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読響定期 ヴァイグレのR・シュトラウスを聴く

2016 AUG 25 23:23:14 pm by 東 賢太郎

指揮=セバスティアン・ヴァイグレ
ソプラノ=エルザ・ファン・デン・ヘーヴァー

R.シュトラウス:交響詩「ティル・オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら」 作品28
R.シュトラウス:4つの最後の歌
R.シュトラウス:家庭交響曲 作品53

(8月23日、サントリー・ホール)

オーケストラを聴く醍醐味はいろいろありますが、リッチな音彩とボリューム感でR・シュトラウスは横綱クラスでしょう。オペラでも例えば「薔薇の騎士」を最前列で聴いたとき味わった、ピットから湧き起るとろけるようにメロウな弦の響きやめくるめく極彩色の管のタペストリーがこれまた美の極致の女声群とからむ陶酔感は他では得られないものと思います。

最晩年の作である「4つの最後の歌」はドイツ歌曲でも好きなものひとつ。期待が高かったですが、エルザ・ファン・デン・ヘーヴァーの歌は堪能しました。また聴きたいですね。深くて広々した声は、思わずドイツの劇場で毎週のように聴いていたオペラや歌曲を思い出してしまいます。「夕映えに包まれて」が木管のトリルで痺れるように闇に消えていく、この「痺れる」感覚がシュトラウスです。素晴らしい。

ティルはまだオケ(弦)がやや硬かったかなと思いますが、ヴァイグレはベルリン国立歌劇場管の首席ホルンだったそうで読響のホルンも大健闘でした。さて後半の「家庭交響曲」、小泉 和裕が都響だったと思いますが10年ぐらい前にここで暗譜で振って、これが大変な名演だった。家で聴くほど好きではないが、この曲のオーケストレーションの見事さは敬服していて、ライブでこそその真価がわかるのです。

結論として、ヴァイグレの演奏はベスト。オケは鳴りきり、有機的に複合し、ピッチも内声のハモリも完璧、音楽の起伏は振幅があってドラマティックであり、完全に打ちのめされました。驚くべきは、オケの音色の質感が非常に「東欧的」になったことで、日本の楽団からこれほどDSKやバンベルグSOを彷彿させる上質の音を聴いたのは初めてだ

そういえばベルリンの旧東独ウンター・デン・リンデンの国立歌劇場で何度もワーグナーを聴いたのですが、こういう音だった。バレンボイムの棒で、ヴァイグレもそのころホルンを吹いていたはずですが、どういう魔術で読響の音をああしたのか?この指揮者は大変な才能、ひょっとしてカール・ベーム並みになる人じゃないかと本気で思いました。

読響も複雑なスコアを見事に弾き終え、全奏でも音が濁らず、集中力、棒の微妙なタッチでの呼吸の良さ、間の良さ、文句なしの大名演であります。特に管楽器、このまま欧州でやってトップクラスのレヴェルでした。本当に聴けて良かった!こういうのが稀にあるから定期に通ってますが、早くも今年のマイ・ベスト最右翼であることは確実であります。
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