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シューベルト 4つの即興曲D899より変ト長調

2019 APR 30 2:02:08 am by 東 賢太郎

10連休。僕ら海外とビジネスする会社は関係ないが仕方ない。せっかくの時間だからピアノでも弾こうとなり、前からやりたかったシューベルトの4つの即興曲作品90の3番目、変ト長調アンダンテの譜面を置く。神のように美しい曲だ。ト長調じゃない、くぐもったようでほんのり暖かい変ト長調!いいなあ。聴いた音ほど一筋縄でいかないがまあ今日は大体のところでオッケー。

いままでラドゥ・ルプーを愛聴してきたがyoutubeにいろいろある。♭が6つもある譜読みはけっこう大変なので耳から覚えてしまおうということで片っ端から拝聴。印象に残ったのを以下に。

マリア・グリンベルク

メロディは絶妙なルバートで心から歌い、ピアノでこんなことができるのかと感嘆。中間部のドラマが48小節目のppでふっと天国のように音色が変わる。音楽を感じきっており、変転する調性や低音のトリルの深い意味がこれで初めてわかった。素晴らしいの一言。

 

クリフォード・カーゾン

うまい。テンポはグリンベルクよりやや速いがこちらがアンダンテかもしれない。フォルテピアノのイメージに近く、シューベルトが弾いたのはこういうものだったかと思わせる。

 

アルフレート・ブレンデル

美しい。ロンドンで何度かリサイタルを聴いたが pp のタッチの美しさが群を抜いていた。中間部の fz を激することなく弾いて全体にあっさりして深みはないが、このバランスの良さがブレンデルだ。

 

ウラディミール・ホロヴィッツ

バスの弾き方がホロヴィッツだ。ロマン派に聞こえてしまうのが賛否あろうがタッチのパレットの豊富さはやはり只者でない。

 

ヴィクトリア・ポストニコワ

ロジェストヴェンスキーの奥方である。これは凄い。心の歌がびしびし琴線に触れてくる。音符をきれいになぞっただけの演奏とは別次元であり本物の音楽だけが持つ無限のパワーここにありだ。シューベルトに聴かせてあげたい。グリンベルクもそうだが、ロシアン・ピアニズムの精華。

 

タチアナ・ニコライエワ

これはオーケストラだ。このテンポは遅すぎと思うがどうしたらこんなに深い低音が鳴るんだろうというニコライエワならではの芸。彼女のJSバッハ(平均律)もオーケストラだが僕は好きである。

 

グレゴリー・ソコロフ

いいテンポだ。ルバートも大きくなく古典的な佇まいがあるが中間部はドラマティックであるし14小節の pp に落とす感じも見事であり、シューベルトの意図はこうかなと思う。生半可な技術では到底できない至芸。

 

ミトリー・バシキーロフ

淡々と弾いているが詩情が深い。何も特別なことはないが名人芸だ。1955年のロン=ティボー国際コンクールピアノ部門にて最高位、娘はピアニストのエレーナ・バシュキロワでダニエル・バレンボイムの妻。

 

アンドレイ・ガブリロフ

この人はどうなってしまったんだろう?ムーティとやったチャイコフスキーやラフマニノフでテクニック屋みたいに思われたのだろうか、うますぎるのも不幸なものなのか。彼のバッハのフランス組曲は好きで聴いている。これもいい。独特な明るさ、清楚な透明感と暖か味があってテクニック屋などとは程遠い名手である。実に素晴らしい。

 

リリー・クラウス

聴いたことのないヴァージョンだ。やや速めのテンポでアルペジオがよく聞こえ川の流れのよう。起伏に富み自家薬籠中のものになっている。

 

ラース・フォークト

この人もドイツで何度か聴いたが最近は聞かない。ソフト・フォーカスで弾く主部が儚さを醸し出してロマンティックだ。そこはかとないルバートがそこで効いてくる。こういうのも悪くない。

 

カティア・ブニアティシヴィリ

ヴィジュアルに圧倒され、音だけ聴き返したが悪くない。東京で聴いたシューマンPCはばりばり弾くだけで幻滅だったが、この人は音の色彩にセンスがある。

 

シューベルト 「4つの即興曲」 (第1曲ハ短調) 作品90

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