広島カープのゾンビ事件の結末について
2026 OCT 3 21:21:40 pm by 東 賢太郎
放課後になると団地の子の家をまわった。玄関のドアの郵便受けに口を当てて「**ちゃん、野球しよ!」と声をかける。お留守のこともある。お母さんが出てきて断られることもある。そうやって4、5人集めて空き地で野球みたいなものをやる。ああもう日が暮れちゃうぞ、あと10球、あと1球。真っ暗になってあきらめる。蝉の声。草むらの虫の音。みんな夢に出てくる。
なぜ団地でやっていたか。小学校でクラス対抗をやっていたのだが、1番のチビで入れてもらえなかったのだ。そいつら許せなかったが、野球を嫌いになることはなく、いまに見てろよと思った。それを知った父が広島カープ龍憲一投手のサインの色紙をもらってきてくれ、部屋の壁に大事に貼っていた。友達の家の近くにロッテオリオンズの石黒和弘選手の家があることを知り、訪ねていって握手をしてもらい感激した。もちろんなりたいのはプロ野球選手だった。
中学のグラウンドはコンクリートで野球部がなかった。がっくりだ。すると、やっぱりそう思っていた同級生が一緒にやろうぜと、お父さんが監督の西川口の大人のチームに入れてくれた。もう人集めしなくていい。しかも18人でできる。審判までいる。喜びが球に乗りうつったのだろう、まだ体つきは少年だったがトーナメント決勝で完投勝ちしてしまった。
13歳、中学2年の7月14日にいただいたこのウイニングボールが人生を変えた。仲間からオズマ(巨人の星のキャラ)と呼ばれた。他の道はいらない。志望校は甲子園の常連校だ!父の大反対でその志は頓挫したが、入学式の日に何より先に野球部に入った。 20人もいる。「野球しよ!」がいらない。天国だ。高校時代のことはだいぶ忘れてしまったが野球だけ覚えてる。先日あるパーティーで野村證券の副社長に会った。 10年以上も若くてこっちは名前も存じ上げない人だ。名刺を渡すと「えっ、あの野球の東さんですか?」だ。そうだったんだ。なかなか感慨深い。俺より仕事ができる東さんがいたのかよと思ったが、ニューヨークの勝利なんかが伝説化してたらしい。こんな名誉なことはない。
なりたい子にとってプロ野球選手は神様である。ロッテのサブロー監督とは何年か前にご縁ができた。イケメンで筋金入り。めちゃくちゃナイスガイ。いずれロッテを優勝させる男だ。1年の夏からあのPL学園でセンターでレギュラー。そういう人がプロになる。なりたいなんておこがましい限りだったが、それと野球への愛情は関係ない。「プロ野球選手は毎年ドラフトで70人ぐらい入って、高校生から父親世代までいて全部で千人いない。東大は毎年3千人ぐらい入って在校生は3万人もいるんです。あなた方は比較にならないぐらいの超エリートなんです」と申し上げた。お世辞抜きだ。
同じことを、広島カープ球団から「来年は契約しない」と通告された4人の若者に言いたい。どれだけ君たちが世間から注目され羨望の的となる存在であったか君たちは知らない。それが一歩間違うと危ないなと感じた目上の人は君たちをこう叱るはずなんだ。英語の人たちは Know your place. Behave yourself!日本語の人たちは「分をわきまえて行動しろ」、「馬鹿なことするとやられるぞ」ってね。英語の国でも日本語の国でも同じなんだよ人間ってのは。誰も叱ってくれなかったんだね、でも責任は君たちにある。いい大人になって人間界を知らないからそうなっちゃった、身から出た錆びなんだよ。
球団経営がどうのNPBの統一契約書がどうのなんて関係ねえ。人の道から外れればファンは君たちに怒る。応援する気が失せる。これ、法律じゃねえんだよ、人間界の道理ってもんだ。それが積もり積もって球場はガラガラなんだ。来年も続けばカープというブランドはズタズタになる。下手するとカープを構成員とするNPBのブランド、ひいては野球人気にまで波及して取り返しのつかない問題になる。それと天秤にかけて首位打者だろうがなんだろうが君たちの契約書なんか守られるはずないだろ。もう1つある。「朱に交われば赤くなる」。本当に昔の中国人はうまいこと言うもんだ。法律に照らして黒だ白だってのはそれはそれ。でも球団が問題にしたのは「赤」なんだよ。それが「信頼関係」って言葉になったんだと思うよ。とんでもない卑劣な女性問題おこしてもホームラン打てば消えるって球団はあるかもしれない。でもこっちは消えないよ。アメリカじゃこれとバクチは即死だからね。
何があろうと君たちはプロ野球選手だから僕にとっては神様だ。絶対に無様な人生を送ってほしくない。まだ若いって皆さん言うけどね、他のことでプロになろうと思ったら若くないよ。自嘲の体裁つくろって「野球しかできないんで」と言ってるが、現実見ろよ、ホントにそうなんだよ。カープは助けてくれない、信頼関係が結べないっていうのは平たく言えば嘘つきかもしれないっていう意味だからね、そう思いっきり言っちゃった以上そんな相手を助ければ何のこっちゃだろ。要するに縁がちょ切ったってことさ。2軍はともかくひとりは去年の首位打者だ。トレードでもなく権利を捨てる。常識ではありえない。つまり捨てなきゃいけないものがいかに重いかって意味だ。これを経営が冷たいだの不手際だのという批判はこれまた人間界をよく知らない人のものだ。叱って張り倒してくれるカミナリ父親が周りにいなかったことだけはとてもかわいそうだと思うが後の祭りだ。そういうのは古い、昭和のやり方だなんて言ってる昨今のリベラルな風潮もまったくもって日本国にとってよくない。人間は無菌状態で生きると免疫が育たず風邪でコロッと死んじまう。似たところがあるんだよ。
広島カープ球団に甘かったところがあるとすればそこだ。真逆だった強烈な伝統が廃れて無菌化してた。球団経営に責任がどうのとか言ってもできることは監督をかえるぐらいだ。今回はそうしなかったのだから新井監督はすべてを任されたはずだ、ファンはみなそう思ってる。そうでないならば机をひっくり返して途中でやめてもいいと理解している。そのかわり、男が見込まれて引き受けた以上は、赤は1人残らず殲滅し、練習しない奴は問答無用で切って、勝ちだけにこだわって、実際に勝ちまくることだ。それ以外に特効薬はない。FA流出があるだろうしドラフトに過度な期待はできない。 64年間、野球を心から愛し、広島カープファンとして生きてきた。唯一願っていることはそれだ。
阪神の屈辱の胴上げをマツダで見るかもしれなかった今日の最終戦、しびれる試合だった。中村奨成、いい顔つきになってきた。 1試合16奪三振のピッチャーを打つなんてまったくもって信じがたいが、甲子園で清原より多い6本もホームランを打った君ならそんな奴なんかザコに見えるだろ。君だよ、君なんだよ、こういうスーパーな超ド級な経験してきてる奴が核弾頭になればチームが変わる。末包くん、第1打席で直球三つ空振り三振でこのボケと思っていたら次はそれに張って特大の同点スリーラン。素晴らしい。三冠王のサトテルにスリーラン食らって、いままでならこのチームはあれでKO負けで終わってた。殴り返したのは君だ。これまたチームを変えるよ、ケンカ弱そうなのばっかりになったカープにそんな奴いないからね。今日は不発だったが佐藤啓介、君のパンチ力は本物だ、来年はブレークしろ、クリーンアップ取れ。佐々木泰と勝田も伸びしろは大きい、まだ未知数だが楽しみしかない。辰見鴻之介は単打を2塁打にする必殺兵器だ。来年はホークスの周東みたいになってくれ。名原はちょっと疲れたかもしれないね、でも君の物おじしない性格と瞬発力は大変な魅力だ。「気合と根性」、まったく同感である、僕もそれで世間を渡ってきた。
よく勝った。為せば成る為さねば成らぬ何事も。
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