株の儲けとブラームスのジレンマ
2024 MAR 5 7:07:58 am by 東 賢太郎
自分の行動と信条が合わないことがある。うまくいっていても、どこか心持ちが良くない。今がまさにそうで、前稿に書いたように現在の自民党政権には幻滅どころか亡国の危機感さえ持っているのだが、そんな政権なのに株式市場は新高値4万円をつけ、いっぽうで円が安くていよいよ150円台に定着しそうだ。僕はもう2年前から思いきって全財産を「日本株ロング」、「円ショート」のポジションにしているから当たりだ。しかし、これがその政治のおかげであるならジレンマがあってそう喜ぶ気持ちにならない。我が国は首相官邸ごとハイジャックされていて、自民も立憲もその軸で国会の裏でつるんでいて、何と証券市場までそうだったかと嘆かわしい気分すらある。
この利益は知恵をしぼり、体を張ってリスクを取った対価であり、誰でも市場で売買できるもので儲けているのだからどうこういわれる筋合いはない。ではお金と信条とどっちが大事かと問われればどうだろう。信条と答えたいが「武士は食わねど・・」の人種でないから自分を騙して生きるのはまったく無理だ。よって、どんなに唾棄したい政府、政策であろうと、それが存在する前提で投資戦略を練って勝ちに行く。そこに何らかの感情が入ってしまうと往々にして負ける。したがって信条は完全に無視である。つまり内面に矛盾が発生するのだ。株も為替も石ころの如く無機的な「対象物」でしかないという感性を持つことで信条優先の人間だという矜持を持ちこたえている。理が通った気はするがなんとも危ういものだ。
いま新事業というか協業の提案をいただいている。4つもあってどれも面白そうだ。モーツァルトなら作曲依頼は4つでも受けるだろうし、僕とて40歳なら迷わず全部受ける。69歳なのに気持ちがはやって簡単にできる気がしてしまうのが自分が自分たるゆえんではあるのだが、無理はいけないから部下たちの判断を尊重しようと考えていて、6時間も議論したりの日々だ。やればその分、余生の時間が減るという気持も出てくる。カネなんかのために早死にしたくないし、儲けて無理して使えば体に悪くてやっぱり早死にだ。つまり何も良いことはないのである。やがて「いつ辞めるか」考える日が来るだろう。江川は小早川のホームランで辞めた。貴乃花は千代の富士に負けて辞めた。トスカニーニはタンホイザー序曲でミスして辞めた。何になろうが、継ぐ人が現れての話になるが。
先だって、シンガポール在住の事業家で慶応ワグネルのフルーティストであるSくんとZOOM会議をして「仕事やめたら指揮してみたい」「何をですか?」「シューマンの3番とブラームスの4番かな」という会話があった。先週に渋谷で食事しながら「ブログにはモーツァルトが一番好きと書いてありますよ。どういうことですか?」と鋭い質問をいただいた。「モーツァルトは人間に興味があるんだ。なんか同類の気がしてならない、あんなに助平じゃないけどね」と答えた。君はと尋ねると「バッハのマタイとブラームスのドイツ・レクイエムです」ときた。「素晴らしい。マタイの最後、トニックの根音が半音低くて上がる。ブラームス4番はその軋みがたくさん出てくる。ドイツ・レクイエムは信教のジレンマがあったんだ。だから ”ドイツ” をつけたが、ドイツ人指揮者は意外に振ってないね、ベーム、コンヴィチュニー、クナッパーツブッシュはないんじゃないか」なんてことを話した。
ブラームスのジレンマ。比べてみりゃ僕のなんか卑小なもんだ。
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3 comments already | Leave your own comment
桜井 哲夫
3/5/2024 | 7:47 PM Permalink
日経平均株価に連動する「上場インデックスファンド225」(銘柄コード1330)をはじめとする日本株式
そして「米ドルMMF」をはじめとする米ドル建て商品
を長期保有しておりますので、おかげさまで含み益が増加しております。
日経平均株価がバブル期超えをしたのは「バブルではない」と私は考えます。それはこの34年間で、アジア通貨危機・ITバブル崩壊・リーマンショック・東日本大震災・コロナショック等々を乗り越えて「日本企業の体質が大幅に強化された」からです。日本企業を野球に例えるなら、バブル期は清原、現在は大谷翔平くらいに進化しているでしょう(退化している企業もあるでしょうけど)。清原と大谷のホームラン数を比較しても意味が無いように「バブル高値を抜いたから暴落する」は根拠がありません(もちろん暴落そのものはあり得ます)。
もちろん「半導体銘柄の牽引」等の要素がありますが、ここは立ち止まって、コーポレートガバナンスの強化や配当性向の向上等々の日本企業の「努力の成果」を称えるべきではないでしょうか?
桜井 哲夫
3/16/2024 | 5:41 PM Permalink
岸田政権・自民党の支持率が地に堕ちても、日経平均株価は史上最高値を突破。これは外国人投資家にとって「誰が総理でも、長期政権でありさえすれば良い」ということに他なりませんね。事実、第一次安倍政権から野田政権までの「1年未満で総理が交代」の時は株価は地を這っていた=外国人投資家は「政権の不安定さを嫌って」いました。もう、岸田政権が続いた方が株価にとっては幸いなのかもしれませんね。
東 賢太郎
3/17/2024 | 2:17 AM Permalink
この株高はファンダメンタルと関係ないです(中小型は下げてます)。 PUPPET 岸田政権の援護だから何の理屈もありません。