幸福とは分泌されたドーパミンの総量である
2025 JUL 4 8:08:27 am by 東 賢太郎

脳内に出てくる快感ホルモン、やる気物質である「ドーパミン」は年齢と共に減ってしまうが、新しい刺激や報酬があると増える。しかも報酬があると記憶力も強化されると説くこのビデオは勉強になった。
株式投資には新しい刺激、報酬の両方がある。ある株に投資し、売却する行為は科学と同じく仮説と検証による。結果は明白に出るし、正解なら脳内ではドーパミンが大量に放出されて快感とやる気が倍増し、記憶力まで良くなって、おまけとしてお金も得られる。投資先の企業が読みどおり上場したが、こうしてお客様の運用益があがることはアドバイザー冥利に尽きる。
ソナー・アドバイザーズに営業マンはいない。投資案件も探して手に入れたことはない。嘘のような話だがみな紹介だ。僕に人気があるからでも、貸しがある人がたくさんいるわけでもない。人脈という言葉は何の中身もないが、いま周囲にいてくれる人たちでサラリーマン時代の “人脈” だった人はほとんどいない。ではなぜかというと、僕は「人生の幸福の定義は分泌されたドーパミンの総量である」とまじめに信じている。それに尽きる。幸福というふわふわしたものを定量的に捉えるにはそれしかなく、幼時にたくさん失敗して「分泌=リカバリー」という効能の味をしめているから、おそらく、僕は普通よりもそれが出やすい人間になってる。一般的な表現なら、美点凝視で常に前向きで、明るい未来の到来の熱烈な信者である。宗教っぽいと思われても仕方ないが、人は理屈でなく本能的に、ドーパミンが大量に出ている人間に寄っていくのだ。
ブログを始めたのは、クラシック音楽の評論で、自分が読みたい類いの文筆が世の中にないと思ったからだ。だからその種のものを自分で書く以外に飢餓感を埋める手がなかった。なるべく簡明にしようとは試みたが、面白くしようと思ったことはない。その流儀が音楽以外のエリアにも広がって千百三十万回読まれているが、蓋し、これもドーパミンの引き寄せの法則と解釈する。例えばメシアンの『我らが主イエス・キリストの変容』を聴いて僕より分泌量の多い人は世界広しといえどあまりいないだろう。従って、同曲に関してのそんな流儀の文章は恐らく世界のどこにもなく、好きな(ドーパミンが出た)曲しか僕は書かないから、好きな人だけが僕の高揚感に共鳴してくれる。このことは、プロコフィエフ研究の権威であるプリンストン大学のサイモン・モリソン教授から、ご自身の論文に僕のブログを引用したいので許可が欲しいとご依頼があったことで確信した。
先日、大手出版社から本を出しませんかとご提案をいただいた。2度目であり、つまり最初の会社さんはお断りした(10年ぐらい前でこちらが未熟だった)。ビジネスや投資のノウハウ本の類いは、そもそもそういうのを読んだ経験もないし効能があるとも思えないので書きようがない。読んだ人が幸福になれる本なら大いに執筆したいが、困ったことにそれは2,668本のブログにもう書いてしまっている。どの一稿にそれがあるわけでもないし、どこにどう表現したかは覚えてもいないが、13年前からのなんだかんだがそこにはあり、レコードみたいに順次再生してもらえば僕のドーパミンはきっと伝わる。本稿は2,669本目だが、こうやって進化している。この方式で、我が尊敬するピエール・ブーレーズ氏は「プリ・スロン・プリ」を作曲し、Work in progress(漸次作曲型作品)と呼んだ。彼の逝去と共に漸次は終結したが、それは中断でなく、天が決めたコーダなのだ。僕のも同じだ。
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