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菊池選手1500本安打おめでとう

2023 APR 27 23:23:06 pm by 東 賢太郎

本人は満足してないと思うが1500安打は重要な一区切りだ。しかも手がつけられない6打数5安打で達成というのが菊池らしい。2対2で迎えた延長12回、先頭打者で追い込まれてから高めのボール球を振り切ってセンター前ヒットというのも菊池らしい。これがきっかけとなった2死満塁から若手のホープ韮澤がストレートの四球で押し出しサヨナラ。お立ち台で菊池を見ながら「菊池さんを上回りたいです(笑)」。いいね!ほんとうに嬉しい1勝である。菊池の並外れた守備力はいうまでもない。打力のせいなのかメジャー挑戦の夢かなわずということもあったが、1番に定着した今年はその打棒に目を見張る。

カープの3連覇は菊池なくして語れない。投手より右にゴロが飛んだら全部アウト。こんな二塁手はかつてないしメジャーにもそうはいない。投手の安心感たるや計りしれない。僕のつたない経験からも、甘い球を投げてしまい抜かれたと思った打球を処理してもらうと意気に感じ勇気百倍になる。逆に敵方にそれをされると意気消沈。嫌な奴がいるなと意識して、どこか打席に立つと押されてる感じを持つ。

プロは同じ相手と何度も戦う。カープ戦というとその「押されてる感」を常に感じてしまうのはハンディだろう。そうした心理的アドバンテージを攻撃面で持っていて強かったのが昨年のヤクルトだ。1番塩見、3番山田、4番村上は見ているだけで本当に嫌だった。塩見の出塁率が高く、山田が足が速いからゲッツーもなく、そうすると高い確率で「走者を置いて4番村上」のシーンがやってくる。しかも先発投手がまだ不安定な初回立ち上がりに。村上の三冠王はそれが大きかったと思う。今年は目下のところ塩見、山田が不在、村上が不調だから苦戦している。それと同じことが3連覇中のタナキクマル誠也にも言えたのである。でもその中でも菊池だった。なぜならスターを超えたウルトラ超人であり、相手を唖然とさせてなんだあの曲芸はと戦意喪失に追い込む仰天プレーをしてしまうからだ。そうなった相手は意外にもろかったりする。

菊池選手、まだまだ一里塚だが偉大な記録だ。ほんとうにおめでとう。

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点と線(田中広輔と小園海斗の場合)

2023 APR 16 21:21:10 pm by 東 賢太郎

野球にも人間ドラマがある。広島カープのレジェンド、安仁屋宗八さんが「他球団のピッチャーは関係ないんです、気にしてたのは同僚ですよ」と語っている。ライバルは身内なのだ。

カープの二遊間は田中広輔と菊池涼介で盤石だった。丸を加えた6-4-8の鉄壁のセンターラインで2016~18年の3連覇が成し遂げられ、タナキクマルという愛称が一躍脚光を浴びた。菊池の超人的プレーに隠れて田中のうまさは騒がれなかったが、遊撃は二塁より難しい。学年同期で同じ171センチの二人が抜群の身体能力だったことで鉄の壁は成り立っていた。それが暗転したのは翌19年だ。田中がどうしたんだ?というほどの打撃不振に陥り、売り物の盗塁も激減したのだ。そして話題の新人小園海斗に1番ショートのスタメンを奪われてしまい、歴代5位をうかがっていたフルイニング連続出場記録までが途切れてしまうのである。右膝半月板の手術をしたと不振の理由が判明したのはたしか8月のことだった。「怪我だから仕方ない」で済まないのが男の世界である。この時の田中の気持ちはわかる。

今日の広島でのデーゲーム、開幕3連戦で全部負けたヤクルトに2つ勝ったが、3つめは初回に5点取られて中盤まで5-1だ。6回に秋山、西川のヒット、坂倉の四球で二死満塁。ここで8番打者の田中である。ヤクルトは好投していた新人の吉村投手を150キロ出る星に替えた。「球威で押しに来たな」と誰もが思った。しかし田中に代打は出ない。先日、2年ぶりの本塁打が出るには出たが右翼フェンスぎりぎりであり、お立ち台で「もう打てないと思ってました」と語ってもおり、たしかにこの4年、いい所で打席に立っては泳がされて弱弱しいポップフライの残像しかないのである。

「おい新井さん、4点負けてんだよ、松山か堂林じゃないの?」

と思ったカープファンは少なくないだろう。もうこのまま終わりだな。僕は田中の打席だけは見届けて、そこでテレビを消して仕事をしようとリモコンを持って待ち構えていた。

ここで彼が右翼中段に放った満塁ホームラン。これにはデジャヴがあった。9年前の2014年4月24日、神宮球場の三塁側内野席から目撃した彼のプロ初ホームランである。

広島vsヤクルト(神宮)観戦記(菊池のタッチアップに驚く)

時期はちょうど今頃だ。強打者の高々と滞空時間の長い当たりではなく、巧打者が絶妙のタイミングでミートした若々しいライナー性の当たりであり、これでショート田中の名前が鮮烈に焼きついたのを菊池の活躍と一緒にブログに書いたのである。この年のシーズン終了後に緒方孝市の監督就任、ヤンキースから黒田博樹、阪神から新井貴浩のカープ復帰が決まり、3連覇への布石が敷かれている。

だからかどうか、監督になった新井は田中に代打を送らなかった。満塁ホームランをたたき込んだ田中はヒーローインタビューで淡々と、しかし強いものを秘めた口調で「ここで打たなきゃ男じゃないと思いました」と語る。

ここで使われる「男」という言葉。アメリカの地でWBCのサムライたちが軽々しく口にはしなかったが、プレーでこれでもかというばかりに見せてくれた。それに日本だけでなく世界の女性も熱狂した。LGBT云々とは全然違う次元の高い所で、何千年も前から、どこの民族であれ人類が生存のために持っていて本能に訴えかけるものだからの感動だと僕は確信している。

新井が見せた男ぶりがこれだけなら僕は本稿を書いていない。凄いなと思ったのは5-5の同点で迎えたその次の7回、投手の代打に、開幕から15打数ノーヒットの小園を送ったことだ。そして小園はそれが信じられないぐらいの迷いのないスイングで右中間に快心の3塁打を放つのである。これが点になり、カープは7-5で勝利し、3連敗の借りを3連勝で返した。小園はオープン戦で悪くなかった。22才で日の出の勢いであり、我が家の年間予想で僕はセリーグ首位打者にノミネートした。昨年は田中が41試合の出場にとどまったのに対し小園は127試合にショートで出場し、レギュラーを奪取したと自他ともに認めたといっていい。

つまり、いまは田中でなく小園が試合に出られず悔しい思いをしている。田中は33才だが、今日35才になった秋山翔吾が昨日はサヨナラホームラン、今日も5打席連続ヒットを続けるなど気を吐いているのだからまだまだ若いという気概に燃えているだろう。真の男と男のガチンコの戦いだ。生物上は男だが薄っぺらのカスがくだらないポジショントークで金儲けを狙う世相を見せられる日々に、これが一服の清涼剤でなくて何だろう。

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広島カープ「つなぎの野球」では勝てない

2022 OCT 11 10:10:41 am by 東 賢太郎

佐々岡監督ご苦労さま。3連覇で疲弊した戦力を引き継ぎ、そこから鈴木誠也がいなくなったのによくやった。投手陣は先発はほぼ形ができたが、中継ぎが揃わなかったのは反省点だ。打撃や足技については不動のエースだった彼が指導できる領域ではなく、コーチの責任だ。

広島というチームは監督が代わってもコーチはそのままが多い。組閣でころころ大臣が替わる省庁みたいで、役人は不動。どうせ大臣はすぐいなくなると面従腹背になりやすいと推察する(同じ人間だ)。コーチの現役時代の成績を見ると、菊池や西川や小園みたいな選手に技術指導できるのかと思う。

今年はセイヤの穴埋めが最大の焦点だった。昨年ホームラン38本、OPS1.072の彼に代わる選手はいないから外人でという期待はファンの誰もが持っただろう。しかし球団は、代わりの4番候補に今期セリーグの助っ人39人中13番目に年俸の安いマクブルームしか取らなかった。

今年のセリーグ各球団の助っ人外人の顔ぶれと年俸をご覧いただこう。青字の選手が4番候補である。

 

読売ジャイアンツ(11億1900万)

ポランコ(2億5000万)、アンドリース(2億2600万)、デラロサ(1億8150万)、シューメーカー(1億5000万)、ビエイラ(1億4300万)、ウィーラー(1億1000万)、メルセデス(4950万)、クロール(3500万)、ウォーカー(3400万)

阪神タイガース(10億6410万)

ロハス・ジュニア(2億6000万)、アルカンタラ(2億1000万)、マルテ(1億9300万)、ガンケル(1億7000万)、ケラー(1億2430万)、ウィルカーソン(7280万)、ロドリゲス(3400万)

横浜DeNAベイスターズ(8億1000万)

ソト(2億7000万)、オースティン(2億)、エスコバー(1億6000万)、ロメロ(1億3000万)、クリスキー(8000万)、ガゼルマン(4000万)

ヤクルト・スワローズ(8億300万)

オスナ(1億5400万)、サンタナ(1億9000万)、マクガフ(1億2400万)、サイスニード(9500万)、コール(9000万)、スアレス(9000万)、キブレハン(6000万)

中日ドラゴンズ(6億5000万)

ビシエド(3億5000万)、R・マルティネス(2億円)、ロドリゲス(6000万)、A・マルティネス(3000万)、アルバレス(1000万)

広島カープ(3億2070万)

フランスア(8500万)、マクブルーム(7700万)、アンダーソン(7700万)、ターリー(7300万)、コルニエル(870万)

 

これを投資と考えて、リターンがどうだったのか見てみよう。

外人年俸総額(カッコ内)の順番はこうだ。

➀巨人➁阪神③DeNA④ヤクルト⑤中日⑥広島

そして公式戦の結果はこうなった。

➀ヤクルト➁DeNA③阪神④巨人⑤広島⑥中日

「10億円組」(巨人・阪神)と「8億円組」(DeNA・ヤクルト)は逆転したが、ヤクルトは村上、DeNAは牧というホームランがリーグ1位、4位の日本人が4番を張ったのが大きかった(外人はおまけになった)。

それに比べ、「その他組」(中日・広島)はお値段通りの5位6位だ。年俸1位が4番候補でないのは広島だけ、1億円以下なのも広島だけである。これでは佐々岡が気の毒というしかない。そのマクブルームは健闘はしたが、鈴木誠也の半分以下のホームラン17本では穴を埋めたとは到底言えない。

「つなぎの野球」というが、3割打者すらヒット3連打の確率は2.7%しかない(0.3×0.3×0.3)。年間600打数として、ほぼ読めるのは16点だ(単打3本では点が入らないこともある)。2割5分の打者3人なら1.56%で10点だ。

ホームラン16本なら同じ16点が確実だ。打った打者はNPBに21人いる。たった6人しかいない3割打者を3人集めるよりそっちを1人の方が簡単でコストもほぼ3分の1だ。

つまり「つなぎの野球」はリレー好きの日本人には耳あたりがよく、たしかに滅多打ちに見えて気分はいいが、「スロットで同じ絵柄が3つ並ぶ」ということであり、出そうでめったに出ない(だからパチンコ屋が儲かる)。

更に言うなら、リーグ史上ワースト2位の26盗塁(阪神・近本の30より少ない)で盗塁死が29もある。成功率47.3%は12球団ダントツ最下位だ。「つなぎ」で足は使わないなら連打狙いのスロットを回す作戦なのであり、確率は低い。

ところが、ホームランも盗塁もだめだったが、総得点はリーグ2位だ。だから免罪だという声もあるが、1イニング最多12得点の球団記録など、17点、15点(2度)取ったぼろ勝ち(どうでもいい点数)が乗っており、そうもいえない。

つまりホームランが出ないけどこっちの方がいいという理屈は立たず、4番がビシエド14本、マクブルーム17本の2チームが順当に最下位を争った。弱小球団経営者のポジショントークにすぎず、米国には「つなぎの野球」なる英語はない。

新井新監督には期待したいが、コーチ陣と4番は少々心配だ。

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広島終戦(酷すぎる大瀬良と中崎の起用)

2022 SEP 23 23:23:17 pm by 東 賢太郎

首の皮一枚、絶体絶命の阪神戦。こいつらほんとにそう思ってたのかというばかりの酷い試合であった。

先発の大瀬良。

何だこのざまは。絶対に負けられない試合の初回に4点もとられるピッチャーをエースと呼ぶ国は世界のどこにもない。見るからに球が遅い。こんなの打たれるに決まってるだろ。でもエースと呼ばれてる?関係ねえそんなもの。全部ぶち壊した責任は重い。なんで遠藤で行かなかったの?わけわかんねえ。

6回の中崎。

佐藤テルに看板直撃の強烈なツーランを被弾。球場全員が唖然でアタマ真っ白。バッターは戦意喪失の衝撃。ただの2点じゃないよ。素人目にもそりゃそうだろの球威しかない。なんで2点差に追い上げてこの大事な所でこんなの出すの?引退試合だったのか?聞いてねえぞそんなの。なんで頭から松本いかないの?わけわかんねえ。

佐々岡。

外人なしの迫力ない戦力で同情もしとったけど、この起用はあまりに酷い。

「ザキが打たれると思って出してないので、期待してたので、それが結果的に打たれたのは出した僕が責任がある」

当たり前だろ、そんなもん。キミ正気か?打たれると思って出す監督がどこの国にいるんだ?いちいちどうでもいいこと言わなくっていいんだよ、結果だけが監督の責任なんだよ。キミに責任とってもらってもファンは浮かばれないんだよ。

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阪神タイガース・糸井の引退試合に感動

2022 SEP 22 18:18:43 pm by 東 賢太郎

昨日の阪神・広島の最終戦は4-4の重苦しい同点で延長11回まで進んだ。双方が4位で並び、Aクラスに首の皮一枚。こういう追い込まれた事態で見る1点もやれないプレーは実に手に汗握る。

阪神の中継ぎ投手、ケラーと湯浅の速球。わかってても空振り。ああいうのはこういう場面でないと出ない。特に湯浅が坂倉をインローで見逃し三振にしたあれ。あのストレートをプロだ!と思わないなら金を払って見る価値はない。

その湯浅の低め速球をセンター前に快心のヒットを打った小園。第1打席のセンターへの本塁打よりこのヒットを評価する。8番だが一番打ちそうな雰囲気があったのは小園である。守備も含め、本当に素晴らしい選手を採ってくれた!

一打サヨナラの一死一二塁で佐藤、梅野をストレートで連続三振に取った松本の度胸!新人でこれは驚異。制球が乱れず145キロしか出ないのに高めで空振りが取れる!カープの中継ぎで最も成長したのは松本と矢崎である。

素人の試合で後半にこんな球の速いピッチャーが出てくることはない。ストライクゾーンで速くて打てないピッチャーは打ちようがない。シーズン中はこんな球はめったに見れないからもうけものだ。

ひとりだけ、あんまり制球が良くなかった岩貞。今年は彼も球速が増しているが、11回、小園のうまいバントで暴投、四球で満塁。打てる気配なかった上本に三遊間。するとつるべ打ちの3連打であっという間に6点。

嬉しいというより「野球は怖い」と鳥肌が立った。

カープは残り4試合全部勝って巨人が3つ負けてくれれば3位となった。

もうひとつある。

5回の先頭で代打で登場した糸井だ。これが引退試合。森下は3-2とし、外角高め速球は見逃せばボールだったが、これを見事とらえて三遊間を抜いた。変化球がありえたろうが、特に手を抜いた球とは見えなかった。

よく打った。これは絶頂期だったオリックス・平野が本気で投げた低めを右中間ツーベースにしたロッテ・サブローの引退打席に匹敵する。鍛えぬいたプロは凄い。こんな打者でも辞めなきゃならないプロも凄い。

糸井はピッチャーで近大から日ハムに入る。2年で打者転向といわれるが、引退スピーチから投手クビだったことがわかる。悔しくてバットを振りまくってここまで来たと。それでこのいい性格、素晴らしくスケールのデカい男だ。

糸井に驚いたのは打撃ではない。守備と肩だ。足も速いと思ったらなんと300盗塁もしているとは。野球選手はやっぱり攻走守だ。全部できてナンボ。大谷もそうだが日本で最高位は間違いなく糸井である。

宇宙人扱いされておりスピーチは心配したが、これがまた立派である。うまいというより地が出ていて心が見える。作り物でない。作り物のこれまたフェイクみたいな、巷に満ち溢れる政治家どものくそスピーチに汚染された耳が洗われた。

糸井選手、プレーヤーとしても男としても超一流だ。最高の野球をありがとう!

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野球に「流れ」はある(野球以外にもある)

2022 JUL 24 12:12:27 pm by 東 賢太郎

土曜日。久しぶりにノイを連れてピアノを弾いていて、しまった始まっちまったと急いでテレビをつけると3回だった。広島・ヤクルト(神宮)だ。スコアを見ると13対0だ。またか、やばい!と目を凝らすと、なんと勝っているのはカープで怒涛の攻撃中ではないか。

交流戦覇者ヤクルトに2勝しかできずやるたびボロ負け(10敗)。アマならわかる。地方予選1回戦組が大阪桐蔭と何百回やっても勝てない。戦力差が圧倒的だからだ。でもプロにそれはない。その広島がDeNAには3つしか負けておらず(12勝)そのDeNAはほぼ互角(8勝6敗)にヤクルトを食っているから明らかだ。グー、チョキ、パーの三すくみなのである。

広島は昨日もヤクルト小川に7回まで0封。「またか・・」。まいど顔なじみの負けの貧乏神が降臨しかかっていた。ところが8回にサードの村上クンが信じ難い素人ポロリをやってくれる。なんだそれは?キミ、どうしたんだ、脳震盪でもなったか?するとすかさず秋山が右翼席に同点2ランを放り込んだのである。投手はガックリでヒザをついてうずくまる。貧乏神が退散する。すると9回に、打った記憶のないクローザーのマクガフから何ということか小園がソロ、松山が2ランをぶちこんで勝ってしまった。うーんあり得ん。何が起きたんだろう??

そうしたら今日はいきなり先発の原にライオンの群れみたいに襲いかかって一死でマウンドから引きずり降ろし、2番手からも打つわ打つわで、あっという間の13-0だったようだ。もちろんこの時点でカープファンとして万歳三唱したわけだが、不思議なことに、なんとプロ野球でこんなことが起きるのかと背筋がぞぞぞっともしていた。こういうところ、何やら幼少時からのつきあいで野球のグレービーソースみたいなのが体にしみこんでる。「見ろ、野球って怖いだろ」。いちおう僕の影響で野球はそこそこ知ってる家族にそう言って回った。反応は猫と変わらなかったが。

『ライオン狩り』(ウジェーヌ・ドラクロワ、1854)

この日も秋山が1回に3ランを叩きこんだのだ。まさに「流れをもってきた」というやつだろう。「流れ」なるものは、そんな英語はないしアメリカでは言わないし賛否両論あるが、僕は経験から存在すると思う。ベンチで真横から相手投手のタマを見て、誰とも何も話さないがヤジを飛ばしながら「速いな」とか「大したことねーな」とか思ってる(高校はほぼ初見だ)。でも大事なのはこっちの3,4,5番が打つかどうかなのだ(僕は6番)。自分は自分の打撃の世界があるが、やっぱり彼らが第1打席であっさりひねられると打席で緊張する。打ってくれるとのびのびいける。そういうのはあった。

流れというのは良い方も悪い方も「ハートのシンクロ現象」がもたらす結果だと思われる。集団心理とざっくり言ってもいい。ピッチャーが頑張れば野手も燃えるし、野手が点を取ってくれると投げる方もよしやったろうとなる。ひとつの四球、ひとつのエラーぐらいで普通そこまではいかない。だから村上クンのポロリは普通じゃなかったのだ。そこにヤクルトアレルギーに汚染されてない秋山が一発ぶちこんだ。こうなると初めて、ひとつのエラーで流れが変わる。だからデータで証明しようとすると、単に四球、エラーでなく条件を付けなくてはならないだろう。でも「どうしたらみんなのハートがキュンとなってひとつになるか」という条件を一般化するのは容易でない。Mazda Zoom-Zoom スタジアム広島など真っ赤に染める3万人の観客まで「みんな」の一部になっちまうのだからほぼ無理筋だ。だから野球は面白いのだと僕は思う。

もとプロ野球のかたも東京六大学の4番のかたも甲子園ご出場のかたもおられたニューヨークの大会を思い出す。初戦の相手が優勝候補でこっちは初出場でみんなビビりまくってた。初回いきなりストライクが入らず四球と二塁打の5球であっさり1点取られた。みんなのビビりが2倍になったのがわかった。ヤバいと思ったので死に物狂いで4番を三振に取りにいった。要は味方の士気をあげるには大将の首狙いしかないと思った。高めの渾身のストレートで空振りで仕留めた。するとシーンとしていたスタンドでやおら大応援が盛り上がり、みんな「あれっ、意外にいけるんじゃねえか」と思ったろう。次の回にたまたま四球とエラーで逆転した。ベンチのアメリカ人たちが滅茶苦茶に盛り上がり、みんな気持ちがひとつになってお祭りみたいに打ちまくった。マウンドの僕はまったく打たれる気がしなくなって11対2の大番狂わせで勝って翌日の日本語新聞の一面トップになった。これは「流れ」の見本だろう。

あの時、それまで強烈に威勢良かった向こうのヤジが最終回は悲し気な「意地を見せようぜ」に転調し(マウンドはよく聞こえるのだ)、ゲームセット後もしばし茫然としていた相手ベンチはきっと「野球は怖い」と思っただろう。最後の方はとてもそういう風に感じていたので、きっとこの大会のため練習を積まれてきただろう素晴らしいチームだったし、なんとなくプレーヤーとしては他人事でなく、終わった後はみんなとはしゃぐ気になれず猫のように静かにしてた。翌週の2回戦も10対0の5回7奪三振のコールドで、しかもノーノーで当たり前のように勝った。半分アメリカ人のチームだったが彼らは僕のカーブは見たことなかったんだろう。もう強豪だ。明らかに相手がビビってた。それも、マイナスの「流れ」だ。二桁勝ちってこんなにいいものなんか。高校で味わえなかったライオンの気持ちがわかった。

カープはやっぱり秋山が効いたんだろう。やっぱり2百本もヒットを打つ人は只者じゃない。しかもカープはフン詰まりみたいに出なかったホームランをあっさり打ってくれ、みんなも便秘がなおったみたいに出るようになるんだから「流れ」のおかげとしか考えようがない。同じ左の野間や小園の当たりの良さも半端じゃなくなった。ちょっとしたことで実力は均衡したプロ同士でやってるのに二桁勝ちってのは、気持ちがシンクロすると劇的効能があるという証拠だろう。でも相手にそれが起こると逆に二桁負けもあるということだからこのままカープが強いかどうかはまったくわからない。集団心理はちょっとしたことで女心より変わりやすいと思うからだ。監督さんたちがいくら頑張ってもどうもならん世界でこういうことが起きる。ほんとうに命を削る思いだろう。

ことは野球に限らない。どんな人間集団にもそれはある。オーケストラにもそういうものがある。みなの心がシンクロすると、聴衆の心に強く訴える感動的な演奏になったりする。何度かそういうのを聴いたが、原因が指揮者の棒かというとそれだけでもない。いまも昨日のように忘れないのがリッカルド・ムーティがフィラデルフィア管でやったチャイコフスキー4番だ。帰りにまだ足がガクガクしていたぐらい凄かった。あれで、いつもはフツーの馬なりの演奏だったんだなということがバレてしまった(それでも芸になるスーパーオケだ)。その日は朝起きると大雪だった。2mも積もって交通が麻痺し、昔のパリーグの川崎球場みたいに客がいなかったのだ(オケの人数のが多かった)。ムーティがスカスカの客席をふりかえって「今日は来てくれてありがとう」ですぐ始まった4番、オケのみなさんの「ありがとう」がいっぱい詰まって尋常でない白熱の演奏になってしまった。やってみないと分からない。人間はだから面白い。

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広島が3試合連続満塁弾で巨人をスイープ

2022 JUL 17 19:19:46 pm by 東 賢太郎

いやあ気持がいい。交流戦のうっぷんが吹っ飛んだ。ホームラン数がダントツ最下位のカープにとって満塁弾などというのはもとより縁がなかったはずだ。しかも打ったのがレギュラーでない磯村、長野、堂林というのだから競馬なら万馬券3連チャンで大儲けした感じである。磯村は今日も一発打った。素晴らしい集中力、こういうのは才能だ。勝負強いかどうかってのは要は集中力だ。中京大中京で夏の甲子園全国制覇した正捕手だからとんでもない場数踏んでるわけだ、性格が優しそうだがそれは勝負師としてあんまりいいことはないぜ。もっとライバルを踏み倒すぐらいアグレッシブにやって正捕手を獲ってくれ。

しかし今日の先発、野村祐輔クン。なんともタマ遅いなあ、そんなんでコントロール甘けりゃアマだって打たれるよ。ウォーカーと中田のでっかい一発、ありゃ「いらっしゃい、ごっつぁん」のホームランだぜ。どうしちゃったの? 野村は甲子園で破竹の勢いで決勝に進んでダークホースの佐賀北に逆転満塁ホームランで負けたんだったなあ。やっぱり性格がボンボンというか優しそうだ。メンタルは大きいぜ、ピッチャーなんだからもっと嫌な奴になれよって思うけど、難しいんだろうなあ今さら。CSのヤクザ映画は君におすすめだよ。

それで0-4になって力負けしそうな嫌なムードが漂ったが、秋山の二塁打から1点取って空気が変わって10-5で勝った。秋山はホームランバッターではないからプラス効果はどうかなと思っていたがずっといい。みんなが打ってくれればそれでいいわけだ。プロで200安打もするなど普通の人間でないしコミュ力も高そうだから指導力もありそうだ。グラウンドでマクブルームと英語で談笑してるし伊達に渡米してない。カープの監督・コーチの英語力は江戸時代レベルだろうから、2千本安打したらすぐヘッドコーチになってそのまま監督をお願いしたい。

ターリー投手。7回に出てきて丸を一ゴロ、岡本とポランコを三振。素晴らしい。球が速い。ピッチャーはそれが何よりよ。練習球見ただけで相手の空気が変わる。そうだったフランスアなきあと期待できる。トラックマンで155km出て一分間回転数2500ごえ。まだデータの意味をつかみきれてないが、この3連戦の投手を比べるにダントツに凄い数字だ。デビュー当初はコントロールがねと思ったが良くなってきた。まあ真ん中に投げてもそうは打たれないよ。後半戦の7回を頼んだぜ。

森下投手。第2戦、ご苦労さま。相変わらず糸を引くような美しいストレートだ。力感ないフォームで顔も動かず150kmはなかなかいない。それで差し込んでおいて変化球の精度も高いうえにカーブで奥行きを出せる。上質のピッチャーだな。ただしあの日の審判はカーブのゾーンがあいまい(というか、いい加減)だったね。君のは角度が大きいから迷うんだろうね。大城に低め、高め、内側と3球投げて全部見逃しで全部ボール。ありゃないよな、わけわからん。ただ、それでキレたのはいかん。気持ちわかるけどキレたら相手を利するだけ。メンタルだけ鍛えれば大投手の道だ。

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僕の広島カープ愛は海より深い

2022 APR 24 20:20:03 pm by 東 賢太郎

今日はやられたと思った。カープ打線はこのところ開幕当初の起爆力、得点力が見られず、その結果4連敗してしまっていた。DeNAとの当カードは何とか2つ勝っているが、3試合目も取ってはずみをつけたいところだ。

ところが3-3で迎えた延長10回、DeNA牧にホームランが出て4-3とされてしまう。やっぱりだめか。

その裏、ストッパーの三島がマウンドに上がるがコントロールが・・・。よし、いけるぞ。西川、マクブルームが四球で無死1,2塁だ。一番期待できる坂倉だ。外角高め、ボール気味の速球をセンター左に強烈に弾き返して同点!曾澤は敬遠気味の四球で1死満塁だ。

ここで打順は8番ショート小園。このところ、てんで当たってない。疲れてるのか自信が失せたのかどこか痛いのか?あれほど思い切りよく振りぬいてミートしていた速球に差し込まれてる。どうせだめだろう、たのむからゲッツーだけはやめてくれ。

初球。速球を振りぬく。当たった。いい当たりだ。センターフライ。太田が懸命に背走する。あきらめる。サヨナラだ!!

いや、これは嬉しかった。ベイスターズには6連勝だ。

2022/04/24

この試合、本来の殊勲は坂倉だ。延長戦で1点負けの無死1,2塁は緊張する。ゲッツーなら一気にチャンスはしぼむ。今のカープのムードだと負けだろう。ここで打ってくれと全カープファンがはらはらして祈り、打ったら大統領という場面で強烈なヒットをかまし、一打でプレッシャーを打ち砕いたのだから。

勝利に沸くベンチで坂倉がコーチに何か話しかけられ、軽くうなずく場面が画面に映った。「小園で行くぞ」じゃないかなと見ていた。ヒーローインタビューのことだ。小園はお立ち台に一人上がって喜びを爆発させた。ファンとしてたまらないシーンだ。

坂倉 将吾

坂倉だって、去年のセリーグ打率2位とはいえ弱冠23歳の若者である。なのにお兄ちゃん扱いで21才の弟分に花を持たせる。実に素晴らしい。捕手とサードの掛け持ちなど想像もできない難事だが、それを難なくこなしているだけでも凄い。しかも5番を打って、4番が霞むほどの強烈な打球を放っているのである。

これを見て僕は江戸時代の「藩校」を思い出した。たとえば薩摩藩の郷中教育は6歳から23歳までの青少年団で年長者が年少者に学問、徳育、武芸を教える。専門の大人の教師ではなく、自身ばりばりのプレーヤーであるお兄ちゃんが弟を鍛える実践的な教育だ。

絵空事の教育論ではない。なぜなら鹿児島市の街のほんの数ブロックのエリアの子供たちが郷中教育によって育ち、後の西郷隆盛、大久保利通、森有礼、大山巌、東郷平八郎、山本権兵衛になったのだから。

堂林 翔太

カープは伝統的に若手が育つが、そういうことだったのかもしれないと想像するのも楽しい。大枚で釣って他チームの4番打者を獲ってきて使い捨てるどこかのチームがいくら勝ってみせても良き青少年教育にも紳士の鏡にもならないだろう。

そういえば昨日の1番に抜擢された堂林のバックスクリーンへのホームランも最高だ。あれだけ自然体で振ってあそこまで飛ばす才能は半端でない。練習してもできない。インタビューの物言いもいいね、「2年ぶりのお立ち台ですが」といわれてぐっと溜めたところなど、男としてよくわかる。常に気にしている好男子だ。忘れないでくれ、おととしの前半の打撃をやれば世の中に怖いものはないぞ。

上本 崇司

上本は今年の開幕スタートダッシュの文句なしのMVPだ。170センチの体で広陵高で1年からレギュラーで甲子園3回出場。あの厳しい明大でも1年からレギュラーでフル出場。完璧なる野球エリート。さすがである。東大なんか3千人も入るんだ、君のほうがずっとエリートだ。プロではいぶし銀といわれるが、すべての野球の基礎ができてるということ。その自信のほどが打席の表情でわかる。男として本当に格好いい。活躍が最高に嬉しい。

小園 海斗

最後に小園だ。同期である大阪桐蔭の根尾、藤原がいまいちのところ、あたま2つは抜けている。気持ちいいだろう。性格がアグレッシブで、一球必殺の思い切った振りで仕留める、あれは根尾、藤原ですらできないのだから才能としか考えられない。開幕ダッシュのもう一人の立役者だ。それでも打てなくなる。小園が悪くなったとは思わない、ああプロって凄いんだなあと思うだけだ。3番が8番に降格になったが、まあそんなもんなんとも思ってないだろう。我々ファンもなんとも思ってない。21の若者がグラウンドで暴れまくる。それだけで楽しくて仕方ない。エラーしても三振しても、ああこれで小園はひとつ賢くなってくれたな、そう思って見てる。でも今日で乗り越えるんじゃないか、思いっきり自己肯定的に行って2倍にも3倍にも成長してくれ。

こうして書いていて思う。僕の広島カープ愛は海より深い。

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広島カープ、敵地で開幕カード三連勝

2022 MAR 28 13:13:30 pm by 東 賢太郎

中日ドラゴンズの立浪監督が「野球はケンカ」と言ったらしいが、その通りと思う。きのう巨人を最終回の2点で逆転した初勝利はその気迫だったのだろうが実は見ていない。広島・DeNAの終盤が凄いことになっていて目が離せなくなっていたからだ。大興奮の決着をむかえたら「はやくはやく、焼肉行くよ」ってことになっていて、おかげで前日に壮絶な相撲で高安を破った若隆景の優勝決定戦を忘れてしまった。昼間は甲子園があるし忙しいったらない。

14日目の若隆景は平幕優勝のかかる高安の強烈な突き押しに一気に土俵際に追い込まれたが、怒涛の逆襲で寄り切りで勝利した。やばい相撲だった。NPBの方もこの開幕3連戦は、7点差をひっくり返して阪神に勝ったヤクルト、6点差を逆転してオリックスを倒した西武と、同じようなことが起きた。男というのは動物界を見てもケンカに勝たないと子孫は残せない。暴力はいかんと言っても仕方ない、本能なんだから。さすがにヒトがそれじゃあまずいので、その代わりにスポーツがあるというのが僕の基本観だが、各地で壮絶なケンカが行われた。

大興奮と書いた広島・DeNAの第3戦。横浜スタジアムは改修して3万人の観衆で湧いている(この球場はこれで満員。そういえば焼肉屋もびっくりの大盛況で2年ぶりの満員だったが)。2連敗して今日こそはというDeNAファンの熱気のなか、4-4で迎えた8回裏、再起をかけた中崎が登板したのだが、先頭の牧に初球をあっさりホームランされてしまう。カープファンはこの球場の終盤に良い思い出がないし、もうだめか、中崎もツキがないなと思った人が多いだろう。

ところがそうでなかった。9回表、DeNAも再起をかけるストッパー山崎が出てきて、その初球。坂倉がひっぱたいた真正面のショートゴロを捕った大和がなんと足がもつれて尻もち。草野球のおじさんじゃあるまいし、あんなのは見たことない(ちなみに大和の守備は本来はうまい、打球が強かったんだろう)。ラッキー!そこで登場した代打・堂林。おい、何でドーちゃんなの?そうかバントか、でもそんなにうまくないだろ?そこで、明らかにサインの出てるバントを2球も空振りするのである。ツーシームとはいえ。坂倉の気迫が燃やしたせっかくの火が消えかける。なんだお前は、もう帰れ!追い込まれて苦しまぎれのバスターから何でもないショートゴロ。ああゲッツーだ、終わりだ。と思ったが、何が起きたのか、今度は二塁の牧の送球が遅れて1塁セーフである。

次の末包には代打・曾澤を送る。ツーシームは初見じゃ打てないからこれは順当。山崎のストレートは150キロ出てたし悪くない。押し込んでる。しかしツーシームは曲がりが早いのか見切られていて、当たり損ねのサードゴロだったが二死二塁となる。再度、ゲッツーじゃなくて良かった。ここで8番上本だ。当たってる。というよりオーラ、殺気がある。いま、いちばん何かやってくれそうな男だ。ちゃんととらえてセカンド牧の右に強めのゴロ。菊池なら難なくアウトだが、そうはいかず内野安打。これもラッキーだ。そこで迎える9番・長野。ストレートは全部ファウルし、ツーシームは見切って振らない。さすがの「圧」で四球をもぎとった、これがデカかった。二死満塁。嫌なものを感じたのだろう、三浦監督自らマウンドへ向かう。1番・西川。外野は1点もやらない前進守備。

習性でバッターの顔つきを見る。上本、長野、西川。緊張のサドンデスの局面だが、何かやったるぜという感じだ。打者は10回打って7回は失敗するんだが、逆に思えてくる。西川もストレートは遅れてた。だから捨ててたらしい。捕手(戸柱)は直球で押せばいいのに1-1から狙ってたツーシーム。落ちきらないのを拾われて前進のセンターを超える三塁打。この3点で勝負あり。マウンドに殺気が残ってたのか、7-5の2点差なのにクローザー栗林もちょっとおかしい。四球ふたつで一死一二塁としてしまい、佐野、牧、宮崎のクリーンアップを迎え、一発出ると逆転サヨナラという最悪事態となる。昔の悪夢がよぎる。結局、牧にタイムリーが出て1点差とされるが佐野、宮崎は内野フライで試合終了。手強かった。守備の差で勝って、勝ち星は心配した中崎についた。

たかがひと試合でこんなに人間ドラマがあるのだから野球は面白い。牧は守備がこれからだが打撃は本当にいい。去年、栗林がいたんで新人王をとれなかったが、そうでなければ満票で当確だったのが気の毒でならない。DeNAのクリーンアップ(佐野、牧、宮崎)の圧は巨人、ヤクルトなみだと思った。そこに外人ふたりが復帰して二番、六番に座ったら12球団最強である。しかしケガが多いのと、残念ながらピッチャーがいない。でも昨日の先発・坂本は初めて見たが良かったし、最下位予想してしまったが怖い存在である。

この3連戦、カープ打線は何やら気迫が違う。かつて見ないほど振りが鋭い。オープン戦でそう感じたのは小園と上本だけだったが、いまは全員だ。やっぱり「鈴木セイヤが抜けてだめだろう」と解説者が軒並み最下位予想して、この野郎と思ったのがあるんじゃないか。セイヤは数字はメジャー用にちゃんと帳尻合わせたけど、べつにいい所で打ってなかったからね、いなくても大丈夫。かえって全員が奮起してケンカが強くなってよかった。ホームランはあんまり出ないけどね、今年はピッチャーはそこそこ行けるんで、坂倉みたいに内野が尻もちつくぐらい強い打球を打ってれば何かが起きる。

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10連敗の巨人に広島が肉薄

2021 OCT 18 15:15:59 pm by 東 賢太郎

チームスポーツには闘将が必要だ。みんなで仲良く民主的になんてのはないのである。その男の覇気と活躍でチームに勇気がみなぎって勝ってしまう、たとえば、V9の巨人には長嶋茂雄、黄金時代の西武には秋山幸二がいたし、カープ黄金時代は山本浩二がそれだった。単なる4番やエースとはちょっとちがう。王、江川、イチロー、松井、松坂、マエケンはそれではない。大谷翔平もそうかどうかチームが弱くてわからない。喧嘩が強い清原や近鉄のデービスも違う。甲子園制覇した時の斎藤佑樹、楽天で全勝した年の田中将大、昨年までのホークス柳田はそれだ。

いまヤクルトの闘将は、終身名誉キャプテンの青木でも、キャプテンの山田でも、選手会長の中村でもない。21才の村上だ。そう思ったのは、例の近本のサイン盗み疑惑で両チームに一触即発の緊張が走った阪神戦である。動作でコースを教えてると文句をつけた村上に矢野監督が「やっとるわけないやろ、このボケがぁ」とえげつない口調で罵声を浴びせると、村上は何だこの野郎とばかりに三塁から阪神ベンチに向かってつかつかと歩いていった。大人しいヤクルトにああいう選手はいない。

阪神にもいない。でもチームは元気がいいのは、あそこで強烈な大阪弁をかます矢野監督こそが闘将だからである。中日は森監督は怖かったが、今はいないから投手はいいのに打線が弱い。DeNAはラミレス闘将だったが英語だから通じず、三浦番長はリーゼントに闘魂は感じるもののまだ未知数である。巨人はどうか。阿部、坂本、菅野、岡本、丸。ぜんぜん無理である。原監督が闘将なのだ。罵声は不要だ。読売が全権委任する隠然たる球界政治力・人事力は絶大で、日ハムで出場停止処分になった中田翔が移籍するや試合に出てしまう。公文書改竄だろうが公職選挙法違反だろうがものともせず無視できる安倍元首相並みの絶対君主であり、怖くて誰も逆らえないのである。

では我が広島カープはどうか。いたのだ。黒田である。ビーンボールで藤浪を恫喝したらイップスになってしまった。同じのを投げられて転倒した大瀬良は笑顔で気にするなだ、なんていい奴だろう。黒田がパワハラなのではない、闘将とはそういうものであり、野球は格闘技なのだ。カープの3連覇は闘将・黒田、副将・新井、戦闘員タナキクマルがいたからできた。去年今年の負けは佐々岡監督の力量のせいではない。彼は優しいし、闘将がいなくなったから自動的に弱くなったのである。

いまカープが登り調子である。鈴木誠也という新たな闘将が現れたからだ。彼は元からいたが、若手の躍動がそうさせたと思う。小園の怖いものなしの不敵な面構え、初球からガンガンいく強靭なバットスイング、身体能力を尽くした遊撃守備は相手が嫌がるレベルにある。ツボに来たらスタンドだねという不気味な雰囲気が濃厚に漂う林も嫌だろう。2人とも高卒3年目の21才だが、かようなことに年齢など関係ない。23才の坂倉はその刺激か打率3割を打って首位打者争いに加わっている。副将が菊池と西川で若頭が坂倉、戦闘員の先鋒が小園・林といい形にはまってきた。投手も高卒2年目でハタチの玉村がローテに入った。ベテランも守備では上本が外野で凄い球際処理を見せてくれ感動ものだ。いずれも、監督やコーチの説教で出るものではない、闘将の覇気と活躍のなせる業だ。

それはケガの功名であった。昨年からのカープ低迷の原因はフロントの外人獲得戦略の失敗にある。去年のスコットはジョンソンの代わりだろうがストライクも入らない欠陥品だ。今年のクロンはエルドレッドの推薦で彼同様に市民には愛されそうだが彼以上に変化球は打てそうもない。メヒアは万年2軍の帝王だ。だから序盤から弱かったわけだが、ということは投打とも和製になるから若手にチャンスがあった。さらにそこを交流戦前のコロナ感染が襲った。西武戦が延期になるほど一軍がスカスカになり、小園、林、羽月、大森、宇草、玉村、高橋らが穴埋めに昇格して出番が与えられたのだった。五輪ブレークで主力5人が抜けたのも彼らには良かった。練習試合で坂倉、小園、林はクリーンアップを打って躍動し、いつの間にかレギュラーに収まり、松山、田中、安部、堂林、長野は完全に控えに追いやられていた。

その若手の急激な台頭で五輪まで眠っていた獅子が目覚めた。おとといの東京ドームでの巨人戦、試合前の「君が代」でふがいなかった五輪の記憶のスイッチでも入ったんだろうか、目を閉じた鈴木誠也の鬼気迫る集中ぶりは画面で見ていて半端でなかった。これは打つなと思っていたら戸根の簡単でない内角をノーステップで軽く振ってライナーで左翼上段に叩き込んだ。強烈なスイングスピードは巨人ベンチの度肝を抜いたろう。あれだ。あれこそが、正調の闘将の姿である。不安は8回の投手だけだ。島内は四球を出して失点が続いたがきのうは良かった。球は速い。コントロールと気の持ちようだけだ。これは佐々岡がやらなくては誰もできない。締めれば誠也はもっと打つだろう。

9連敗の巨人は変だった。試合前、ベンチが映った。右端に原と阿部。3メートルぐらい無人で、左の方にぎっしりと三密状態の選手たち。コーチの姿はひとりもない。原続投の報道にファンがブーイングらしいが、読売の野球本部長なのだからクビはないだろう。だからコーチは「やばい、俺が切られるか」と逃げるのだ。そしてそのカープ戦、追い上げはしたが8-7で負けて10連敗。あれだけ盛大に他球団の4番とエースを札束で獲りまくったのに全員ドボンしてそれだ。9月以降は8勝24敗7分の大失速だったが、トドメは10月14日の阪神戦で髙橋遥人、岩崎、スアレスに食らった血も凍る1安打完封14奪三振だろう。坂本、丸、岡本で7三振。この3人が闘将もへったくれもないのである。

きのう4位のカープは阪神にも4-2で勝って3位巨人と2.5ゲーム差になった。ヤクルト・阪神はCS確定だ。弱い巨人に3位になって欲しいからカープ戦は死力を尽くして潰しにくるだろう。今年は最後の最後に面白いことになった。受けて立って欲しい。残り7試合を全部勝てばCSだって制するかもしれない。

 

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