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クラシック徒然草-チェリビダッケと古澤巌-

2012 OCT 4 15:15:09 pm by 東 賢太郎

アメリカの2大音楽学校にジュリアードとカーチスがあります。

僕がウォートンでフィラデルフィアにいたころ、今は大御所であられるバイオリニストの古澤巌さんがそのカーチス音楽院に文部省国費留学生として学ばれていました。僕は27歳、彼は20歳ぐらい。こっちは音楽がメシより好き、彼は日本メシが食べたい(たぶん?)で拙宅に名誉家族待遇でご自由に出入りされてました。よくバイオリンも弾いてもらいました。リクエストしてモーツァルトの3番とかイザイのソナタとか。

Curtis Institute of Music, Philadelphia.

 

ある日の朝、彼から電話。「東さん、今日チェリビダッケが来ます。来れますか?」「何!」 行かないわけありません。講義は急きょ全部すっぽかし。彼の手引きで校長(元フィラデルフィア管弦楽団のオーボイスト)のデ・ランシ-先生にご挨拶。お許しを得てカーチス音楽院に出席となりました。チェリ先生の講義を一日聴講しました。これが本当に講義だけで楽器なし。音楽というより哲学。ピアノをポーンと1音鳴らしてWhat is the differnce between tone and music? なんて聞く。10代の学生たちはぽかーんとしています。やばい、俺があてられたらどうしようと身構えてしまうほど緊張感がただよいました。

翌日は楽器あり。オケは舞台にスタンバイ。僕は誰もいないホールの特等席で世界のチェリビダッケを独り占め。夢見心地とはこのことです。ところが、現れた先生とあろうことかばっちり目が合ってしまった。「なんやお前は、出ていかんかい!」一喝されそうな空気。心臓がばくばくになりました。しかしスコアを持っていたのが幸いしたのか関係者かなにかと勘違いされたのか、何事もなく先生は指揮台へ。よかった。

ドビッシーのイベリアでした。学生たちはピリピリ。こわもてオヤジの圧倒的な威圧感で笑顔もジョークも一切なし。ちょっと流してすぐ止まる。トロンボーン三重奏が気に食わなくて何度も何度も繰り返し。まだ駄目。3人立って吹け!まだ駄目。どうしてできないんだ(怒り)!3人楽器を置いて口で歌え!OK、できるじゃないか。それを楽器でやるんだ。こういう練習風景でした(その時の写真、ウイキペディア)。

実演はカーネギーホール。これは聴けませんでしたが、幻の大指揮者チェリ先生のこの公演は全米で有名になり、そのときの様子はウイキペディアにも載っています。古澤さん、ありがとう。

(以下、「チェリビダッケ」より引用)

「アメリカには、1984年に、フィラデルフィアカーティス音楽学校の校長だったジョン・デ・ランシーの要請で、当校で指揮を教えた。そして、当校学生オーケストラを連れてカーネギーホールで開いたコンサートは、あまりにも素晴らしく、ニューヨークの音楽界に衝撃を与えた。ニューヨーク著名の音楽評論家ジョン・ロックウェルは「いままで25年間ニューヨークで聴いたコンサートで最高のものだった。しかも、それが学生オーケストラによる演奏会だったとは!」とのコラムを掲載した[2]。」

 

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