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天は自ら助くる者を助く

2026 SEP 2 2:02:24 am by 東 賢太郎

どうしても食事したいというので付き合った。F君だ。中国の富裕な家の38歳。もう20年ほど東京に住んでおり、 一橋大学院卒で頭脳明晰なインテリであり、日本語も日本文化への理解も万全である。問題なく帰化できた。ただ堅調だった日中関係のビジネスは昨今の情勢で冷え込んでおり、強みを活かせないのがもどかしい。先行きの相談に乗ってほしいとのことだった。

まず言ったのは「君は日本人だろ」である。中国語と英語が堪能な日本人なんて絶大なアドバンテージじゃないか。日本のパスポートで北朝鮮とキューバ以外はどこでも行けるんだ、日中関係がどうのなんて関係ねえだろ。視点を変えなさい。どこの国の株だろうが上がるのがいい株なんだよ。政治なんてものはビジネスにとってはお天気と一緒でね、今日は雨だからって悩まないだろ、雨は全員に降ってるからね、どんなボケが総理になっても株下がんないだろ。

銀座7丁目にある「四季陸氏厨房」の上海料理は一級品である。赤ワインと合わせてくれ益々よかった。舌鼓を打ちながらこうも言った。この中華料理がひとつ、もうひとつは同レベルのフランス料理でね、どっちも作った民族がただ者でないと思わせるものがある。そこに上質の和食を加えてベスト3だと思ってる。文化の深みもね、俺たちは受験勉強で漢文やってるからね、中国の古文だよ、やらないと大学入れないんだ。英語だって古文まではやらないよ。だから中国の歴史と文化は決して他人ごとじゃなく、少なくとも知識人はそれなりの敬意を持っていると思うよ。

でも愛憎は裏腹って言うだろ、人間はね、愛情や敬意が裏目に出ると憎悪になっちゃう困った生き物なんだ。中国は紙や火薬や羅針盤の発明という物質文明で西洋に先行してた本当に偉大な国で東洋の誇りだ、それが料理の発明にも発揮されてるってわけさ。ところがルネサンスで西洋に逆転されて大航海時代から収奪の対象になった。西洋人は血に飢えたハイエナみたいなもんでね、日本はやばいと気がついて瞬く間に自衛したんだ。それが明治維新というものさ。そこでアジア諸国は一丸となって自衛すべきだったと俺は思ってる。無理してキリスト教徒の仲間になるよりも、民族的、宗教的にそれが自然だったと思うからさ。

ところが愚かにも日中(清)が戦争しちまった。その結末の下関条約で台湾は日本へ割譲され、今も残る因縁の種になった。あの時、アジア人として日中が組んで白人国のロシアを蹴散していたらどうなったと思う?絵空事じゃないよ、だって日本単独でそれに成功したんだから日本人はその仮定を語る権利がある。政治は国の命運を左右するよ、両国のトップが小物だったからダメだったと俺は思ってるよ。その因果で満州事変が起き、日中戦争となり第2次大戦で日本は敗戦国となり、毛沢東の共産党が中国の支配者となって今の日中関係の座組になった。そのあげくで君がビジネスで苦労してるってわけさ。

君の親友のお父さんは俺が尊敬してる大人(たいじん)だ。習近平さんに言ってもらってくれよ。日本のインテリは論語、史記、三国志、孫氏ぐらい読んでるよ。読めば偉大さはわかるよ。にもかかわらず、申し訳ないが現状の対日政策は俺たちが是としてる中国の歴史にふさわしい大人の風格に欠ける気がする。みんな心の中でそう思ってる。それに対する日本人の行動は様々だが、潜在意識の中でとても残念に響く部分がある。誰だって孫氏が想定した敵国みたいに扱われれば穏やかな気持ちではいられなくなる。これが変わらないならやがて潜在意識も消えて元に戻らなくなる。すると日本は自衛のための武装を加速させる。それを中国は軍国主義の復活とする。そのせめぎ合いを何百年続けても、隣人関係がお互いの子孫にとって幸福なものになるとは思えないとね。

考えつくままに自論を話した僕に、F君は頭を下げた。なんということだ。気の毒でならない。彼のように一時の金儲けでなく新天地を求めて来日し、日本で勉強し、日本人として日本のためになろうと真剣に働いている中国人の青年が何人もいるのだ。僕自身外国に住み、街を歩いている市井の人の目にはどこやらのアジア移民と変わらなかったわけだが、それで16年不愉快な思いをすることなく過ごすことができた。真面目な仕事を真面目にしていれば市民待遇で扱ってくれる、それが文明国の証なのである。中国に注文をつけるばかりではいけない、入ってくる外国人に対して日本人も文明国の民として関わっていかなくてはいけない。欧州が失敗して大変なことになっているというが、あちらは植民地というものがあったツケが回ってきている部分が大いにある。日本にそれはない。他山の石として学習し、入り口の審査を目的をもって優秀な人材が管理し、日本の国力増強に資する人材を入れることは健全な競争を喚起し、経済の活性化にもなり、ひいては税収を増やして国民生活を豊かにする糧になるだろう。

天は自ら助くる者を助く。F君をサポートすることに決めた。

 

Categories:ソナーの仕事について, 政治に思うこと, 若者に教えたいこと

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