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遺伝子の記憶 Ⅲ

2013 OCT 3 20:20:13 pm by 東 賢太郎

数学はこう言います。

ベテルギウスは85億人の先祖を知っていた

数学なんで仕方ない、これが正しいのです。34世代前よりさかのぼるといずれ地球の質量を人間の体重が超えます。あり得ないのでどこかがおかしい。

同じ先祖を皆が数えているからです。

つまり、それを「あり得る」ためにする唯一の数学的な解は、どっかの宗教がいう「人類みな兄弟」がおおよそ正しいと認めることです。厳密に言えば、始祖となったアダム-イヴのペアが2組以上あってお互い親族でなくても成立するので、「みな」兄弟ではないかもしれないが、限りなくそれに近くないと「あり得る」ようにはなりません。この事実は次の例でもわかります。

細胞にあるミトコンドリアは女性を通じてだけ塩基配列が遺伝するのは有名です。子が男だけだと切れるが女が生まれていれば無限に先祖をたどっていける。それによると12万-20万年前にアフリカにいた女性が今いる人類の最も近い共通の祖先とされています。彼女を「ミトコンドリア・イヴ」と呼びます。それが一人しかいなかったというのは俗説で、他にもいたはずだが「たどり得るもっとも最近の共通女系祖先」ということです。これをご参照ください。

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9F%E3%83%88%E3%82%B3%E3%83%B3%E3%83%89%E3%83%AA%E3%82%A2%E3%83%BB%E3%82%A4%E3%83%96

「女系を絶やさないレース」の金メダリストが今日現在は彼女だということに過ぎないので、彼女が人類の始祖であるかどうかまではわかりません。ということはあなたが女性であれば、12万年後ぐらいにはあなたがミトコンドリア・イヴさんになっている可能性もあるということです。

こういう時間軸でとらえると、塩基配列(要はDNAです)の原材料はみんなほぼ同じです。少なくとも「人間の形を作れ!」と書いてある塩基配列部分は確実に同じだから、そこからのヴァリアンスに過ぎないという見方もできるかもしれません。老舗の蕎麦屋のタレみたいなもので、同じレシピで作るスープストックがあるが毎日出し入れするので味は毎日微妙に違う。100年たつとけっこう変わっている。我々の個々人の違いはそんなものじゃないかと僕は思っています。

オックスフォード大学遺伝学研究チームによるとジンギスカンの子孫は現在男だけで1600万人いるそうです(Y染色体がマーカーなので、今度は男しかわかりません)。現在のモンゴル族の男女合わせた人口は約1250万人。日本人の多くは蒙古斑が出ますからモンゴル遺伝子が最も色濃く入った外国であり、皆さんも僕もジンギスカンの末裔であってぜんぜん不思議ではありません。ちなみに孔子の末裔は400万人ですから、ご両人の遺伝子を持った文武両道の方が皆さんの中におられても不思議ではないのです。

こう考えると人間の可能性というのは、少なくとも持って生まれた遺伝子が秘めているパワーという意味では、自分で思っているよりもとても大きいかもしれません。ですからそれを発揮できるように日々努力するのが生きるということの大切な意味だろうと僕は常々考えております。持ち腐れで終わってしまえば、それはなかったのと同じことです。

遺伝子の記憶は科学的には証明できないのかもしれませんが、五感の知るところにおいて、僕はあると信じています。科学は進化しています。ニュートンがアインシュタインがマックスウェルが、その時々の最先端理論を覆して新しい宇宙の原理を提示してきたことを僕らは知っています。今の科学が何を証明できるか、僕らに何を教えてくれるかということに、だから、僕はあまり縛られたくありません。自分の五感の声をよく聞いてそれが導いてくれる方向に逆らわずに努力をすることで、人生大きくは間違わずに来たということの方が自分には余程重たいことです。それが正しい方向だったどうか。それはこれを読むであろう僕の1000年後の子孫が判断してくれるでしょう。

(こちらもどうぞ)

遺伝子の記憶

 

 

Categories:______サイエンス, ______歴史に思う, 徒然に

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