アントニオ・カルロス・ジョビン 「イパネマの娘」
2016 AUG 8 1:01:50 am by 東 賢太郎
リオでこれを聞いたかどうか、記憶はないのですが、ブラジルというとルビー、サファイア、アメジストなど宝石の原石をきらびやかに並べて売っていたことと、イパネマ、コパ・カバーナのビーチの解放感がなぜか脳裏に焼きついて離れません。地球の真裏の素晴らしい思い出です。
この曲はイパネマ海岸近くにあったバー「ヴェローゾ」(Veloso)にたむろして酒を飲むことが多かったアントニオ・カルロス・ジョビン、ヴィニシウス・デ・モライスが、母親のタバコを買いにしばしば訪れていた近所に住む少女エロイーザ(Heloísa Eneida Menezes Paes Pinto)に一目惚れし、インスピレーションを得て書いたものです。彼女は当時10代後半、170cmの長身で近所でも有名な美少女であったそうな。右がのちのエロイーザですが、さすがに美人ですな。43年生まれだそうです。
「イパネマの娘」(Garota de Ipanema)はポップス界の奇跡的名作であり、ボサ・ノヴァと呼ぶジャンルに属するようです。その辺はうとくて何がボサ・ノヴァの定義か知りませんが、ブラジルの音楽にフランス近代音楽の和声をかけあわせたような洗練を感じます。
初めてこれを聴いたのがいつだったか、たぶん中学ぐらいだろう、サビの部分の和声変化に仰天し、ギターで試みるもメジャー9thのようなコードはうまく出せない。コードがわからないと、今度はメロディーの「入りの音」までわからなくなるという困った曲で、一気に取りつかれてしまいました。ピアノが弾けるようになって、やっとからくりがつかめました。
米国のサックス奏者スタン・ゲッツとブラジルのボサノヴァ歌手ジョアン・ジルベルトが1963年に録音したアルバム「ゲッツ/ジルベルト」に、ゲッツの奥さんだったアストラッド・ジルベルトが2曲だけヴォーカルを担当、イパネマの娘はほんのその1曲だったのですね。
アストラッドはブラジルの風を感じさせるアンニュイな感じの歌声ですがサビの音程はしっかりとっています。あちらの歌手で音程が怪しいというのはまずありません。録音の舞台裏では、ジルベルトはゲッツがブラジル音楽を理解しないのに腹を立て、ピアノで参加していた英語の喋れるジョビンに「この馬鹿めと言え」と迫ったそうな。
このアルバムは当初にビルボード誌のチャートで2位に達する大ヒット作となりましたが、シングルとして「イパネマの娘」はまだ5位だった。それがやがてカヴァー数でビートルズの「イエスタデイ」に次ぐ世界第2位のクラシック的存在までになるのです。
私見では、それはここの見事な和声によるところが大きいと思われます。
Oh, but he watches so sadly E♭maj9→A♭7
How can he tell her he loves her E♭m9→F#7→B7
Yes he would give his heart gladly Em9→Gm7→C7
こういうクラシック音楽は、ない。まるで万華鏡をのぞくようです。作曲家、アントニオ・カルロス・ジョビンに脱帽。
これが作曲当時のエロイーザです。エリーゼのために、幻想交響曲、トリスタンとイゾルデ、美女は名曲を生む。
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Categories:______クラシック以外
中島 龍之
8/9/2016 | 10:35 AM Permalink
ィパネマの娘のモデルの写真があるとは面白いですね。「ゲッツとジルベルト」の名で、昔、流れているのを聴きました。多分64年ごろだったでしょう。スタン・ゲッツがジャズなのでジャズの曲という記憶ですが、ちょっと感じの違う軽い聴きやすい音楽でした。リオ・オリンピックの開会式でもやってましたね。
東 賢太郎
8/9/2016 | 4:52 PM Permalink
名曲が何をきっかけにできたかはいろいろあって面白いですね。これはわかり易いケースですね。