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ブロムシュテットのブラームス

2013 SEP 28 1:01:22 am by 東 賢太郎

今年は面白そうなものを適当に聴くようにしている。今や残された数少ない巨匠となった感のあるヘルベルト・ブロムシュテットのブラームスのヴァイオリン協奏曲と交響曲4番を聴いた(N響)。

ブロムシュテットは比較的好きな指揮者であり、本当は2,3番が聴きたかったが、あいにく出張に重なった。だからちょっと期待はあった。座席はいい。一階正面中央9列目だから常識的にはこのNHKホールで最上級の一角のど真ん中であった。前半の協奏曲が始まると、しかし、だめだった。トゥッティが、特にヴァイオリン群がにごる。はっきり言うが、高音の強奏がとてもきたない。ブラームスを聴くのに最も聴きたくない音だ。対向配置の第2ヴァイオリンはステージ後方に向けて発音するが、それが奥の壁に反響するのがこの座席だと聞こえて微妙な時間差が気になる。おまけにフランク・ペーター・ツィンマーマンのヴァイオリンは音程が悪い。速い部分とはいえ、どうしてああいういい加減な音を取るんだろう。第1楽章コーダの夕映えはあっけらかんと通り過ぎた。第2楽章のオーボエはどこか即物的だ。終楽章は速目のテンポで見栄も切るがどうも心を打たない。

4番の方は少しましだったがやはり弦のピッチのズレが微妙にひずんだいやな高音の強奏は同じだ。こういうストレスのたまる音をカネを払って聴く意味があるのかと思ってしまう。くどいようだが、ここはS席のしかも前寄りの中央も中央のベストロケーションなのだ。ホールなのかオケなのか指揮者なのか?よくわからない。第2楽章はトランペットがオルガンのように隠し味で和音に加わるが、その音の入りが無神経に大きいから存在を感じてしまう。ぞんざいである。第4楽章冒頭の入りは今度はオーボエが出てしまう。ほんの微妙なタイミングなのだが、そういう細かいところに厳格でないとブラームスはだらしない感じがしてしまう作曲家である。ブロムッシュテットはそういうことに厳しいと思っていたのでとても意外だ。全体的には彼らしい引き締まった演奏コンセプトだったが、それに徹すればいいのに熱演風にもっていこうとしてアンサンブルが雑になる。なんとなくゲネプロという感じであった。最後の和音がスコア通りに切りあがると、間髪入れずの盛大なブラヴォーと大喝采が続いた。

 

Categories:______ブラームス, ______演奏会の感想, ______演奏家について, クラシック音楽

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