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カテゴリー: ______世界のうまいもの

世界のうまいもの(その12)-トマト鍋-

2019 JAN 14 22:22:22 pm by 東 賢太郎

三食トマトでオッケーよ

 

うちのノイ様の一番の好物はトマトである。来た時から肉、魚はささ身と削り節ぐらいで、スイカ、メロン、バナナ、梨が主食のベジタリアンだ。猫とのおつきあいは50年にもなるが、こういう猫は初めてである。

 

 

母猫に育てられていないから、この食の好みは遺伝だろうと結論。ではどこがルーツかなと思い、原産地を調べてみた。

トマト 南アメリカのアンデス山脈高原地帯

スイカ 熱帯アフリカサバンナ地帯や砂漠地帯

メロン エジプトで作られ地中海を超えてヨーロッパに渡った

バナナ 熱帯アジア、マレーシアなど

梨   中国

う~ん、共通な場所はないようで、少なくとも日本ではないぐらいしかわからないな。

リビアの位置

 

 

イエネコのルーツはリビアヤマネコだそうだ。リビアといえばアフリカ大陸の地中海側で、国土の大半はサハラ砂漠(の一部)という国である。

 

 

 

 

砂漠気候だから乾燥しているだろう。そうか、スイカ、メロン、バナナ、梨はすべて水分をたくさん含んでいて、喉が渇くとおいしいではないか。

ノイ様の雰囲気がないでもないリビアヤマネコ

 

ということで、猫の中でも群を抜いて気位の高いノイ様は古代の地中海を支配したフェニキアかカルタゴかローマ帝国の姫様の子孫であったという推論に至ったわけである。

 

 

 

 

トマト好きというなら同居人の僕もノイに負けない。トマト料理で嫌いなものはないし、ケチャップをかけて食べるものも全部好物だ。

先日、娘が食事しようというので場所は任せたら、自由が丘のダイニング「SORA(素楽)」を予約してきた。社名が中村修二先生のSORAAに似てるからかと思ったら、「ちがうよ、トマト鍋が有名なんだよ」ということだった。

 

そこで注文してみたら、たしかにおいしい。平田牧場三元豚と野菜(ケール、ターサイ、キヌガサタケ、しいたけetc)で至ってシンプルだが、スープがいい。8分の1に切ったトマトがほかほかになったぐらいをふーふーいってあっという間に平らげ、おかわりまでしてしまった。

家でできないかということになり、やってもらった。そっちもそれなりだ、十分においしい。ノイの気持ちがよく分かった。

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世界のうまいもの(その11)-スパゲッティ・ナポリタン-

2017 AUG 14 13:13:11 pm by 東 賢太郎

スパゲッティ・ナポリタンという料理がナポリにないのはよく知られている。ナポリどころか、イタリア料理にはそもそも砂糖入りのスパゲッティは存在しないそうだ。アメちゃんの甘ったるいケチャップをオラが誇りのパスタにかけるなんてハンバーガーと混ぜこぜだぜ、許しがたい暴挙だよとイタリア人がテレビでけっこうマジメ顔でいっているのをききながら、僕はむかし香港で見かけた「ウナギ・ラーメン」を連想していた。もっとも注文する勇気はなかったが。

80年代にマンハッタンの寿司バーで初挑戦したカリフォルニア・ロールなるものに複雑な顔をしていたんだろう、「お若いの、ここはニューヨークなんでね、でもロスのは絶品なんだよ、行ったら食いねえ食いねえ、なんたって本場だからね」と隣の席でマグロのニギリをナイフ・フォークで食ってたカリフォルニアンとおぼしきおっちゃんが教えてくれた。食文化というのは面白い。面白いけど他人のセックスといっしょでジェントルマンは笑っちゃいけない、みんなそれなりにマジメにやってるんだ、奥深いと書いておこう。

スパゲッティ・ナポリタンなる料理は終戦後に米国から横浜に入ったときくが、詳しいことは知らない。アメリカン・パウダーがメリケン粉になった流れだろうか。英語の分際で素直に「ナポリタン・スパゲッティ」でいいのに何を気取ったのかちょっとハイソ感だしたかったのか、形容詞を後にするラテン語風の語順だ。そこまでオスマシしながら日本で思いっきりB級フードに定着していったなんて素晴らしい、ビートたけしがコマネチをお笑いネタにしたようなもので江戸庶民を源流とする我が国のサブカルチャー精神のしたたかさを感じるが、米国東海岸でもスパゲッティなんてのは貧しくて英・独・仏移民にいじめられてたイタリア移民の食い物であって、その昔スペインが支配してたナポリにトマトが上陸した、その流れの末裔と思われるから、遠い東洋の異国でお里に帰ったと思えないでもない。

ご存知かどうか、隣国に「ブテチゲ」(部隊鍋)なるC級フードがあって、朝鮮戦争で米軍と韓国軍の兵士が共同生活の中で手持ちのレシピを一つの鍋にぶちこんだものといわれる。唐辛子スープに肉、野菜、豆腐がはいり、米軍のウィンナーソーセージそして韓国軍のインスタントラーメンが合体するが、それはないだろみたいな無粋なことは誰もいわない。おいしいからだ。いまやB級ぐらいにはランクアップしていて、かく言う僕だってソウルへ行くと必ず一度は食べ、ラーメンは替え玉する。そうか、ナポリタンは伊国、米国のレシピぶっこみの合作みたいなもんだ、そう思えばいい。

そうやって何だかんだいいながら、僕はナポリタンの根強い愛好家である。いや、この下町風情のサブカルフードを愛することに誇りすら覚える。子供のころ「お子様ランチ」が出てくると国旗の立ったライスの横にそれが小さく盛り付けられていて、そのケチャップがライスになじんだ部分が好きだった。家は必ず朝にパンと紅茶で一日が始まる洋食系で、魚が苦手だったせいかナポリタンはお袋の定番のひとつだった。のちに和食を覚えたが、だからといって忘れるはずがない。今日はおごるよ、九兵衛の寿司とどっちでもいいよとなって、迷うことなく駅地下食堂のナポリタンを選択する可能性が三度に一度ぐらいはありそうなハイレベルな所に位置している。

そこまで惚れこむには根強い刷り込みのルーツというものもあって、学生の頃、衝撃を受けたこれ(右)だ。宙に浮くスプーン!持ち上がったアツアツの麺から湯気が立ちのぼっているようで、味はもちろんケチャップの甘い芳香、ハフハフいいながら口に放り込んだ食感までがよみがえって、そそり方が半端でない。このリアリティーへのこだわりたるや、英国の名器で原音再生への高忠実度を売りとするB&Wのダイヤモンド・ツィーター付きスピーカーの精神を彷彿とさせるものである。大阪では喫茶店にまでこれがドドーンとあって、朝から外交に出ても昼が待てずにモーニングセットに釣られてふらふらと足が向いてしまう罪な奴であった。

さて、きのうは従妹がビジネスの相談にのってよと旦那様と家にやって来て、ワインとつまみだけで中途半端な時間に帰ったものだから夕食はどうしようかとなってしまった。そこで天啓のようにひらめいた(というより急に食べたくなっただけだが)のがナポリタンであり、どうせなら自分で作ってみようという意欲がむくむくとわいた。きっとそれがどうしたのというほどのものなのだろうが、恥ずかしながら僕はインスタントラーメン以外は自作したことがない、いまどきレアな男である。

娘の指導で玉ねぎ1/2個、ウインナーソーセージ2本、ピーマン1個を切り、フライパンでオリーブ油で炒めた。これが感動ものだった。この炒(チャオ)という強い火力で水分を中に残しつつささっといためる行為は中華料理の基本ときいたことがあって、そこに秘儀の如き奥深いものさえ感じており、人生で初めてやった手ごたえはひとしおである。ハムは使わない。ウインナーのブテチゲを思わせるB級感が望ましいからだ。あとはスパゲッティ130gを5分ゆでて水を切ってそこに入れ、ケチャップをかけてまぶして10分ほどでおしまい。


結論として、我ながら満足な出来であり(左)、これなら駅地下で出てきても文句は言わんと最大級の自画自賛を娘に送りつつ、10分で皿は空になったのである。ナポリタンは偉大だ。米国に敬意を表しつつこれからはスパゲッティ・アメリカーナと呼ぼう。

 

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世界のうまいもの(その10)-兄夫食堂のソルロンタン-

2017 APR 29 13:13:47 pm by 東 賢太郎

昨日たまたま昼前に赤坂でひとりになって、普段は必要ないスーツを2日も着ることになって肩がこってしまった。僕の業界はカジュアルなんでネクタイなんか年に何回かなというほどです。サカスの近くに兄夫食堂という知る人ぞ知るコリアンのB級名店があるんですが、これしかないなということでふらっと足が向きます。疲れをとるには最高なんです。

ここ、ランチは安くて7~800円でいけますが食べたことないのでお味は知りません。何度も行ってるのにどうしてってことですが、ソルロンタンしか頼んだことないのです。昼でも1650円だから店員さんが申しわけなさそうにしますが、いいから作って、それと生ビールねってことになるんです毎度毎度。

香港時代に全アジア担当だったので証券市場のあった国はくまなく行きました。食事もそれなりのをいただいたわけですが、広東、上海、コリアンが結論として僕のランキングで3大美食でありました。これは日本だと「中華」「焼肉」ってウルトラ・アバウトなことになってしまうのですが、それってフレンチもイタリアンもハンバーガーも「洋食」ってのといっしょです。

中華は中国がそうくくるんで料理だってそう思い込んでしまいがちですが、明らかな多民族国家ですからその数だけ味覚があります。上海育ちの神山先生が貴州料理は初めてだったなんて具合で、そんなのは驚かないわけで、では上海料理って何ですかというと、僕は会社特権で香港の江蘇省・浙江省同郷會に特別入れてもらってそこで覚えた味こそがそれとしか書けないのであって、しかもその両者も互いに微妙に違うのです。

そういうものを舌の奥底で実感してしまうと、モンゴル人や女真族がやった時代も中国なんだから台湾はもちろん琉球も朝鮮半島も日本列島も中国でしょというノリの源泉はわかってくるんで恐ろしい。『儒教に支配された中国人と韓国人の悲劇』 (ケント・ギルバート著)は面白い本でそれを儒教の悪しき側面と明快に書いていてなるほどと思わせますが、宗教だ教育だ以前に食という本能に根差した部分にすでにそれは歴然とあります。

焼肉がコリアンフードというのも決して間違いではないが、ひと昔まえの田舎のアメリカ人が、日本人は家で毎日鉄板焼きやって奥さんはエビのしっぽ飛ばしがうまいと思ってた、ロッキー青木は日本人だよねといわれて違うともいえないんでうなづく程度のもんです。ソウルで饗応されると焼肉は出てこないし我々がバーベキューと呼んでるものの感じにむしろ近い。食べたいと言わないと食べられないし、日本式をイメージすると違う。僕の分類基準だともう別の食膳です。

兄夫食堂のソルロンタン

雪濃湯(ソルロンタン)は辛くない乳白色の牛骨スープで骨や各部位の肉、舌、内臓を大きな鍋に入れて水で10時間以上煮立てるので家庭では調理が難しいようです。日本人の感覚だとそういうものは値が高いのですがまったくの大衆食であり、香港の食文化を観察して思ったのと同じことですが韓国も外食の方が安くて早くてうまいということがある。日本でのマックやファミレスという固有の市場は日本にはなかった隙間にできたことがよくわかります。

ソウルは何十回出張したか見当もつかないですが、ソルロンタンに関する限り兄夫食堂は僕が経験した限りソウルのどこよりうまいというのは、そこまでご説明すれば実は大変なことだというのがご理解いただけるでしょうか。

赤坂っていうとコリアタウンのイメージになって久しいですが、クオリティにおいて横浜の中華街といい勝負でしょう。寂しいなんて人もいるが僕は利便性を評価しますね、住むわけもでないし、まずい日本飯屋ばっかり並ぶよりずっと有難いでしょう。モンゴルだらけの大相撲もそうですが競争こそ成功の母ですね。並みいる競合店をさしおいて評判をとってる店のレベルは非常に高いのです。

かたや和食ですが、バブル時代の証券会社の使いっぷりは半端じゃなくて赤坂、紀尾井町界隈の高級料亭は接待の名所でした。競争なし。おばあちゃんの芸者が出てきて料理もたいしたことなくて、そんなので百万も取るんだから世も末だと思ってたら軒並みつぶれちゃった。皇居の地価がカリフォルニア州より高いなんていってた時代です。そういう勘違いの値段をバブルというのですね。

兄夫食堂は儲かってるんだろうけど値上げはなく、店もお世辞にもきれいじゃなくてB、C級のまま。地に足がついてますね、それで競争に勝てるっていう自信といい意味でのこだわりを感じる。商売はそれが王道と思います。投資をするんであればこういう会社を選ぶことです。殿様の見栄みたいな米国進出でアメリカ人に騙されてボロ会社を高値掴みするのとは対極的、プロの経営です。

 

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世界のうまいもの(その9)-スコッチのブローラ21年と竹鶴35年-

2014 JUL 17 12:12:29 pm by 東 賢太郎

僕は酒の味について文章を書く資格がある人間ではありません。アルコールは弱くて、ビール一杯で赤くなります。よく経済的ですねといわれますが、赤くなっても人並み程度の量はいけますから、悲しいかな実はそうでもありません。

ボルドーでワインテースティングを初めてしたとき、どうしていちいち吐き出すのかな汚いなと思いました。酔うと味覚、嗅覚の感度、記憶が薄れるためだそうです。僕の場合、吐き出してるのにもう5種類目ぐらいで気持ち良くなってましたからソムリエは無理であります。テーブルで白が終わって赤にさしかかるころにはだいたいの場合もう終わってます。だから、機会が多かった割には経験値が少ない、要は酒の味はまだよくわかっていないのではないかと思うのです。

そんな程度でも、ロンドンに6年住んでいてシングルモルトを嗜んでいましたなどと書くといかにもわかった風にきこえてしまいますね。そういうことはまったくなく、生ぬるいビールはまずいし当時の安月給ではいいワインなんか高嶺の花だったので、消去法で地元のスコッチになっていただけであります。

broraここからの拙文は何卒お許しいただき、通の方にはそういう前提でご笑納いただきたいのですが、そんな僕のちょっと記憶に残っている酒がブローラ(Brora)なのです。酒精を愛でる語彙は小学生なみでお味はうまく書けませんが、ハイランド独特の枯草風くさみが強めで、鼻につんと広がって、とにかく個性のボルテージが高い・・・さっぱりわかりませんね、みっともないのでやめときましょう。僕は発酵食品好きで納豆から鮒ずしまで全部OKで、スコッチもこういう臭み(というのかどうか?)やアクが強い個性派が好みです。もう一つこれが気に入ったのが、当時吸っていた葉巻と臭いもん同志で合うんです。

この酒は北ハイランドにある醸造所が83年に閉鎖されていてもう市場在庫しかありません。2005年に投資家訪問でエジンバラに行ったおり、どうしても懐かしくて欲しくなって、店にあるだけくれといったら1982年の21年物が3本出てきたので全部買いました。これは証券マンの本能ではなく、思い出の酒を純粋に飲みたかっただけです。

ところが今年、ジョニーウォーカーを有する世界最大のウイスキーメーカー、ディアジオ社が出した「ブローラ40」(40年物)の売値を見たら1本6,995ポンド(約122万円)で仰天してます。最も高いウイスキーだそうです。これは21年ですがそれでも調べると買値の10倍ぐらいになっていて、株よりいい投資でした。もちろん売る気など毛頭なく、飲みます(2本ある)。ただ、いずれ世から消えてなくなる味かと思うと切なくてどうも飲めません(貧乏性です)。一人じゃもったいないので、いずれ何かの機会にSMCメンバーで開けましょう。

nikka
もうひとつ、これは国産。お客様からいただいたニッカ・ウィスキー「竹鶴35年」です。なかなかよろしくて、ちびちびやってました。ところが先日、最後の一献をかたむけようとふとラベルに目をやると、「ボトルナンバー0229」 とあって、なにやらただ者でない風情が・・・。調べると1000本限定リリースで、ウィスキー評論家の土屋守さん曰く 『これぞ僕が「もう一度飲みたい」と切に願うウィスキー』なるものだったという恥ずかしい事実が判明。お値段も仰天もので、最後の一献はやめて安物の方に変更・・・。猫に小判とは猫に失礼であり、下さった方には不明をお詫びするしかありません。これとブローラと、どっちが先になくなるんだろう?

(こちらへどうぞ)

世界のうまいもの(その8)-アスパラとラインガウのワイン-

 

 

 

 

 

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世界のうまいもの(その8)-アスパラとラインガウのワイン-

2014 MAY 20 10:10:25 am by 東 賢太郎

斉藤さんがドイツへ行かれるというのでコンサートの日程等をお調べしていたら、無性に懐かしくなりました。

この時期はシュパーゲル(白アスパラ)がありますからたいへんよろしいですね。世界でいろいろおいしいものをいただく機会に恵まれましたが、あれはその中でも確実に上位にきます。スイスでもあるのですがちょっとやせてます。アスパラばっかりはどうしてもドイツでないとダメですね。旬は5~6月しかないですから今行かれるのは非常にラッキーです。僕はもうグリーンアスパラなど食べる気もしません。

代表的な盛りつけ

白アスパラは生ハムやカルトッフェルン(じゃがいも)などが添えられ、ホランデーズ・ソースなるバターソースをかけるのが一般的でしょう。この時期だけは肉類でなく白アスパラが主食の座にあるといって過言ではないようです。旬のものだから大きく太くて、初めての時はこれはどうやって食べるんだろう?と考えました。ナイフで切ると水分が出てしまうのです。周囲を見ると皆さんのどの奥まで届くほど長いのを切らずに丸のみです(女性も)。あつあつなので適度に冷めたのをいかないと火傷します。それをそこいらじゅうではふはふいって食べる。知らん人とも目と目が合ってにっこり。お行儀は今一つですが、これはドイツ人と一体感が持てる瞬間でしたね。非常にジューシーで風味も濃く、これを10本も食べればけっこう満腹感があります。僕はこれと上等の白ワインがあれば幸せで毎日のように食べていました。

ワインはラインガウ(Rheingau)のシュロス・フォルラート(Schloss Vollrad)、クロスター・エバーバッハ(Kloster Eberbach)が有名で、ライン川沿いにリースリンク種のブドウ畑が続いている丘の上にあります。ドイツは赤はおいしくなくて白になりますが、グレードに注意しなくてはなりません。僕は上位のアウスレーゼ(Auslese)しか飲みません。とりわけ、ちょっと高いですが辛口のアウスレーゼ(Trocken Auslese)は絶品でありおすすめです。高いといってもフランスの上等な銘柄に比べればずっと安く、お値打ちです。アイスヴァインというのがあり、あれもおいしいですがとても甘い食後酒です。

この2大産地では修道院で食事ができ、特にランチは雰囲気も景色も楽しめて最高です。ワインの利き酒をして買えるので、お客様をお連れするとたいがい気に入ったのをダース単位で注文されていましたね。6月末からはここでラインガウ音楽祭が開催されそこそこいいアーティストが出てきます。僕はここでゲルハルト・オピッツのピアノでベートーベンのソナタをずいぶん聴きましたが、そういう堅めの音楽がここでの食事とワインに不思議と合うというのは風土と文化というものを考えさせられました。ベートーベンがお堅いと考える方がおかしんじゃないかという風にです。それほどここではみなさん普段着のくつろぎであります。

フェーダーヴァイザーという白ワインのどぶろくみたいなのがあって、道端でおばちゃんが売ってたりします。ブドウジュースと思って飲みすぎると一気に酔っ払います。この時期しかないので探して飲んでみてください。アップフェルヴォイ(リンゴ酒)というのがありますが、まずいです。一般ツアーの観光客はだいたいこれが名物ですと飲まされてシュバインハクセという豚のすね肉なんかを食べさせられ、ドイツは飯がまずいと思い込んで帰ってくるんです。とんでもない。

(こちらへどうぞ)

ゴルフとビールと五十肩に教わる

 

 

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世界のうまいもの(7) ― ドイツのビットブルガー ―

2012 NOV 23 14:14:03 pm by 東 賢太郎

「フランスには246種類もチーズがあるんですよ、キミたち。そんな国が簡単にまとまるはずないでしょう。」 (シャルル・ド・ゴール大統領、野党への反論)

ドイツにはビールが5000種類あるそうである。どうしてそんな国がまとまっているのだろう。

いや、ドイツ人も本当はまとまりにくい。ビールがあるからうまくまとまっているいんじゃないかとさえ思う。そのぐらいドイツのビールはうまい。

「とりあえず、ビール!」という注文はドイツには存在しない。主役に失礼だ。缶ビール。あんなまずいものは誰も飲まない。缶ワインって、ないでしょう。コーラみたいに冷やして飲む?そりゃあまずいものを大量に売り込もうとすればそれだ。冷やせば味が分からなくなるからね。ドイツビールとアメリカや日本のビールは、完全に、別な種類の飲み物である。

このビットブルガーという銘柄。5000の1つ、もっと正確には1300ぐらいある醸造所
のうちビットブルグという町にあるブランドである。ナショナルブランドなので大都市はどこでも樽だしで飲める。僕がこれを好きになったのは、アルテオーパー(コンサートホール)裏にあるので毎週飲んでいたからだ。

ピルスナーという北ドイツに多い種類で、日本人には飲みやすいスキッとした味だ。まず、何よりクリームのような泡の口触りがいい。ひとくち目に感じる香りは上質のパンのようで、まさに麦からできているんだと実感する。舌にころがるやわらかいまろみ、コク、これを知ってしまうと日本のビールは清涼飲料水なんだ、水なんだと自分に言い聞かせて飲むしかなくなってしまうのだ。そして、飲み込むとホップの苦みがほのかに残る。そして、この後味とヴルスト(ソーセージ)、ザウワークラウト(キャベツの酢漬け)が絶妙に調和するのである。残念ながら、これは写真にある窯で自家醸造したナマ状態でないと味わえない至福の味。ビンでも全然ダメ。すみません、行って飲んでください。

「ドイツ料理はまずい」、これは 「ドイツ人は日本人に似ている」 と同様に日本人が抱いている強固なドイツ2大偏見であり、どちらも同じぐらい間違っている。ツアーで行って駅前の観光客用レストランで安物の豚のすね肉なんかを食べさせられて帰国すればそういう感想が定着するのは不可避であり、僕もフランクフルトに赴任する前はそう思っていた。しかし住んでいるうちにスーパーのお酢売り場で酢が何十種類も並んでいるのを見た。味がわからん人がこんなにお酢にこだわるだろうか?

フランクフルトでは毎週末のように家から歩いて行けるヴァルドハウス(森の家亭)に家族でぶらっと行った。ビール、ニュルンベルガ―・ヴルスト、ザウワークラウト、そしてカルトッフェルン・ザラート(ポテトサラダ)が僕の定番。この ”カルテット”  を一度で 「まいうー」 という芸人は絶対にいないだろう。どれ一品でもダメ、どれが抜けてもダメ。まさに四重奏なのだ。この絶妙のコンビネーションのうまさがわかるようになるまで僕は1年かかった。そしてドイツ人の気持ちが少し理解できるようになった。

彼らは正装に近い服装で森の中を歩く。アンケートで趣味の1位はこれ、ヴァンデルンである。散歩でも山歩きでもトレッキングでもジョギングでもない。ヴァンデルン。スポーツではない。上品な老夫婦がスーツに蝶ネクタイ、ロングスカートのようないでたちでゆっくりゆっくり自然に溶け込んで歩く。何時間もそれを楽しんで腹が減ったら”カルテット”で休憩。コーヒーを楽しんでそして腹ごなしにまたヴァンデルン。右はヴァンデルンお楽しみ中のグスタフ・マーラーである。フルトヴェングラーやシューリヒトにもそういう写真があったっけ。これがドイツ人である。

見上げると森の間から木漏れ日が差し込み、そよ風が吹くとそれがふっと途切れて雲がさしかかり森の暗さが増す。まさにそんな雰囲気に満ちているのがブラームスやブルックナーの音楽だ。まさにヴァンデルンの心象風景。これはフランス人にはわからんだろう、無理だなーと思う。

隣のドイツには5000種類のビールだけじゃない。ソーセージだって800種類もあるんだ。246種類のチーズでビビってるド・ゴール君。やっぱりキミはダメだね。

フランスの野党がこう切り返したという話は聞かない。

 

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世界のうまいもの(6)-イギリスのブルー・スティルトン-

2012 OCT 23 13:13:32 pm by 東 賢太郎

ブルーチーズがお好きでない方は無視してください。

ロンドンに6年いて最もうまいと思ったもののひとつです。以来、今でもこれなしには生きていけません。イタリアのゴルゴンゾーラ、フランスのロックフォールと並び世界3大ブルーチーズと言われます。ロックフォールだけは羊乳です。写真はウィキペディア(Dominik Hundhammer氏)よりお借りしました。

好きずきですが、僕にとって他の2つと同じジャンルでくくるのもどうかと思われるほど、別なものです。重くてクリーミーで濃厚。複雑にブレンドされたえも言えぬ熟成味があって、チーズ界の納豆といえましょう(納豆がダメな方、無視してください)。

青カビの分量とチーズそのものの風味、塩分、熟成期間で味が大きく違います。青カビが少ないのはだいたい安物ですが、多すぎるとややツーンという刺激が強く、バランスが大変微妙です。ロンドンのハロッズで売っているものが安心でしょう。僕は行くと1kg位買ってきます。

正統派の食べ方はポートワインとということになっています。たしかに英国人はそうすすめますが、甘いのでどうも僕はダメで、

(さらに…)

世界のうまいもの(5)-香港 天香楼-

2012 OCT 11 11:11:33 am by 東 賢太郎

天香楼(てんこうろう)
電話 2368-9660 / 2366-2414
18C Austin Avenue., TST, Kowloon

知っている人は知っている。写真は検索すればいくらものっているのでそちらをご覧いただきたい。老舗の杭州料理店で香港島ではなくカウルーン側にある。見かけはB級中華料理店とかわらない。しかし中国元首相である李鵬氏のお気に入りの店でもある。

棒々鶏は予約がいる。高い。一種のショーである。こんなものはどこで食べてもそう変わらないので、予算2万円以下で済ませたい方はやめたほうがいい。また、一般にここはカニみそ麺が有名になっていて、日本人のブログなどにもたくさん紹介されている。しかし高い。しかもうまいのは上海蟹であって麺ではない。

上海蟹は11月の大きい雌(産卵前のみ)がうまい。雄はだめである。ここの蟹は金持ち用に特上のが入っている。足は食べないで捨て、大きい(重い)のを5-6匹、味噌だけ食べる。これが最高の贅沢であり、これで充分。しかし上海蟹も最近は日本でいいものが食べられる。わざわざここで食べなくても、という気もする。

トンポーロー(絶品!)

 

ここで食べるべきは東坡肉(トンポーロー、豚の角煮)である。滞在した2年半に各所で食べたが、これはここがベストである。杭州料理店であるので豆苗や田うなぎなど日本で本物が食べられないものを食べたほうがいいと僕は思う。僕がいた当時(1997-2000)は接待だったので「ショーもの」をいれて1人3万円はいった。杭州料理に徹すれば1万円いかないのではないか。

 

世界のうまいもの(その4)-マルセイユのブイヤベース-

2012 OCT 1 17:17:37 pm by 東 賢太郎

 このレストラン、名前は Le Petit Nice (ル・プチ・ニース)ですがニースではなくマルセイユにあります。ヨーロッパに11年半いましたから南欧は何度も行きました。南欧と言っても広いのですが、僕はイタリアでもフランスでもギリシャでもスペインでもなく、地中海好きです。

マルセイユでブイヤベースは単なる庶民の魚介スープですが、うまいです。あれはこういうレストランでは頼めないでしょう。もう20年ぐらい前ですがこのレストランで食べたのは羊の脳みそ料理です。こんないい所でそんな妙なものをと今だったら思うのですが、若かったので万事好奇心先行でした。うまかったので今でも覚えています。

ここはホテルでもあり、海が眼下にバーンと見える部屋で1泊しました。一生忘れない光景です。南欧にご旅行されるならニース、カンヌもいいですが、ここか城壁の町サン・ポール・ド・ヴァンス(St-Paul de Vence) に1泊されることを強くお勧めします。ちなみにプチ・ニースは当時ミシュラン1つ星でしたが、最近3つ星をとったそうです。あまり有名になってほしくないなと複雑な気持ちです。

 

 

 

 

世界のうまいもの(その3)-フィラデルフィアのホーギー-

2012 SEP 30 16:16:11 pm by 東 賢太郎

フィラデルフィアといえばこれ。

名はホーギー(Hoagie)という。

50センチはあるイタリアンロールに、ハム、サラミ、チーズ、レタス、タマネギなどをはさみドレッシングをかける。写真のように切ってもらって食べる。

似たものをニューヨークではサブマリンと言っているが、食べてみると味は違う。ぜんぜん別な食べ物だ。

ペンシルバニア大学ウォートン・スクールに社費留学生として学んだのは1982-84のこと。いわゆるMBA (経営学修士号)をとった。行った当時26歳で月給は手取り20万円ちょっと。為替が240円だったからひと月1000ドルもなかった。今なら8万円だ!これで妻と暮らしていたのだから、まさに赤貧の学生生活だった。

部屋でスパゲッティにラグーソースが定番。源氏という日本食レストランがあったが定食が10ドルぐらいと論外の高さ。日本の食材も高い。だから部屋でライスを炊いてもらって簡単なおかずで食べる以外、まともな日本料理などというものはほぼ味を忘れかけていた。

たまの外食はマックだ。サラダが食べ放題だから栄養補給と言う意味でも大事だった。ただしビッグマックは4ドルぐらいして高嶺の花。週に1度でがまんした。今でも日本で「ビッグマック」と注文するときは、手に汗を握ってしまう自分を発見する。

そんなとき、お世話になったのがこのホーギーだった。授業の合間、夜、夜食。何回食べたか想像もつかない。2ドルぐらいと安い。味は見かけよりずっとうまい。パン、肉、野菜、ドレッシング、チーズのハーモニーの妙だ。腹持ちもいい。

ウォートンの勉強は大変だった。地獄にちかい。人生あんなに勉強したことないし、もう1回やれと言われてもいやだ。でもキャンパスライフは楽しかった。アメリカっていいなあと思った。クラスにいいやつもいっぱいいて、夜中までホーギーを片手にバーで議論したりした。彼らが語った人生の夢はその後の僕の人生観に大きく影響している。

 

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