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カテゴリー: ______高校野球

思い出となった第100回夏の甲子園大会

2024 AUG 23 15:15:29 pm by 東 賢太郎

第100回の夏の甲子園大会が終わった。昨年の慶応旋風がつい先日のようだが、今年は京都国際高校と関東第一高校の息詰まる素晴らしい決勝戦となり、0-0でタイブレークとなり、2-1で京都国際が優勝した。

ネット裏のすぐ目の前で初戦を見た関東第一高校が接戦をどんどん勝ち抜いて決勝に進出したのも嬉しかったし、応援した北陸高校が強かったこともよくわかった。最高の思い出になった。

京都国際高校。おめでとう、強かった。僕はピッチャーしか興味ない。それもストレート。それも球速でなく球質である。毎年見てるが、あ、これはいいな、打てないなと思うのは大会で一人か二人しかいない。それがこの高校は二人いた。

どの試合だったか、背番号11番の西村投手を見た。9回になっても135キロにみんな差し込まれており、いつまでも見ていたいピッチャーだと思った。彼はチェンジアップばかりが評判だが、そもそも直球が速くないと通用しない。

ところが決勝で初めて見た1番の中崎の135キロはもっと凄かった。空振りを見て元巨人の杉内を思い出した。4番高橋を空振り三振に取ったインローのクロスファイヤーは球威も制球も鳥肌ものだ、あれはプロでも打てんと見た。

関東第一高校は先発・10番の畠中。走者を出して押されながらも断ち切って6回零封した胆力が見事。救援の1番・坂井の148キロは打たれなかった。タイブレークの押し出しで坂井を替えなくてもよかったかなと思うが、まあ結果論だ。

両校、プロがあり得る京都国際の両左腕、関東一高の坂井とサード高橋はいたがスターは他チームもいた。その中で両校は投打のバランスが良く、ここぞの場面の走塁、堅守で精神力も鍛え抜かれていた。いい野球を見せていただいた。

甲子園に行けた、感動、感謝!

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甲子園に行けた、感動、感謝!

2024 AUG 13 17:17:48 pm by 東 賢太郎

このブログは8月6日。北陸高校と関東一高の組み合わせを縁だと書いた。

夏が来れば思い出す はるかで遠い高校野球

そうしたら10日に「チケット取れました」とメールが。

きのう、おっとり刀で新横浜を朝8時の新幹線に。12時について昼飯。今年から暑さ対策で前半、後半で開始時間の間をとる。皆さんと喫茶で時間調整して前の試合の5回あたりに球場に入る。なんとバックネット裏の一番前だ、ちょっと良すぎねえか。

すぐそこで野球やってる。というか、あっというまに自分もやってる感に没入。シューっとボールが空気を切り裂き、パーンとピストルみたいなミットの音が炸裂。ボールやバットの重さまで伝わる。蔵の奥に50年眠っていた宝ものが出てきた。

関東一はでかい。モモと尻がすごい。現場の人間はまずそういう処に目が行く。

この子が友人の子息、大地くん。

くるぶしの骨折で背番号が14になったが試合には出てたというから立派である。本番は4でよかった。レギュラーで甲子園だけでも全国100校で1校、関東一高のプロ注目のエース坂井投手から快心のヒットは一生ものの勲章である。野球センス抜群と見たが親父さんによると大学では野球やらない。金融界の大物を目指すか。

ずっと三塁ベンチにいたような錯覚に陥ってしまい、仕事が慌ただしいので日帰りしたが一晩寝ても心がざわついてる。親父さんと大地くんに感謝しかない。

 

PS

行きも帰りも南海トラフ地震のおそれとやらで新幹線が遅れ、帰宅は0時を回った。そういえば去年の今頃は岐阜に出張し、初めての名古屋バンテリンドームで広島対中日を見たっけと思い出して日記を見ると、この甲子園と同じ8月12日のことだった。

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慶応高校の甲子園優勝おめでとう

2023 AUG 24 0:00:23 am by 東 賢太郎

驚いた。試合終了後、興奮冷めやらぬ中のインタビューで主将から「この優勝で高校野球の楽しさを広く知ってもらえたら嬉しいです」という言葉が出てくる。大舞台のキメの一言だ、高校生がこれって大変なことじゃないか。日本中がエンジョイ・ベースボールは口先だけでないことを知って、野球に限らず新しいスピリットが世の中を変えていくんじゃないか。古き良きものは守っても、古いだけにしがみつくものは淘汰されていくんじゃないか、そんな気がしてならない。提唱した監督も立派だし、それを甲子園で身をもって行い、結果を出した選手たち、ほんとうにカッコいい。

仙台育英は強かった。今日先発の10番の彼、好投手だ、準決勝を見ていてこりゃ打てないなと思った。打線の圧も群を抜いていた。慶応は先制したが3回あたりから押されてる感じがあった。ヒットで出た走者を走らせて刺されたあたりでちょっと焦りがあるかなと見た。ひとつ歯車が狂えば逆の展開もあったが、そこで圧に負けなかった慶応は胆力が鍛えられていた。エンジョイ・ベースボールで猛練習の成果が自然に出せたのかどうか、グラウンドで歯を見せるなと言われて育った世代には屈託ない笑顔がまぶしかった。

エンジョイ(楽しめ)というのは命令されてできるものではない。できる状態になって初めてできる。その状態をどう作るか。それは心の持ちようだから練習しながら自分で考えろということではないか。孔子様も説く。何人もこれを楽しむ者に如かず。だからそうなれば最強なのだが、楽しんでますと独りよがりで思うだけなら誰でもできるから、その上に「有言実行」がなくては意味ないだろう。これは僕のスナイパー主義と通じるものがある。この大会、なにくれとなく慶応を応援してきたのはそういう気もしていたからだ。

有言実行。これは人の道だ。動物は話さないからそれはない。人は話すからある。だからそれは両者を仕分けするシンボルである。昨今の政治を見よ、有言不実行、無言実行、無言不実行の嵐である。嘘八百、強行採決、都合悪いと報道せず。みなさん、この連中はどっちに仕分けすべきなんだろうか?大変申しわけないが、連中はガチでスポーツやったことがあるんだろうか?疑わしいように思えてならない。

慶応高校のみなさん、清々しいものを見せていただきました。人にしかできないスポーツという素晴らしい文化を通じて、日本国が末永く人の道を堂々と歩んでいけることを願ってやみません。

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慶応高校の毛の長さという甚大な問題

2023 AUG 21 17:17:49 pm by 東 賢太郎

甲子園を見ているとけっこう毛が長い。今日の慶応対土浦日大なんか両チームとも長い。かつてよりの時流といえばそれまでだが、甲子園の準決勝でこれはとても驚きだ。なにせ僕の時代、電車に乗っても硬式野球部の奴らはお互いにすぐわかる。頭が坊主(丸刈り)の集団なんて、お坊さんはあんまり群れないだろうしめったにいないからで、記章やカバンで校名を見て緊張が走ったりした。僕はスポ刈りだった。それでも慶応の子よりずっと短かい。しかしだ、それでもなんだか坊主の方が強そうに見えるのである。何の根拠もないが毛を刈ると戦闘員っぽい気持ちになるのはたしかであった。それが集まると戦闘集団の一体感が出ることは戦う上で大きなメリットだからか軍隊はGIカットなど世界的にそうだ。

坊主も毛の長さに段階があって「五分刈り」からテカテカに青光りする「五厘刈り」まである。清原や中田翔(左)の五厘は球界の紳士のイメージはないが読売は禁止してないと思われる。軍人の髪形だが高校野球の原点でもあり日本文化の奥底を見る。マッカーサーはA級戦犯を思想犯まで処刑し、古来からの日本文化を焚書で抹殺しようと試みた。そこで大政翼賛会から一転し、御用新聞として生き残りを図った緒方竹虎の朝日新聞、正力松太郎の読売新聞がそれぞれ「夏の甲子園大会」、「読売巨人軍」の母体となって野球を振興した。日本の軍部を解体して非武装化し、国民を米国化したいGHQの戦略に取り入ったのだろうが、そこで軍隊刈りが禁じられなかったのは興味深い。

高校で入部してまず圧倒されたのが3年生の頭だ。全員が坊主。すれ違えば誰しも道を譲る。中でも主将Hさんの迫力あるビジュアルは半端でなく、強打は相手投手がビビるせいと思ったほどだ。ところが不思議なことに僕等の代はスポ刈りOKになった。うさぎ跳びや水飲めないなど「野球部あるある」はみなあったからチョロい部ではなく、たぶん3年が強烈すぎて2年部員が少なく、長髪世代の我々新入生をたくさん勧誘する作戦に出たのではないか。それでたしか15人ぐらいは入った。それでも夏からの新チームは捕手HさんとK、左翼Sさん、右翼Yの五厘組をはじめほとんどが坊主で、スポ刈りは主将の遊撃Sさん、一塁Tさん、二塁OとY、外野SとHだったが、彼らも坊主姿をどこかで見た気はする。

かように高校野球はGHQの検閲をくぐりぬけて密かに生き残った軍国調世界である。日大アメフト部の問題で「体育会カルチャーは消せ」のGHQ並の激震が走ったが、体育会どころか軍隊である高校野球はけしからんという声はあんまりなかった。なぜなら日本的な保守精神の深淵に触れるものがあるからだ。我々の親世代は甲子園のプレーボールのサイレンを聞くと空襲警報を思いだした。戦闘開始の効果音には最適で、プロレスと同様にサーカスとして国民のガス抜きにする意図があったのではないかと思われるが、盧溝橋事件の年はサイレンの代わりに進軍ラッパが鳴ったから野球に軍隊を重ねて見る文化は戦前から日本にはもうあった。本塁に向けて血気盛んな五厘刈りの兵士たちが走ってきて整列、礼、そしてサイレンとともに初球が投じられ両者が激突する。その舞台には南方戦線のジャングルを行軍する兵士を焦がした灼熱の太陽、むっとする草いきれと地面の照り返しがふさわしい。だから野球は夏だ。夏こそ野球だ。僕はそのイメージが体に染みついてどうにも消えない。

僕的に強そうに見えないが

いま思うと、坊主のみならず「野球部あるある」は立派な全体主義である。毛を刈るとうまくなるわけでないと考えるのは個人主義だ。どっちが正しいかは理屈で結論が出ないからどっちが強いかで決まる。当時の強豪校は例外なく坊主である。だから坊主とやると負ける。「そうだろ?だから言っただろ、毛を切るとうまくなるんだよ」「なるほど、そうか」。そんなはずないことでもみな信じるようになる。ナチスにしろ大日本帝国にしろ、全体主義国家はそうして成り立ってきた。試合に出ない大衆もその一員であることで安心し、総帥を信じ、強いという心地良さを味わっていた。でも強さと毛の長さは科学的に関係ないのだからいずれ嘘がばれる。全体主義国家はそうして終焉を迎える。

慶応高校はそれをぶっ壊したと僕には見える。たかが毛の長さの話ではない。

 

 

 

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2007年、佐賀北が勝った甲子園

2020 MAY 3 13:13:33 pm by 東 賢太郎

ロッテのサブローさんから体調を心配してメールをいただいた。今は楽天イーグルスだから仙台に缶詰め状態とのこと。「絶対に感染しないように気をつけてください!」。プロ野球界ってのはこうなんだな、なんともありがたい。

彼も1994年、PL学園の1番センターでセンバツに出てベスト4になっている。1学年上に松井稼頭央、1学年下に福留孝介がいた。

今年のセンバツの選手たち、本当に気の毒だ。夏はせめて無観客でやらせてあげられないだろうか。そして秋に春の出場校でもう一回なんてどうだろう。プロを無観客でやるなら考えてあげてほしいが・・無理なのかな。

2007年の夏の佐賀北と広陵の決勝戦をBSでやっていた。8回に逆転満塁ホームランで佐賀北が勝った試合だ。広陵はバッテリーがカープの野村と巨人の小林、ショートはカープの上本、サードも元カープの土生、控え投手にカープの中田廉がいた。対する佐賀北は大会前はノーマークの県立高校であった。

当時多忙であったとみえこの試合は見ていない。色々発見して面白い。打順は7番野村、8番小林だ。野村はこの大会20打数10安打でこの試合も左中間2塁打で2打点、PLの4番だったマエケンを思わせる打撃センスもある。

野村の球速は135だが質が良く、切れ抜群の変化球が4種類あり7回まで1安打10奪三振ですいすい、打たれる気配まるでなしだ。前日完投しててこれか、すばらしいピッチャーだ。なんでこれで打たれたの?そういう目線で見る魔の8回、スコアは4-0である。

まず三振(4者連続だったかな)。次ぎ、微妙に高めに抜ける感じあり。満を持した快心かつ細心の外角低め直球をボールと判定される。ここで野村、小林のがっくりが顔に出る。これだったのか・・・

13年も前のビデオだけど、結果も知っているのだけど、手に汗握る。こんなシーンは日常にそうはない。野村も小林も、その後プロで数々の活躍を見せてくれているが、やっぱりあの満塁ホームランはずっしり残る。

悔しいシーンをこうやって末代も見られてしまうけど、あのまま野村が完封してたらここまで人々の記憶に残ったろうか?公立校をプロ予備軍が潰して悪役として記憶されたんじゃないか?

佐賀北の選手はどうなったんだろう?

調べてみると打った副島は佐賀で指導者になっている。あの場面で打った、それだけでも球史に残る打者と思う。野村に投げ勝った優勝投手の久保は筑波大に進んだが、明大に進んだ野村を「すごい投手。僕とは全然レベルが違う。プロなんて実力的に考えていない」と言ったそうだ。その後やはり指導者になった。

http://「3人が甲子園に集まることはない」あの夏の佐賀北OBが語った …

プロに行く人はいなくても頂点に立った、これを見ると高校野球は技術論だけで語れない、選手、指導者の方々の入魂の、一個の完成した世界であることが見えてくる。

ひょっとして今年もこういうドラマがあったかと思うと、つくづくコロナが憎い。

 

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これで韓国にサヨナラ負け?

2019 SEP 7 0:00:33 am by 東 賢太郎

野球のU-18ワールドカップは韓国にサヨナラ負けだ。

無残にやられた最後しか見てないが。

大船渡の佐々木投手にはこう書いていて、期待の大物だ。

http://投げなかった大船渡・佐々木投手に

しかし、非常に意味深いこの日の韓国戦、先発して指のマメで1イニングで降板というのはちょっとね、いかにも寂しいね、投げすぎでできるもんでもないんで、むしろ投げてたんかいなと思っちまう。そうじゃないのなら運のなさに同情する。

西投手、勝負師だ。凄い。外野でもね、持っとるね、プロで行けるね。奥川投手、並外れて素晴らしい。ぶっちぎりで今大会No1投手である。性格もプロ向きっぽいし投げ方も長持ちしそうだなあ、顔もマー君にそっくりだしすぐメジャーで通用しそうだ。ドラフトの目玉でしょう。

そんなによく見てないが、これだけの投手もってて台湾、韓国に負けってよくわからん。

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投げなかった大船渡・佐々木投手に

2019 AUG 4 18:18:50 pm by 東 賢太郎

甲子園大会につき私見を述べる。高校で国民注視の大会がある文化は世界に日本しかない(駅伝もそう)。日本高野連の加盟校数、つまり硬式野球部がある高校の数は4,000前後で推移している。ちなみに2018年の韓国は77、台湾は102であるがWBC、五輪で4,000:100の実力差はない。

野球は9人でやる。そのエリートの9人が集まるかどうかに国の人口は確率的に関係があるが、まずは世界水準の9人さえいればいい。確率といっても9人がどこから出現するかは予測がつかない。歴代の日本人高校生で160キロの球速を記録した選手はともに岩手県出身の花巻東・大谷翔平と大船渡・佐々木朗希の2人しかいないが、岩手県は硬式野球部がある高校の数は71である。

次に肝要なことは彼らの技能習得環境があるか否かだが、韓国、台湾の9人が日本の9人と大差ないのであれば次点の9人の水準もほぼ同等、次々点の9人になってもほぼ同じだろう。それを何度も繰り返せばどこかで人口比による差が出てくるはずだが、77、102チーム(約900人)まで行っても劣化はないということだ。102チームは日本なら甲子園地区大会の決勝進出校レベルで意外だがそうだということをWBC、五輪の韓国、台湾の戦績は示している。

つまり、人口比で凡そ日本:韓国:台湾=4:2:1だが長期戦を行えば9人の戦績はほぼこの比率(出現確率)に近づき、硬式野球部がある高校の数は有意な差をもたらさないと推測される。つまり、おおまかな数字にはなるが、人口1億2千万の国で、エリートの9人の次点水準の選手で作れるチーム数は台湾の4倍の400ほどであり、日本の残り3,600チームは9人の技能習得環境には関与しない。あるからといってサムライ・ジャパンは強くならないし、ないからすそ野が狭い韓国、台湾が弱いということもない。

つまり、自分もその一員であったことでこう書くのをお許しいただきたいが、残り3,600チームはエリート層とは無縁の一般参加者で地区大会3回戦あたりで消える水準のチームであり、しかし、思い出という残像を残す場としては人生の一期一会、良くも悪くも一生ものだからまさしく真剣である。サドン・デスのトーナメントゆえに常連校が初戦敗退なんてハプニングも時にはあり、努力と汗と涙という日本人の琴線に触れる要素が満載だ。そこに甲子園大会が国民的イベントたりうる特殊性があるのである。

一般参加者だったのに僕は毎年この時期になるとそわそわし、エリート層のプレーを憧れの目で眺める。今年の西東京代表の国学院久我山には1年の秋季大会で9-0で負けた。背番号1。公式戦初先発。高校を背負って投げる重責。人生で9点も取られたのはあの試合だけ。でも3回まで0-0であり、全国レベルも大したことないという自信も生んだ。それが高校1年の残像になったのだから人間形成にも影響があっただろう。

地区予選決勝で試合に出られなかった大船渡・佐々木朗希投手がどんな残像を懐いて生きていくのかは想像つかないが、投手にとって試合で投げられない以上の苦しみはない。監督はもちろんそれを知っており、もちろん自分も甲子園へ行きたいのだから、何か理由があったのだろう。それは何だろう?

佐々木しかエース級はいないと仮定するとこうなる。

(1)【佐々木を決勝まで温存】

決勝は勝てるが準決勝までに負けるかもしれない=リスク(X)。

(2)【佐々木を温存しない】

決勝までは進めるが疲弊して佐々木が決勝で投げられない=リスク(Y)。

監督はX>Yと考えたのだろう。決勝の相手より準決勝までの相手の方が普通は格下である。格下を他の投手でまかない、決勝を佐々木で甲子園にというのが順当だ。しかし他の投手にはその力はない、そう思ったはずだ。格下でその程度の信用の投手たちが決勝で勝つということは、表向きはなんと語ろうが、現場の厳しい現実ではあり得ないことであって、X>Yと思った時点で将棋は「詰み」だったのである。佐々木なしでは甲子園は元来が無理であり、佐々木がいてもそうだったのかもしれない。唯一、佐々木の疲弊が登板限度内であることが救済の道だったが、何かの事情で、監督は「そうではない」と判断されたのだ。であれば未来のある佐々木の健康を守る。おそらく高校最後の試合になる決勝の舞台に他の選手を(打席にも)立たせてあげる。それが打てる最善の策だったのではないかと推察する。

それに対して批判が飛び交っているようだが、僕自身が登板過多でヒジと肩を壊してしまった経験者だから思うところがある。「連戦連投は古い野球だ」「高校野球は教育の場だ」「子供を守るのが監督の義務だ」。たしかに。そういう前提でいまの甲子園大会は国民的イベントになっているのであり、その末端で思い出をいただいた身として何の異論もない。しかしだ、僕は高2で野球ができなくなってしまったがそれで当時の監督を恨んでるなんてことはまったくない。むしろ評価してくださり、全試合エースとして起用してくださったことに感謝の気持ちしかない。試合開始前のメンバー発表で「6番ピッチャー東」でない試合などひとつとして望まなかったし、マウンドで肩に異常を感じた試合以外に途中降板させられたこともない、あれほどの信頼をいただいた経験はその後に野球以外でも自信になった。故障は自己責任だった。

登板過多の故障者は人災の被害者だ、だから連投させる指導者は古い体育会体質をいまだに持った加害者だと主張する人がたくさんいる。そういう人たちがどういうわけで体育会が嫌いになったかは知らないが、故障者として言おう。被害者などとは無礼千万である。別に義務で野球部に入ったわけではないし、パワハラで登板させられたのでもない。好きだから入部し、練習しまくってマウンドに立ち、高校で一人しかなれないエースの座を勝ち取ったのである。監督に命令されたら従うしかない?されなくたってマウンドにはいつも立ちたいのだ。そういう習性をお持ちでない人には逆立ちしてもわからないだろうが、そのことと、非合理な練習方法、スポーツマンシップなき戦法、理不尽な上下関係、暴力行為の是非とは全然別な話である。佐々木投手の件は何ら問題ではないのに、それをごっちゃにする人が騒ぐから宗教論争化している。

投球過多はいかんと騒ぐのはは残業過多という労働問題の扱われ方と似ている。①労働が苦痛で悪だと思う人には残業も悪だ。逆に②もっと時給が欲しい人や実績をあげたい人は残業したい。③時間労働と思ってない作家や芸術家やスポーツ選手や経営者には残業の概念すらない。②③の人々個人にとっての本音としては、①の時短闘争や残業廃止の労組活動ははっきり言ってどうでもいいのであって、そういう人に守ってもらう必要もない。弱い立場かもしれない①の人にとって大事であることはフェアネスの精神から尊重するし、経営者としてはもちろん決まりになればコンプライアンスの精神をもって遵守するが、それを国民全般の重大事かのように祭り上げ、パワハラ・セクハラのように「言われたらアウト」で、反対してはいけないことであるかの如くに③人種である僕個人の価値観にまで侵食されるのはファシズムであって不快であること極まりなく、基本的人権を理由に断固として排除したい。

大船渡高校監督の決断は美談でもパワハラ阻止でも体育会精神誹謗中傷のためのサンプルでもなく、上述のような合理的、理性的なご判断の結果と思う。その意味において、賛同したい。今の高校野球はエース級を複数持たないと勝てないが、投手というのは資質が必要であって、140キロ出るからといくら練習してもできるとは思わない。去年の夏の滋賀・近江高校はハイレベルの投手が4人もいてひょっとして大阪桐蔭が負けるとするとここかなと楽しみだったが、エース吉田で評判の金足農業のツーランスクイズに敗退してしまった。無念だったろうが勝負はそんなものだ。うまくできたもので甲子園は無念の敗者のほうがけっこう記憶に残っている。古くは三沢高校の太田幸司、雨で負けた作新の江川、5敬遠で負けた星稜の松井、自らの三振で散ったマー君、7回まで被安打わずか1が逆転満塁本塁打で終わった広陵の野村祐輔・・・。投げられなかった大船渡の佐々木朗希も行く末に世界の球界の大物になって、そうか、そういえばそんなことあったよねという存在になってくれるのではないか。

 

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金足農業・吉田投手の奇跡のストレート賛

2018 AUG 22 23:23:29 pm by 東 賢太郎

今大会、目は金足農業の吉田投手のストレートにクギづけでした。一に吉田、二に吉田、三、四がなくて五に吉田。あれを見てしまうと他の投手なんか見る気もしない、プロでもあんな素晴らしいストレートは見ない、スピードガンが速いかどうかでなく、マニアの僕が「見ていたい」ことがバロメーター。もう吉田の直球は何百球でも見続けていたい。お辞儀してた大谷の165キロよりずっと上。快感の極致。

打者の反応、特に高めの空振りの感じは作新学院の江川以来でしょう。変化球も組み立てのうまさも守備もほめられてますが、すべてはあの速くて「異常に」伸びるストレートあってこそ。美しい!150キロのマシンを手前に置いて対策を練った日大三の打者がお手上げでした、仕方ないね、マシンの球はあんな「異常な」伸びはあり得ないから。本当に一世一代の素晴らしいものを見せてもらいました。勝敗なんてぜんぜんどうでもいい。ありがとう、感謝感激です。

06年に全国を興奮のるつぼにしたマー君vsハンカチ王子はエース君臨型同志の戦いでしたが、今大会はエース君臨型とプロ野球型(複数投手制)の戦いでした。後者は勝つための合理主義で、必然の戦略と思います。しかし、多くの日本人は合理主義がきらいです。それに敢然と立ち向かい勝利する、しかも東北の農業高校だなんて素敵、それにぴったりじゃないのという図式が地元はもちろん国民的に琴線に触れたという大会でした。

僕は大会前半は4人投手制で大物食いを次々と成し遂げた近江高校を応援してました。選抜で花巻東に参考記録ながらノーヒットノーランを達成した彦根東が負けて出てきた滋賀の高校ということもありました。戦略も優れているが運も勢いもあって、大阪桐蔭とやったら勝つ可能性もあったと思います。その近江をツーランスクイズでうっちゃってしまった金足農業も、時が時なら勝つ可能性は十分あったと思います。

今大会の世間の関心は、合理主義という敵に武蔵坊弁慶のように立ちはだかる吉田投手がどこまで倒れずにもつかだったのです。結局「その時」は決勝戦の初回にやってきてしまった。これは紛れもなく、打った大阪桐蔭打線が凄かった。優勝して当然というプレッシャーをはねのけた勝負強さはあっぱれ。彼らも吉田がベストでないのはわかるので、本調子でやりたかったと思ったのではないでしょうか。その位に懐の深さを感じるウルトラ強力打線、本当に立派な優勝でした。おめでとう!

高めのストレートは投手のプライドである

 

赤ちゃん、野球、また野球

2018 AUG 19 1:01:33 am by 東 賢太郎

知り合いからおめでたの知らせがあって、家内と娘とで病院にお見舞いしました。元気でかわいい女の子で抱っこさせてもらいました。この感じは3人の子供のとき以来ですが、どことなく覚えています。ところがだ、その写真を見ると抱っこがどうもぎこちないのですね。かたや家内はというと絵になるほど盤石の安定感であり、こればっかりは足元にも及ばないと思いました。

さてそこからです。昨日のドラゴンズの件があり、山井投手が先発というのが気になって東京ドームへ向かいました。しかし山井は初回の投球練習からあんまりピリッとしない感じ。対する菅野も3回までに70球ぐらい投じていまひとつでした。山井は2回に早くもマギー、阿部、長野にホームランを食らい5失点でKO。これはちょっとこたえたかもしれません。

菅野は立ち直り、結局平田の2本だけの2安打完封でした。ここ1か月勝てておらずどうしたのかと思っていましたがやっぱり球威が戻ると抑えますね。かたや山井は心配だし、救援したかつての名リリーバー浅尾も130台しか出ず明らかに肩が痛い投げ方で岡本に1発浴びました。気の毒でなりません。結局、巨人が5本塁打で10-0の圧勝でした。昨日ニューオータニのロビーで見かけたもうひとり三ツ間投手も投げ、ついに全員が登板。これも何だったかわかりませんが帳尻が合いました。

 

帰りに東京ドームにある野球殿堂博物館に寄り、すぐ退散するつもりがけっこうまじめに見てしまいます。しかし甲子園の準々決勝第4試合、金足農業vs近江が気になっており、そっちはスマホで実況を見ながらです。吉田が連投にもかかわらず好投しましたが終盤で2-1と負けておりました。そう思いながらも博物館も捨てがたいものがあり、興味あるコーナーはじっくり見てしまうのです。

 

出口に向かうとTVがあって、大勢が取り囲んで見入っておりました。見るとスコアはまだ2-1で金足の攻撃、9回裏ノーアウト1塁という絶妙の場面です。これはここで張り付いて見るしかないではないですか!

次打者がレフト前ヒットで1,2塁。次はバントのサインでしたが投手が定まらなくなってきて四球。無死満塁。次はスクイズだろうというのは衆目の一致です。やった。決まった。同点!と思った瞬間あ然でした、まさかツーランスクイズとは!それで逆転サヨナラです。またまた今日もマンガみたいな事件で決着、いったいこのチームって・・・!

 

テレビコーナーに歓声が上がり、やがて大きなどよめきと変わり、ほとんどの人が金足農業の応援だったことがわかりました。ちょっと近江はかわいそうだ。三々五々散った後もまだ見入ってる人たちが・・・。

 

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妙な一日(金足農業と中日ドラゴンズ)

2018 AUG 18 1:01:20 am by 東 賢太郎

ホテルの2階にあるファミマにサンドイッチを買いに行ったところ、ロビーに続くエスカレーターのあたりでブルーのユニフォーム姿の大柄な男たち数人とすれ違いました。よく見ると胸に「CHUNICHI(中日ドラゴンズ)」とあります。みんなぞろぞろとバスに足早に向かってるのです。ニューオータニは定宿みたいですね、以前も見かけたっけ。顔まではわからないので背番号だけスマホにひかえておきました。実は当夜はその中日・巨人戦を東京ドームで観ようと思っていたのです。

ところが昼頃にTVで金足農業・横浜の試合の最後の所をたまたま見てしまってました。吉田投手が気になっておりましたが横浜のサウスポーもいい球を放ってる。応援してた金足は8回裏で4-2で押され気味。大事なバントは失敗するわで「もうだめだな」と思ってたら出た、まさかの逆転スリーラン。度肝を抜かれ、9回は吉田が3者連続三振で締め。こんなの漫画でもマンガチックすぎて笑ってしまうでしょ。

野球の神様は年に1回ぐらい野球好きにこういうご褒美をくれるのです。でもこれは5年に1度あるかないかのスペシャルバージョンだ、もう完全におなかいっぱいになりました。ほな、ごめんなさい、中日・巨人はやめ。今日はまっすぐ帰ってあのホームランの余韻に浸りたい、そんな心持ちになってしまったのでチケットも置いてきてました。

そういうところに突然どやどやとドラゴンズ選手軍団が目の前に現れてまうのだからこれもマンガです。そういやあ松坂は見なかった、きのう投げて勝ち投手だからかなあ。そういえば金足に負けたの、松坂の横浜だったよなあ。そうそう、エスカレーターですれ違った連中、あれ誰だ?スマホに記録した背番号を調べたらこれまたなんと笠原くんとマルチネスくんでした。今日はその笠原が先発、マルチネスが抑えで好投したらしく、中日が6-1で勝ち。笠原はヒーローのお立ち台でした。なんか妙だなあ。

そう、もうひとり背番号書いてた、29番、なるほど山井くんだ。彼は明日先発なのだ、困ったな予定があるんですが、見に行けってことなんだろうな。

 

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