Sonar Members Club No.1

日: 2013年1月10日

「シカゴの雪なし新記録とヨルダンの大雪」に学ぶ投資必勝法

2013 JAN 10 22:22:34 pm by 東 賢太郎

 

投資は先を読むことがすべてです。

「読む」というのは「考えて」「判断する」ということです。「投資」とはその「判断」を「行動」に移すことです。その判断が正しければ得するし誤れば損するという場を提供するのが証券市場というものです。単なる頭の中の思考にすぎない判断というものを経済的価値に変換するツールは資本主義を支える重要な機能です。

そんなものはカジノと同じバクチだという方がいます。「考えて」「判断して」「行動して」「結果が経済的損得に結びつく」という範囲内では、市場がカジノと決定的に違うと言い切ることは困難です。しかしひとつだけ根本的に違いがあります。「読み」の存在です。カジノ、バクチには情報というものがありません。ルーレットで赤が10回続いても次が黒である確率が高まるわけではない。いつも2分の1です。カジノで何か「考える」ことはできても、それがベットの成功確率を高めることは一切ありません。実は考えた気になっているだけなのです。

しかし投資においては考える材料(つまり「情報」)は探せばいくらでもあり、それをベースに「考える」ことでベットの成功確率を高めることが可能だと一般には信じられています。そう信じないパッシブ投資という考え方もありますが、僕は自分の経験上、可能だと確信しています。

参加者みんなが同じ情報を得て、考えた結果が正しいかどうかを競う場が市場です。だから市場でもっとも大切なのは公平性(フェアネス)です。インサイダー取引を禁じるのは楽して儲ける人間に天罰を下すためではありません。アンフェアな成功者がいるとフェアネスがなくなり参加者が減ります。すると価格形成の合理性がなくなりさらにフェアネスが損なわれるからです。証券市場の中でも資本調達という経済の大動脈をになった「株式市場」という特別なセグメントを守るためなのです。だから債券市場や不動産市場でインサイダーを取り締まる法律はありません。

情報とは「この株がもうかりますよ」などという安直なものでは断じてありません。そんなことはインサイダー以外は誰も知らない。インサイダーは市場に参加できないので参加者は誰も知らないのです。証券会社のアナリストやセールスがもっともらしいことを言おうと確たる根拠は何もないということは肝に銘じてください。まして、ネットの怪しい「マル秘銘柄」等々など嘘八百の詐欺的行為もいいところなのです。

では情報とは何か?例えば、以前に「なぜ自民党が勝つと円安株高なの?」という娘の素朴な質問をご紹介しました。12月16日以前から「自民党勝利=円安株高」という観測が市場にあったことは当時の僕のブログでおわかりと思います。だからその時点で僕が必死に探していたのが「自民党が勝つかどうか」という情報だったのは言うまでもありません。

その情報があったとして、それで僕が株を買って儲けたとしても、それはインサイダー取引でもルール違反でもなんでもありません。考えて先を読んで判断して正解を導いた努力への正当な対価なのです。この努力の対価がいくら大きくてもいいということを暗黙に認知していることは自由主義の重要な定義の一つであり、資本主義を円滑に機能させる条件でもあります。

しかしこれは言うは易しなのです。この「情報を取る」ということが難しい。いい情報と信じたものがそうではない場合が多々あります。プロでもここで大半が間違えます。よくお考えください。売る人と買う人がいなければ株価はつきません。だから、情報が正しいと信じて売買した人の必ずどちらかが間違って損しているのです。

一見正しそうな顔をしている情報というものがあります。今、シカゴは320日間連続で雪が降っておらず、新記録を更新しています。これを見て「やっぱり地球は温暖化している」と言う人がいます。正しそうですね。シカゴにいたら信じるでしょう。しかし一方で、今、国土の半分以上が砂漠で覆われ、冬の平均気温が13℃というヨルダンが異例の大雪に見舞われています。これを見て「地球温暖化はやっぱり嘘だ」と言う人がいます。ヨルダンにいたらこっちを信じるのではないでしょうか。

相場というのはこうやって形成されているのです。僕の経験上、こういう情報に惑わされるとほぼ失敗します。大事なのは今がどうかではありません。これからどうなるかなのです。普通はそれはわかりませんが、自民党勝利→円安株高のように、ときどき高い確率でわかることもあります。そこで勝負することで、少なくとも負けにくいゲームをすることは可能です。

鉄則は「投資は先を読むことがすべて」です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

クラシック徒然草ーワーグナー大好き(1)-

2013 JAN 10 17:17:15 pm by 東 賢太郎

僕にとって「毒」になっているものをご紹介します。

「神々の黄昏(たそがれ)第一幕への間奏曲」の一部、「夜明けとジークフリートのラインへの旅立ち」です.

夜が明けていきます。ジークフリートは「指環」をブリュンヒルデに愛の証として預け、ブリュンヒルデに贈られた愛馬グラーネにまたがり新たな勲を求めてライン川に向けて旅立っていく場面の音楽です。ピアノスコアですが下の楽譜をご覧ください。1段目のTagesgrauen とあるところからが「夜明け」です。

青い部分、ヘ長調でクラリネットが、緑の部分、変ロ長調で弦が神のように素晴らしい動機の誕生をひっそりと告げます。もう全身が金縛りになるしかないポエティック、マジカルな瞬間です。ここからこの動機が発展していく神々しいさまは僕などの下郎はひれ伏して拝むしかございません!ワーグナー様のしもべにでも何にでもしてください!!こうして毒が回ってワグネリアンになっていくのですね。

この音楽は、恐れを知らない若者の、とてつもなく大きい希望と夢に充ちた旅立ちの気分です。それ以外の何物でもありません。苦しみから立ち直って運命に勝利したり、愛や自然を賛美したりという感動をくれる音楽はクラシックのいわばメインストリートですが、こんな音楽はほかに知りません。

突然ですが、吉永小百合と橋幸雄のデュエット「いつでも夢を」という曲が僕は大好きです。小学生のころ、よく母と買い物した幸花堂という和泉多摩川のパン屋さんで流れていたこの曲。今でも聴くと明るい陽だまりとパンを焼くいい香りまで思い出します。小さかった僕に明るい夢をくれたこれは僕の「多摩川への旅立ち」でした(スケール小さいっすね・・・・)。

初めてリングを4日間かけてチクルス(全曲通して)で聴いたのはドイツ滞在中のこと、ヴィースバーデンのヘッセン州立歌劇場(右)です。まさにジークフリートが旅立って行ったライン川のほとりの街でのことでした。会社で初めて拠点長をまかされ、まさに意気揚々だった39歳のあの頃。今もときどきこれを聴いては気持ちだけ若返り、その勢いでジョギングしては筋肉痛で後悔しております。

 

▲TOPへ戻る

厳選動画のご紹介

SMCはこれからの人達を応援します。
様々な才能を動画にアップするNEXTYLEと提携して紹介しています。

ライフLife Documentary_banner
加地卓
金巻芳俊