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モーツァルト「魔笛」断章(アマデウスお気に入りコード進行の解題)

2016 APR 17 4:04:27 am by 東 賢太郎

モテット「踊れ、喜べ、幸いなる魂よ」の第3楽章「ハレルヤ」をご記憶でしょうか?

 モーツァルト モテット「踊れ、喜べ、幸いなる魂よ」(K.165)

 

この冒頭部分の音はこうなってます。

alle

青色部分(バス)、これをご自分で歌ってよく覚えておいてください。ハ長調に読むとド・ラ・ファ・ソ・ド(コードでC/Am/F/G/C)です。これはモーツァルトのシグナチャー・コード進行(僕の造語ですが「アマデウス・コード」と呼びましょう)であって、生涯にわたって使い続けたお気に入りなのです(「ハレルヤ」は17才の作品です)。覚えておけば彼の曲あちこちで、例えばリンツ交響曲で、ピアノ協奏曲第25番で、あっ、ここにもと発見があるでしょう。そうか、コ・シ・ファン・トゥ~~ッテ!これ、そのものですねって。モーツァルト鑑賞がますます楽しくなるでしょう?

さて、魔笛です。第1幕、第2幕、素晴らしいふたつのフィナーレの合唱をお聴きください。まず第1幕。

ハ長調で、絵にかいたようなド・ラ・ファ・ソ・ドが出てきたのお分かりですか(22秒からです)?

第2幕は主調の変ホ長調で、最後の最後に堂々と2回鳴り響きオペラを閉じるのです。

お分かりですね、2分21秒からです。17才の作品と同じコード進行が最晩年まで一本の芯として通っていたのです。ついでながらこれら両方とも曲尾のリズムはジュピター交響曲のおしまいと一緒じゃないですか。

(注1)「アマデウス・コード」を律儀に使っているのはベートーベンで、第3ピアノ協奏曲の終楽章コーダは魔笛よろしくこれを3回もくり返しています。第4交響曲の終楽章提示部にも3回くり返しがあります。そして、ハイドンは以前書いたように交響曲第98番第2楽章冒頭の英国国歌の引用のバスにわざわざアマデウス・コードをつけている!何と意味深長なことでしょう。

 ハイドン交響曲第98番変ロ長調(さよならモーツァルト君)

 

(注2)モーツァルトのオペラはすべからく合唱で終わりますが、そこにアマデウス・コードが現れるのはドン・ジョヴァンニ(2回)、非常に印象的なのは「地獄落ちの場面」で化け物(彫像)の用事を「Parla, parla, ascoltando ti sto.(話せ、聞いてやろうじゃないか)」と一瞬だけ寛容をしめすセリフについている。モーツァルトの深層心理においてどういう気分のコードかを暗示する例です。「後宮」は序曲にでてきます。「羊飼いの王様」(k.208)のフィナーレ、劇的セレナータ 「シピオーネの夢」 (K.126)のフィナーレにも出てきます。

 

モーツァルト「魔笛」断章(女の奸計に気をつけよ)

 

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