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ギュンター・ヘルビッヒのベートーベン7番

2017 MAR 14 0:00:03 am by 東 賢太郎

ギュンター・ヘルビッヒ( Günther Herbig, 1931年11月30日~)という指揮者は通にしか知られていないでしょう。旧東独で活躍した指揮者といえば、例えばアーベントロート、コンヴィチュニー、ケーゲル、ケンペ、レーグナー、ザンデルリンク、マズア、スイトナー、ボンガルツなどが思い浮かびますがヘルビッヒもそのひとりです。

東西ドイツ統一で西側で活躍した人もいれば逆の人もいますが、誰もがドイツのレパートリーの伝統的解釈の継承者であったことは万人の認めるところでしょう。ヘルビッヒは東独のレコード会社であったドイツ・シャルプラッテンのETERNAというクラシックレーベルで統一後の西側市場に紹介されましたが、地味な曲目と知名度の低さのせいか廉価盤扱いのこともあり、わが国では地味な東独系の中でもさらにマイナーなイメージが定着したように思います。

しかしヘルビッヒの指揮は無難で堅実な中庸の解釈などではまったくなく、ツボにはまると大変素晴らしい。看過されるのは実にもったいないのです。チェコ生まれの彼はアーベントロート、シェルヘン、カラヤン、ヤンソンス(父)に学び、1972-77年にドレスデン・フィルハーモニー、1977-83年にベルリン交響楽団(西のBPOに対抗する東のメジャーオケ)の首席指揮者を務めるほど高く評価されましたが東独統一党の政策に嫌気がさし、一念奮起して新天地の米国に移住します。

そこで得たポストがデトロイト交響楽団の音楽監督(1984-90年)でした。このオケはポール・パレー(在任1951–62)と一級品のフランス音楽を作ってマーキュリー・レーベルに多くの名録音を残し、前任のアンタール・ドラティ(1977–81)がアンサンブルを鍛え上げていました。その後ヘルビッヒ着任までは3年の空位があるようで、彼は満を持して迎えられたのでしょう。

これはウォートン時代にフィラデルフィアのFM放送でオンエアされたライブをカセットに録音したもので、それが1984年4月20日でした。アナウンスによるとこの7番は前年9月に第10代音楽監督に着信した記念すべきお披露目のオール・ベートーベン・プログラムのトリでした。まさに着任したての意気揚々とした指揮であり、オケもそれにこたえて渾身の熱演をきかせているのです。

僕はベートーベン7番はあまり聞きませんがこの演奏の格調とパッションだけは別格で、アタッカで一気呵成になだれこむ終楽章は圧倒的でコーダの追い込みの興奮は何度体験しても素晴らしい。あらゆる録音の中で最も好きな7番であり、これを聴けば誰もがこの交響曲が好きになるでしょう。音楽は人間の生み出すもので、特別なオケージョンの一期一会の感興の盛り上がりというのは時にもう一度やれといってもできないようなものになる、そういうことを感じさせる稀有の演奏と思います。ヘルビッヒのベートーベン交響曲の録音は3番はありますが他はないようです。お元気であるならばこういう本物の指揮者に全集を残してもらいたいと熱望するばかりです。

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