広島カープの9月大失速の原因
2024 OCT 14 12:12:21 pm by 東 賢太郎
今年のセリーグ順位の予想と結果はこうなった(今年のプロ野球予想)。
〖予想〗 〖結果〗
- 巨人 巨人
- 阪神 阪神
- DeNA DeNA
- 中日 広島
- 広島 ヤクルト
- ヤクルト 中日
中日を最下位にすれば全部当たりだった。巨人、阪神、DeNAはみな中日に大幅勝ちこしだが広島だけ大幅負けこしだ。去年に観に行ったナゴヤドームで森下があっけなく打たれて完敗し、中日>広島のイメージが焼きついて4位にしてしまったが、その強さは広島戦限定だったのだ。
セリーグ唯一の波乱はその広島が8月まで首位だったことだ。そこから9月に大失速して「何故だ?」という声があがっているが、戦力どおりの位置に回帰しただけだから不思議でも何でもない、広島の長打力不足は3月の予想時点で決定的だったから5位にしたのだ。波乱の要因はひとえに新井監督のマネジメント力である。長打なしで勝てる野球に徹し、投手陣の頑張りと矢野、小園の成長を引き出した。しかしそれにも限界はあった。ふたをあけてみればただでさえ4番不在なのに新外国人2人がクズ。結果としてチーム本塁打52本はDeNA、ヤクルトの半分という惨状で12球団最下位。大谷サンひとりの54本にも負けという想定以上のドツボ状態で、それでも波乱を生み出した新井の力と選手の気力には最大の賛辞を贈りたい。短打のみの貧打線で首位を走ったというのは、東京から大阪まで軽自動車で時速100キロ越えでぶっ飛ばすようなものであって、案の定、京都あたりでオーバーヒートして脱落ということだったのだ。
その脱落劇(9月の大失速)は並大抵のものでなく、5勝20敗の歴史的大敗(リーグタイ記録)であったのだからその原因も並のものでなかろうとするのが論理的思考というものだ。元野球選手である評論家の方々は「今年は暑かった。広島は屋外球場で不利だしビジターの移動距離も長く9月に疲れが出た」という。調べると今年8月の広島の平均気温は30.7度で観測史上最高だが、去年も30.0度と暑かったがカープは2位になっている。阪神の高校野球期間中の死のロードが京セラドーム使用で軽減して相対的に有利になった影響もいわれるが同球場のゲームは過去10年9試合で変化はなく、カープは阪神と12勝12敗の五分だからあまり関係はない。したがって、もっとはっきりした今年特有の理由があるはずだが、ネットで探すとそれと思われるものがあった。
プロ野球のホームランが少ない!チーム成績の推移から投高打低の原因を考察!
今季は飛ばないボールで前半(シーズンの2/3消化時点まで)は本塁打が1日平均6本だったが、残りの1/3では8.3本と38%増えている。同記事は「前半戦は”飛ばない”ボールが採用されホームラン数が減少し、世間からの反応を受けて後半戦は従来のボールに戻した可能性が高い」と述べているが同感である。
広島投手陣の防御率は8月までトップであり、これは先発、セットアッパー、クローザーの頭数、球速、制球などボールの反発係数に依存しないアドバンテージ(優位性)が広島投手陣にあったことを示す。シーズン2/3時点(7月末)まではボールの低反発性によって他球団も長打が出ないため投高打低の傾向となり、カープの低い得点力は守備力や小技で補える範囲にとどまり首位にいられたのだ。ところが8月あたりに飛ぶボールへの変更があると例年どおりの状態になり、打撃力の劣位が補いきれなくなって、結果として投手に心身ともに疲弊蓄積が進んだのだろう。
その蓄積が限界に来ていたことが、あたかも「ダムの決壊」のように一気に表に出てしまったのがこのゲームだ(9月11日、マツダスタジアム)。
この試合、2位広島は2ゲーム差で首位巨人を追っていた。今年ブレークした先発アドゥワが6回まで巨人打線を散発2安打と完璧に押さえこみ、救援のハーンが剛速球で7、8回を零封し、9回は方程式どおり守護神・栗林がマウンドに立つ。ここで広島が反撃の狼煙となる勝利をあげることを疑う者はいなかっただろう。
ところが、何があったのか、栗林は制球がままならず四球、四球、安打、死球、安打、四球で6人から一死も取れず3失点で逆転を許す。無死満塁で救援した森浦も安打、安打、遊ライナー、安打、三振でさらに4失点。すでにご臨終感が漂っていたここで救援した大道が今季たった5安打の増田に三塁打を喫してさらに2失点。合計9失点。もう点数の問題ではなかった。マツダスタジアムは凍りつき、さすがに僕も顔面蒼白になった。なぜ鉄壁のカープリリーフ陣がこんなことになってしまったのだろう?
いまビデオを見返してみたが、栗林の球に特に異変があったようには見えない。ただ、今年は新人のころ全員が空振りだったフォークを投げない。落ちが悪く長打されるケースが増えたからと思われ、152キロの速球はファールされているのでクローザーに必須の空振りが取れない。捕手石原が釣り球で取りに行った吉川への高め速球を指にひっかけて死球とし(これはショックだ)、替わりの落ち玉であるカーブを岡本に三遊間に痛打されて(大きなショック)ウイニングショットがなくなったと思う。左足の着地点とボール交換に神経質なのは2点差ゆえのコントロールミスによる被弾を恐れたと思われ、自信なさそうに見えるから相手打者は勢いづいてしまう。そうしてイケイケになった巨人打線の「圧」に耐えきれなかったゆえの四死球に思える。栗林はこんなピッチャーではない。彼の心理の中で何かが起きたと思うしかない。
思い出すのは7年前の7月7日。息子と神宮球場で目撃したヤクルト戦。ここでもクローザーに転向初戦であったエース小川に何が起きたかという異変があった。5点ビハインドだった広島が9回にバティスタ、菊池、新井の本塁打で6点取って逆転勝ちし、いわゆる「七夕の奇跡」をおこしたのだ。カープ側スタンドはいけいけの嵐となり、ヤクルト側で観ていた我々もその渦に巻き込まれていた。
しかもあれは+6点、今度のカープは-9点でマグニチュードは1.5倍。選手の気持ちが切れたとは思わないが、チーム競技には潜在的な集団心理が「空気」になって働くものだ。4番が三球三振してこのピッチャー打てないなとなると全員が打てなくなる。元気印が二盗、三盗に成功したりすると打線に火がついて大勝したりもする。絶対的守護神がついに崩壊したこの試合、カープベンチの集団心理がぽきっと折れてしまったかどうか、そうであっても不思議でないし、集団心理は個々人は得てして気がついてないものである。新井監督は7年前の7月7日に自分のホームランでそれを引き起こし、効果を知っている。それをポジティブに向けるように懸命にマネージして8月まで大成功だったが、この敗戦はどうしようもないものだったろう。
そうしたらきのうのパリーグのCS第2戦(ロッテ対日ハム)でまたまた強烈なものを見た。初戦は佐々木朗希に押さえられた日ハムはこの日も2-1とビハインドで9回を迎える。守護神の益田がマウンドに立ち、2安打している4番レイエスを三振に取った所でロッテのファイナルステージ進出は見えた。ところがそうではなかった。そこで出た5番万波の起死回生のホームラン、これはメジャーも入れてかつて目撃したベスト5にはいる凄まじい一撃で、ライナーで左翼中段に突き刺さり、当たり前のような顔をしている万波の表情も含めてロッテベンチの度肝を抜いて集団心理に果てしない恐怖感を与えたと想像する(「七夕の奇跡」のバティスタの一発のように)。絶体絶命のあの場面で集中して平然とあの当たりを打てる万波の資質は破格で、そういうものは持って生まれるものであって練習を積んでもできないから相手にそういう選手がいると気持ちで押される。そして延長10回、ロッテがマウンドに送った澤村は2三振を取るが松本がしぶとく四球をもぎとるとスタンドは押せ押せで沸く。ここで出てくる当たればホームランの清宮は怖い。澤村は長打が出ないコースでヒットにとどめたが、1,3塁で迎えた淺間は力でねじ伏せにいったのだろうか外角高めのくそボールを痛打されサヨナラだ。
以上、「ここぞ」で吉と出るか凶と出るかの人間ドラマである。公衆の凝視する面前で一瞬でそれがおきる野球は5秒前までぴんぴんしていた敗者には残酷だが見物人にはこんな面白いものはない。パンとサーカス。ローマはこれをライオンと奴隷の戦闘としてコロッセウムで大衆に見せた。治世の道具として始まったコンセプトは今も生き、その目的で我が国にGHQが置いて行ったこの競技の面白さには抗し難い。保守だと言ってる人間でこのアンビバレントな気持ちを分かる者はどれだけいるんだろう。
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広島カープついに阪神・大竹の牙城を崩す
2024 AUG 11 2:02:22 am by 東 賢太郎
去年から8連敗していた阪神の大竹。一人の投手にこんなにやられるのは珍しいが、とうとう5-1で勝った。普通の勝ちの10倍ぐらい嬉しく大層気分が良い。大竹の真骨頂はコントロールと緩急で、変化球は遅いが切れが良く、80キロの山なりまで操られるから130キロ台のストレートに長身からスピンがかかって手元で伸びるとほとんどの打者が差し込まれる。しかし彼の防御率は3なのだ。他チームには打たれてる。なぜ広島だけ打てないか謎だったが、ともあれ昨日はやっとこさで攻略した。これは今後の阪神戦に意味を持つ勝利だろう。
目下カープは巨人と阪神に2ゲーム差をつけて首位だ。いつまで続くかと思うが僅差を守り勝つパターンが板についてきたのは投手が頑張っているのが大きい。先発は大瀬良、森下、床田、九里の4枚が盤石で、残り2枠にアドゥワ(巨人を完封)、玉村(DNAに完投勝ち)がはまったと思ったら、野村、森が5回を零封して見せ、ハーンを加えてなんと先発は9枚になった。毎年、夏に息切れしたのが12球団でもトップクラスの贅沢な布陣だ。後ろも左が森浦、ハーン、塹江、黒原は盤石、右は島内、矢崎、河野、益田、コルニエルと左よりは落ちるが十分だろう。そしてクローザーに栗林だから強力だ。
セリーグで得点は5位、ホームランは6位と貧打は相変わらずで、外人2人が大外れだったフロントの責任は大きいが、新井は逆手にとってミート率の高い打線と機動力を鍛え上げ、取った少ない得点を守り勝つ野球に徹している。何事も極めれば武器になるのだ。投手陣のスペックで失点は1位(最小)、防御率も1位に現れているが、これは守備の充実が極めて大きい。キーマンはなんといってもショートに定着した矢野 雅哉だ。菊池、矢野の二遊間、これは文句なく12球団最高である。2021年にこう書いた。
新人の矢野にすごく期待している。今日も大道が2本打たれて1,2塁にして、代打デスパイネのショートゴロのさばき方が良かった。ちょっと嫌な所にぼてぼてが飛んだが、うまいというより二塁トスのあの手慣れた感じは投手目線で頼もしく感じた。野球頭が良くて足も速そうで、ああいうのが敵にいるだけで圧を感じるタイプと思う(新人の頃の菊池がまさにそうだった)。
矢野は打撃も進化している。きのうも大竹の遅球を流して2塁打にした。運動神経が半端でなく育英高-亜細亜大で鍛えまくられているが、おそらく大変な努力家であるのだろう。菊池と矢野、ここまで超絶的にうまいと守備だけでレギュラーが取れてしまう異次元の人達で、ノーヒットでも美技ひとつでピッチャーを鼓舞するから打点1ぐらいの価値があると思う。逆に、プロでもアマでも、守備の下手なチームで強いというのはあんまり見ない。球場に出かけてポカーンとホームランが出れば楽しいが、僕が金払ってきてよかったといつも思うのは守備だ。
菊池が出てきた2013年ごろに強いカープを予感した。16年から3連覇した。矢野にそう思ったのは3年前。ひょっとすると期待できるかもしれない。
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野球が男の闘いであることを見た試合
2024 JUL 19 22:22:48 pm by 東 賢太郎
野球というのはスポーツであるが、いろんな人間ドラマがある。僕はガス欠気味のカープの打者がいい球をすんなり見逃したり悪球につられて凡フライだったりすると真面目に怒ってるし、キャッチャーのサインやコースがやばいと思った瞬間にホームランだったりするとこの馬鹿野郎と本気で怒鳴ってる。他人事なのだけど、ここぞは大事だ絶対勝てというのが体に染みついてる。だからパブロフの犬みたいに反射してしまうのだ。
先日7月17日、ハマスタでの横浜DeNA戦、相手は8連勝中のエース東であり、こっちは森下とはいえ左に激貧のカープ打線だからなんとなく分が悪そうだ。解説によると小園だけは東を8割も打っており(この日も2安打)、ならば他の奴は小園の爪の垢でも煎じて飲めと思うのだがやっぱり打てない。カープの貧打というのは伝統のお家芸で50年前から抗体ができてはいるが、丸、鈴木誠也、バティスタというOPS1.0の超絶クリーンアップ時代もあったからストレスがたまる。
0-0のまま投手戦で迎えた6回の表。9番会沢が三ゴロ、1番秋山が遊直であっさり二死。この軽いタッチが何とも頼りない。すると、そういわんばかりに森下が早々にベンチ前でキャッチボールを始めた。2,3番は矢野、上本。長打なしで点は入らんな。僕も思ったが彼も思ったんだろうね、3割打者だからね、野手といえど上から目線で見ていても失礼じゃない、結果ありきのプロだから。
その裏だ。森下の球がやや浮き始める。3安打され、二死満塁で渡会を迎えた。この新人、立派というか態度が微妙にでかい。開幕戦でホームランを打ってカープをなめてる感じでありどうもいけ好かない。森下もこの野郎、図に乗るんじゃねえぞと思ってるだろう。球速が上がる。高めストレートでファウルで粘られたが、最後はインローでなすすべなしの空振り三振にねじ伏せて格の差をみせつけた。いやあ痛快だ、森下君、狙ったね、男だね。
これは次なるドラマへの序章だった。チェンジで7回表だ。上本、小園のヒットとエラーで無死二三塁の大チャンス。ところが野間、菊池がタッチアップもできない外野フライであっさりツーアウト。がっくりだ。ここで開幕から欠場だった7番シャイナー君である。ちょっといい人すぎに見えるおとなし目の男だ。DeNAはコーチがマウンドに行く。8番は森下だ。代打の切り札・松山は左だ。であるのに東は敬遠せず勝負に出た。シャイナーはナメられたのである。森下の気迫の奪三振を一塁で見て気合も入っていただろう、二球目の高めストレートをバックスクリーン左に会心のホームランを叩きこんだ。
3-0でカープの完封勝ち。若者の皆さん、長い人生、こうやってここぞで負けちゃいけない時が誰でもある。そこで勝つかどうかはでかいですよ。
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祝 カープ大瀬良投手 No-Noを達成!
2024 JUN 8 6:06:20 am by 東 賢太郎
プロであれ草野球であれ投手はまず完全試合をやりたい。そんなことはない、大谷だってできないんだよ、勝てばいいのさという派閥もあろうが、1-0で負けても三振をたくさんとったから満足できてしまい、「おいなんでお前だけ悔しがらねえんだ」なんて主将に怒鳴られたりするポジションが投手なのだ。
野手の練習メニューは半分は連携でサッカーみたいな集団プレーだが、投手はブルペンでひとり黙々と投げてボール1個入ったの外れたのと微細なことに明け暮れるからゴルフ練習場のムードに近い。そういうことを何年もやってると、5点やっても6点とれば勝ちじゃないかなんて精神構造にはならない。結果論でそれはあるが、1回から5点オッケーなんて思ってる人はいない。
ということは無意識ではあってもまずは完全試合狙いなのだ。それが四死球を出してNo-No狙いになり、ヒットを打たれると完封狙いにグレードダウンする。とはいえ完封だって十分に難しいから投手の勲章ではあり、ましてそれより上のNo-Noはほとんど神の域の偉業ということは野球をやった人は承知だ。だからだんだん野手が緊張して記録が途切れたりするからますます達成は難しい。
僕などプロでNo-Noをおやりになる方々は大統領より偉く見え、巨人・戸郷クンなど年の差は関係なく戸郷サンとお呼びするしかない。そして、その偉人列伝に我が広島カープの大瀬良サンが加わられた瞬間は保有株がストップ高したのの百倍ぐらい歓喜を覚えたのである。しかも相手はこのところ絶好調のロッテ打線というのだから花を添える。三振は2つしかなくフライとゴロばかり。芯をはずしまくった練達の投球術だったからロッテが悪かったわけではない。
実のところ、ヒジをやってしまって3度もメスを入れた大瀬良はもう終わったと思っていた。現に以前の球威はない。そうなったらどうなるかはわかってるつもりだ。先日、やはり好調の日ハム打線を零封した森下も同じだ。ふたりとも力感なくひょうひょうと投げたようにすら見えたがプロの投手の並外れた精神力と凄みを見せていただき心から感動した。前進する人は美しい。
あっぱれだ、おめでとう!!
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どうしたんだ広島カープ!
2024 MAY 29 22:22:42 pm by 東 賢太郎
5月6日だった。アメリカから筒香がDeNAに帰って来ていきなりホームランを打った。他人の弁当はうまく見えるというが、それだけとも限らない。なんたって、我がカープ打線はホームランがないどころかDeNAの東投手、大貫投手にひねられて2試合も零封され、外野に球も飛ばないじゃないか。怒り心頭に発し、
こんなみっともない打線がプロを名乗るのはやめろ!
クリーンアップは森下投手と床田投手にしろ!
と強烈にぼろかすに書いたのである。
そして、唯一の希望として、
「期待は末包の復帰ぐらいだ」
と書いたわけだ。
そうしたら驚いた。なんとその翌日だ。二軍にいた末包が一軍に昇格した。そして阪神戦に5番スタメンで登場し、タイムリーを打って勝った。
そうか!新井監督、我がブログを読んでこのやろーと怒ったんだな。
そこから12勝4敗の快進撃である!とうとう今日はこうなった。
かねてより交流戦は駄目だ。特にオリックスとソフトバンクには赤子の手をひねるようにやられている。昨年のパの覇者に14-0?いったい何が起きたんだ?
この日も先発の森下投手は圧巻の3打数2安打。3塁打を打ってお立ち台にあがったショートの矢野は「森下さんに打率負けてますし」と笑った。よしよし、クリーンアップは森下投手と床田投手にしろ!のファンの声、きいてくれよな。
ありがとう。今日は酒がうまかった。
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帰ってきたDeNA筒香、なんてうらやましい
2024 MAY 7 0:00:12 am by 東 賢太郎
帰ってきた筒香。復帰初戦で逆転3ラン。鳥肌が立った。前稿にこう書いた。
人間、何事も才能というものがある。何かの技能がうまいなあと思う群れの中でも図抜けている者がほんの少しだけいて、その者はそれで飯が食えるようになるのだが、今度はその連中の群れの中でさらに図抜けた「すぐれ者」がいるという塩梅だ。
凄い一撃だった。今年はボールが飛ばないなんて言ってるが彼には関係ないそんなもの。5年アメリカにいて不本意ながら帰国し、いきなりこれだ。軽く3,40本は打ちそうなこの男がなぜメジャーで駄目だったんだろう?今日もドジャース大谷は9号を放っていたが何がそんなに違うんだろう?「すぐれ者」の世界は凡人には想像もつかない。
セリーグのクリーンアップを見よう。DeNAは佐野88・牧97・宮崎85・筒香97。阪神は森下89・大山94・佐藤96・ノイジー100。ヤクルトはオスナ106・村上97・サンタナ104。中日は石川100・細川98・中田107。巨人は吉川78・岡本100・坂本86。そして広島は野間85・秋山86・堂林96・小園91・坂倉89。
数字は体重だ。なぜかというと全員が鍛えぬいて体脂肪率が少ないので筋肉量であり、最高位の選手だから技量はあり、これがほぼ長打力と思うからだ。中日の躍進はこれ、巨人は丸94が落ちて入ったのが門脇76、佐々木80で90台は岡本だけと軽量化して低迷。阪神、ヤクルトは文句なしの重量級だ。それが目下の得点数の阪神102、DeNA100、巨人82、中日91、広島76、ヤクルト130に現れる。ヤクルトは投手が悪すぎで本来Aクラスとすると順位はほぼ得点順になる。
広島の一軍は代打要員の松山96、会沢95を除くと上本76、田中85、宇草84、菊池71、矢野71、羽月73とベンチはちびっ子ギャングみたいで、レギュラーの90越えは堂林と小園だけだが二人とも目下ホームランはゼロ。投手が失点を最小に抑えてなんとか5位という惨状だ。だからこそ田村97の覚醒が必須だがまだ青くさく、期待は末包112の復帰ぐらいだ。60年カープを応援してきた悲哀はとにかく長打がないことで、ヘビー級の巨人に吹っ飛ばされるフライ級ボクサーみたいな惨めな思いを何十年も耐えてきたのである。
この球団がちびっ子ギャングのコレクターなのは伝統だが、それは菊池、田中レベルならいい。そこを外人で補うのも伝統でホプキンス、ライトルなど当たり籤を引き強力な投手陣で守り勝って優勝した。2016~8の3連覇も打ちまくってOPS8割越えをキープしたバティスタ107がいて丸94、鈴木誠也106、エルドレッド126と並んだ超重量級の破壊力が大きく、東京ドームで巨人をホームラン攻勢で粉みじんに粉砕した試合は積年のうっ憤を一夜で吹き飛ばしてくれた。
ところがバティスタがドーピングで消えてから外人が超不作であり、何が起きたんだという異変すら感じる。去年はデビッドソンが19ホーマー打ったが、それを解雇して取った名前も忘れた二人がオープン戦からぼろぼろでおまけに肩まで故障と聞く。キズモノつかまされたのか、いい加減にせい。
先日のDeNA戦、森下が7回まで無安打で、打線は10安打だがそのうち森下が3打数3安打のていたらく。勝つには勝ったがこっぱずかしい試合を見せられた。初戦は東に苦もなくひねられて完封負け、もうひとつも大貫の変化球に翻弄されて完封負け。全員が崩されてるし、振ってないし、左は東出直伝のちょこんと流す「当て逃げ」ばっかりで、それをしくじってケツを引いて弱弱しい空振りと、こんなみっともない打線がプロを名乗るのはやめろ。
客観的に見てカープのクリーンアップ候補は森下投手と床田投手であるのは、カープファンの方ならご賛同いただけるだろう。
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新井カープ「孫氏の兵法」でCSファイナルへ
2023 OCT 15 18:18:01 pm by 東 賢太郎
今日もよく勝った。
外へ出ていて7回、2-0を確認していた。帰ってみたら2-2だった。そして8回、先頭の1番菊池がさすがのヒット。2番野間はバントのサインだったが2つ見逃してツーストライク。空気悪くなる(上茶谷投手の低めが伸びていた)。サインが打てにかわってショートにボテボテ。内野安打。3番西川。今永からホームラン打ってる。解説者ふたり(山本浩二、野村謙二郎)とも「打たせるでしょう」。そこでバント。満場がだまされてびっくり。上茶谷もあわててサード野選。無死満塁。本当に新井の采配は素晴らしい。これぞまさしく
そこで代打でライト前に快心の決勝打を放った田中浩輔!今年のカープの躍進は峠を越したと誰もが思っていたこの男の復活が底力になった。それは4月に書いたこの稿にある。
投手起用にもインテリジェンスがある。
この試合先発の森下は公式戦後半は立ち上がりが悪く、バンテリンドームで観た中日戦では先頭から5連続ヒットを打たれていた。普通の監督なら第2戦は安定した九里で行くが、森下に「第2戦は彼しかいないでしょ」と公言して九里はロングリリーフに使った。プライドの高い森下の力をうまく引き出し、昨日はその九里が2回投げて抑えた。
森下は無失点でしのいできたが、6回先頭の新人林にあわやホームランの2ベースを打たれ1死3塁となると大道にすっぱりかえる。この交代は森下は屈辱だろうがここまで零封だから成功だ。打者は大田、牧。大道はいま島内と双璧の球威がある。大田を二飛に打ち取りタッチアップは封じ牧は右飛で無失点。その裏、きのう東を打つと燃えていたが不発でスタメンを外された末包を代打に出してもう一人の難敵左腕、今永からいきなりホームラン。空気を俄然変えた。カープの監督でこんなに采配が的中するケースはあまり記憶がない。
昨日も今日も高校野球みたいな緊迫のナイスゲームだ。DeNAもしぶとく強かった。打線の迫力はカープより上であるし東、今永はリーグ最高峰の左腕だった。9回先頭で代打に起用された41才の藤田。最後の打席になった。栗林のフォークを見事にすくって芯に当てた右飛。やられた、やばいと思った。さすがだ。
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よく勝った!カープCS第1戦サヨナラ
2023 OCT 14 18:18:59 pm by 東 賢太郎
DeNA東は直球は147kmぐらいだが質が高い。高めで空振りが取れてる。そのうえに制球も半端ない。スライダーは大きくて鋭く右の堂林、末包、デビッドソンは内側をえぐられて当てるのが精いっぱい。そこで緩急つけて外に来るチェンジアップだかツーシームだかが手元で落ちてる感じだ。捕手の山本がいやらしい。東を引っぱってる。このいやらしいという感じは言葉にし難いがリードにインテリジェンスがある。いいキャッチャーだ、巨人戦で戸郷からホームラン打ったがこんなのがよくドラ9でとれたもんだ。このコンビで最多勝は納得した。
6回まで0-0。対して打たれながらも持ちこたえてきた床田がついに宮崎に2ランを浴び、ダメかなと思った、そのぐらい東が良かった。そこで出た三盗にスクイズ!これはびっくりした。羽月と菊池。これで空気が少し変わった。次いで西川の犠飛で同点にして延長11回に秋山のサヨナラ打で勝ち。センターの蛯名君、そんなに前にいなくてもよかったんじゃないかね。まあ劣勢をひっくり返してよく勝った。
大道、矢崎、島内、栗林、九里、ターリー、よく抑えた。僕が今年最下位予想していたのは7-9回の投手陣だ。それがここまでやった。だからの2位だと思う。菊地原コーチの功績もあるかと思うが、やっぱり新井だ。短期決戦で采配をフレキシブルに変えてる。すばらしい経営力。見習いたい。
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今年最後の野球観戦(やっぱりプロは凄い)
2023 SEP 15 9:09:24 am by 東 賢太郎
神宮球場の一塁側スタンドにいた。カープがヤクルトに先に負けると、甲子園の巨人・阪神の結果を待たずしてマジック1である阪神の優勝が決まる。そろそろかなと思っていたら「甲子園終わったね」と後ろの席で女性の声が聞こえた。こっちはまだ7回ぐらいだった。
神宮は久しぶりだ。表参道駅に球場用のエスカレーターができており、いつも寄っていた立ち食い蕎麦屋が消えていた。東京が再開発だらけなのか、こっちがコロナで出なかったせいなのか、日本橋、渋谷、自由が丘で昔なじみの光景が気がついたら消えており、上海料理屋では池袋西口もそうなると聞いた。神宮球場もあの五輪で危なかったがどうなるんだろう。ここはスタンドの蕎麦ひとつだって思い出が詰まっている。東京の歴史も野球もわかってない田舎政治家の一声で消えるなんてことは勘弁してほしい。
このカード、第1戦も来たが2-1で負け。第2戦は静岡に出張だったが、第3戦はカープの神宮最終戦なのでまた来たのが昨日だ。とにかく今期の阪神は強かった。先日、甲子園の直接対決をスィープされて優勝の望みは絶たれたから勝敗はもういい。仕事が一段落したし、最後の意地を見ようというところだった。
広島は第2戦も完敗して大失速の連敗中、しかもぜんぶ1得点以下という情けない記録が更新中でもあった。この日も先発・高橋奎二を打ちあぐみ7回まで5-2と敗色濃厚、僕も完全にあきらめていた。それをひっくり返したのが8回。小園(本当にこの選手はモノが違う、カープの宝)そして堂林がお膳立てした満塁に代打・磯村のセンター前で勝ち越した。左腕高橋に対して右打者を先発で使い果たし、相手は救援の左腕・山本。彼しかいなかった。第3の捕手であまり出番がないがここ一番で打てる勝負強さは折り紙つきだ。彼は2010年春の甲子園で優勝した中京大中京の正捕手で5番打者。準々決勝、準決勝の土壇場でホームランを打っており、先発投手で4番が堂林だった。第3戦はこの2人の打棒で逆転勝ちしたと言っていい。しかしそんな人が第3の捕手ってのもねえ、プロのレベルは僕らごときには想像もつかない。
やっぱり球場はいい。画面ではわからない。第1戦は三塁側ベンチ上第16列で、打者目線で観られたのがとても大きい。サイスニードはテレビ画面では大したことないと思っていたが、150km台の速球が石みたいに重い。中村のミットの音が凄まじい。外野フライがやっと。あれをベンチから見ていたら怖気づくだろうなというパワフルな球で好調だと打てる人間は日本ではなかなかいないだろう。坂倉が本塁打を打ったが家でTVを観たらスライダーだ。カープは完全に力で封じられた。ヒューストン・アストロズが出したのはきっとコントロールだろう。カープ新人益田の150km台も惚れた。いいの採ったねえ、これはエース候補だ。大道は更に一段と速くて凄みがある。高め、あれは前に飛ばないな。カープ田村がプロ入り初安打。いいものを見た。センターから山田に返球、山田はちょっと考えカープベンチにふんわり投げる。わかってるんだ、業界人としての思いやり。
プロのピッチャーの速球を久々に見て感動した。みんな速いけどサイスニード、益田、大道は図抜けて球威があり、目と耳に焼き付いた。ホンモノ。これだ。俺もプロとしてこういう仕事をしなくっちゃ。身が引き締まった。
第3戦は4番に座った堂林の第1打席のホームラン。左翼中段にやや低めの弾道、物凄い当たりであれは高校野球ではあり得ないプロのあかし。あとでTVで確認したが速球だ、素晴らしい。堂林はホームランバッターになっている。山田のホームランも焼き付いた。体の回転で引っぱった技ありの一発。そして村上が2者連続で右翼にライナーで突き刺す。後ろの席の女性たちのキャー(歓喜の叫び)で耳がつんざかれ、傘の上げ下げの大嵐に襲われる(ここはヤクルト側)。第1戦も流してレフトに入れたがこれは高い弾道。今年はWBCでおかしくなったが、やっぱり只者じゃないね。この回はヤクルト圧勝の形勢であり周囲は絶叫の嵐。傘を振ってないのは僕だけであり居づらかったがヤクルトファンは東京の人だ、寛容なものである。新人の河野が5回を2三振で抑えた。彼も150km出て村上から三振を取った、楽しみである。田村もセンターにあわやホームランの2ベースを放った。 愛工大名電高、いいのが出てきたぞ、将来クリーンナップは間違いない。逆転した8,9回は島内、栗林が3人づつで締めた。どっちも生で見たのは初めて。島内の速球はぜんぶ150km越えである。この日の席は29列目で比べられないが第1戦の3人並の剛球またはそれ以上の物凄いストレートと思われる。疲れた頃は打たれたがこの日の調子なら真ん中でも打たれないよ。栗林は手の円弧が大きいオーバースローと見えた。150越の剛球に140台、130台の変化球(なんだかは横からはわからない)とたまに120台(これはカーブ)。速いし緩急もありで打てるわけないレベル。これもテレビじゃわからない。青木、塩見、オスナをあっさり抑えて試合終了。感動あるのみ。ヤクルトが9回に投げさせた坂口も154km、いい速球で2三振。ナイスピッチ。
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バンテリンドームで目撃した髙橋宏斗の速球
2023 AUG 15 10:10:36 am by 東 賢太郎
軽井沢、兵庫、岐阜、名古屋を3泊4日で踏破する旅というのは、ビジネストリップでなければまずないものだろう。前日に岐阜でのディナーを終えた土曜日、最後の日程は野球観戦だった。
バンテリンドームは意外に遠く、名古屋駅からタクシーで4千円かかった。先発投手は中日が髙橋宏斗、カープが森下。両方見たい投手でありこの対戦はラッキーである。
いきなりなんだこれはということが起きる。初回、森下が一死も取れずに5連続ヒットを浴びる。人生初めて見たんじゃないだろうか? 結局この3失点を返すことができずカープは3-2で負けというつまらない試合だった。
やむを得ない。髙橋宏斗が良かった、というより、かつて現物を見た投手の球の中でもトップクラス、一球ごとにため息しか出ない物凄さだった。
【動画】竜の若き右腕が連敗中のチームを救う!/8月12日:中日-広島のハイライト
ビデオを見たがこれではわからない。実物の球威は圧倒的。思い出したのはサファテとオスンファンだ。ああいう石みたいに重い球。153,4キロだが芯で打っても外野で失速してた。テークバックが小さいし立ち投げっぽく見えるんだがリリースでの腕の振りが速くて強く下半身も効いているんだろう。7回投げて2安打、6三振+フライアウトが11、四球は1つと、振り逃げを入れて22アウトのうち17が剛球で押し込まれての負けで、要するにカープの打者は手も足も出なかったのである。そしてクローザーのR・マルティネスの13球も見ものだった。高橋より一段と速い157が出て、最後の松山は159で三直だったが、体格やフォームを含んだ印象点では高橋のストレートの方が凄みがある。もうそれを見ただけで行った価値があったというものだ。
カープの救いは二番手・清水から放った小園のホームランだけだ。清水も150出たような気がするし高橋の後だから遅く見えたとはいえ、バンテリンのセンターは122mあってそこにぶちこんだのだから頼もしい。小園はカープの宝である。他の打者は少し疲れが出ているように見えるから連敗もするだろう。森下のストレートもいいが、高橋のを見ると普通の人の球だ。7回まで投げたが2回からは1安打でほとんど打たれず、投球術は百戦錬磨だ。これが実力なんだろうがどうして1回にああいうことが起きるのかは全く理解できない。
ちなみに、この翌日のこと、テレビ観戦していたがカープは柳に9回ノーヒットーノーランをやられてしまう。前日の高橋に押し込まれた余波はなかったろうか。幸いなことに遠藤も9回無失点で見事な投球を見せて不名誉な記録は残らなかった。10回に出てきたR・マルティネスの剛球を堂林が本塁打した。前日球威を目撃しただけにこれの凄さは実感できる。1-0で昨日の雪辱かと思ったらその裏に矢崎がいきなりホームラン2連発を食らって、劇的というかあまりにあっけないサヨナラ負けだ。昨日でなくて良かった。最悪の気分で新幹線に乗ることになったからまあ不幸中の幸いだった。しかし高橋といい柳といいマルティネスといい、なんでこんなすごいピッチャーのいるチームが最下位なんだ?
家に着いたのが何時だったか、もうふらふらで記憶もなく、どうやら夕食も忘れてそのまま寝こんじまったらしい。軽井沢、兵庫、岐阜、名古屋を3泊4日で踏破する旅が終わった。
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