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『気』の不思議(位牌とジャズの関係)

2017 SEP 26 0:00:35 am by 東 賢太郎

高野山延暦寺の番組を見ていた。周辺の村で伝統的につくられる高野位牌の職人さんにTVアナウンサーが「戒名の彫り方にも気持ちをこめられているんですね~」と、マックの店員みたいにお馬鹿な質問をする。

するとその職人さん、困ったように、「いや、気持ちはこめませんね、戒名はあくまで故人さまのものなんで、私が気をこめてしまってもよくないんで」と答えていたのがとても印象に残った。

 

気とはそんなに強いものなのか・・・。

 

名曲とされる音楽には実はどっぷりと作曲家の気がこもってるのかもしれない。チャイコフスキーの悲愴なんかどうだ。あれを聴くといつも心にずっしりと重たいものをかかえて帰路につくではないか。それをチェリビダッケぐらい気のかたまりみたいなおっさんがやったら尋常じゃ済まされない。

それでいうならフランクフルトで92年に聴いたユーリ・アロノヴィッチの幻想交響曲だ。あれこそ指揮者の気だったんだろう、おとなしいイメージのバンベルグ響が燃えまくって物凄い演奏になってしまった。こわい。完全ノックアウトを食らった、あんなのは何度もあると体に良くない。

7月7日に神宮球場で遭遇した広島カープの世紀の大逆転事件もそうだ。9回表を迎えて5点差の負けがひっくり返ったあれ、客席で鳥肌が立った。カープ選手の「絶対やったるぜ」の気だ、今年の強さの縮図だった。きのう引退試合だったロッテの井口が現役最終打席に立った。これも打つ前から何かあった。同点ツーランホームラン、恐れ入った。試合はそのままサヨナラだった。

我がことではサンフランシスコの野犬事件だ。野っ原で夜陰にひとり、5,6匹の獰猛そうな野犬と向き合ってしまった。ヤバいも何もない、殺られると思って咄嗟に工事の土管に隠れた。先頭の怖そうなヤツが土管のむこうの出口でこっちをのぞいて目が光った。5メートルぐらい。びびっと視線が合ったら、ヤツがなぜか回れ右して、ケツを向けて全員去ってくれた。あれって気だったんだろうか。

毎月打ってもらってる神山先生の鍼(はり)。あれも不思議だ。肩から腰あたりまでの背中に8本打つが、毎回場所が違う。「ここ気が流れてないね」だ。そういう場所を選んでいて、ツボということもない。日本人の鍼灸医の技術では背中は打てない。肺に刺さって気胸になる事件が最近もあったが、危険なのだ。だから鍼灸医が患者になって来ている。

『気』の存在について

気という語は

気持、気合、気分、気候、気功、気色、気質、気長、気品、気心、気楽、天気、気温、気象、気圧、気味、正気、狂気、邪気、陽気、陰気、産気、運気、根気、生気、短気、人気、呑気、勇気、色気、空気、本気、気配、気骨、気だて、意気、気まま、気構え、気安い、気難しい、気を許す、気を寄せる、気が良い、気がねする、気をそそる、気を吐く、気を落とす、気が抜ける、気が利く、気がふれる、気が進む、気がせく、気をそぐ、気に召す、気が立つ、気になる、気にする、気にかける、気負う、気をやる、気に入る、気がひける、気をつける、気が張る、気を抜く、気を使う、気が付く、気を付ける、気を持たせる、気に障る、気を良くする、気が散る、気がある、気を引く、気が滅入る、気が移る、気色が悪い、気安い、気が置けない、気を回す、お気軽に・・・

まだまだあるだろう。いかに我々日本人が気を気にかけていることか。

ストレスで気が重いとき、ちょっとリラックスしてジャズをきく。これがたまらない。ピアノが好きだけどクラシックの回路に入ってしまうので、そういうときはサックスだ。なんたって展覧会の絵かアルルの女ぐらいしか出てこないし。

ジャズの人には邪道なのかもしれないが、コルトレーンじゃない。どうも彼のは「気」が入りすぎてる。

まずはウエイン・ショーターのこれか

スタン・ゲッツのこんなバラードのコンピレーションはもっと邪道なんだろう。しろうと色丸出しで気がひけるが。

でもこれはうまい。旋律の歌いかたが絶品、軽い、大好きだ。Loverでなくたってうっとりしてしまうではないか。彼のサックスはあんまり「気」がこもってないんだ、気が抜けてるわけじゃなくって。気が置けないし気をそそるね。

 

(いらん、といったものですが・・・)

ジョン・コルトレーン「A Love Supreme」

アントニオ・カルロス・ジョビン 「イパネマの娘」

安土城跡の強力な気にあたる

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Categories:Jazz

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