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ストレートで三振という美学

2013 SEP 27 13:13:47 pm by 東 賢太郎

楽天ファンではないが優勝はとてもうれしい。今季はとても強かったが、れっきとした理由がある。昨日のケリをつける試合。記録など構わず最後の1イニングをマー君に託した星野監督。まずこれだ。お前がエースだという、投手出身監督からの強烈なメッセージである。次に、それを受けたマー君の投球だ。1死2,3塁となって1打逆転のピンチを作ってしまった。そこから全球ストレートで相手の3,4番から三振を狙って、そして三振に仕留めた。これが今年の強さの集大成だ。

打者というのはストレートで三振に討ち取られるのがいやである。力でねじ伏せられた感じがする。とても屈辱的だ。これは男の本能であって理屈ではない。反対に投手はそれをやりたい。しかも最も打つ奴である4番から取りたい。これも理屈ではない。ちなみに高校野球は初対面の相手が多いのでこれが効くことが多いと思った。だから4番の第1打席、僕は(というより先輩の捕手が)必ず高めストレートで三振を狙った。うまくいくと相手のヤジに元気がなくなる。それを打たれるとだいたい試合に負けたような気がする。

そういう目で見ていただきたい。だから、野球をやっていた人間とって、マー君の全球ストレートの3,4番連続奪三振は敵をねじ伏せて足下に組みしいた完膚なきまでの勝利、優勝なのである。星野はそれを望んでいたと思う。あそこでストレート勝負を挑むエースの心意気はグラウンドで一緒に戦っている野手にビリビリと伝わる。だからあいつが投げるときは打ってやろうと奮い立つ。だから点が入る。勝つ。カエサルのVeni, vidi, vici (来た、見た、勝った)みたいに勝ってしまう。これが彼の今年の連勝記録であり、今年の楽天の強さの縮図だろう。そういうのは記録やデータなんか見ても分からない。スピードガンで何キロなど関係ない。相手をやっつけるだけでなく、組み敷いてやるという執念である。それはもう美学と呼ぶしかない。ストレートで三振という美学を彼ほど見せてくれる投手はメジャーにも一人もいない。世界で最高の投手であると思う。

かたや、昨日のマエケンの投球は実にふがいない。熱があった、足に打球を受けたなど言い訳にもならない。エースは風邪なんかひかない。自己管理の問題だ。いい当たりをされるから打球で怪我をする。エースはいい当たりなどされない。打線も今季完投のない投手に1点しか取れない。打線が奮い立たないのはエースではない。最下位のヤクルトの新人(小川)にハーラーで負けるなどエースではない。マエケンの力で3位にはなったが、まだ3つも負け越している。そんな球団なりのエースに過ぎない。マエケンがストレートで巨人のクリーンアップを3者三振にとったら、カープは優勝するかもしれない。そうするのは監督だ。監督しかない。打者出身の野村謙二郎が星野仙一のように投手に鬼になれるかどうか。

 

Categories:______プロ野球, ______広島カープ, 野球

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