阪神がぶっちぎり優勝したシンプルな理由
2025 OCT 17 9:09:29 am by 東 賢太郎
きのう、最後のほうだけ阪神とDeNAの試合を見た。8回裏の佐藤輝の同点タイムリー、伊勢はいいピッチャーだがちょっとおかしかったね、なんであんなの投げたんか高めにぬけたスライダーみたいなのをひっぱたいて一二塁間をぬく。まあ大根切りってやつだが腕ずくでマン振りで強引にもっていった。いやこいつ凄い。スイング速い。
そして阪神は9回のマウンドに石井大智を送る。同点にされて浮足立った敵の戦意をそぐねえ、藤川監督いい所で出すね、なにせいまセリーグで最高のストレートを投げる男だ、林は当てるのやっとでサードゴロ。これ見てる次打者はビビる。その渡会君、インローの凄まじいストレートに動けず三振。坂本誠志郎のフレーミングですねとマエケンが解説。いいキャッチャーだ坂本。そして延長10回の及川。うわすげえ、こいつこんなに速かったかというストレートで桑原三振、神里三邪飛、筒香三振。前に飛ばない。完膚なきまでに敵を叩き潰しておいてその裏、DeNAは佐々木がマウンドに。彼には大変申し訳ないが投球練習見てあっこりゃもう駄目だと確信。球威ない。中野が巧打でレフト前にあわせ、そして3番 森下翔太。初球。へなちょこのおいしそうなカーブみたいのを一閃。左翼にサヨナラホームランをたたきこんだ。
失投をごっつぁんで仕留める動物的瞬発力はもう肉食獣である。この男と佐藤輝は危険極まりない。近本、中野と選球眼も打力も足もある嫌らしい1、2番にその二人が続くとくれば先発投手はいやだよ。1~3番でどっと疲れちまって4番に40本もホームラン打たれる、こんなチームと誰もやりたくない。打者はマン振り、ピッチャーは速い。これ強いチームの証し。外人なしで13ゲーム差とぶっちぎりのリーグ優勝。外人しか怖くないカープは実質最下位。ドラフトと育成でこんなに差がつくもんかね?
カープは何の趣味か知らんが小兵か草食獣好みだからね、投手優位の昨今は非力じゃ押し込まれて当て逃げ打法で内野フライばかりだ。しかも軸も軸、キャッチャーがいない、盗塁阻止1割の坂倉はもう論外。そんなんで勝つわけねえだろ、しかも草食だから負けがこむと目線がたれてベンチに勝ちそうなムードがない。暗い。家族野球なんて弱っちんだよそんなの、ヤクルト村上なんて見てみろよ、野次られた阪神ベンチにサードからつかつか寄ってガンたれる奴だよ、こんなのがマン振りしたらバッテリーは怖い。そういう奴とれよ、なにやってんだよカープのスカウト、今年は鈴木誠也みたいなデカくてケンカ強そうなのとってくれ。
自民党と広島カープはとても似ている
2025 OCT 5 3:03:07 am by 東 賢太郎
カープは今年も弱かった。阪神は19勝6敗、最下位ヤクルトも15勝8敗と「お得意様」を超えて二軍のピッチャーでオッケーのレベル。村上の故障がなければぶっちぎりの最下位だった。
5位で今季を終えた新井監督がファンにあいさつした。
「変わろうとするとき、また新しい力が生まれるとき、必ず苦しみが生じます。来年以降もこの苦しみは続いていくと思います・・・」
ふつうは、ここで球場が「がんばれよー」と温かい拍手と声援につつまれる。オーナーも新井もその予定だったのだろう。ところがだ。マツダスタジアムはにわかにざわめき、怒号が飛び、新井は16秒間も沈黙してしまったのである。
もう時代は変わっている。
ファンが厳しくなったわけではない。ネットで他のファンの情報や意見を知って、目が肥えたのだ。勝って欲しいのだから何をやってるんだと怒りを覚えてくるのは自然である。
政治の世界でもそうだ。一般の有権者がこれまで知らなかった情報や意見をネットで知り、政治家や役人は何をやってるんだと怒り、デモや落選運動をするようになってきた。
新井は誰もが「いい人だ」とほめるらしい。これ、誰かさんに似てないか?「会ったよ、あいつはナイスガイだ」と我がパートナーのアメリカ人があっさりほめてた自民党の小泉進次郎議員だ。
「小泉を総理にしとけば国民はなんとかなるから好き勝手できる」
自民党のお爺ちゃんたちがそう思っても不思議じゃない。
「新井を監督にしとけばファンはなんとかなるから弱くても満員だ」
カープのオーナー様が思っても不思議じゃない。
今時の世の中、どっちも大きな勘違いだ。総理大臣も、野球の監督も、企業の経営者も、結果を出さなければ何の価値もない。彼らの成果は世間にあからさまにネットで公表され、厳しい批判の目に晒される。昔とは違うのだ。
つい昨年まで「昔」が続いていると勘違いしていた自民党は3連敗に懲りたのか小泉を総裁に選ばなかった。新井は続投だ。
ネットの書き込みを見ると、ファンはよくわかってる。
ホームラン数リーグワースト。 得点、失点ともリーグ5位、二軍も大きく負け越し。絶対的な4番もエースもいない。ドラ1がぜんぜん育ってない。最終戦に向けての負け方はファンを無視で目に余る。現在の監督・コーチでまんねりを続けないか心配だ、そうなれば今年以上に客は来なくなるね。普通は監督変えないにしてもコーチ総とっかえとか、結果を出せなかったことにファンに対しての示しはつけるもの。
新井の後に挨拶をした田中広輔が「一軍は勝ちを求められる、監督の言葉に甘えることなくスタジアムを満員にする野球を」と言っていたがその通りだ。
ネット情報でファンの眼はどんどん肥えてきている。自民党より遅れてるって、企業経営としてもう絶望的じゃないか。
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カープ 阪神・大竹に今季7試合で6敗目
2025 SEP 19 19:19:41 pm by 東 賢太郎
同じピッチャーに7回やって6回ひねられる。通算はさらに壮絶で2勝15敗の惨状を呈しているのであって、ものもいえない。
こんなのがプロのチームといえるんだろうか??
しかもである。大竹は失礼ながら2017年のソフトバンク育成4位の投手だ。同年の広島の育成指名3人はすでに退団、いっぽうソフトバンクの育成1~4位は尾形、周東、リチャード、大竹で大当たりだ。しかも大竹は2022年の現役ドラフトでも採れたのに阪神が指名して、そのあげくがこれ。阪神は純和製打線でぶっちぎり優勝。スカウト能力からしてプロとアマじゃないか。
これを書いたのは今年だが、
去年からこうだったのだ。
「まさかのコーチ全員留任」責任放棄にカープOB2人 …
フロントはなんにもやらずに、今年また同じことをくりかえしてる。ファンはどうでもいい。国民はどうでもいい自民党と似たにおいがする。
スカウトがヘボ、指導するコーチがヘボ。勝つわけない。
先日、投手の床田がついにホームランを打った。大竹からも会心のツーベース。クリーンアップを打たせたい。
ちなみに床田投手の通算安打数は53本
朝山打撃コーチの通算安打数は49本
わけわかんねえ
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記憶に焼きつくことになった三連休の最終日
2025 JUL 22 9:09:42 am by 東 賢太郎
次女と近場でランチに出たが、陽ざしの強さはかつて住んだ香港なみだ。後で調べると都心の最高は34.3度だったようだが日本と思えない。食事しながら、彼女が幼稚園から小学校低学年までをすごしたヨーロッパでどこがよかったかの話になった。思えば実にあちこち家族旅行したものだ。覚えているのとそうでないのがあるようだが、少しでも記憶があれば大事な思い出だろうと思い地名とエピソードを伝える。するといまどきの情報収集速度で瞬時にググって「ここ?」と返ってくる。「そこだよ。お薦めだ、行ってごらん」。
僕は多分もう行かないが、子供たちはきっと行く。そこに立って何を想うだろう。その地に立って歴史をふりかえるのが趣味だが今はその地の未来を空想してる。これも大いなる楽しみだ。記憶の中でギリシャの島でもスイスのベルナー・オーバーラントでも瞬時に行ける。宗教画にある妖精、スピリットはこれの可視化だろうか、素晴らしい魂の自由さである。写真があるところもないところも親の話を聞いておかないと後悔する。僕は16年も日本におらずその機をだいぶ逸した。先日のクラス会でも、そんなことがあったのかという思いをずいぶんした。聞いておいてよかった。子供にはできる限り残してあげたいと思った。
次女については、親が言うのも変だが瞬発力と機動力はいっぱしで屋久杉も富士山登頂も軽々、英語はネイティブ、コロナの真っ最中にひとりフランスへ飛んで行ってケロッとMBAを取ってくる。あんまり苦労してる観はなく、そういう点で間違いなく親を凌駕している。こうなってほしいと枠にはめたこともないし勉強を教えたこともない。ピアノも弾くがジャンルは違うしそれでいい。自分もそう育ててもらってこうなったし、今や何の不足もなくて幸福であり、子供たちも三人三様の個性になった。それがなによりだ。全員に言っている。ほかに何も望むことはない。三人とも素晴らしい人生を生きてほしい。
夕刻に家を出て神宮球場にむかった。何年ぶりだろう。真夏のここで目撃したゲームというと、2017年、カープが8-3で負けている最終回に6点取ってひっくり返して9-8で勝った「七夕の悲劇」がある。まさかゲーム終了後にそれを思い出そうとは想像だにしなかったが、こういう結末になった。
三塁側ベンチとネット裏の間16列目で良い席だった。昨日カープは8-7で負けてる。今日も打つには打ったが期待の林が5回に放ったレフト中段への3ランがあってこそだ。結果としてだが、毎回の13安打で7四球もらった20出塁で6点という物足りなさは5回時点で予兆があり、特に、先発メンバーで肝心の5番が長打のない野間という完璧に意味不明な起用のせいであったのだ。林のホームランで、喜びも束の間「昨日も一発放ってる林がなんで5番じゃなかったんだ」と怒りがこみ上げ、三塁側スタンドの歓喜の大騒ぎの中で十分に酔っぱらっていた僕は「なんで5番が野間なんだバカヤロー」と昭和のファン並の罵声をベンチにかましていた。
ヤクルトは主力が不在中に若手が覚醒している。7回に中崎から1点取った伊藤、赤羽のヒットがそれだ。一方カープは記録には現れてないが1回の二遊間のゲッツー逃しの凡ミスで先発床田が29球を費やす羽目になり、山田にパームボールをツーランされて3点差となって6回97球で交代となったのが痛かった。久々に生で見たせいもあってヤクルト先発のランバートの152kmの速球は到底人間が打ち返せそうもないほど怖さと迫力を感じたが、打てん打てんと文句を言ってるカープの打者がそれを打つんだからやっぱりプロは凄い。
最終回。ハーンの154kmはド迫力だったが古賀、益田珠が難なくはじき返したのがリードに効いたんだろうか。打たれたのは中途半端な高めだから低めの154kmで押しまくれよと念じていたが、二死一三塁から赤羽への初球は甘めの変化球だった。それをレフトへすくい上げた大飛球。球はポール際で跳ね返りフェンス直撃かと思ったがファビアンは追わず何があったか見えなかった。審判の協議中、ポール近くのカープファンが帰りだしており、ビデオでもよくわからずたぶんポールに当たったんだろうと諦め、やっぱりサヨナラ3ランということで幕切れとなった。仕方ない、打った赤羽があっぱれだ。カープは林と、昨日凄まじいライナーのホームランを左中間に叩き込み、今日も2ベースを放ちショートで好捕をした二俣を激賞したい。二俣クン、きみは西武の監督だった秋山みたいになれる。頑張れよ。
6回に小園のタイムリーで6-1となった時点で楽勝ムードだった。油断大敵、勝って兜の緒を締めよだが、そのまま終わってたらこのゲームは数日で忘却の彼方に消えたに違いない。ありがとう、一生忘れない日がまたひとつ増えた。
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超常現象?カープ田村のサヨナラ本塁打
2025 APR 6 9:09:36 am by 東 賢太郎
あっ、ホームラン打ちそうだ!アップで映った打席の顔を見て、ウソのようだが本当に、ビビッと感じた。山崎康晃がゆっくり投球モーションに入る。初球。高めのストレート。バットが一閃。右中間に大飛球。ちょっとシュートしたから先っぽ気味だったかな・・・・はいった!田村俊介、プロ入り初ホームランでサヨナラ勝ちだ。
伏線があった。東と常田の先発で投手戦が予想されていた。ところがDeNAが4失策もやってくれて6対2の楽勝ムードで9回表をむかえる。セーブのつかない4点差なので普通は守護神は出てこない。ところが栗林だ。ブルペンが映ったが森浦もやっていた。う~んなぜかなあ、まさか4人右が続くからじゃないだろうな・・・。いやな予感があたる。球威も変化球の切れもコントロールもいまいちだ。何もいい所がない。四球、安打、安打、二塁打、三振、四球で6対4にされたあげくに一死満塁を残してKOである。こんなピッチャーの降板をやさしいカープファンは拍手で慰労?する。やめてくれんかな。かわってマウンドに立った塹江は球速、切れ、メンタルどれも文句なしで一番いやなバッターである梶原を三振にとって二死だ。なんとかなるか・・・。ところが、ここで満を持して出たかどうか知らないが、島内に交代だ。おいおい、牧が右だから右かよ。彼は剛球が良いときは無双だがメンタルが弱いのだ。やばい。これまた球威もコントロールもいまいちである。なんと押し出しで1点差。なおも満塁。ここでついに佐野にレフトの頭を超えてワンバウンドでスタンドに入る二塁打を食らう。6対7の逆転だ。新井の投手リレーは無様というしかない。広島市民球場だったらベンチの上まで酔っ払いのオッサンが出てきて罵声を浴びせとるぞ。
その裏。代打の野間がいきなり痛烈な右前安打を放つ。これが嫌なムードを押し戻した。内角を引っ張った野間の鋭い振りは数年前とは別人だ。進化に驚くしかない。そしてその代走・羽月が三球牽制させたあとの初球を二盗したのも効いた。羽月は強力な武器だ。そこで打者・会澤が体の真正面に死球をうける。DeNA入江投手もまさかの登板だったろうから仕方ない。会澤が退場だと守る捕手がいないピンチだったが根性で一塁へ。ここで、先日にバント自打球を顔面に受けて前歯を8本折っており、怪人二十面相の黒覆面みたいなのをかぶって根性で出場している二俣。しかし、あいにく、ここはまさしくバントの場面なのだ。嫌だろうなあ・・。あの時と似たような顔に近い難しい球!ビビらずに成功した二俣!男だねえ。そして作った 一死二三塁で矢野がしぶとく二塁にころがして7対7の同点に持ち込んだ。これぞカープ野球。執念でもぎ取った1点だ。
ここでマウンドに立ちはだかったのが森浦である。これが本当に凄かった。10回表をあっさり三者三振!11回も戸柱、京田を三振で五者連続!当たっている梶原も一ゴロであっさり零封した。森浦君、9回のブルペンで、栗林のむこう側でもう肩できてたよな。見てたよ。あそこで君の名が呼ばれていればこの試合は難なく6対2で勝ってたのである。お立ち台で「名前が呼ばれたら全力で投げるだけです」と淡々と語った気持ちはわかる気がする。君のメンタルは素晴らしい。最高にピッチャーに向いてる。去年のホークス戦で三者連続三球三振(イマキュレート)をやった男だ。打者を手玉にとることこそピッチャーやる快感と思ってる僕は君のマウンド姿を見るのが楽しみで仕方ない。
そこで迎えた11回裏。ここだったのだ。冒頭のシーンがやってきたのは。以上のドタバタ劇は、まるでオセロみたいに、みんな田村の鮮烈デビューへのお膳立てでしたねという話になってしまった。4点差で栗林をマウンドに送った新井の意味不明の采配あってこそ。まったくもってなんともいえない。大逆転を食らった直後のカープベンチはお通夜状態、我が家は激怒を通り越して絶句だったのである。
いやいや、それなくしてあのホームランはなかったのだから新井独特の華がある霊感だったというしかない。それにしても、「あっ、ホームラン打ちそうだ!」。打席に入ってアップされた田村の顔を見てビビッと感じた、あれはいったい何だったんだろう??
「谷深ければ山高し」。相場の格言だ。喜びは10倍だ。代打でのプロ初本塁打がサヨナラ本塁打となるのは広島カープ球団史上初の快挙らしい。田村が「持ってる男」であることが天下に知れた日だ。
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広島カープの9月大失速の原因
2024 OCT 14 12:12:21 pm by 東 賢太郎
今年のセリーグ順位の予想と結果はこうなった(今年のプロ野球予想)。
〖予想〗 〖結果〗
- 巨人 巨人
- 阪神 阪神
- DeNA DeNA
- 中日 広島
- 広島 ヤクルト
- ヤクルト 中日
中日を最下位にすれば全部当たりだった。巨人、阪神、DeNAはみな中日に大幅勝ちこしだが広島だけ大幅負けこしだ。去年に観に行ったナゴヤドームで森下があっけなく打たれて完敗し、中日>広島のイメージが焼きついて4位にしてしまったが、その強さは広島戦限定だったのだ。
セリーグ唯一の波乱はその広島が8月まで首位だったことだ。そこから9月に大失速して「何故だ?」という声があがっているが、戦力どおりの位置に回帰しただけだから不思議でも何でもない、広島の長打力不足は3月の予想時点で決定的だったから5位にしたのだ。波乱の要因はひとえに新井監督のマネジメント力である。長打なしで勝てる野球に徹し、投手陣の頑張りと矢野、小園の成長を引き出した。しかしそれにも限界はあった。ふたをあけてみればただでさえ4番不在なのに新外国人2人がクズ。結果としてチーム本塁打52本はDeNA、ヤクルトの半分という惨状で12球団最下位。大谷サンひとりの54本にも負けという想定以上のドツボ状態で、それでも波乱を生み出した新井の力と選手の気力には最大の賛辞を贈りたい。短打のみの貧打線で首位を走ったというのは、東京から大阪まで軽自動車で時速100キロ越えでぶっ飛ばすようなものであって、案の定、京都あたりでオーバーヒートして脱落ということだったのだ。
その脱落劇(9月の大失速)は並大抵のものでなく、5勝20敗の歴史的大敗(リーグタイ記録)であったのだからその原因も並のものでなかろうとするのが論理的思考というものだ。元野球選手である評論家の方々は「今年は暑かった。広島は屋外球場で不利だしビジターの移動距離も長く9月に疲れが出た」という。調べると今年8月の広島の平均気温は30.7度で観測史上最高だが、去年も30.0度と暑かったがカープは2位になっている。阪神の高校野球期間中の死のロードが京セラドーム使用で軽減して相対的に有利になった影響もいわれるが同球場のゲームは過去10年9試合で変化はなく、カープは阪神と12勝12敗の五分だからあまり関係はない。したがって、もっとはっきりした今年特有の理由があるはずだが、ネットで探すとそれと思われるものがあった。
プロ野球のホームランが少ない!チーム成績の推移から投高打低の原因を考察!
今季は飛ばないボールで前半(シーズンの2/3消化時点まで)は本塁打が1日平均6本だったが、残りの1/3では8.3本と38%増えている。同記事は「前半戦は”飛ばない”ボールが採用されホームラン数が減少し、世間からの反応を受けて後半戦は従来のボールに戻した可能性が高い」と述べているが同感である。

広島投手陣の防御率は8月までトップであり、これは先発、セットアッパー、クローザーの頭数、球速、制球などボールの反発係数に依存しないアドバンテージ(優位性)が広島投手陣にあったことを示す。シーズン2/3時点(7月末)まではボールの低反発性によって他球団も長打が出ないため投高打低の傾向となり、カープの低い得点力は守備力や小技で補える範囲にとどまり首位にいられたのだ。ところが8月あたりに飛ぶボールへの変更があると例年どおりの状態になり、打撃力の劣位が補いきれなくなって、結果として投手に心身ともに疲弊蓄積が進んだのだろう。
その蓄積が限界に来ていたことが、あたかも「ダムの決壊」のように一気に表に出てしまったのがこのゲームだ(9月11日、マツダスタジアム)。
この試合、2位広島は2ゲーム差で首位巨人を追っていた。今年ブレークした先発アドゥワが6回まで巨人打線を散発2安打と完璧に押さえこみ、救援のハーンが剛速球で7、8回を零封し、9回は方程式どおり守護神・栗林がマウンドに立つ。ここで広島が反撃の狼煙となる勝利をあげることを疑う者はいなかっただろう。
ところが、何があったのか、栗林は制球がままならず四球、四球、安打、死球、安打、四球で6人から一死も取れず3失点で逆転を許す。無死満塁で救援した森浦も安打、安打、遊ライナー、安打、三振でさらに4失点。すでにご臨終感が漂っていたここで救援した大道が今季たった5安打の増田に三塁打を喫してさらに2失点。合計9失点。もう点数の問題ではなかった。マツダスタジアムは凍りつき、さすがに僕も顔面蒼白になった。なぜ鉄壁のカープリリーフ陣がこんなことになってしまったのだろう?
いまビデオを見返してみたが、栗林の球に特に異変があったようには見えない。ただ、今年は新人のころ全員が空振りだったフォークを投げない。落ちが悪く長打されるケースが増えたからと思われ、152キロの速球はファールされているのでクローザーに必須の空振りが取れない。捕手石原が釣り球で取りに行った吉川への高め速球を指にひっかけて死球とし(これはショックだ)、替わりの落ち玉であるカーブを岡本に三遊間に痛打されて(大きなショック)ウイニングショットがなくなったと思う。左足の着地点とボール交換に神経質なのは2点差ゆえのコントロールミスによる被弾を恐れたと思われ、自信なさそうに見えるから相手打者は勢いづいてしまう。そうしてイケイケになった巨人打線の「圧」に耐えきれなかったゆえの四死球に思える。栗林はこんなピッチャーではない。彼の心理の中で何かが起きたと思うしかない。
思い出すのは7年前の7月7日。息子と神宮球場で目撃したヤクルト戦。ここでもクローザーに転向初戦であったエース小川に何が起きたかという異変があった。5点ビハインドだった広島が9回にバティスタ、菊池、新井の本塁打で6点取って逆転勝ちし、いわゆる「七夕の奇跡」をおこしたのだ。カープ側スタンドはいけいけの嵐となり、ヤクルト側で観ていた我々もその渦に巻き込まれていた。
しかもあれは+6点、今度のカープは-9点でマグニチュードは1.5倍。選手の気持ちが切れたとは思わないが、チーム競技には潜在的な集団心理が「空気」になって働くものだ。4番が三球三振してこのピッチャー打てないなとなると全員が打てなくなる。元気印が二盗、三盗に成功したりすると打線に火がついて大勝したりもする。絶対的守護神がついに崩壊したこの試合、カープベンチの集団心理がぽきっと折れてしまったかどうか、そうであっても不思議でないし、集団心理は個々人は得てして気がついてないものである。新井監督は7年前の7月7日に自分のホームランでそれを引き起こし、効果を知っている。それをポジティブに向けるように懸命にマネージして8月まで大成功だったが、この敗戦はどうしようもないものだったろう。
そうしたらきのうのパリーグのCS第2戦(ロッテ対日ハム)でまたまた強烈なものを見た。初戦は佐々木朗希に押さえられた日ハムはこの日も2-1とビハインドで9回を迎える。守護神の益田がマウンドに立ち、2安打している4番レイエスを三振に取った所でロッテのファイナルステージ進出は見えた。ところがそうではなかった。そこで出た5番万波の起死回生のホームラン、これはメジャーも入れてかつて目撃したベスト5にはいる凄まじい一撃で、ライナーで左翼中段に突き刺さり、当たり前のような顔をしている万波の表情も含めてロッテベンチの度肝を抜いて集団心理に果てしない恐怖感を与えたと想像する(「七夕の奇跡」のバティスタの一発のように)。絶体絶命のあの場面で集中して平然とあの当たりを打てる万波の資質は破格で、そういうものは持って生まれるものであって練習を積んでもできないから相手にそういう選手がいると気持ちで押される。そして延長10回、ロッテがマウンドに送った澤村は2三振を取るが松本がしぶとく四球をもぎとるとスタンドは押せ押せで沸く。ここで出てくる当たればホームランの清宮は怖い。澤村は長打が出ないコースでヒットにとどめたが、1,3塁で迎えた淺間は力でねじ伏せにいったのだろうか外角高めのくそボールを痛打されサヨナラだ。
以上、「ここぞ」で吉と出るか凶と出るかの人間ドラマである。公衆の凝視する面前で一瞬でそれがおきる野球は5秒前までぴんぴんしていた敗者には残酷だが見物人にはこんな面白いものはない。パンとサーカス。ローマはこれをライオンと奴隷の戦闘としてコロッセウムで大衆に見せた。治世の道具として始まったコンセプトは今も生き、その目的で我が国にGHQが置いて行ったこの競技の面白さには抗し難い。保守だと言ってる人間でこのアンビバレントな気持ちを分かる者はどれだけいるんだろう。
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広島カープついに阪神・大竹の牙城を崩す
2024 AUG 11 2:02:22 am by 東 賢太郎
去年から8連敗していた阪神の大竹。一人の投手にこんなにやられるのは珍しいが、とうとう5-1で勝った。普通の勝ちの10倍ぐらい嬉しく大層気分が良い。大竹の真骨頂はコントロールと緩急で、変化球は遅いが切れが良く、80キロの山なりまで操られるから130キロ台のストレートに長身からスピンがかかって手元で伸びるとほとんどの打者が差し込まれる。しかし彼の防御率は3なのだ。他チームには打たれてる。なぜ広島だけ打てないか謎だったが、ともあれ昨日はやっとこさで攻略した。これは今後の阪神戦に意味を持つ勝利だろう。
目下カープは巨人と阪神に2ゲーム差をつけて首位だ。いつまで続くかと思うが僅差を守り勝つパターンが板についてきたのは投手が頑張っているのが大きい。先発は大瀬良、森下、床田、九里の4枚が盤石で、残り2枠にアドゥワ(巨人を完封)、玉村(DNAに完投勝ち)がはまったと思ったら、野村、森が5回を零封して見せ、ハーンを加えてなんと先発は9枚になった。毎年、夏に息切れしたのが12球団でもトップクラスの贅沢な布陣だ。後ろも左が森浦、ハーン、塹江、黒原は盤石、右は島内、矢崎、河野、益田、コルニエルと左よりは落ちるが十分だろう。そしてクローザーに栗林だから強力だ。
セリーグで得点は5位、ホームランは6位と貧打は相変わらずで、外人2人が大外れだったフロントの責任は大きいが、新井は逆手にとってミート率の高い打線と機動力を鍛え上げ、取った少ない得点を守り勝つ野球に徹している。何事も極めれば武器になるのだ。投手陣のスペックで失点は1位(最小)、防御率も1位に現れているが、これは守備の充実が極めて大きい。キーマンはなんといってもショートに定着した矢野 雅哉だ。菊池、矢野の二遊間、これは文句なく12球団最高である。2021年にこう書いた。
新人の矢野にすごく期待している。今日も大道が2本打たれて1,2塁にして、代打デスパイネのショートゴロのさばき方が良かった。ちょっと嫌な所にぼてぼてが飛んだが、うまいというより二塁トスのあの手慣れた感じは投手目線で頼もしく感じた。野球頭が良くて足も速そうで、ああいうのが敵にいるだけで圧を感じるタイプと思う(新人の頃の菊池がまさにそうだった)。
矢野は打撃も進化している。きのうも大竹の遅球を流して2塁打にした。運動神経が半端でなく育英高-亜細亜大で鍛えまくられているが、おそらく大変な努力家であるのだろう。菊池と矢野、ここまで超絶的にうまいと守備だけでレギュラーが取れてしまう異次元の人達で、ノーヒットでも美技ひとつでピッチャーを鼓舞するから打点1ぐらいの価値があると思う。逆に、プロでもアマでも、守備の下手なチームで強いというのはあんまり見ない。球場に出かけてポカーンとホームランが出れば楽しいが、僕が金払ってきてよかったといつも思うのは守備だ。
菊池が出てきた2013年ごろに強いカープを予感した。16年から3連覇した。矢野にそう思ったのは3年前。ひょっとすると期待できるかもしれない。
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野球が男の闘いであることを見た試合
2024 JUL 19 22:22:48 pm by 東 賢太郎
野球というのはスポーツであるが、いろんな人間ドラマがある。僕はガス欠気味のカープの打者がいい球をすんなり見逃したり悪球につられて凡フライだったりすると真面目に怒ってるし、キャッチャーのサインやコースがやばいと思った瞬間にホームランだったりするとこの馬鹿野郎と本気で怒鳴ってる。他人事なのだけど、ここぞは大事だ絶対勝てというのが体に染みついてる。だからパブロフの犬みたいに反射してしまうのだ。
先日7月17日、ハマスタでの横浜DeNA戦、相手は8連勝中のエース東であり、こっちは森下とはいえ左に激貧のカープ打線だからなんとなく分が悪そうだ。解説によると小園だけは東を8割も打っており(この日も2安打)、ならば他の奴は小園の爪の垢でも煎じて飲めと思うのだがやっぱり打てない。カープの貧打というのは伝統のお家芸で50年前から抗体ができてはいるが、丸、鈴木誠也、バティスタというOPS1.0の超絶クリーンアップ時代もあったからストレスがたまる。
0-0のまま投手戦で迎えた6回の表。9番会沢が三ゴロ、1番秋山が遊直であっさり二死。この軽いタッチが何とも頼りない。すると、そういわんばかりに森下が早々にベンチ前でキャッチボールを始めた。2,3番は矢野、上本。長打なしで点は入らんな。僕も思ったが彼も思ったんだろうね、3割打者だからね、野手といえど上から目線で見ていても失礼じゃない、結果ありきのプロだから。
その裏だ。森下の球がやや浮き始める。3安打され、二死満塁で渡会を迎えた。この新人、立派というか態度が微妙にでかい。開幕戦でホームランを打ってカープをなめてる感じでありどうもいけ好かない。森下もこの野郎、図に乗るんじゃねえぞと思ってるだろう。球速が上がる。高めストレートでファウルで粘られたが、最後はインローでなすすべなしの空振り三振にねじ伏せて格の差をみせつけた。いやあ痛快だ、森下君、狙ったね、男だね。
これは次なるドラマへの序章だった。チェンジで7回表だ。上本、小園のヒットとエラーで無死二三塁の大チャンス。ところが野間、菊池がタッチアップもできない外野フライであっさりツーアウト。がっくりだ。ここで開幕から欠場だった7番シャイナー君である。ちょっといい人すぎに見えるおとなし目の男だ。DeNAはコーチがマウンドに行く。8番は森下だ。代打の切り札・松山は左だ。であるのに東は敬遠せず勝負に出た。シャイナーはナメられたのである。森下の気迫の奪三振を一塁で見て気合も入っていただろう、二球目の高めストレートをバックスクリーン左に会心のホームランを叩きこんだ。
3-0でカープの完封勝ち。若者の皆さん、長い人生、こうやってここぞで負けちゃいけない時が誰でもある。そこで勝つかどうかはでかいですよ。
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祝 カープ大瀬良投手 No-Noを達成!
2024 JUN 8 6:06:20 am by 東 賢太郎
プロであれ草野球であれ投手はまず完全試合をやりたい。そんなことはない、大谷だってできないんだよ、勝てばいいのさという派閥もあろうが、1-0で負けても三振をたくさんとったから満足できてしまい、「おいなんでお前だけ悔しがらねえんだ」なんて主将に怒鳴られたりするポジションが投手なのだ。
野手の練習メニューは半分は連携でサッカーみたいな集団プレーだが、投手はブルペンでひとり黙々と投げてボール1個入ったの外れたのと微細なことに明け暮れるからゴルフ練習場のムードに近い。そういうことを何年もやってると、5点やっても6点とれば勝ちじゃないかなんて精神構造にはならない。結果論でそれはあるが、1回から5点オッケーなんて思ってる人はいない。
ということは無意識ではあってもまずは完全試合狙いなのだ。それが四死球を出してNo-No狙いになり、ヒットを打たれると完封狙いにグレードダウンする。とはいえ完封だって十分に難しいから投手の勲章ではあり、ましてそれより上のNo-Noはほとんど神の域の偉業ということは野球をやった人は承知だ。だからだんだん野手が緊張して記録が途切れたりするからますます達成は難しい。
僕などプロでNo-Noをおやりになる方々は大統領より偉く見え、巨人・戸郷クンなど年の差は関係なく戸郷サンとお呼びするしかない。そして、その偉人列伝に我が広島カープの大瀬良サンが加わられた瞬間は保有株がストップ高したのの百倍ぐらい歓喜を覚えたのである。しかも相手はこのところ絶好調のロッテ打線というのだから花を添える。三振は2つしかなくフライとゴロばかり。芯をはずしまくった練達の投球術だったからロッテが悪かったわけではない。
実のところ、ヒジをやってしまって3度もメスを入れた大瀬良はもう終わったと思っていた。現に以前の球威はない。そうなったらどうなるかはわかってるつもりだ。先日、やはり好調の日ハム打線を零封した森下も同じだ。ふたりとも力感なくひょうひょうと投げたようにすら見えたがプロの投手の並外れた精神力と凄みを見せていただき心から感動した。前進する人は美しい。
あっぱれだ、おめでとう!!
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どうしたんだ広島カープ!
2024 MAY 29 22:22:42 pm by 東 賢太郎
5月6日だった。アメリカから筒香がDeNAに帰って来ていきなりホームランを打った。他人の弁当はうまく見えるというが、それだけとも限らない。なんたって、我がカープ打線はホームランがないどころかDeNAの東投手、大貫投手にひねられて2試合も零封され、外野に球も飛ばないじゃないか。怒り心頭に発し、
こんなみっともない打線がプロを名乗るのはやめろ!
クリーンアップは森下投手と床田投手にしろ!
と強烈にぼろかすに書いたのである。
そして、唯一の希望として、
「期待は末包の復帰ぐらいだ」
と書いたわけだ。
そうしたら驚いた。なんとその翌日だ。二軍にいた末包が一軍に昇格した。そして阪神戦に5番スタメンで登場し、タイムリーを打って勝った。
そうか!新井監督、我がブログを読んでこのやろーと怒ったんだな。
そこから12勝4敗の快進撃である!とうとう今日はこうなった。
かねてより交流戦は駄目だ。特にオリックスとソフトバンクには赤子の手をひねるようにやられている。昨年のパの覇者に14-0?いったい何が起きたんだ?
この日も先発の森下投手は圧巻の3打数2安打。3塁打を打ってお立ち台にあがったショートの矢野は「森下さんに打率負けてますし」と笑った。よしよし、クリーンアップは森下投手と床田投手にしろ!のファンの声、きいてくれよな。
ありがとう。今日は酒がうまかった。
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