヒットして、幸運にもバドは気に入られるのです。

このへんのくだり、いま見てもワクワクするんです。僕自身が新人のかけだしだった梅田支店の営業マン時代が “笑ってしまうほど重なって” いて「あるある」の連続。この監督、なんで経験ないのにこんなリアルに図星の台本をものにしたんだろうと感動ものなんですが、あまりにいちいち細部まで僕の実体験と似ていて、盗作されたかもしれない(1980年だから僕の方が先ですー笑)。まさしく、まぎれもなく、大阪で僕はこのビデオのようなことを夢中になって2年半やっていたのです。

セールスたちが隠語で「巨象を狙う」と言ってます。大きな顧客の意味です。ちっとも失礼でありません。そんなので騒ぐ小物はそもそも大物でないんで会う価値がありません。最大の巨象がゲッコーで、「49回電話してきたのはお前か」とあいさつ代わりの第一声をかましてきます。僕は大阪市北区に巨大な白亜の本社を構える某一流上場企業のU社長にやっぱり秘書様のお導きで会えて(同じく5分!)、まさに「64回電話してきたのは君か」といわれました。瀬戸際の一言がうまくいって、初対面のその場で株を買ってもらったのもまったく同じ。いいことだけじゃない、バドは鉄砲屋にも引っかかってますが、僕もやられて極道の親分から2千万円の取り立てをしてます。バドの父親は航空会社の整備士で息子が証券マンになるのに反対しますが、僕の父は銀行員でもっと猛烈に反対しました。当時は証券会社は株屋と言われてましたが、父も株は好きだったし僕も好きだったし、反対したのは僕があまり外交的でなく身の回りのこともだらしないので潰されると思ったんでしょう、銀行に行けよその方が楽だよと言ったきり3日も口をきいてくれませんでした。でも僕は圧倒的に証券マンの方が向いていたんです。入社前はわかりませんでしたが、会社訪問のやりとりで直感的にそう思ったんです。物事、迷ったら、最初にいいと思ったのにすべきですよ。

梅田支店は地獄でしたが次々とラッキーがあって、銀行に入っていたら会えるはずのないU社長がお客さんになって、俺は凄い人間なんじゃないかと本気で真面目に勘違いしてました。ぜんぜんそうではなかったことは数々の失敗でのちに思い知らされて地に落ちるのですが、男はこういう輝かしい瞬間に出あうと一皮も二皮もむけるんです。2年半梅田支店でもまれて、もう完全に一騎当千の証券マンになってました。だからバドがゲッコーに信用され、食い込んでいく姿は何度見てもハートに響いて元気が出ます。これが当たったんでウォール街ものが続々出てきますがほとんどがチープなゾロ品ですね。それほど本作は図抜けてます。バドのように金持ちにしてもらったり彼女をあてがってもらったりは残念ながらなかったですが、仕事に対する最高の征服感はありました。たぶん、僕は金や地位よりもその登っていくプロセスが好きなんです。2年前まで株のかの字も知らなかった小僧がいっぱしに存在感出して全米1位のビジネススクールに留学に行った。もうあそこらへんで顔つきが変わってたでしょう。

ゴードン・ゲッコー役のマイケル・ダグラス

ゲッコーの実在のモデルはアイヴァン・ボウスキーです。ロスチャイルド出身で稀代の乗っ取り屋であり、全米を騒然とさせる謀略をつくした末に証取法違反で逮捕されますが、ウォール街にもシティにもこの手の奴はごろごろいます。ロンドンでは、メディア王の富豪で船上で怪死したロバート・マクスウェルと取引もしましたよ。ゲッコー並みの巨象でしたが商売は大したことなかった。こんなのにビビってたらでかい商売はできません。この映画を見た人はご想像がつくと思いますが、彼らにとって、くっついたり離れたりして相場で人を欺く計略をめぐらすなど息をするようなもの、大金を動かして儲けるマキアヴェリストの連中にそんなものは猫に鰹節より当たり前なんです。ゲッコーは何度も孫氏の兵法を引用してます。そういうインテリジェンスは戦争と同じ。それをいちいち陰謀だ、けしからんなんて、「何だお前?」ってなもん、アホらしくて相手にもされません。彼が言った相場に大事な3つのもの、poor、hungry、no emotion は至言です。poorでなくなっても必要。これがあれば大概は成功できます。でも、くりかえしますが、ゲッコーは言ってます。「アメリカの富の半分である5兆ドルは人口の1%が持ってる。しかもその3分の2は相続だよ。俺は3分の1の方だから毎日あくせく働いてる」。Greed のいらない3分の2が王族や貴族やアラブや中国の富豪とつるむのは必然なことがわかりますね、共通の目的が preservation(資産保全)なんでね。で、富豪でない人が Greed を奪われたら、シープルになるしかないですね。

“Greed is good” (欲望は善である)。いまどきアメリカですらこんなことを公然と言う人は少ないでしょう。80年代のアメリカはレーガノミクス全盛でした。減税、小さな政府、規制緩和、強いアメリカ。それは同時期の英国をリードしたサッチャリズムとも重なりますし、ドナルド・トランプにも共鳴してます。その成功の前提は Greed なんです。それが足りない国で減税しても何も起きず、税収が減るだけです。それで財源不足になると市場がはやして国債もポンドも売りまくられ、史上最短の45日で辞任になったのがトラス首相でした。彼女は気の毒でしたが会計士ですから相場を予見する程度のマーケットのキャリアすらなかった。しかし、あの地位になれば、それも含めて、前任のジョンソンもそうですが、プラクティショナーの小物だったということですね、悪いけど。そこで登場してきた新首相のリシ・スナクは英国初のインド系で、オックスフォード卒、スタンフォードMBA、ゴールドマン・サックスからヘッジ・ファンド経営者に転身した超エリート証券マンです。プラクティショナーかもしれないがマーケットで失敗はしないでしょう。アメリカもFRB議長のジェローム・パウエルはプリンストン卒で学者っぽいですが、大手投資ファンドであるカーライルの共同経営者を8年勤めた、いずれも僕にとっては同じにおいがする世界の人間です。ゲッコーは悪玉にされてSEC証券監視委員会に逮捕されましたが、世界はこうしてじわじわと為政者の方がその色になってきた感じがします。捕まる側が捕まえる側に。こうなると、わかる人にはおわかりでしょうが無限に儲けられる可能性が出てきます、インサイダー取引は株にしかないですからね。どうも、我々が気がつかないうちに泥棒と警官が入れ替わっているというか、何が正義かわからない気持ち悪い世界になってきていると思いませんか?日本国はよく知りませんがこの流れのなかで大丈夫なんですかね。少なくとも読者の皆さんは勉強して、感性を磨いて、騙されないようになさってください。

 

どうして証券会社に入ったの?(その1)

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株式市場はタンザニアのサバンナである

2022 OCT 9 7:07:50 am by 東 賢太郎

ついでだから前回の続きを書きます。

面白いんですね、そういう人は、それこそ本格的な陰謀にはひとたまりもなく騙されるんです。だから下等な詐欺師はオレオレをしますが、高等な詐欺師はそういう人達を狙ってカモにする傾向がありますね。

についてです。これはプロレベルの、ちょっと深いことを書いてます。詐欺は犯罪なんで上等も下等もないんですが、テクニックとしてみればそれはあります。そして、僕のショバである投資というビジネスにおいて、他人様のお金を増やしてさしあげる努力をする業務(投資運用業、投資助言業)では業者とお客様にはレベルの二層構造があることをご説明します。別に業界の内幕を暴くわけではありませんよ、なにせ、暴くも何もこんなわかりやすい業界はめったにありません、だってド素人でも堂々とプロみたいな顔して参入できるんですから。

一般には顧客によってリテール業務(アマチュア相手)とホールセール業務(プロ相手)に区分されますが、僕から見れば業者もアマチュア程度のがたくさんあり、キャッチボールも満足にできないのが金融庁に届け出さえすればプロ野球選手の看板出せるんです。凄いでしょ? アマがアマから手数料を取るなど言語道断なんで、存在自体が僕の目には詐欺師に見えるという実に不思議な業界なんです。でも、政府は一億総株主言い出しちゃってますしね、金融庁は大変だろうなとお察しいたします。そんな業者を跋扈させるのも、国民の投資リテラシーが低開発国の農村なみという悲しい現実があるからなんで、パンツ泥棒や“パパ活”疑惑の男が堂々と衆議院議員に選ばれちゃうのとあんまり変わらんのですね。右翼左翼、学歴に関わらず「一億総株式音痴」というのが実態であるとご認識ください。

僕が証券会社をやめたのは、そういうお客様をたくさん持つと大変だからなんです。こういう言い方がいいかどうか、ハードボイルドなんでご容赦いただきたいのですが、音痴の人に音楽を教えたり、運動音痴の人にゴルフを教えるのは大変です。それはそれで上手なプロがおられるわけですが、僕は生まれつきそういう能力がありません。投資判断というのは100%正しいわけでありません。だから助言はしますが是非は自分でご判断をというのがあるべき姿なんです。ワタシ失敗しないのでなんてふりをしないと信用されない詐欺師みたいな商売などまっぴら御免だし、むしろ、そういうお客様に株式投資をしていただいてはいけないという主義なんです。業者の方が教育レベルもいい加減でそれなりの倫理観を持って潔癖な業務ができる者は少数でしょう。したがって、岸田総理には悪いが、「一億総株主」なんて大多数の国民を不幸にする可能性があります。やるべきは、体系的な投資教育ですが、それを一億人が理解することは音痴の人が歌手デビューするより可能性が低いです。

詐欺師は俗語ですが、その行為である詐欺(Fraud)というのは「詐欺罪」という刑法犯です。国際的にそうです。英国は刑法典がありませんがFraud Act(詐欺法)で刑罰を科します。日本の刑法では罪刑は第246条に「10年以下の懲役に処する」とあります。殺人罪を犯しても「5年以上の懲役」はありなんですから「10年以下の懲役」は法定刑として長期で重いことがおわかりでしょう。

「詐欺罪」を含む次の犯罪は、被害者による告訴がなければ公訴を提起(起訴)することができない「親告罪」になっています。

強制わいせつ罪・強姦罪・名誉毀損罪・侮辱罪
ストーカー規制法違反の罪・窃盗罪・恐喝罪・詐欺罪

つまり、被害者が被害を受けたと思っていなければ犯罪でなく、配偶者や親族は告訴できないなどプライバシーの配慮もあり、間口が狭いのです。性犯罪や窃盗・恐喝といった知能犯でないものと並べると、詐欺罪は僕にはちょっと違和感があります。

未公開株詐欺ってのがありまして、存在もしない会社や、存在はしても上場なんかできっこない会社の株のIPOをうたってお金をだまし取る、絵に書いたような詐欺師がいます。何の運用スキルもないのに偽の実績を語って一任勘定(お金を預かって売買)を行う者は数知れずいます。損させる意図もなく、するとも限らない場合は詐欺罪にはなりませんが、限りなくいかがわしいです。大事なポイントなのでくりかえしますが、金融商品取引法の規定により、金融庁によって内閣総理大臣の登録を受けた業者でありさえすれば一任勘定はできますが、お客さんが納得すればですが、「星占い」や「神のお告げ」で運用しても違法ではありません。「合法的です」が流行りの昨今ですが、それが何の意味もないことはこれでもお判りでしょう。詐欺罪が「知能犯でない親告罪」と似てなくもない側面があるとすると、こういう部分なのですね。だから取引する場合は経営者がどんな経歴の人間か徹底的に調べたほうがいいですし、我々のような会社に照会いただけば信頼度はすぐわかります。

詐欺の巨大なケースというと、CEOが一般投資家を欺いて利益を得る場合でしょう。イーロン・マスク氏とSECの対立がそれでした。空売り筋の攻勢に悩まされたマスク氏は2018年8月、ツイッター上で突如としてテスラ株を非公開化する計画を表明。「資金は確保した」と書き込んでいたが、SECは「可能性のある資金源と交渉さえしていなかった」として同年9月にマスク氏を「証券詐欺」の疑いで提訴したんです。この時はテスラとマスク氏はそれぞれ2000万ドル(約22億円)を支払うことでSECと和解してます。かように詐欺罪は規模が大きくなり得ます。

しかしマスク氏は世界一の資産家ではあってもいちクルマ屋の経営者にすぎません。前稿に書いた「多国籍資本家同盟」から見れば末端の足軽みたいなもんです。彼の滑った転んだに一喜一憂して株を売ったり買ったりしても、それで詐欺にひっかかるリスクはマスク氏の証券詐欺以外は一切ありませんが、個人投資家がアクセスできる情報レベルからしてまず儲からないし証券会社が儲かるだけなのでやめたほうがいいでしょう。では同盟はどうか。彼らがダボス会議で「グレートリセットが来るぞ」と予測して大勢の投資家が関連した株を買ったとしましょう。3年たっても何も来ませんでした損しましたとなってもこれを間口が狭い詐欺罪で裁くのは限りなく無理です。まったくの仮定の話ですが、彼らが保有する株を高値で売る意図で議題を選んで実行したとしても、表向きは世界経済の方向性予測ですから人を欺く意図があった証拠が出る可能性はまずなく、世界最高レベルの知性がやってますから馬脚を露す馬鹿が内部にいるはずもなく、立件できる期待値は限りなくゼロに近いです。するとすれば被害者の出た国の検察ですが、その国の大きな力を巻き込んで簡単に潰されるだろうし、そもそも被疑者がどこの誰かもわからないし外国人である可能性が高いので受理のしようもないでしょう。嘘は大きい方がばれないといいますがこういうことかもしれませんね。

ダボス会議の投資インプリケーションを個人投資家(リテール)が咀嚼して、自己の判断で投資行動を起こすのは難しいでしょう。それは調査部門を持ってる証券会社や機関投資家(ホールセール)の仕事なんですね。だから情報は二重構造になるんです。かような世界を渡って40年もしますと、これって、目をつぶるとだんだんタンザニアのサバンナに見えてくるんです。日照り続きで草が減ると草食獣が減り、次いで肉食獣が減り、その頂点のライオンが困るんですね。だからグレートリセットみたいなことを時宜に応じて言うんです。僕は草の生え方を長年見て研究してますんで、そこから少し時間がたって生じる生態系連鎖の具合がそこそこ想像つきます(草は増えても減ってもいいんです)。で、大事なのは、ライオンの動きなんですね。ライオンはこっちへ移動するだろう、シマウマやめてヌー狙うだろうってなことです。

相場を読むのにいちばん確率がいい方法は、断言しますがそれなんです。僕はそれで107円ぐらいの時にドル高・円安に思いっきり張ったわけです。ただ、この方法はマクロにしか効果が及ばないので、草食獣の数や生態の変化みたいなミクロが見えません。これはリスクであり機会損失でもあるので当社はそれをプロにまかせてます。12年やってますがお客様の資産は失敗確率の低い方法で5倍ほどになってるのでご満足いただいてます。テレビや本でもっともらしいこと言っても自分で相場を張る能力はない評論家の方々は僕が書いていることはわからないです。自分でやらないと何事もわかりませんが、投資はスポーツに似てまして、我々と彼らは、毎日一軍でグラウンドにいる選手と外野席のお客さんぐらい違います。我々の世界、儲ける方法を他人に教える気のよい者はいません。評論や著作で教えて小銭をもらうのは、彼のお薦めの方法を実行しても儲からないからなんです。

前稿をしっかり読んでいただいた方は、ライオンとは「多国籍資本家同盟」であることはお分かりですね。この人たちは資金力で世界最大のインパクトがあり、グローバルな発信力は世界トップであり、大国へのロビーイングで自分に都合のよい法律や制度を作る力があり、結果責任は取ってはくれませんが自分たちも自己ポジションで投資しているわけですから、彼らが投資で負ける可能性は非常に低いのです。僕がそれに気づいたのは2003年、野村證券の投資調査部長だった時に中国のWTO加盟に群がる「多国籍資本家同盟」の動きを初めて知って、中国株や中国関連日本株に買いを集中して大成功したからです。セミナーを開いたら錚々たる企業が1000社も来て、先日亡くなられた稲盛和夫さんも基調講演者として来て下さって、かなり注目されましたからご記憶の方も多いと存じます。これを企画したのは僕なんです。ただそれができたのはその直前に自分が香港の社長を2年半した経験によるひらめきと野村総研という日本最高のシンクタンクの調査力が自由に使えたからでした。その手法が今でも応用できるのです。僕はべつにライオンのお友達ではありませんから、誰かに情報をもらってることは一切ありませんし、仮にもらっても信じません。テレビは見ないし、日経新聞は購読を打ち切りましたし、経済誌や本も一切読みません。ぜんぶ、何の役にも立たないからです。

猫好きなのでライオンの習性はよく知ってるってだけですね。簡単ではないですが彼らの判断を推理して予見さえできれば、「お金を増やす」を合言葉とした同盟の先回りをするのですから勝つ可能性が高いのは当たり前ですよね。僕の目的も同じですから、要は「ライオンの気持ち」になることなんです。それを誰が「陰謀論」と呼ぼうが何だろうが、そんな議論は実はどうでもよくて読んで下さっている皆さんがインテリジェンスをつけて詐欺師に騙されないようになっていただければそれでいいのですが、それがないのだけは困るんですね。幸いあるから食えてるっていうことなんです。

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ハードボイルドで説く「陰謀論」の是非

2022 OCT 7 0:00:27 am by 東 賢太郎

「コロナを気にしなくなったね」「欧米といっしょになってきたね」「でも11月あたりにまた来るよ、もう第何波か忘れたけど」「去年も来たから来るね」「うん、また変異したのが」「そうか、次のワクチン、何回目だっけ?」・・・

先日、会食でこんな会話がありました。これ、冷静に見ると、『アフター・コロナ期はこうなる!』なんてみんなが半年ぐらい前まで喧々諤々やってたけど、今やその話題も旬を過ぎてしまって語ってたことも忘れてる。ひょっとして、そのアフターにもう入ってるんじゃないだろうかとさえ思いますね。

「今度のワクチン、もう打たれましたか?」「いえ、ちょっと言いにくいんですけど、ウチ、実はやめたんです、19回目で」「そうですか、ウチは37回です、きのう保健所から皆勤賞もらいましてね」「ほう、ずいぶん頑張りましたね」「ええ、効くっていうもんですから、おかげで娘は7回かかったけど元気だし」

世の中の変化ってのはデジタル的には起きません。ジュラ紀に地球を支配した恐竜が「明日から白亜紀か、気をつけよう」なんて思うことはないわけです。そういう意味で、昨今よく議論されてるのが「グレートリセット」ですね。ダボス会議(世界経済フォーラム)の議題になったせいでしょうか、流行ってますね。

https://ideasforgood.jp/glossary/the-great-reset/

しかしこのリセットも何月何日におきるわけではありません。おきるかどうかもわかりませんが、おきたとしても、日々、グラデーションのように変わっていくものでしょう。ユカタン半島に隕石がおちて、気がついたら気候変動で大変なことになっていて、恐竜はあえなく絶滅しました。人間だって気象兵器が使われていつそうなるかわからないってことならば理解します。

こういう話をするとすぐ「陰謀論だ」という人がいます。このところ、なんだかとみに増えてますね。世界最高の権力者がどこかにいて、その陰謀で弱者は気づかないように支配、搾取されているというものの見方です。権力は法で行使するのが現代のルールですから、米中を凌ぐ超大国が現れて世界制覇でもするか、みんなで合議する国連みたいな超国家的機関が最大の軍事力を持って世界法でも作らないとそんなことはできないのです、でもその言葉が好きな人たちはそういうことは考えないんですね。

しかし、「お金」を求めるのが人間のサガだよねと認めあってしまう世の中では、「こうすればお金が増えるよ」という道がもし目の前にあれば、法律にそれはだめだと書いてなければ皆がそっちに行ってしまいます。だから、その道を敷いた者があたかも支配者であるかのようにふるまえる場面はいくらでもあり得るし、現にそれはおきています。お金は軍事力がなくたって世界法の代わりになるんです。政治家はそれを禁じる贈収賄罪があってできないことになってますが、昨今話題の「裏金」ってものがありましてね、日本はそのために顔認証が導入されないんですが、情報だってお金に変わるんでハニートラップなんて手もありましてね、実はお金のサガは人間のサガにあらがい難く裏打ちされているのです。僕は三国志ファンなんでそれは人類普遍の絶対原理であって、時代も人種も宗教も、どんなパラダイムであっても人間のサガを縛りつけることは不可能で、一時はうまくいっても、必ずお金の絡む局面であぶり出しの文字みたいに露呈してしまう、そう信じています。

清濁併せ飲んでそういう世の中を認めようというのが「現実的な資本主義」と言ってもいいと思います。共産主義政権だって舞台裏では人間のサガ全開だったのが歴史ですからね。だから「お金の塊り」をマルクスが「資本(Das Kapital)」と呼んで、人間に関係なくそいつには「サガ」があって増殖し、それを野放しにすれば労働者は不幸になるが、アホな人間がどうあがこうと究極は革命によってユートピアになる。これはヘーゲル哲学でもあって、唯物論的な思想に共感がある僕にはなかなか美しい説なんです。

そのKapitalが名前になった資本主義は、マルクス主義の出来損ないのデリバティブという位置づけで手厳しい。「お金のサガは人間のサガに裏打ちされている」と言ってしまうともう根底から資本論のアンチであって、「濁」はおおいに美しくないんですが、僕は経験主義論者でもあるんで40年も世界の金融ビジネスですったもんだやって世の中の汚い現実の裏も表も見ましてね、「現実的な」の形容詞をつければ資本主義しか人類が共存して生きていく道はないと考えるに至ってます。それが正しいとか正義だとか思想というものではなく、民主主義もそうなんですが、いちばん最後に残った better という意味です。

お金を増やす道を作れるのが資本家です。資本がなくても株式ファイナンスで作れるから誰でもそれになれますよ。本稿のコンテンツはぜんぶ僕自身がサラリーマンを辞めて資本家になって、”プレーヤー” として体験して感じたことで、他人の受け売りや理論や理屈では一切ありません。だからいつの日か起業したい若者には参考になるんじゃないかと思って書いてます。ちなみにhard-boiledってのはどうでもいいんですが僕のミステリーにおけるタッチの趣味なんで、エモーションとか気遣いとか人間的温かみとか修辞とか、論旨を進めるのに関係ない物は添加しないということなんです。だからtoo straightかもしれませんがご容赦お願いします。

資本の支配力は1+1が2以上になるので、資本家と資本家は敵対するか同盟するかを選びます。ケンカに勝てば1が2になるが、負けると0です。同盟すれば3になって両者が1.5になる。ケンカはコストも時間もかかる上に期待値1なので、よほど腕力でも強くない限り明らかに後者が得です。こうやって資本家は同盟して支配力を増していき、やがて消費者に不利益を及ぼします。これがカルテルやトラストというものです。だからそれを阻止する独占禁止法ができたのです。資本論からすればこんな策はバンドエイドですが、全部くっついて世界最大資本一つの地球になるとジョージ・オーウェルの『1984年』、いわゆるディストピア到来ですね。これは共産革命と逆の意味でヤバいです。

資本家が多国籍になると、同盟の仕方も複雑、巧妙になります。これを包括的にこうだと示すことは僕も知識がないのでできませんが、現実として、どの国の独禁法もかいくぐって、どの国にも税金をあまり払わないなんてことがあり得ています。そう正面切ってではありませんが、米国のビジネススクールではタックス・マネジメントといって国際税務の効率的な対処法のメインロードを講義してるし、国際的な会計事務所はその合法的ストラクチャリングのコンサル(TMC)は重要な業務です。もちろん、表街道は教えるから裏道は自分でねってことですが、それをクリアできるレベルの知性を持った資本家同盟は、効率的で強大な支配力を築きます。

「お金を増やす」が幸せの合言葉だから国籍も宗教も問わない連合が可能で、特に法律がそれに適した設計になっているケイマン諸島のような国で「ファンド」という透明な形にしてしまえば、資本家のひとりが国家である(SWF)なんてことまで起こります。国家、事業会社、貴族、財閥、金融機関、宗教団体、学校、年金、労働組合がみんな同盟してますなんてこともあり得ます。ファンドは開示義務がないので構成は表からは見えません。でも、裏では、「お金を増やす」を合言葉に共同作業が行われているわけです。これを取り締まる法律も組織もありませんし、脱税やマネロンをしない限り合法的です。ファンドでコールと言いますが「指示があったら振り込め」という契約だけで繋がっているので資産規模は外部からは合算して把握できません。おそらく兆円単位で、小国の国家予算より大きかったりします。「権力者」になることが第一の目的ではありませんが、お金にひれ伏す人はいくらでもいますから、この同盟が世界に隠然たる影響力を持つことは難なく可能でしょう。

それを許してしまう資本主義がいいのかどうか見直そう、資本家だけでなくステークホールダーの利益を考え、売り手よし、買い手よし、世間よし(三方よし)に修正していくべきではないかというのが「グレートリセット」の表向きの議論なんですね。それの契機になったのが、不測の厄災だったコロナへの国際的な協調対応で、同時に気候変動への対応、格差・不平等を是正する雇用への目配りもしないと資本主義はサステナブルな発展が難しい、だから皆さんリセットを賢明にしてアフター・コロナをうまく築き上げ、世界の恒久的な平和と発展に貢献しましょうという趣旨になったと思われます。

大変ごもっともなんですが、ダボス会議に来ている人はみな前述したような同盟をしてお金を増やそうという側の人間なんですね。クロスボーダーの協調のほうが一国でやるよりいろいろ便利なので、彼らはいわゆるグローバリストであり、世界政府志向であり、非民族主義的であり、もちろん資本主義の最たる受益者です。どこの国の王族、貴族でもなく、攻撃される危険をはらむことになる階級を作る意識もありませんが、資本主義はもともとは18世紀の先進国だった欧州が植民地や辺境を支配・搾取して利益を分配する仕組みを是とする思想ですからね、それがダボスでは社会主義寄りの主張をし、その方向に「リセット」しようと言ってるわけです。おかしなことですね。

しかし、アジェンダをよく読めばわかります。百姓は生かさず殺さずです。いなくなってしまえば年貢が減るので自分たちも死ぬ。サステナビリティってのは地球のため社会のためと表ではいってますが、本当は自分が安泰に生き残るための基礎条件という意味なんです。だからそこに世界が設備投資して欲しいし、リターンがないとそうならないから、それに賛成しない企業の株式には投資しない、インデックスからはずすなんてポリコレ操作をします。すると投資資金は否応なく集まって株価パフォーマンスはプラスになるので、設備に関わる企業は資金を安くファイナンスできるようになるんです。「合法的ぼったくりシステム」だった資本主義を修正してマイルドにしよう、競合する資本家の全員がそれに同意すれば、期待値1の不毛なケンカは避けられるから誰も損はしないだろということです。で、その修正の中にちゃんと再生可能エネルギーへの移行やら、自分たちに都合のよい税制や規制、財政政策の改善を各国政府に働きかける方針などを埋め込んでます。ゴールポストを自分に都合よい位置に動かせば、損する確率は減りますね。

この会議に出ている人全員がそうだというわけではありませんが、世界経済フォーラムですから世界の経済を動かしている人、すなわち大金持ち(資本家)とその代理人であって、会場で知り合いになって意気投合して組もうということもざらにあります。参加費は高額だからその目的で来ている人も多い。国家、事業会社、財閥、貴族、金融機関、宗教団体、学校、年金、労働組合が同盟して投資するようなテーマは何なのか知る意味もあります。巨額の投資だから相場の方向性に影響があります。国家元首やオーナーが必ずしも参加はしなくても、この場を見れば、誰と誰が共同ファンドを組成しても不思議でない実態はわかります。世界はこうやって「お金を増やす」を合言葉とした同盟が動かしてるんだなあということをです。

彼らが「百姓は生かさず殺さず」路線に舵を切った、そうせざるを得ない世界情勢になった、ということは表面的には「社会主義化」と見えてくるようになります。例えば米国では民主党左派のサンダースなんかが言ってることは社会主義そのものですよね。欧州もドイツ、フランス、英国は一時は左傾化しましたね。でも社会主義イコール共産主義ではありません。社会主義独裁政権がありえるし、それに近いものをグローバリストが目指しており、「1984年」型でAI・ビッグデータ管理と結びついた超監視社会かもしれません。それに対する巨大なアンチ・テーゼとなったのがトランプ大統領の出現でした。それに呼応したのが英国のBrexitだし、プーチンの言い分も米国民主党の傀儡であるNATOとの戦争です。広義の民族主義ですね。ナチスのようなその皮をかぶった独裁制の復活ではなく、少なくとも米国は民主主義を堅持してそれを成し遂げようとしたんです。それがバイデン陣営のなりふり構わぬ不正投票とメディアの抱き込みなどの非民主的な方法でねじ曲げられたから世界は危惧しました。いや、違いました、メディアは抱き込まれたのではなく、世界連合共同ファンドのサブ・メンバーぐらいのものです。ちなみに日本の既存メディアはぜんぶその下請けです。

もとより各国中央銀行は低金利政策をとっていましたから市中にお金はじゃぶじゃぶあふれてます。持った人は「運用」をしないと、限られた実物経済への投資機会だけでは期待するほど増やすことができません。だから、例えば、本来は実物経済のプレーヤーだった総合商社は部門ごとの専門分野に投資するファンド事業が本業のようになっているのです。そこに襲いかかったコロナは各国の国家債務を膨大に増やしました。だから市中にマネーが供給されてコロナ不況なのに株高になっているのです。そこに資源、食料、物流コストの高騰が加わって供給サイドから想定外のインフレが進みます。それを抑えるために米国政策金利は異例の速度で上昇し、海外からドル投資が増え、外貨投資に逃げていたドル資金が還流し、為替市場では米ドルの独歩高という異常現象が起きていることは前回書きましたね。

異常なことは必ず予定調和的な解決を見ます。それがいつ、どこになるか。それを知るには、「調和」とは何であるか、そこにどんな利害関係者がいて、どのぐらいの資金量があって、彼らが究極は何を望んでいるかということを見抜く必要があるんです。彼らとは誰か。まずは国家です。もちろん米国、そして中国。これはもろに政治的意図がからみます。左傾化した米国民主党と中国共産党は同床同夢になれますね。ウォール・ストリートもメディアも利害は一致しますね。そしてそれに資金力で加担する財閥、財団、金融機関、産油国、GAFAなどIT企業etc.。これらがケース・バイ・ケースで自由かつ任意の組み合わせで同盟(アライアンス)を組成して国家にロビーイングを行い、資本投下をし、人的介入までもするのです。みなさんこの現実を陰謀と揶揄して済ますことができますか?

そういうミクロの動きを日本から望遠鏡でのぞけば、異星の出来事のように、あたかもその同盟が最高権力者としてふるまっているように見え、「すわっ、陰謀だ」となっていくわけですね。海外事情に疎ければ初めはそれでも仕方ありませんが、お金事情なら誰でも想像ぐらいはつくはずなんですね、そういう事情を持ってる主体があらゆる国籍・人種・思想・宗教の資本家で、動機は個人の欲望に裏打ちされた資本のサガであり、そこに国家まで加わってはいるがどの国家もメジャープレーヤーではない、ということを学んで冷静に日々のニュースを観察すれば、陰謀論という言葉でそういうものをひとくくりに片づけて思考停止してしまうと、その末に何のインテリジェンスも構築されないということに気づかれるでしょう。当然です。その思考は正しくないからです。

陰謀論という言葉を振り回す人は高学歴者、インテリにもいます。大体が左翼で、当たっているので都合の悪い思考を一撃で沈没させたい、その為の攻撃タグとして意図的に巧妙に使うのですね。しかし大体からして、当たっているという判断自体が怪しく、多くは間違っていて、なぜなら左の人は「資本のサガ」というものを資本論を読んで悪と思いこんでいるだけで、その裏にある「人間のサガ」までは生々しい実態をご存じないからです。理屈を知っていてもわかりません。人間のサガが蠢く現場に日本人が関与できるかというと、チャンスがあったのは1990年前後だけです、あとにも先にも。彼らにとって日本はコールかけて金をふんだくるだけの存在で、完璧なミツグ君ですね、貢献できるインテリジェンスも英語力もないですからね、入れても邪魔なだけで何の意味もないから今後もまず無理です。僕はたまたま昭和のバブル絶頂期に五千億円の収益をあげていた野村證券の英国の株式部門ヘッドだったので、彼らを顧客として関与、観察できたのです。

見ていると左翼の方々は無知な人の前でしか「陰謀論だ」という攻撃は使わないですね。陰謀論という言葉が好きな人たちが言っている「陰謀」が現実にあるわけではないことぐらいは悟っておられて、つまり「幽霊の正体見たり枯れ尾花」なんでね、それをいうと、実は私も初めは幽霊と思ってたんですってニュアンスになってかえってみっともないことをわかってるからでしょう。だから、もし彼らにそれをいわれたら、あなたは馬鹿だと思われているんですね。マルクスの言う通りにはならず、どこも共産主義は失敗でいつまでも資本主義が地球から消えてなくならないのは、彼とて「資本のサガ」を捉え切れていなかったからです。労働価値説で商品の価値が供給サイドのみで決まっているとすることは、理論構築の前提条件としては結構ですが、現実はあきらかにそうでないですね。これは経済学の理論的研究上「経済人」が必要なのとおんなじです、そんな人間はいないんで、理論はきれいだけど予測は当たらないねということになるんです。

当たらない理論を研究する人が学者と呼ばれて尊敬される先進国は日本しかありません。そういう意味不明の尊敬というのは高学歴の人はふつう持たないんですがどうもそうでもない、驚くべきことです。これはなぜかというと、日本の高学歴というのはそもそもがそんなもんなのです。例えばくだらない本が東大ナントカというタイトルだと売れてしまう。つまり東大というのは**教総本山みたいな宗教的権威なんですね。東大にも馬鹿はたくさんいますが、ありがたい神主さんだから権威を感じる、何を研究していてもです。中身は見ないんです神事だから。特異なのは高学歴の人でも半分ぐらいはそうであるという点です。それが日本の高学歴の正体なんですね。だから世間において、なにせ神事ですから、そういう連中が密室や秘密クラブでこっそり何かやってるという妄想が働きやすいんです。陰謀論が流行るのは、無理もないんです。

本当の高学歴の皆さんは、物事の本質をザッハリヒ(sachlich)に見る訓練をしなくてはいけません。だから僕は唯物論的なものの見方に行き着いたんです。で、その僕が唯物論的分析で、「唯物論で株価が決まるわけはない」と言ってるわけです。商品とおカネの交換価値(要は値段ですね)は、人間の欲望というサガ、すなわち需要サイドで決まる要素が多いのです。需要は唯物論でなく人間が決めるんです。それを左右できる人たちの考えることが「陰謀」に見えようが「お化け」に見えようが、合法的多国籍資本家同盟は、案件ごとにカルテル化して世界の世論を誘導し、政策に圧をかけ、戦争でも何でもして売りたい商品を売り、売りたくない商品は潰すんです。開示されないので証拠をあげることは誰もできませんが、そういう同盟が日々くっついたり離れたりしながら活動していることは、自信をもって、「事実である」と申し上げます。

そうではなくて、資本論も読んでなくて「陰謀があるなんて嘘だ」と頭から信じこんでいて、それを幽霊だと信じてるお前は馬鹿だというニュアンスの局面でそれが言いたいだけでその言葉を使う人達は、社会をご覧になれば実にたくさんいますが、間違いなく全員が本当の馬鹿です。瞬時にそう判断されて結構ですし、逆に、我々のような人間にそう判断されるわけですから、なるべくならお使いにならない方が賢明でしょう。面白いんですね、そういう人は、それこそ本格的な陰謀にはひとたまりもなく騙されるんです。だから下等な詐欺師はオレオレをしますが、高等な詐欺師はそういう人達を狙ってカモにする傾向がありますね。

英語でやってる国際金融の世界はそういう連中の巣窟なんで、そこで40年生きてきた僕もその術は居眠りしてても使えます。そうでないとディールで騙されて大損しますんでね、相手がプロならこっちが仕掛けることだって当然のようにあります、もちろん詐欺はしませんが(笑)。そう書いた以上は念のため申し上げておきますが、金融以外は知りませんが、プロ同士に詐欺って概念はないんです。麻雀で捨て牌に迷彩を施して、ひっかかって振りこんだら騙された方が馬鹿ですね、野球のピッチャーがフォークの握りをちらっと見せて速球で三振取ったら、それはむしろ称賛されるんですね、詐欺でなく。そういうことです。

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