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そういえばピケティって誰だっけ

2015 DEC 12 11:11:47 am by 東 賢太郎

資産は持たずに借りた方がいいという時代だ。たとえば家など、固定資産税と建物の減価とローンの金利を考えれば借りた方が得かもしれずマイホームをもって一国一城の主だと喜ぶのは地価が永続的に上がるというあり得ない幻想に支えられた満足感にすぎないかもしれない。

不動産は占有すればいいのであって所有はいらないという考え方だ。買ったって固定資産税を取られるでしょ、それ、家賃と一緒じゃないの。要はキミは国から借りてるんだよ。登記簿に名前があったって所詮は小作人なの。一国一城の主なんて踊らされてるだけでバカだねえ。地価上昇がなければたしかにこういう理屈が勝ってしまうだろう。

上がらない土地は自分で使って満足するか、他人に貸しておカネを取るしかない。自分で使うと税金が丸々コストになるから、土地持ちでも自分は税金負担が少ない都心のマンションに住んで、土地は貸して収益を得ようという人が増える。合理的なことだ。そこで「収益物件」なるものがたくさん登場してくる。

それは土地を持てる者が持たざる者から家賃をピンハネしようというもの以外の何ものでもない。それを猫も杓子もやろうという時代になった。不動産所有権の証券化、流動化という背景が後押しして土地持ちが税金を払って値上がりを待つのでなく、税金は少なく払ってピンハネ所得に依存する国民的構造が形成されてきたのだ。

僕が毎日歩く駅前商店街がある。5~600メートルあるこの道でのお店の興亡ぶりは目まぐるしい。6年前に越してきたときの店や飲食店の7、8割はもうない。出ては潰れをくり返し同じ場所に3代目の店なんてのがざらだ。肉屋がケーキ屋になり洋品店が靴の修理屋になり弁当屋になったと思ったら不動産屋ができていたという塩梅だ。

これは持たざる者がピンハネに耐えられず、ひどいのは半年で撤退なんて気の毒な事態を引き起こしてるということだ。これを見て思い出すことがある。今年の初めに猫も杓子も読んだ(とされ)、全マスコミが天照大神みたいに崇め奉ったトマ・ピケティの新・資本論である。これを日本で真っ先にボロカスに貶したのは僕であり、1年後はみんな忘れてるだろうと予言したら、そっちはハズれて半年で忘れられてしまった。

ピケティの新・資本論について

ピケティは間違っている

このセンセイは世界の左寄り経済学者の常例として金融証券市場にほぼ無知でありブログに書いたことに尽きるのだが、ご説にはひとつだけ美点があって、r(資本収益率)を不動産収益率に置き換えるなら、他国は知らないが我が国においてはかなりr-g>0は正しいということが僕の目撃してきた「某駅商店街」の6年間の興亡によって証明されているかもしれないということだ。

江戸時代以降の日本人はもともと親方日の丸の権力たかり体質があり、アントレプレナー(起業)体質はきわめて貧困である。成功している新興企業に在日韓国系や中国系が多いのは彼らにはそれが旺盛にあるからであって、角界がモンゴル力士依存になってしまうのも、LPGA(日本女子ゴルフ)の賞金ランキング上位5人がぜんぶ韓国・台湾人になってしまうのも同じ現象なのである。

それは、日本はピンハネ所得に依存する国民的構造形成に非常に親和性のある国であることに原因がある。海賊が作った英国やゴールドラッシュで一攫千金を夢見る山師が作った米国とは根本的、決定的にちがう。ピケティがいみじくも指摘した階級の二層化が進み、固定化し、元から一攫千金的な上昇志向がない国民に上昇なんかしなくたって楽しい人生があるんだと洗脳が行なわれる。ピンハネされる側をふやすだけだ。

するとそこで不公平議論がでてきて所得再分配だと騒ぐ。あまりに知性も思考力もない。角界からモンゴルを追放しろ、韓国人は出ていけとやるのと変わりない。負けている日本人の方がだらしないのである。たかり体質がだめなのである。政治がそういう方向に持って行かないと、日本人はそのうち全部がピンハネされる側になるだろう。爆買いしてくれる中国人だけはスマイルで迎えましょう、それがおもてなしですなんて人のいいことやってると、土地ごと彼らに爆買いされてしまうに違いない。

不動産は占有すればいいのであって所有はいらない

なんとなく知的でカッコいいのだが、ちがう。ぜんぜんちがう。不動産は所有しなくてはならないのだ。企業は社長なんかにならなくてもいい、サラリーマン社長なんて賃借人にすぎない。議決権を持てば地主だ、つまり株を所有することだ。それとおんなじ。スマートで合理的な小作人?なんだそれは?

 

(追記)

人の噂も七十五日とはよくいったもので、ウワサはまあ2,3か月で消える。ピケティの本が売れなくなったのは実は本の中身のせいばかりでもなくて、それを読んだとか本棚に飾ってあるというのが自慢にならなくなったからだ。こういうのを賞味期限切れという。だから噂の賞味期限は二か月半が相場という意味なのだ、冒頭の言葉は。

では噂の真っ盛りはなんというか?旬(しゅん)だ。旬という英単語はなく、in seasonとかthe best seasonであって面白くもおかしくもない。つまり旬の語感は極めて日本的なのである。食べ物の旬が二か月半というのは何となく合点がいくだろう。

株式相場を長年みていると旬で動く要素があることを知る。食べられるわけでない株に旬もくそもないはずだが、時としてある。利食いという用語があるように食える時期という感覚がある。金融緩和とは旬感覚を市場に広く蔓延させる麻薬であると言っても過言ではないだろう。

だからやりすぎると定義矛盾になる。旬のタケノコが2年も3年も旬の味のまま出回るなら、それは旬ではなく巧妙なビニール栽培なのだ。それを鋭く見抜いているイエレンは、だから金利を上げると主張したのである。ピケティ現象もそうだったが、そういうのにころっとだまされるようなら株はやめておいたほうがいいだろう。

 

 

 

 
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