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信じることこそが人間関係の最強の絆である

2022 AUG 7 13:13:36 pm by 東 賢太郎

富士霊園にて納骨式をとり行い、両親は並んで深い安らかな眠りについた。親族は遠路フランスから戻った者もおり、墓前で花を添える段になると朝から長らくぱらついていた小雨が良い塩梅に止んだ。前日の東京は明け方まで雷鳴が轟き仏前での眠りが浅かったが、この日の御殿場は山肌に薄く霞がかかって連日の猛暑が噓のように引いてしまい、何もかもが済んだ安堵のように至極穏やかだった。

箱根の温泉宿に一泊して自宅に戻ると得もいえぬ虚無感に襲われる。生まれてこのかた初めての境遇なのだからと我が身に説いて納得させるが、親がいないとは実にこんなによすがのないものであり、知らぬまに自分が一族の支柱なのだという覚悟を問われ始めている。もう3,40年この方、ちっとも父に頼って生きてきた積もりはないのだが、なくなるとかように重たい蓋だったのだ。

両親とも兄弟が多い。物心ついて以来こうした一族の集まりの長はいつも伯父であり、最年少のほうだった僕は端っこでちょろちょろしておればよかった。それがいまや祭祀の長だ。あちら側へ行けばまた楽だろうが、暫くはこうだ。そう生まれついてないので重く、嫌なのだ。この景色は次はそろそろお前だよと見えるが、早くお袋の所へ行きたいが口癖だった父の気持ちもこうだったのだろうか。

そう生まれついてないことは年の一番近い従妹がよく知っていた。それを宿の夕餉で他人事みたいにきいた。指揮者になりたいとか言ってたあのケンちゃんがどこでどうして証券マンなんてなったのかと。それが自分でも不可解なことは文章にしたし、なってからの景色はその何倍かそうだった。野球やったからだ。そう思って答えたが、いま思うと、知らない浮力に乗ったというほうがよほど近い。

以前に、横浜の桜木町駅の先を歩くと引き寄せられるような「気」を感じたことを書いた。あれはまだ起業前のことで、幸運の女神が微笑むか否か誰が知ろうという時分だったが、先祖ゆかりの地で俺はいけると確信をもらって帰ったのだ。”自分は守られている”、この安堵感こそ謎だ。結局、ほんとうに要所で吉と出て今に至るわけだが、いまもってあれが何だったかは凡そ説明がつかない。

かように世の中は合理で解せるものは実は5割にも満たない。迷って魔がさして理にすがると碌なことはない。自他ともに認める合理主義者だが、自分の守護神は信じる。そこに両親が加わったのだ。誰に会っても、ここまで8割は運でしたと話すのは謙遜でも何でもない、すべてあっけらかんと実話なのだから信じるしかない。それは死ぬまで続くと思うだけで生きるのに燃料は何もいらない。

これも以前書いたが、信じることこそが人間関係の最強の絆だ。僕が万人を信じることは多分ないが僕を四の五の言わず信じる人を信じることはできる。現世享楽的な贅沢に興味なく、我欲は満ちているから他利第一でよく、その誰かが喜ぶのが喜びである。僕を信じてくれた者、問答無用にまず妻、それから家族、親族、顧客、社員、友人、知己、猫にまで及ぶ方々ファーストの余生こそ欲しい。

ずいぶん大勢の人と出会い、ふれあい、そしてほんの少しだけ残った。義理人情でも相性でもない、良いも悪いもない、お互いの運だ。そう生まれついていないので政治家やその辺の経営者みたいなまねは一切しない。してもうまくいかない。うまくいくことだけやれば皆にとって八方良し、それが長の役目だ。それも運ということがやがてわかる。運は信じる者しか来ていることに気がつかない。

こう書いてきて、信じる信じないは宗教のようだ。何の抵抗もない。僕は宗教家でも何教の敬虔な信者でもない。葬儀は真言宗大谷派でしたが教義は知らない。何度も書いてきたが、信奉するのは合理と科学のみであり、だからこそ、その末に見えるのは神のようなものなのだ。それが誰であるかは問題でない。でもおられるから、世の中は合理で解せるものは実は5割にも満たないことを知るのだ。

中世までの合理は神学だった。その真理が5割もないことを啓蒙家が説きフランス革命がおき近代の幕が開いた。科学は神学の子分でしかなく、それを信奉する21世紀人の我々もそういう所にいるということだ。結末は22世紀にしか見えないから僕は関係ない。地球に巨大な小惑星でも衝突しない限りそれはやって来るが、読み解いてどうよく生きるかは子孫の皆さんにおまかせだ。

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