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カテゴリー: ______世界のうまいもの

世界のうまいもの(その3)-フィラデルフィアのホーギー-

2012 SEP 30 16:16:11 pm by 東 賢太郎

フィラデルフィアといえばこれ。

名はホーギー(Hoagie)という。

50センチはあるイタリアンロールに、ハム、サラミ、チーズ、レタス、タマネギなどをはさみドレッシングをかける。写真のように切ってもらって食べる。

似たものをニューヨークではサブマリンと言っているが、食べてみると味は違う。ぜんぜん別な食べ物だ。

ペンシルバニア大学ウォートン・スクールに社費留学生として学んだのは1982-84のこと。いわゆるMBA (経営学修士号)をとった。行った当時26歳で月給は手取り20万円ちょっと。為替が240円だったからひと月1000ドルもなかった。今なら8万円だ!これで妻と暮らしていたのだから、まさに赤貧の学生生活だった。

部屋でスパゲッティにラグーソースが定番。源氏という日本食レストランがあったが定食が10ドルぐらいと論外の高さ。日本の食材も高い。だから部屋でライスを炊いてもらって簡単なおかずで食べる以外、まともな日本料理などというものはほぼ味を忘れかけていた。

たまの外食はマックだ。サラダが食べ放題だから栄養補給と言う意味でも大事だった。ただしビッグマックは4ドルぐらいして高嶺の花。週に1度でがまんした。今でも日本で「ビッグマック」と注文するときは、手に汗を握ってしまう自分を発見する。

そんなとき、お世話になったのがこのホーギーだった。授業の合間、夜、夜食。何回食べたか想像もつかない。2ドルぐらいと安い。味は見かけよりずっとうまい。パン、肉、野菜、ドレッシング、チーズのハーモニーの妙だ。腹持ちもいい。

ウォートンの勉強は大変だった。地獄にちかい。人生あんなに勉強したことないし、もう1回やれと言われてもいやだ。でもキャンパスライフは楽しかった。アメリカっていいなあと思った。クラスにいいやつもいっぱいいて、夜中までホーギーを片手にバーで議論したりした。彼らが語った人生の夢はその後の僕の人生観に大きく影響している。

 

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世界のうまいもの(その2)-スコットランドのザリガニ-

2012 SEP 21 16:16:28 pm by 東 賢太郎

小学校のころ熱中したことがあります。成城学園には大学の近くに丸池という池があり、悪ガキはここにいるマッカというアメリカザリガニを競って釣っていたのです。

エビに似ていてうまそうだと思っていたのでいつもバケツで持ち帰りますが、それは食べられないのよと母は毎回シャットアウトです。翌朝になると数が減っていて誰かが食ったかと思うと共食いだったりして、長年実に気になる生き物でした。

スコットランドにターンベリーというゴルフ場があります。http://turnberrygolf.ca/home.htm

2009年全英オープンの舞台となった名門コースで、ホテルがついています。ここに泊まったある日、メニューにクレイフィッシュ(Crayfish)という字を見つけた僕は迷うことなくそれを注文。それは長年の溜飲を下げた日になりました。

ザリガニは600種類もいるそうでおなじみのロブスターもそのひとつです。フランスでは堂々たる高級食材。ザリガニソースやバターまでもあるというではないですか。スウェーデンや中国でも食べられています。

その日食べたのは武骨なあのマッカとは似ても似つかぬ繊細なボディの白っぽい中型。何という種類かは知りませんが、殻も固くなく、ザリガニ界の貴公子という感じのやつでした。ボイルしてあり濃厚なソース(Nautua Sauce)がかかった一品は、3匹はおかわりOKと思わせる逸品でもありました。

イギリス、しかもスコットランドというとメシがまずいという先入観をほとんどの日本人がお持ちでしょう。それは概ね正しいのですが、あのハギス(羊の脳みそソテー)だってそれが何か知らずに食べればそうひどいものでもありません。逆にラム(羊肉)などはここでなくてはと思えるほどうまい。

スコットランドはあの奥深い名品スコッチウイスキーを生んだ場所であり、そこの人が味がわからないというわけではなく食材が乏しかったということだと思います。ついでに、ギネスという黒ビールがありますが、あれはダブリンで生で飲まないとうまくありません。瓶や缶はまがいものと言っていいぐらい違うのです。

ついにザリガニを食って鼻たれ小僧時代からの思いを遂げた僕でしたが、翌日のゴルフでは僕に賭けていた小僧のキャディーに激励までされる屈辱のコースデビューとなりました。

世界のうまいもの(その1)-貴州料理の酸湯魚-

2012 SEP 21 0:00:19 am by 東 賢太郎

野球がない日というのはいいものです。小春日和のやすらぎを感じます。こういう日はうまいものの話ですね。

僕は証券会社の海外現地法人社長というものを7年間で3つもやらせていただきました。認めます。サラリーマンとしては許されがたい果報者です。接待が日課でもありましたから、おかげさまでそれを境にりっぱなタヌキ腹になりました。

しかし神様は公平なもので、なぜか僕はB、C級グルメに生まれついており、何十万円のワインとか高級フレンチのような毎日は苦痛をこえて地獄の責め苦でした。スイスでお客さんが同時に2件来てしまい、やむなくディナーのハシゴをさせられたときなんぞはあまりの恐怖に拒食症の不安すらよぎりました(まあそれはなかったですけど)。

逆に、欧州の当時の日本食事情はこれまたおぞましいものです。国宝ローズという割とましなコメはあるものの、寿司、そば、すきやき等は「ようなもの」。似てる似てるで盛り上がれる食い物仮装大会だと思わないとバカらしくて金を払う気になりません。食の宝庫の香港ですら当時は「ウナギラーメン」などという面妖なものが出現する始末でした。

ただ、海外に16年もいればいろいろ面白いものも食べるわけで、うまい日本食と引き換えにこれはラッキーというものも多々ありました。これからそれをシリーズで取り上げようと思います。

まず初回は貴州料理です。一応は中華料理としておきましょう。貴州省はマオタイ酒で有名。最南端の少数民族地区です。僕はそこへ行ったことはなくいつも上海の「黔香閣」という貴州料理店で食べます。ぜんぜん高級店ではありません。 1人2千円で倒れるほど食べられます。

マストアイテムは「酸湯魚」という淡水魚の鍋です(上記写真は西遊旅行さん)。みかけ激辛ですがすごく辛くはない。名の通り酸っぱい。味の複雑さは表現不能。とにかく日本人が食べたことのないうまさだが、日本人で嫌いな人は少ないのではないかという不思議に懐かしい味。色はトマトだそうです。

あまりのうまさに僕はかつてないほどこれを大食い。もう今日からミヤオ族に弟子入りしようかというほどの満足感でした。さてそこで登場したのが、(名前は失念しましたが)恐らくデザートと想像される絶妙な一品。それはまず直径30cmほどの大皿の底部に平たくもち米を敷き、その表面は黒いアンコで一面が覆われている。そう、ここまでは正確に定義通りの「おはぎ」の味です。ところが、です。そのアンコの上になんとギトギトした豚肉の脂身が薄切りで乗っている!

ミヤオ族の名誉のため書きますが、これはイメージほどゲテモノではありません。いや、酸湯魚を大食いしていなければ皿の3分の1ぐらいはいけたでしょう。これを食べられたのはラッキーでした。こういうものはやはり現地の通に案内されないと注文すらできません。

このご時世でいきなり中華かよと言われそうですが、うまいものに国境なしといいます。だから領土問題もありません。皆さんぜひ一度お試しになることをおすすめします。

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